実施中の試験研究課題(短期課題解決型研究)
農林水産省では、安全な農畜水産物を安定的に供給し、食の安全及び消費者の信頼を確保するため、食品安全、動物衛生、植物防疫等の分野の行政施策・措置(法令・基準・規則等)の決定に必要な科学的知見を得るため、安全な農畜水産物安定供給のための包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業を実施しています。本事業のうち、短期課題解決型研究で実施中の試験研究課題は以下のとおりです。また、課題解決型プロジェクト研究で実施中の試験研究課題はこちらを御参照ください。食品安全に関する研究
カキ中のノロウイルス汚染低減に関する研究
- 課題番号:23812759
- 研究期間:令和5年度~令和6年度
- 研究概要:
ノロウイルス(NoV)による食中毒は、大規模になりやすく、国内外における食中毒の病因物質の中で患者数が最多となることが多い感染症です。カキは生食が多い食材であり、NoVに汚染されたものが食中毒の原因となることから、カキ中のNoV 汚染を低減することは、食中毒の発生及びその後のヒト間の感染を防ぐ上で重要な対策となります。
国内の産地で主として実施されている汚染低減処理は、養殖後のカキを一定時間、殺菌した海水などの中で蓄養する浄化処理ですが、浄化処理に関する温度や畜養条件は生産者毎に異なるほか、実際にNoVの低減につながっているかどうかについては、
(1)汚染の程度が明らかなカキを入手することが困難であること、
(2)検査の性能や精度管理の問題があることから、
これまでのところ十分に評価されていません。
このため、過年度の研究事業において確立したNoV人為汚染カキ試料作製法により、人為的にNoVに汚染したカキ試料を用いて、NoV低減効果があると想定される技術(ウルトラファインバブルの活用、塩素系殺菌剤の利用、水温及びpHの調整等)によるNoV低減効果を検証します。
また、検証結果を踏まえてNov低減効果に係るデータや低減対策を整理します。 - 研究実施機関:カキのノロウイルス汚染低減に関する研究グループ
- コンソーシアム構成員:
(国研)水産研究・教育機構、宮城県水産技術総合センター、宮城県保健環境センター、国立感染症研究所
海洋環境の変化を踏まえた貝毒低減等安全性向上に係る技術開発、検証
- 課題番号:24018789
- 研究期間:令和6年度~令和8年度
- 研究概要
近年、海洋環境の変化により麻痺性・下痢性貝毒の発生が広域化・長期化していること、また毒化する貝の種類が増えていることから、従来の貝毒モニタリングによるリスク管理に加え、貝毒の原因となるプランクトンの発生を抑制するなど根本的な対策が求められています。
そこで、貝毒原因プランクトンの発生抑制手法について、室内試験による安全性、有効性の検証を行い、貝毒プランクトン抑制技術の確立を目指します。また、近年、新たに毒化するようになった貝類や、従来と異なる部位での強毒化が問題となっている貝類について、生体内の部位別に貝毒の蓄積等動態解明を行います。 - 研究実施機関:海洋環境の変化を踏まえた貝毒低減等安全性向上に係る技術開発、検証研究グループ
- コンソーシアム構成員:
(国研)水産研究・教育機構、岩手県水産技術センター、国立大学法人東北大学、京都府農林水産技術センター
動物衛生に関する研究
野生イノシシにおけるアフリカ豚熱防疫措置の具体化に関する緊急実証研究
- 課題番号:23813104
- 研究期間:令和5年度~令和7年度
- 研究概要:
アフリカ豚熱(ASF)が我が国の野生イノシシにまん延した場合、飼養豚への感染リスクが非常に高まり、養豚業に甚大な被害を与えることが懸念されています。このような状況を回避するために、水際防疫や農場バイオセキュリティの強化のみならず、我が国への本病侵入に備えて、的確な国内サーベイランス及びまん延防止のための万全な防疫体制を整えることが必要です。
そこで、野生イノシシの死亡個体及び捕獲個体からの採材手法及びASF・CSF高感度検査法を開発し、実証試験を行います。また、ASF防疫措置における野生イノシシの死亡及び捕獲個体の処理方法について、野生イノシシを用いた実地試験並びにASFウイルス及びCSFウイルスを用いた消毒効果に関する実験室内試験による効果検証を行います。 - 研究実施機関:アフリカ豚熱防疫措置研究コンソーシアム
- コンソーシアム構成員:
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構、明治アニマルヘルス(株)、アキレス(株)、タカラバイオ(株)
植物防疫に関する研究
ドローン等を活用した効率的な誘殺板の散布手法に関する調査研究
- 課題番号:22682195
- 研究期間:令和4年度~令和6年度
- 研究概要:
現在、ミカンコミバエの誘殺板の散布には、多大な労力と時間を要します。 本研究では、人が立ち入りにくい山間部等の地域において、迅速かつ省力的に誘殺板を散布するために、ドローンや無人ヘリコプターといった機器の開発及び改良を行います。また、ドローン等の機器を活用し、安全かつ正確に誘殺板を散布するための実証試験を行うとともに、この試験結果等を踏まえ、散布手法を確立し、ミカンコミバエの防除を行うための空中散布マニュアルを作成します。 - 研究実施機関:誘殺板散布技術確立コンソーシアム
- コンソーシアム構成員:
(一社)農林水産航空協会、ヤマハ発動機(株)
農業分野での抗菌剤の使用実態把握及び細菌性病害の総合防除の推進に関する研究
- 課題番号:23812487
- 研究期間:令和5年度~令和7年度
- 研究概要:
令和5年4月に取りまとめられた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)」に基づき、農業分野における抗微生物剤の使用量に関する動向調査を実施する観点から、国内における農薬としての抗菌剤の使用実態を把握するとともに、細菌性病害の防除対策の観点から、薬剤感受性検定手法の改良、抗菌剤だけに頼らない総合防除体系の確立に向けた取組を進める必要があります。
そこで、農業分野における抗菌剤の使用実態について、農薬種類別生産出荷数量及び農薬種類別都道府県別出荷数量のほか、農薬メーカーや都道府県、農業者団体等への聞き取りにより、各成分別に、主要な使用産地並びに対象作物及び対象病害を調査します。また、農業用抗菌剤に対する薬剤耐性化に係る情報収集及び解析、より高精度な、又は、多検体を迅速かつ同時に検定可能な薬剤感受性検定手法の検証・開発を行うとともに、野菜類の軟腐病、ももせん孔細菌病、稲もみ枯細菌病を対象として、耐性菌の発生状況の確認や、抗菌剤だけに頼らない総合防除を推進するために必要となる「予防」、「判断」及び「防除」に係る技術について検討し、有効性の調査を行います。 - 研究実施機関:抗菌剤・細菌病害コンソーシアム
- コンソーシアム構成員:
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構、学校法人東京農業大学、福島県農業総合センター果樹研究所、長野県野菜花き試験場
輸入検査における雑草種子に対する検疫措置に関する研究
- 課題番号:23812833
- 研究期間:令和5年度~令和7年度
- 研究概要:
国際基準との整合性等を踏まえ、植物防疫法(昭和25年法律第151号)が改正され(令和5年4月1日施行)雑草を検疫有害動植物として輸入検疫の対象とすることが可能となりました。
そこで、輸入検疫での雑草種子に対する消毒措置を確立するために、消毒効果、消毒による栽培用種子への影響調査、種子選別の可能性について研究を行います。また、輸入量の多い主要な栽培用種子の品目を対象に、輸入時における検疫有害動植物の候補である雑草種子の混入実態を調査します。 - 研究実施機関:雑草輸入検疫コンソーシアム
- コンソーシアム構成員:
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構、国立大学法人宇都宮大学、国立大学法人京都大学、(一社)日本くん蒸技術協会
九州本土を対象としたミカンコミバエ種群の改良型飛来解析システムの開発に関する研究
- 課題番号:23811483
- 研究期間:令和5年度~令和7年度
- 研究概要:
かんきつ類、びわ等の果樹・果菜類の大害虫であるミカンコミバエ種群は、例年、発生地域からの風に乗って日本に飛来してくることが知られており、近年の本虫の飛来傾向に対応するため、沖縄県から九州全土までを対象とする飛来解析システム、及び、飛来リスクを事前に把握できる飛来予測システムの開発が求められています。
そこで、沖縄県から九州本土の広範囲を対象として、ミカンコミバエ種群の飛翔速度や気温による距離の変動等の飛翔特性を解明するなど、飛来解析に必要な調査研究を行い、改良型飛来解析システムを開発します。また、海外の発生地域におけるミカンコミバエ種群の発生状況や気温、風向き等の飛び立ちの条件、国内における降雨、地形などの着地の条件など、飛来要因を明らかにして、ミカンコミバエ種群の飛来リスクを事前に把握するための飛来予測システムを開発します。 - 研究実施機関:(国研)農業・食品産業技術総合研究機構
動物衛生及び植物防疫に関する研究
動植物検疫におけるAIを活用したX線画像解析による輸入検査技術・システムの開発に向けた調査研究
- 課題番号:24018921
- 研究期間:令和6年度~令和8年度
- 研究概要:
近年、国際郵便物から種苗類等の植物や畜産物が見つかる事例が多くなっており、それらを介した重要病害虫等の侵入リスクが高まっています。また、国際郵便局での取扱数量は膨大で多様なものが含まれており、検査対象郵便物を全て開封して検査を行うことは難しく、病害虫が付着した植物等の郵便物による持込みを十分に防止することは困難な状況です。
このことから、国際郵便物として輸入される植物や畜産物を効率的かつ効果的に検出するためにAIを活用したX線画像解析による輸入検査技術・システムを確立し、水際の輸入検査体制の強化を図ります。 - 研究実施機関:東芝インフラシステムズ(株)
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課食品安全科学室
担当者:レギュラトリーサイエンス対応推進班
代表:03-3502-8111(内線4451)
ダイヤルイン:03-3502-5722