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農林水産省

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(2)農畜産物の安全確保に向けた取組


(農畜産物の放射性セシウムの検査)

食品中の放射性物質の基準値は、コーデックス委員会(*1)が定めた国際的な指標に沿って、食品から受ける放射線量が年間1ミリシーベルトを超えないようにとの考え方の下、平成24(2012)年4月、厚生労働省が設定しました。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部が定める「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」により、地方公共団体において実施されています。この「考え方」は、これまでの検査結果を基に、検査が必要な地域・品目について重点的に検査を行う考え方で、平成26(2014)年3月に検査対象地域・品目の見直しが行われ、改正されました。農林水産省は、厚生労働省等の関係省庁と連携し、必要な検査が円滑に行われるよう、関係県に対する科学的な助言、検査機器の整備、検査費用の支援等を行っています。


*1 消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、昭和38(1963)年にFAO及びWHOにより設置された、国際食品規格の策定等を行う国際的な政府間機関

(品目ごとの安全確保の取組)

生産現場では、後述する農地土壌の除染を行うとともに、農畜産物の安全を確保するため、暫定許容値以下の飼料、肥料、土壌改良資材等が用いられています。また、それぞれの品目の性質に合わせた取組が行われています。

米については、作付制限、放射性物質の吸収抑制等の対策及び収穫後の検査を組み合わせて安全確保を図っています。なお、福島県下では、県下全域で抽出検査に替えて全袋検査が実施されました(図4-2-2)。

また、平成26(2014)年産米については、避難指示区域の見直しを踏まえて、作付制限の対象地域における水田面積は2,100ha(*1)となり、福島県の水稲の作付面積は6万8,200ha(*2)となりました(図4-2-3)。


*1 2010年世界農林業センサスに基づき推計
*2 農林水産省「作物統計」

図4-2-2 福島県産米における安全確保に向けた取組

図4-2-3 平成26(2014)年産米の作付制限等の対象地域

果実については、樹体に付着した放射性セシウムの影響が大きいことから、樹体表面を洗い流す高圧洗浄等の放射性物質の低減対策が平成23(2011)年度から行われてきました。

大豆、そばについては、農林水産省と地方公共団体、関係独立行政法人等が連携し、放射性セシウム濃度が高い大豆やそばが発生する要因とその対策について調査し、この調査結果に基づき、土壌中のカリウム濃度に応じた適切なカリ施肥による吸収抑制対策等を推進しています。

畜産物においては、飼料から畜産物への放射性セシウムの移行に関する知見等を活用して飼料の暫定許容値を設定し、暫定許容値以下の飼料の給与等を徹底するよう指導するとともに、畜産物中の放射性セシウムの検査を徹底することにより、安全を確保しています。牧草等の飼料作物については、モニタリング調査の結果により、利用の可否を判断しており、暫定許容値を上回ると考えられる牧草地においては、反転耕による放射性物質の移行低減対策等を推進しています。

このような生産現場における取組の結果、平成26(2014)年産で基準値超過が検出された割合は、すべての品目で平成23(2011)年以降低下しており、平成26(2014)年度に基準値を超過したものは大幅に減少しました(表4-2-1)。

なお、基準値を超過した農畜産物については、出荷されないよう隔離・処分されており、市場には流通していません。



(農畜産物の出荷制限の解除)

東電福島第一原発の事故後、放射性セシウムの基準値を超える食品が地域的な広がりをもって見つかった場合、その食品及び地域に対して出荷制限が指示されました。その後、原子力災害対策本部が取りまとめた「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」に沿って、検査結果が基準値を下回り、安全が確認された農畜産物及び地域については、出荷制限が解除されています(表4-2-2)。例えば、そばについては、平成26(2014)年4月までに出荷制限が指示されていた全ての地域において出荷制限が解除されました。


表4-2-2 平成26(2014)年4月以降に農畜産物の出荷制限が解除された品目及び地域(平成27(2015)年3月末現在)

(ため池の放射性物質対策の推進)

東電福島第一原発の事故に伴い、福島県を中心に広範囲にわたり、ため池等の 農業水利施設(*1)が放射性物質に汚染されました。ため池における放射性物質により、利用・管理に支障が生じているもの、又は今後の営農再開に向けて支障が見込まれるものについて、営農再開・農業復興のために、その影響の程度に応じて適切に放射性物質対策を講じる必要があります。

ため池における放射性物質対策としては、平成24(2012)年度から平成26(2014)年度にかけて、農林水産省と福島県が連携して、ため池等の農業水利施設における放射性物質の実態把握に加え、放射性物質による営農及びため池等の利用・管理に係る支障の把握、放射性物質の拡散を防止するための技術の開発・実証に取り組んできました(図4-2-4)。

この結果を踏まえて、平成27(2015)年3月、農林水産省は、対策の考え方や調査計画・設計施工の手順、留意点等について整理した「ため池の放射性物質対策技術マニュアル」を取りまとめました。

今後、市町村等が同マニュアルを活用し、対策に円滑に取り組めるよう、支援することとしています。


*1 [用語の解説]を参照

図4-2-4 ため池の放射性物質対策の例

(農地除染及び農林業系汚染廃棄物の処理の推進)

農地土壌の除染については、放射性物質汚染対処特措法(*2)に基づき、環境省を中心に関係省庁や県、市町村等との連携により取組が進められています。農林水産省では、農地等の効果的・効率的な除染に向けて、現場の課題に応じた除染技術の研究開発や、農地の除染と区画整理等農地整備の一体的な実施に向けた取組等を推進しているほか、除染が終了した農地等の保全管理や作付実証等、営農再開に向けた取組を支援しています。

放射性物質に汚染された農林業系汚染廃棄物については、8千ベクレル/kg超は放射性物質汚染対処特措法に基づき国が処理し、8千ベクレル/kg以下は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき市町村等が処理することとなっています。

除染及び廃棄物処理の推進に向けて、とりわけ福島県においては、農地・森林も含めた除染に伴い発生する大量の土壌等を安全かつ集中的に貯蔵・管理する中間貯蔵施設を整備することとしています。平成27(2015)年2月、福島県及び施設立地町である大熊・双葉両町が施設への土壌等の搬入を容認し、本格的な輸送に向け、安全かつ確実な輸送が実施できることを確認するため、パイロット輸送による搬入を同年3月から開始したところです。農林水産省では、環境省等関係機関と連携して放射性物質低減対策に取り組むとともに、処理を行う体制が整うまでの間、営農上の支障が生じないよう、農林業系汚染廃棄物の隔離と一時保管を推進しています。


*2 正式名称は「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」

事例:農地の除染と農業生産性向上の同時達成の取組

福島県川俣町
除染工事(平成25(2013)年12月
除染工事(平成25(2013)年12月
農地整備工事(平成26(2014)年5月)
農地整備工事
(平成26(2014)年5月)

福島県川俣町(かわまたまち)山木屋(やまきや)地区は、阿武隈山系北部に位置する高原地帯にあり、震災前は水稲のほか、冷涼な気候を利用した花きやミニトマト等の生産に取り組んできた地区です。しかしながら、東電福島第一原発事故により、山木屋地区は避難生活を余儀なくされ、営農も断念せざるを得ない状況となりました。

このような中、平成25(2013)年4月、復興庁が開催した「除染・復興加速のためのタスクフォース」において、取組の一つとして「農地の除染と農業生産性向上の同時達成」が挙げられ、山木屋地区がモデル地区の一つとなり、同年11月より、環境省の実施する除染工事と川俣町及び福島県が実施する暗渠(きょ)排水工や用排水工の農地整備工事が一体的に実施されています(川俣町による施行は平成26(2014)年12月に終了)。

この取組においては、除染工事と農地整備工事の共通する工程である準備工や原形復旧工の重複の排除等によりコストの縮減と工期の短縮を図ること、さらに、避難中の農業者に、除染計画と併せて地域農業の将来像や生産基盤の整備計画を示すことにより、帰還・帰農の促進等の効果が期待されています。また、平成26(2014)年4月に川俣町が策定した山木屋地区の農業復興の構想においても、農地の除染後は当面の間、飼料作物、トルコギキョウやリンドウ等の花きの生産拡大を図ることとしていることから、除染と一体的に水田の汎用化に必要な暗渠(きょ)排水及び用排水路の整備を今後も推進していくこととしています。

 
川俣町山木屋地区における農地の除染と暗渠排水工の一体的実施の流れ
 


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