このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(3)消費者の信頼確保に向けた取組


食品表示情報の充実や適切な表示等を通じた食品に対する消費者の信頼を確保するため、食品のトレーサビリティ(*1)の取組の推進、食品表示の適正化に向けた監視・取締り等の取組を行っています。

また、食品表示については、食品表示法とともに、機能性表示食品制度を含む食品表示のルールを定めた食品表示基準が平成27(2015)年4月に施行されました。


1 [用語の解説]を参照

(食品事業者における信頼確保のための取組)

平成19(2007)年以降、食品の偽装表示等の事件が相次いで発生したことを受け、平成20(2008)年3月、食品事業者のコンプライアンス意識を高めるため、消費者基点の明確化、コンプライアンス意識の確立、適切な衛生管理・品質管理の基本、適切な衛生管理・品質管理のための体制整備、情報の収集・伝達・開示等の「食品事業者の5つの基本原則」を策定し、食品事業者における消費者の信頼を確保・向上させていく取組を進めてきました。

このような中、近年の意図的な毒物混入、異物混入等の事案を踏まえ、食品業界団体、消費者団体、マスコミ、有識者からなる意見交換会を開催し、平成28(2016)年1月、「食品事業者の5つの基本原則」の改訂を行い、製品回収の考え方や適切な初動対応、情報提供等を追記しました。

また、平成20(2008)年6月から、消費者からの「食」に対する信頼性を向上させるため、食品関連事業者等が参加するフードコミュニケーションプロジェクト(FCP)が開始されました。FCPでは、食品安全管理の標準化、情報の共有・交換、人材の育成等について議論し、これらの取組を「見える化」するツールを作成しています。平成28(2016)年3月末現在で1,816の企業・団体がFCPに参加しています。


(食品のトレーサビリティの取組の推進)

食品のトレーサビリティは、食品に関わる事業者が食品の入荷先や出荷先の記録等を残すこと等により、食品の生産から消費までの移動を把握できるようにする仕組みであり、我が国においては、牛、米穀等(米及び米加工品)(*1)のトレーサビリティが義務付けられています(*2)。

農林水産省では、牛、米穀等以外についても食品のトレーサビリティの自主的な取組が着実に促進されるよう、業種別の特徴に応じた取組方法や参考となる事例を紹介するとともに、入出荷の記録等を簡単に作成できる様式やツールを掲載した実践的なマニュアルを作成しており、平成26(2014)年度の「漁業編」、「外食・中食業編」に続き、平成28(2016)年3月、「農業編」及び「畜産業編」を公表しました。また、地域においてセミナー・講習会等の開催、相談窓口の設置、指導員等による普及促進活動等を行う都道府県等の取組を支援しています。


1 米トレーサビリティ法の対象となる米穀等(米及び米加工品)は、米穀、米粉・米粉調製品、米菓生地、もち、だんご、米飯類、米菓、米こうじ、清酒、単式蒸留焼酎、みりん
*2 牛については、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」。米穀等については「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」

(食品表示の適正化に向けた取組)

食品表示は、消費者が食品を摂取する際の安全性の確保及び自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保に資する重要な情報の一つであり、その適正化を図ることは食品に対する消費者の信頼を確保する上で極めて重要です。

食品表示制度の企画・立案は消費者庁で行っていますが、農林水産省においても、原材料や原産地等の品質に関する表示の適正化を図るため、食品表示法に基づき地方農政局等の食品表示監視担当職員による監視・取締りを行っています。

具体的には、食品表示110番(*1)等に寄せられた不適正表示等に関する情報や巡回調査の結果に基づき、DNA分析等の科学的な分析手法も活用しつつ、各流通段階における立入検査等を実施しており、不適正な表示を確認した場合には、改善のための指示・公表を行うなど、食品表示の適正化を推進するため、厳格な対応を行っています。


1 地方農政局や独立行政法人農林水産消費安全技術センター等に設置された国民からの食品表示に関する問合わせや情報提供を受け付けるホットライン

(新たな食品表示に関する制度の始動)

平成27(2015)年4月に施行された食品表示法は、食品衛生法、JAS法(*1)、健康増進法の3法の食品の表示に関する規定を統合し、食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設したものです(*2)。法律の目的が統一されたことにより、整合性の取れたルールの策定が可能となったため、消費者、事業者の双方にとって分かりやすい表示ができるようになりました。

具体的なルールは、食品表示法に基づく食品表示基準に定められています。食品表示基準は、これまで上記3法の下に定められていた58本の表示基準を統合するとともに、必要な見直しを踏まえて措置したものです。主な制度の変更点としては、<1>加工食品の栄養成分表示の義務化、<2>アレルギー表示に係るルールの改善、<3>機能性表示食品制度の創設等があります(図1-4-6)。

アレルギー表示については、食物アレルギー患者の食品選択の幅を広げるため、個別表示を原則とし、一括表示する場合は、食品に含まれる全ての食物アレルギーの原因となる物質(以下「アレルゲン」という。)について、原材料欄等の最後にまとめて表示することとされました。また、これまで、特定原材料等(*3)として定められている卵や小麦等を含むことが予測できると一般的に考えられているため、それらを表記しないことが認められていた特定加工食品及びその拡大表記を廃止し、より広範囲の原材料についてアレルゲンを含む旨の表示が義務付けられました。このため、例えば、卵の特定加工食品とされていた「マヨネーズ」とその拡大表記である「からしマヨネーズ」についても、「卵を含む」旨の表示が必要となりました。

また、これまで任意表示であった加工食品の栄養成分表示については、原則義務化(*4)され、容器包装に入れられた加工食品には、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(「食塩相当量」で表示)の5項目が表示されるようになりました。

なお、インターネット販売等における食品表示、加工食品の原料原産地表示、食品添加物表示、遺伝子組換え表示の在り方等、個別の検討課題については、順次実態を踏まえた検討を行うこととしています。このうち、インターネット販売等における食品表示については、平成27(2015)年11月、消費者庁において、食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会が開催され、検討が開始されました。また、加工食品の原料原産地表示については、平成28(2016)年1月以降、消費者庁及び農林水産省において加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会を開催しており、実行可能性を確保しつつ拡大に向けた検討を進めているところです。


1 正式名称は、「農林物資の規格化等に関する法律」
*2 法施行後、経過措置として、一定期間(加工食品及び添加物:5年、生鮮食品:1年6か月)は旧ルールに基づく表示を行うことも認められる。
*3 食品表示基準では、特定原材料(義務表示)として、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生の7品目、特定原材料に準じるもの(推奨表示)として、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの20品目が定められている。
*4 表示可能面積が小さいもの、酒類、栄養の供給源としての寄与の程度が小さいもの、極めて短期間で原材料が変更されるもの、小規模事業者が販売するもの等は省略が認められる。

図1-4-6 新たな食品表示制度における主な変更点

(農林水産物・食品の機能性に関する表示)

平成27(2015)年4月に施行された食品表示法における食品表示基準の枠組みの中で創設された機能性表示食品制度では、生鮮食品を含め、食品全般について、安全性及び機能性に関する一定の科学的根拠等を消費者庁長官に届け出ることで、食品関連事業者の責任において、「おなかの調子を整えます」、「脂肪の吸収をおだやかにします」といった特定の保健の目的(健康の維持及び増進に役立つ)が期待できる旨の表示をすることが可能となりました。

本制度では、食品関連事業者が、商品の販売日の60日前までに消費者庁長官に届出を行うこととされており、消費者は消費者庁のホームページで公開された商品の安全性、機能性等がどのように確保されているか等の情報について販売前に確認することが可能です。

平成28(2016)年3月31日時点で、サプリメント131件、緑茶、果汁飲料等の一般加工食品139件、三ヶ日みかん、大豆イソフラボン子大豆もやし等の生鮮食品3件の届出が受け付けられ、容器包装には、科学的根拠に基づいた機能性の内容、一日当たりの摂取目安量や摂取の方法、機能性関与成分の含有量等が表示された製品が販売されています。

農林水産省では、機能性表示食品の届出に取り組もうとする生産者を支援するため、農林水産物・食品の機能性に関する科学的根拠を獲得するための研究開発等を推進してきたところであり、さらに、得られた成果を機能性表示食品の届出につなげていくため、機能性を有する成分を含む農林水産物の品質管理技術の確立に向けた実証研究等に取り組んでいます。

これまで、生鮮食品ではうんしゅうみかん(機能性関与成分:β-クリプトキサンチン)、加工食品ではべにふうき緑茶(機能性関与成分:メチル化カテキン)について、安全性や機能性に係る科学的根拠の収集及び評価等に取り組み、結果を公表しました。

また、農林水産物は一般的な加工食品に比べ成分濃度の個体差が大きく、季節や天候の影響を受けやすいといった課題に対応するため、平成27(2015)年8月、機能性関与成分の含有量に関する表示の科学的根拠となるデータ取得に必要となるサンプリングや分析、自主的な規格設定の方法、表示する食品の成分濃度を揃えるための生産技術等を紹介する「農林水産物の機能性表示に向けた技術的対応について -生鮮食品などの取扱い-」を公表しました。

今後も引き続き、農林水産物の機能性表示に向けた取組を推進し、国産農林水産物の高付加価値化につなげていくこととしています。


事例:うんしゅうみかんの機能性表示の取組

浜松市
「機能性表示食品」と表示された包装段ボール
「機能性表示食品」と表示された
包装段ボール
光センサー選果システムでの測定等による選別
光センサー選果システムでの測定
等による選別

静岡県浜松市(はままつし)の三ヶ日町(みっかびちょう)農業協同組合は、平成27(2015)年4月から始まった機能性表示食品制度による、うんしゅうみかんの新たな需要創出に取り組んでいます。

うんしゅうみかんの機能性関与成分「β-クリプトキサンチン」の有効性については、三ヶ日町(みっかびちょう)の住民を対象に疫学的に調査した研究成果等がありましたが、これまで法律上の制約から機能性表示を行うことができませんでした。

このような中、平成26(2014)年7月に「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」が出たことを受け、β-クリプトキサンチン含有量分析等、届出に向けた準備を進め、平成27(2015)年8月に消費者庁に届出を行いました。

その後、平成27(2015)年9月8日に機能性表示食品における生鮮食品第1号として届出が公表された後、生産者や出荷組合、取引市場に対する説明会を開催し、同年11月5日、「三ヶ日みかん」の販売を開始しました。

包装段ボール等には、届出表示「本品には、β-クリプトキサンチンが含まれています。β-クリプトキサンチンは骨代謝のはたらきを助けることにより、骨の健康に役立つことが報告されています。」が表示されています。

また、β-クリプトキサンチンは、糖度と高い相関関係があることから、糖度による選別を行うことにより、含有量を担保しています。

取引市場からは、スーパーマーケット等からの「三ヶ日みかん」の注文が増加したとの声がありました。

今後、三ヶ日町農業協同組合では、全国的にうんしゅうみかんの消費が拡大するよう、β-クリプトキサンチンの機能性の研究が更に進むことを期待するとともに、引き続きおいしいうんしゅうみかんの安定生産、品質向上、機能性表示をいかしたPR活動等を行っていくこととしています。


 


ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526