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農林水産省

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第5節 農業経営の安定化に向けた取組の推進



自然災害や価格低下等の様々なリスクに対応し、農業経営の安定化を図るためには、収入の減少を補償する収入保険や、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正するための対策等の推進が重要となっています。本節では、これらの取組の推進状況について紹介します。

(1)収入保険の普及促進・利用拡大

(収入保険への加入者は対前年で約1.3万経営体増加)

収入保険は、農業者の自由な経営判断に基づき収益性の高い作物の導入や新たな販路の開拓にチャレンジする取組等に対する総合的なセーフティネットとして、平成31(2019)年1月から始まりました。収入保険は、青色申告を行っている農業者を対象として、保険期間の農産物の販売収入が過去5年間の平均収入等を考慮して設定される基準収入の9割の水準を下回った場合に、下回った額の9割を補填する仕組みです。農業者は収入保険に加入することにより、品目の枠にとらわれず、自然災害だけでなく価格低下等の様々なリスクによる収入の減少が補償されることとなっています(図表2-5-1)。

図表2-5-1 収入保険の概要

令和2(2020)年の収入保険の加入実績は、前年に比べ約1.3万経営体増加し、3万6,142経営体となりました。青色申告を行っている農業経営体(35.3万人)の10.2%が加入していることになります(図表2-5-2)。

自然災害による損害を補償する農業共済と合わせた農業保険全体で見た場合、令和元(2019)年産の水稲の作付面積の83%、大豆等の畑作物の作付面積の75%が加入していることになります。

図表2-5-2 収入保険の加入経営体数と加入割合

データ(エクセル:30KB / CSV:1KB

また、収入保険の保険金等の支払は、保険期間の翌年の確定申告後に、加入者から農業収入実績の申告を受けて行われますが、初年である令和元(2019)年の支払実績は、令和3(2021)年1月時点で、6,833件、166億円となりました。

なお、収入保険の保険金等の支払を受けられるようになるまでの間において、保険期間中に大きな損害が発生し、資金が必要な場合は、全国農業共済組合連合会が無利子のつなぎ融資を実施することとしています。令和3(2021)年1月時点で、累計で2,231件、101億円(令和元(2019)年実施分は794件、38億円、令和2(2020)年実施分は1,437件、63億円)の貸付けが行われています。

また、このうち新型コロナウイルス感染症を要因とするつなぎ融資は、累計で、605件、34億円となっています。

(収入保険の普及促進に向けた取組)

収入保険については、掛金の負担感等から様子見の農業者も多く、また、公庫によるアンケート調査(*1)でも収入保険に加入しない理由として「収入保険制度をよく知らない」(26.2%)との意見も見られました。

このため、農林水産省は、農業者の声を踏まえ制度改善できるものを随時実施し、令和2(2020)年1月から、補償の下限を選択することにより、保険料を最大4割安くできるタイプを新たに設けるとともに、令和2(2020)年度から、農業共済組合、農協、集荷業者、農業会議、法人協会等の関係機関から成る推進協議会が取り組む加入促進活動へ支援を行いました。

また、野菜価格安定制度から収入保険へ移行するための手続が煩雑で事務負担が重いといった事情等を考慮し、令和3(2021)年1月から当分の間の特例として、野菜価格安定制度の利用者が初めて収入保険に加入する場合、収入保険と野菜価格安定制度を同時利用(1年間)できるように変更しました。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2(2020)年の収入が減少した場合であっても、翌年の基準収入(過去5年間の平均が基本)に影響しない特例を設け、農業者が安心して収入保険に加入できるようにしました。

今後も農業者の声を聞きながら、制度改善できるものは随時実施し、収入保険の利用拡大を図っていくこととしています。

*1 株式会社日本政策金融公庫「農業景況調査(令和2(2020)年1月調査)」(スーパーL資金又は農業改良資金の融資先1万9,085を対象として実施したアンケート調査(回収率35.0%))

(2)経営所得安定対策の着実な実施

(担い手に対する経営所得安定対策を実施)

経営所得安定対策は、米、麦、大豆等を生産する農業の担い手(認定農業者(*1)、集落営農(*2)、認定新規就農者)に対し、経営の安定に資するよう、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正するための畑作物の直接支払交付金(以下「ゲタ対策」という。)や農業収入の減少が経営に及ぼす影響を緩和するための米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(以下「ナラシ対策」という。)を交付するものです(図表2-5-3)。

令和2(2020)年度の加入申請状況を見ると、ゲタ対策は離農等により加入申請件数が前年度に比べ1千件減少の4万2千件となった一方、ゲタ対策の対象とならない作物からの転換等により、作付計画面積は前年度に比べ6千ha増加の50万haとなりました。また、ナラシ対策は収入保険への移行等により、加入申請件数が前年度に比べ1万件減少の7万8千件、申請面積は前年度に比べ5万4千ha減少の82万8千haとなりました。

図表2-5-3 経営所得安定対策の仕組み

*1、2 用語の解説3(1)を参照

(3)農業金融

(農業向けの新規貸付は着実に伸長)

農業は、天候等により減収や品質低下の影響を受けやすい、収益性が低く投資回収までの期間が長い、融資を受ける際に供する物的担保が農地等の特殊なものにならざるを得ないなど、他産業には見られない特性があります。このため、農業向けの融資においては、農協、信用農業協同組合連合会、農林中央金庫(以下「農協系統金融機関」という。)と地方銀行等の一般金融機関が短期の運転資金や中期の設備資金を中心に、公庫がこれらを補完する形で長期・大型の設備資金を中心に、農業者への資金供給の役割を担っています。

農業向けの新規貸付額の伸びを見ると、一般金融機関は5年間で1.2倍、農協系統金融機関は4年間(*1)で1.5倍、公庫は5年間で1.4倍に増加しています(図表2-5-4)。

また、金融システムの安定に係る国際的な基準に対応するため、令和3(2021)年3月に、「農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案」を国会へ提出しました。

図表2-5-4 農業向けの新規貸付額

データ(エクセル:32KB / CSV:1KB

*1 農協系統金融機関においては、農業向けの新規貸付額を平成27(2015)年度から調査している。



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