第3節 農業現場を支える多様な人材や主体の活躍

地域の農業生産や農地を確保し、持続可能なものとしていくためには、中小・家族経営等多様な人材や主体の活躍を促進することも重要です。本節では、多様な人材や主体の活躍に資する家族経営協定(*1)の状況のほか、農業支援サービス(*2)等の取組状況、外国人材の受入れ等への新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響について紹介します。
*1 用語の解説3(1)を参照
*2 農産物の流通・販売に係るサービス(代理販売や共同出荷等)以外で不特定の農業者等に対して対価を得て提供するサービス(例:ドローン散布等の作業受託やデータ分析、農業機械のシェアリング、農業現場への人材供給等)
(家族経営協定の締結農家数は、令和2(2020)年度末時点で5万9千戸)
中小・家族経営等の世帯員が意欲とやりがいを持って農業経営に参画するとともに、仕事と生活のバランスに配慮した働き方を実現していく環境を整えるため、経営方針や労働時間・休日、役割分担について、家族間の十分な話合いを通じて家族経営協定を締結することを普及・推進しています。協定の中で役割分担や就業条件等を明確にすることにより、仕事と家事・育児を両立しやすくなるほか、それぞれが研修会等に気兼ねなく参加しやすくなるなどの効果があります。
家族経営協定の締結農家数は増加しており、令和2(2020)年度末時点では前年度に比べて363経営体増加し、5万9千経営体になりました。これは、令和3(2021)年の主業経営体(*1)数(22万2千経営体)の約3割に相当します。令和2(2020)年度に締結した協定において取り決められた内容を見ると、農業経営の方針決定(96.1%)、労働時間・休日(94.3%)、農業面の役割分担(80.5%)、労働報酬(72.5%)が多くなっています。また、締結した主な理由は、親世代からの経営継承(22.4%)、新規就農(21.0%)、定期的な見直し(13.3%)となっています。

家族経営協定について(家族経営協定に関する実態調査 令和3年調査結果)
URL:https://www.maff.go.jp/j/keiei/jyosei/kyoutei.html
*1 用語の解説1、2(1)を参照
(農業の働き方改革に向けた取組が進展)
地域農業の維持に向けて、生産現場に必要な若年層等の人材の確保・定着を図るためには、農業経営に若年層等のニーズに合わせた働き方を導入することが重要です。このため、農林水産省では多様な人材が活躍できる農業の「働き方改革」を推進し、家族経営協定の締結等、農業現場における働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
令和3(2021)年度は、農業経営者が就農希望者等と一緒に働くための環境づくりについて、特に女性に着目して取りまとめた「これからの農業経営のためのハンドブック-女性とはたらく-」を作成し、全国の各地方公共団体窓口に配布しました。ハンドブックには、農業経営者が女性と働いていく際に知っておきたい三つの切り口(「マッチング」、「日々の業務」、「知識の点検」)や、女性活躍の事例、キャリア形成に関する情報を掲載しています。

これからの農業経営のためのハンドブック -女性とはたらく-
URL:https://myfarm.co.jp/women/pickup/detail/?p=2249(外部リンク)
(水稲作の全作業を受託する経営体数・受託面積が増加)
農作業の一部又は全部を受託して作業を行った農業経営体(*1)の数は、令和2(2020)年に9万1千経営体で、その大部分が水稲作部門の育苗、田植、稲刈り等の農作業を受託した8万1千経営体となっています。
水稲作部門を受託した経営体の数は平成27(2015)年と比べて18%減少していますが、このうち全作業を受託した経営体数は、受託面積と共に増加しています(図表2-3-1)。これは、人手不足により農作業への従事を縮小した経営体数・面積が増加したためと考えられます。
また、令和2(2020)年に畜産部門を受託した経営体の数も、平成27(2015)年と比べて14%減少し、1,574経営体(耕種部門と重複して受託する経営体を含む。)となりました。
*1 用語の解説1、2(1)を参照
(農業支援サービスの定着を促進)
令和3(2021)年度に実施した農業支援サービスに関する意識・意向調査によると、農業支援サービスを利用している農業者の割合は53%で、今後利用する意向がある農業者の13%と合わせて66%となっており、農業支援サービス事業を展開する事業者の更なる育成が必要となっています。営農類型別では、酪農や肉用牛といった畜産部門の利用割合が高くなっています(図表2-3-2)。
また、近年は、ドローンや収穫ロボット等のスマート農業技術を活用した次世代型の農業支援サービスを展開する事業体も見られます。
生産現場における人手不足を解決するため、農林水産省は、農作業の委託や、機械・機具のリース、人材派遣等、農業者が様々なサービスを活用できる環境の整備に向け、事業立上げ当初のニーズの把握や人材育成の取組等を支援しています。
(農業分野での外国人材の受入れは前年からほぼ横ばい)
外国人技能実習制度は、外国人技能実習生への技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的とした制度であり、我が国の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担っています。農業分野においても全国の農業生産現場で多くの外国人技能実習生が受け入れられています。
農業分野における外国人材の受入れは増加傾向で推移していましたが、令和3(2021)年10月末時点の同分野の外国人材の総数は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による水際措置の影響を受けて、前年同月末時点とほぼ同じ、3万8,532人となっています。このうち、外国人技能実習生は3万30人で、入国者数が大幅に減少する中、国内の技能実習生の在留延長等により前年同月末に比べ2,974人(9.0%)の減少にとどまりました(図表2-3-3)。
(特定技能制度による外国人材の受入れは前年に比べて増加)
特定技能制度は、人手不足が続いている中で、外国人材の受入れのために創設された新たな在留資格であり、農業を含む14の特定産業分野が受入対象となり、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れています。令和3(2021)年12月末時点で、農業分野では6,232人の外国人材がこの制度により働いており、前年同月末に比べて3,845人増加しました。
農林水産省では制度の適切な運営を図るため、受入機関、業界団体、関係省庁で構成する農業特定技能協議会及び運営委員会を設置し、本制度の状況や課題の共有、その解決に向けた意見交換等を行っています。
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