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農林水産省

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第2節 地域の特性を活かした複合経営等の多様な農業経営等の推進


農村、特に中山間地域(*1)では、米、野菜、果樹作等のほか、畜産、林業にも取り組む複合経営を進め、所得と雇用機会を確保する必要があります。一方で、都市農業は、農業体験等において重要な役割を担っています。本節では、中山間地域の農業や都市農業の特性とそれらを活かした多様な農業経営等の取組について紹介します。

*1 用語の解説2(7)を参照

(1)中山間地域の農業の振興

(中山間地域の農業経営体数、農地面積、農業産出額は全国の約4割)

図表3-2-1 中山間地域の主要指標

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中山間地域は、人口では全国の約1割ですが、農業経営体(*1)数、農地面積、農業産出額では約4割、国土面積でも6割以上を占めるなど、食料生産を担うとともに、豊かな自然や景観の形成・保全といった多面的機能(*2)の発揮の面で重要な役割を担っています(図表3-2-1)。

*1 用語の解説1、2(1)を参照

*2 用語の解説4を参照

(中山間地域は果実・畜産等の多様な生産において重要な役割)

図表3-2-2 農業産出額に占める中山間地域の割合

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農業産出額に占める中山間地域の割合を品目別に見ると、令和2(2020)年は米や穀物・麦類の割合が3割程度の一方、果実では4割以上、畜産では5割以上を占め全品目の平均値である約4割より高くなっています(図表3-2-2)。これは、果樹や畜産は地形上の制約が比較的小さいためと考えられます。

(中間農業地域、山間農業地域の農業所得はそれぞれ平地農業地域の約7割、約4割程度)

農業経営体の農業所得(*1)、農業生産関連事業所得(*2)、農外事業所得(*3)の合計のうち、農業所得の占める割合(農業依存度)を農業地域類型別に見ると、都市的地域(*4)の農業依存度は45%と低い一方で、平地農業地域(*5)と中山間地域の依存度は88~96%と高くなっています(図表3-2-3)。

図表3-2-3 農業地域類型別の農業所得等

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また、中間農業地域(*6)、山間農業地域(*7)の1農業経営体当たりの農業所得は令和2(2020)年で106万円、61万円であり、それぞれ平地農業地域の約7割、約4割となっています。中山間地域では、傾斜度の大きい農地が多いといった地形条件等から、土地生産性や労働生産性が平地農業地域と比べ低くなっており、農業粗収益が低く、農業経営費の占める割合がやや高いためと考えられます(図表3-2-4、図表3-2-5)。

図表3-2-4 農業地域類型別の1農業経営体当たりの農業経営収支

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図表3-2-5 農業地域類型別の土地生産性・労働生産性

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*1~3 用語の解説2(4)を参照

*4~7 用語の解説2(7)を参照

(中山間地域の特性を活かした複合経営の実践に向けた取組を支援)

図表3-2-6 農業生産関連事業実施経営体数と農業経営体に占める割合

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加工・販売や農家民宿等の農業生産関連事業の実施状況を農業地域類型別に見ると、農業経営体数では中間農業地域が最も多く、実施割合では他地域と同様に、中間農業地域、山間農業地域とも10%程度となっています(図表3-2-6)。

農林水産省は、小規模農家を始めとした多様な経営体がそれぞれにふさわしい農業経営を実現するため、令和3(2021)年6月に公表した「新しい農村政策の在り方に関する検討会(*1)」の中間取りまとめを踏まえ、農業、畜産、林業も含めた多様な経営の組合せにより地域特性に応じた複合経営実践の取組を支援していくこととしています。

また、山村の有する多面的機能の維持・発揮に向け、山村への移住・定住を進め、自立的発展を促すため、農林水産省は平成27(2015)年度から振興山村(*2)の地域資源を活用した商品開発等に取り組む地区(令和3(2021)年度は70地区)を支援しています。

中山間地域における「地域特性を活かした多様な複合経営モデル」

中山間地域における
「地域特性を活かした多様な複合経営モデル」
URL:https://www.maff.go.jp/j/nousin/tiiki/sesaku/hukugou.html

地域の栗を活用して商品開発した「宇目和栗(うめわぐり)ジャム」と地元の駅での販売風景

地域の栗を活用して商品開発した
「宇目和栗(うめわぐり)ジャム」と地元の駅での販売風景

資料:宇目地域活性化協議会
 注:大分県佐伯市の事例

*1 第3章第3節を参照

*2 「山村振興法」に基づき指定された区域。令和3(2021)年4月時点で、全市町村数の約4割に当たる734市町村において指定

(コラム)中山間地域における稲作部門での複合経営と販売金額の関係

複合経営等の販売金額別農業経営体数の割合(中山間地域、稲作部門販売金額第1位の経営体)

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中山間地域における稲作部門販売金額第1位の農業経営体数の販売金額別の割合を見ると、1,000万円以上の経営体の割合は、稲作単一経営で2.3%に対して、準単一複合経営(稲作主位部門)、複合経営(稲作主位部門)がそれぞれ10.1%、9.6%となっています。

中山間地域においては、農地の集積・集約化(*)や農業生産基盤整備等による生産性の向上の取組と併せて、稲作部門においては、地域の特性を活かした多様な農業生産や農業生産関連事業等を組み合わせた複合経営の取組が販売金額の向上につながっていることがうかがえます。

* 用語の解説3(1)を参照

(2)多様な機能を有する都市農業の推進

(都市農業・都市農地を残していくべきとの回答が7割)

図表3-2-7 都市農業の主要指標

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都市農業は、都市という消費地に近接する特徴から、新鮮な農産物の供給に加えて、農業体験・学習の場や災害時の避難場所の提供、住民生活への安らぎの提供等の多様な機能を有しています。

都市農業が主に行われている市街化区域内の農地が我が国の農地全体に占める割合は1%と低いものの、農業経営体数と農業産出額ではそれぞれ全体の13%と7%を占めており、野菜を中心とした消費地の中での生産という条件を活かした農業が展開されています(図表3-2-7)。

また、農林水産省が令和3(2021)年7月に実施した都市住民を対象とした調査では、都市農業の多様な役割が評価され、都市農業・都市農地を残していくべきとの回答が70.5%となりました。

(都市農地の貸借が進展)

生産緑地制度は、良好な都市環境の形成を図るため、市街化区域内の農地の計画的な保全を図るものです。

市街化区域内の農地面積が一貫して減少する中、生産緑地地区の農地面積は令和2(2020)年で1.2万haとほぼ横ばいで推移しています(図表3-2-8)。

令和4(2022)年には生産緑地地区の農地面積の約8割が生産緑地の指定から30年経過することとなりますが、その期限を10年延長する特定生産緑地制度により農地保全を継続できることとなっています。令和3(2021)年12月末時点で、令和4(2022)年に指定から30年経過する生産緑地のうち、約86%が特定生産緑地に指定済み又は指定見込みとなっています。

また、農業者の減少・高齢化が進む中、平成30(2018)年9月に都市農地貸借法(*1)が施行されたことにより、生産緑地地区内の農地の貸付けが安心して行えるようになりました。同法に基づき貸借が認定・承認された農地面積については、令和2(2020)年度末時点で目標75万m2に対して、前年度末から20万9千m2増加し、51万5千m2となりました(図表3-2-9)。内訳は、耕作の事業に関する計画の認定が221件、40万5千m2、市民農園の開設の承認が71件、11万m2となっています。

同法に基づき貸借される農地面積については令和6(2024)年度末に255万m2とする目標を設定しており、引き続き、同法の仕組みの現場での円滑かつ適切な活用を通じ、貸借による都市農地の有効活用を図ることとしています。

図表3-2-8 市街化区域内農地面積

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図表3-2-9 都市農地貸借法により貸借が認定・承認された農地面積(累計)

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*1 正式名称は「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」(平成30年法律第68号)



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