第12節 農業を支える農業関連団体

各種農業関連団体については、農業者等の経営発展や地域農業・農村の維持・発展等を図る取組を後押しするなどの役割を果たしていくことが期待されています。また、その役割の発揮のため、地域の実情に応じて、団体間や地方公共団体との連携の強化等を図ることが重要となっています。
本節では、我が国の農業を支える各種農業関連団体の取組について紹介します。
(農業者の所得向上等に向けた取組を継続・強化)
農協は協同組合の一つで、農業協同組合法に基づいて設立されています。農業者等の組合員により自主的に設立される相互扶助組織であり、農産物の販売や生産資材の供給、資金の貸付けや貯金の受入れ、共済、医療等の事業を行っています。
農協系統組織においては、農業者の所得向上等に向け、農産物の有利販売や農業生産資材の価格引下げ等に主体的に取り組む自己改革に取り組んでいます。各農協では、組合員との対話を通じて農業者の所得向上に向けた自己改革を実践していくため、「自己改革実践サイクル」を構築し、これを前提として、農林水産省・都道府県が農協の自己改革の取組やJA全農等による支援がなされるよう助言・指導等を行っています。
また、JA全農では、食農バリューチェーンの構築に向け、他業種企業との業務提携等により、物流の合理化、国産農畜産物の高付加価値化、多様な販売チャネルによる消費拡大等に取り組んでいます。
このほか、不必要な共済契約に対する監督上の対応を図るため、令和5(2023)年1月に「共済事業向けの総合的な監督指針」を改正しました。
総合農協の組合数、組合員数については減少傾向で推移しており、令和4(2022)年度はそれぞれ553組合、1,027万人となっています(図表3-12-1)。
(事例)うめ加工品等の販売強化や青果等の輸出拡大により所得を増大(和歌山県)


JAを介して貸借されたうめ園地
資料:紀南農業協同組合

マレーシアでの
青うめの輸出販売促進活動
資料:紀南農業協同組合
和歌山県田辺市(たなべし)に本所を置く紀南(きなん)農業協同組合(以下「JA紀南」という。)では、梅干し・うめ加工品の販売強化や青果・加工品の輸出拡大により組合員の農業所得の増大を実現しています。
JA紀南では、うめ・かんきつ等の生産拡大に向け、優良農地を維持・活用するため、担い手や新規就農者への農地の利用集積を促進しています。また、コスト低減に向け、化学肥料に国内資源である鶏ふん堆肥を混合して原料価格を抑制する取組を推進するとともに、組合員が指定した日に大型トラックから直接引き取る予約受付注文を行っており、流通コストの縮減により肥料価格を抑制しています。
さらに、青うめ・うめ加工品やかんきつ類(うんしゅうみかん・晩柑(ばんかん))・かんきつ加工品の販売拡大に向け、組合員と一体となってプロモーション活動を実施し、香港や台湾等への輸出を強化しています。
このほか、平成29(2017)年度には加工製造施設であるフルーツファクトリーを整備し、出荷時に上位等級にならず高値で売れない果実をドライフルーツに加工することで高付加価値化するなど、組合員の新たな所得確保にも取り組んでいます。
これらの取組により、例えばうめの部会員1人当たり販売品取扱高については、令和4(2022)年度は210万円となっており、平成30(2018)年度と比べ3.8%増加しています。JA紀南では、今後とも農業所得の向上を図るため、「果樹を基幹とした日本一魅力的な総合園芸産地づくり」に取り組んでいくこととしています。
(農地利用の最適化に向けた活動を推進)
農業委員会は、農地法等の法令業務や農地利用の最適化業務を行う行政委員会で、全国の市町村に設置されています。農業委員は農地の権利移動の許可等を審議し、農地利用最適化推進委員(以下「推進委員」という。)は現場で農地の利用集積や遊休農地の解消、新規参入の促進等の農地利用の最適化活動を担っています。
農業委員会系統組織では、地域計画の策定に向け、地域内の農地の出し手・受け手の情報を収集し、目標地図の素案を作成するとともに、農地中間管理機構への貸付け等を積極的に促進することとしています。また、農業委員の任命には、年齢、性別等に著しい偏りが生じないように配慮し、青年・女性の積極的な登用に努めることとしています。
令和5(2023)年の農業委員会数は、1,696委員会となっています(図表3-12-2)。また、農業委員数は23,029人、推進委員数は17,595人で、合わせて40,624人となっています。
(農業保険の普及・利用拡大を推進)
農業共済団体は、農業保険制度の実施主体として農業保険法に基づき設立されており、農業共済組合及び農業共済事業を実施する市町村(以下「農業共済組合等」という。)、都道府県単位の農業共済組合連合会、国の3段階で運営されてきました。
近年、農業共済団体においては、業務効率化のため、農業共済組合等の合併により都道府県単位の農業共済組合を設立するとともに、農業共済組合連合会の機能を都道府県単位の農業共済組合が担うことにより、農業共済組合と国との2段階で運営できるよう、1県1組合化を推進しています。
農業経営のセーフティネットへの関心が高まる中、農業共済団体では、農業の生産現場での農業保険の普及・利用拡大に向けた取組を推進しています。
令和4(2022)年度における農業共済組合数は49組織、農業共済組合員数は206万人となっています(図表3-12-3)。
(農業水利施設等の安定的な維持管理を推進)
土地改良区は、圃場(ほじょう)整備等の土地改良事業を実施するとともに、農業水利施設等の土地改良施設の維持管理等の業務を行っています。人口減少・高齢化が進む中、農業水利施設等に求められる機能を発揮していくため、農業水利施設等の安定的な維持管理を推進するとともに、引き続き土地改良区の再編整備等の促進を通じて運営体制の強化を図ることとしています。
令和4(2022)年度における土地改良区数は4,126地区、組合員数は340万人となっています(図表3-12-4)。
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