第4節 生産性向上に向けた取組
農業者の減少・高齢化が著しく進行している中、農業生産水準を維持するためには、農地の大区画化やスマート農業技術の導入等による生産性の向上が重要です。
本節では、生産性向上に対応した基盤整備やスマート農業技術等の開発・普及促進、農林水産・食品分野のスタートアップによる技術開発・社会実装等に関する取組について紹介します。
(1)生産性向上に対応した基盤整備
(スマート農業技術に適した農業生産基盤整備の取組が進展)
農業分野においては、担い手不足や高齢化が問題になる一方、農業者の経営規模拡大も進んでいる中で、自動走行農機、ICT水管理等のスマート農業技術の活用が、農作業の効率化・省力化を通じた生産性向上に有用です。このため、農林水産省では、農地の大区画化や情報通信環境の整備を始めとしたスマート農業技術の実装を促進するための農業生産基盤整備を推進しています。具体的には、自動走行農機等による効率的な作業に適した農地整備、ICT水管理施設の整備、パイプライン化等に取り組んでいます。
スマート農業技術に対応した
ターン農道の整備
資料:北海道開発局
自動給水栓
資料:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(2)スマート農業技術等の開発・普及促進
(スマート農業技術の導入と併せた生産方式の転換を推進)
近年、ロボット・AI・IoT等の情報通信技術を活用したスマート農業技術により、農業の生産性向上等を図る取組が現場で広がりを見せています。例えば農業用ドローンによる農薬等の散布面積は近年急速に拡大傾向で推移しており、令和6(2024)年度には119.6万haとなっています。
スマート農業技術の導入効果を最大限発揮するためには、スマート農業技術の導入と併せて、機械が走行できる畝間(うねま)に変更する、機械が効率的に稼働できる樹形等に変更するなど新たな生産方式に転換することが重要です。このため、農林水産省では、令和6(2024)年10月に施行された「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」(以下「スマート農業技術活用促進法」という。)に基づき、スマート農業技術の活用と農産物の新たな生産方式の導入を一体的かつ相当規模で行い、農業の生産性を相当程度向上させる農業者等の事業活動を生産方式革新実施計画として認定することとしており、認定を受けた事業者は税制特例措置や金融等の支援措置を受けることができます。令和8(2026)年3月末時点で生産方式革新実施計画は120件認定されています。
また、生産方式革新実施計画では、新たな流通・販売等の方式を導入する食品等事業者の取組についても計画認定とそれに伴う支援措置の対象とすることで、食品等事業者との連携を通じた生産性の向上を推進しています。
(事例)分析データを基に各ほ場の適正施肥により収益性を向上(山形県)

ほ場管理画面(栽培管理システム)
資料:株式会社おしの農場
山形県天童市(てんどうし)の株式会社おしの農場(のうじょう)は、「あなたの田んぼ、守ります」を経営理念とし、地域農業の持続と発展を支える存在として、高齢化や後継者不足に悩む農家のために水田の管理や農作業代行サービスの提供を行っています。令和8(2026)年3月末時点で約135haの水田を管理しています。
同社は、農業用ドローンや自動操舵(そうだ)トラクタ等のスマート農業技術を積極的に導入し、省力化と効率化を図っています。これにより作業負担の軽減が実現され、また、社員の増加に合わせて休憩室や、更衣室を整備するなど、年齢や性別を問わず働きやすい環境づくりに貢献しています。
また、令和7(2025)年1月にはスマート農業技術活用促進法に基づく生産方式革新実施計画の認定を受けました。同計画では、栽培管理システムで記録したデータを他の農業者と共有し、施肥データや労働時間データを基に各ほ場の適正施肥等の肥培管理の実施や労働時間の平準化を行うことで、収益性の向上を目指しています。
(事例)データに基づく適正な肥培管理等により高温障害等のリスクを低減(熊本県)

有機栽培ベビーリーフ
資料:株式会社果実堂
熊本県益城町(ましきまち)の株式会社果実堂(かじつどう)は、有機栽培ベビーリーフの生産・販売を行っています。約70haの広大な栽培面積を有し、そのうち9割が直営農場で、年間生産量は約900tとなっています。
同社は、スマート農業技術の開発・実践に積極的に取り組んでおり、令和7(2025)年4月には、スマート農業技術活用促進法に基づく生産方式革新実施計画の認定を受けました。同計画では、過去の栽培データを基に適正な肥培管理を行う複合環境制御装置を活用し、その効果を高める換気窓部分が大きい自動開閉式ハウスを整備することで、高温障害等のリスクを低減し、品質・収量向上効果の増大を目指しています。
これらの技術の導入や農作業のマニュアル化といったオペレーションの標準化により、若者にも働きやすい環境となっています。同社は、地域の雇用創出による持続的な農村づくりにも寄与しており、地域農業の活性化に貢献する先進的な企業としても注目されています。
また、収穫後の鮮度保持や流通管理にも注力しており、高品質なベビーリーフを産地直送で消費者に届ける体制を整備しています。この一連の取組は、今後の国内有機農業の持続可能な発展に重要な役割を果たすことが期待されています。
(研究開発を推進)
スマート農業技術については、研究開発が進んでいる分野がある一方で、果樹や野菜の収穫作業等の開発難易度が高い分野も多くあります。農林水産省では、スマート農業技術活用促進法に基づき、「生産方式革新事業活動及び開発供給事業の促進に関する基本的な方針」を定め、農業において特に必要性が高いと認められるスマート農業技術等について「開発供給事業の促進の目標(重点開発目標)」として明示しています。この重点開発目標に基づくスマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する取組を開発供給実施計画として認定し、令和12(2030)年度までに実用化することを目指しており、認定を受けた事業者は税制特例措置や金融等の支援措置を受けることができます。令和8(2026)年3月末時点で開発供給実施計画は50件認定されています。
また、特に重要かつ高度な研究開発については、国立研究開発法人農業(のうぎょう)・食品産業技術総合研究機構(しょくひんさんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうきこう)(以下「農研機構」という。)と民間事業者の役割分担の下、開発及び供給の期間短縮とともにユーザー目線での技術改良を促進することとしています。さらに、中山間地域でも導入可能なスマート農業技術の更なる開発を後押しするため、中山間地域等の多様な現場ニーズに対応した技術開発の取組を支援しています。
(農業支援サービス事業者の育成を推進)
データ(エクセル:30KB)
スマート農業技術を活用する際には、スマート農業機械の導入コストの高さや、それらを扱える人材の不足といった課題があります。このような課題に対しては、農作業の受託等を行う農業支援サービスの活用を通じてスマート農業機械等の「所有」から「利用」への転換を進めることで、コスト低減を図りつつ、速やかに高度な技術を導入することが可能となります。近年、農業用ドローンやIoT等の最新技術を活用して農薬散布作業を代行するサービス等が生産現場で広がっています。令和7(2025)年のサービス事業者の経営体数は6,316経営体となっており、令和2(2020)年から615経営体増加しています(図表2-4-1)。
農林水産省では、より多くの農業者が農業支援サービスを利用できる環境を作るため、農業支援サービス事業者が作業受託する際に必要な機械導入や機械の操作技術の習得といった人材育成等への支援に加え、サービスの標準的な作業工程や作業精度等を定めた「標準ガイドライン」の策定や事業を開始する際の留意事項等を整理した「スタートアップ・事業立上げガイド」の策定等を行っています。
(農業者のデータ活用を推進)
農業現場における生産性向上には、人工衛星や各種センサ等で得られるデータを十分に活用できる環境の整備が不可欠です。
農業者によるこのようなデータ活用の促進のため、農研機構では、データ連携・共有・提供機能を有する農業データ連携基盤「WAGRI(ワグリ)(*1)」を運営し、気象情報や市況情報等の基礎データに加え、生育予測や病害虫診断等のプログラムをAPI(*2)として提供しています。
さらに、技術的発展の著しいAIの農業分野での活用を促進するため、農研機構では、AIによる施設栽培の環境制御や、普及指導員の指導業務等を支援する対話型の生成AIといった農業特化型の基本AIモデルの開発・実証に取り組んでいます。
また、衛星データの活用では、衛星測位による農業機械の自動走行のほか、衛星リモートセンシングで作物の生育状況等を広範囲かつ効率的に把握し、施肥や収穫等の作業の適正化・省力化に資する技術の開発が進められています。
農業特化型生成AIとの対話例
資料:農研機構
*1 農業データプラットフォームが、様々なデータやサービスを連環させる「輪」となり、様々なコミュニティの更なる調和を促す「和」となることで、農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた言葉(WA+AGRI)
*2 Application Programming Interfaceの略。複数のアプリ等を接続(連携)するために必要な仕組みのこと
(スマート農業技術の活用の促進に向けた関係者との連携を強化)
スマート農業技術の開発及び普及の好循環の形成を推進していくため、農業者を中心に、民間事業者、地方公共団体、大学等の多様なプレイヤーが参画する、「スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA(イプサ)(*1))」が令和7(2025)年度から本格的に活動を開始しました。IPCSAでは、スマート農業に関する最新の情報を収集・共有・発信するとともに、関係者間のマッチング、人材育成等を通じ、コミュニティの形成を促進することとしています。
*1 Innovation Promotion Conference for Smart Agricultureの略
(海外におけるスマート農業の動向)
海外においても、労働力不足や生産性向上等の共通課題に対応するため、自国の農業構造や気候条件に即して重点分野を選択し、スマート農業技術の開発と現場普及を推進しています。
(コラム)海外のスマート農業技術の開発・普及の動向
世界のスマート農業は、AIやIoT等を活用し、農作業の自動化・省力化や生育環境の精密管理を実現する技術を中心に進展しています。
国別に見ると、米国では民間企業が中心となり、大規模ほ場に適した省力化や施肥量のコントロール等の精密農業技術の開発が進展しています。中国では政府が国家戦略の下で、データ基盤整備とともに幅広い分野で自動化・デジタル化を推進しています。韓国でも政府が中心となり、施設園芸を中心に人材育成と組み合わせて環境制御技術等の導入を後押ししています。イスラエルでは民間企業が中心となり、乾燥地に適した節水型のスマートかんがい等の技術開発・普及が進んでいます。
(3)農林水産・食品分野のスタートアップによる技術開発・社会実装
(スタートアップの取組を支援)
我が国における経済成長を実現するため、牽引(けんいん)役として新しい技術やアイデアを有するスタートアップに大きな期待が寄せられています。農林水産業・食品産業の現場は、担い手不足の解消や環境と調和した食料生産への転換等の様々な課題を抱えており、これらの課題を乗り越えるためには、スマート農業技術や、廃棄物から資源を生み出すアップサイクル技術等の先端技術を速やかに社会実装させる必要があります。
スタートアップは、このような先端技術を有し、それを起点に新たなビジネスにつなげる潜在力を持っていますが、スタートアップの成長過程には、いわゆる「死の谷(*1)」等の幾つもの壁があり、特に農林水産・食品分野では、IT分野等に比べて利益を回収するまでに相対的に長い期間を要するケースが多いため、成長資金の流入が少ない状況にあります。
このため、SBIR(*2)制度に基づき、「スタートアップへの総合的支援」により、農林水産・食品分野において新たな技術・サービスの事業化を目指すスタートアップや中小企業等が行う研究開発等を発想段階から事業化準備段階まで切れ目なく支援しています。令和7(2025)年度は新規課題を17件採択し、継続課題も含め計46件を支援しました。
また、スタートアップによる先端技術の社会実装を促進するため、事業化に向けて実際の使用環境下で大規模な実証を行う取組に対する支援を行っています。
このほか、投資円滑化法(*3)に基づき、スマート農業技術やフードテックのスタートアップ等に投資する民間の投資主体への資金供給を促進することとしています。
*1 製品開発~事業化における難所。製品開発から事業として収益を得るまでに要する時間が長く、事業化体制構築には相当な資金調達が必要となるため、経営判断の難しさ等から失敗するケースも多い。
*2 Small/Startup Business Innovation Researchの略で、中小企業による研究技術開発と、その成果の事業化を一貫して支援する制度のこと
*3 正式名称は「農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法」
(事例)大規模有機スマート農場の開発(愛知県)
愛知県名古屋市(なごやし)の株式会社トクイテンは、「持続可能な農業へのシフトを加速する」をミッションに掲げ、AIとロボット技術を活用して有機農業の自動化を推進するスタートアップ企業です。
有機農業は、労働力不足や栽培の難しさが普及の障壁となっており、同社はこれらの課題に対処するため、令和4(2022)年から吸引型自動収穫ロボットや自律走行型ロボット等のプロトタイプを自社開発し、同県知多市(ちたし)にある20aの自社栽培施設にてミニトマトの有機栽培の実践を進めてきました。
令和6(2024)年度からは、ロボットによる省力化技術、センサー類を用いた自動環境制御技術、太陽熱等を活用したハウス内加温技術の開発・実証を通じて、1ha以上の大規模農場への適用を目指しています。くわえて、同社では、土壌分析に基づいた施肥設計、有用微生物の活性化等を通じて、病害虫の抑制と作物の健全な生育環境の確保を図っています。
同社は、これらの技術による省力化、有機栽培手法の確立、農場の拡大を通じて、2050年ネット・ゼロ(*)を実現する大規模有機スマート農場のモデルの確立を目指しています。
* カーボンニュートラルや脱炭素と同義

実証ほ場
資料:株式会社トクイテン
ミニトマトの吸引型自動収穫ロボット
資料:株式会社トクイテン
(『「知」の集積と活用の場』によるイノベーションを創出)
我が国における農林水産・食品分野の研究開発力を強化するためには、産学官による多様な分野の連携を推進していく必要があります。
このため、農林水産省では、農林水産・食品分野におけるオープンイノベーション創出の仕組みとして、『「知」の集積と活用の場』を設置し、基礎から実用化段階までの研究開発や、その成果の事業化を推進しています。『「知」の集積と活用の場』には、農林水産分野にとどまらず、化学、機械工学、情報工学等の多様な分野の法人・個人が参画し、様々なアイデアを組み合わせた技術シーズの創出に取り組んでいます。令和7(2025)年度では、会員が5千を超え、先進的なスマート農林水産技術や新規農業生産資材、新規食品が開発され、事業化されています。
その他、優れた研究成果の速やかな社会実装を推進するため、アグリビジネス創出フェア等を通じて幅広く情報発信を行っています。
(4)現場の課題に対応した研究開発
(現場の課題解決に資する研究開発を推進)
農林水産省では、食料安全保障の強化やみどりの食料システム戦略(*1)の実現に向け、気候変動に対応した品種開発の加速化や、現場では解決が困難な技術的問題に対して、農林漁業者のニーズを踏まえた研究開発を推進しています。
農業情報システムによる
病害虫発生リスクの色分表示
資料:株式会社ビジョンテック
例えば水稲病害虫防除の省力化に向け、病害虫の発生予測モデルを基盤とした薬剤適期散布システムを開発しています。このシステムは、気象データや作付情報を基に、イネいもち病や斑点米(はんてんまい)カメムシ等の発生時期・防除適期をほ場単位で精密に予測し、予測結果を電子メールで通知する機能を備えています。令和6(2024)年度から民間の栽培管理支援システムへの実装を開始し、現場での利用が始まりました。これにより、薬剤散布の適期判断が容易になり、省力的な総合防除(IPM(*2))の実現に寄与することが期待されています。
また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI(システィ)(*3))の下、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP(*4))や、研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE(*5))の研究プロジェクトを通じて、府省連携による研究開発を推進しています。
農業分野における研究例では、高温多湿なASEAN地域での施設園芸における最適な栽培管理手法の開発に取り組んでいます。本成果により、日本型施設園芸のASEAN地域への展開や、我が国における夏場の異常高温への適応技術への応用が期待されます。また、家畜感染症対策として重要な動物用ワクチンについて、カイコのシルクを用いて、手間とコストのかかる注射によらず、経口で投与できるワクチンを開発し、実用化に向けた取組を進めています(図表2-4-2)。
*1 第5章第1節を参照
*2 Integrated Pest Managementの略
*3 Council for Science, Technology and Innovationの略
*4 Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Programの略
*5 programs for Bridging the gap between R&d and the IDeal society (society 5.0) and Generating Economic and social valueの略
(ムーンショット型研究開発を推進)
青色レーザー光で
狙撃するイメージ
資料:農研機構
CSTIでは、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象とした目標を設定し、関係府省はこの目標を実現するため、挑戦的な研究開発(ムーンショット型研究開発)を推進しています。農林水産・食品分野においては、「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」することを目標として掲げ、食料の生産と消費の両面から八つの研究開発プロジェクトに取り組んでいます。これまでに、不規則に飛翔する害虫の位置をAIが推測し、青色レーザー光で狙撃する一連の自動狙撃技術・装置の開発や、牛のげっぷに含まれるメタンを抑制するため、ルーメン内で生成されるメタンをプロピオン酸へと変換する細菌(プロピオン酸増強菌)を、世界で初めて分離培養することに成功しました。令和8(2026)年3月末時点で、50件に上る国内外の特許出願等の成果があり、得られた研究成果を社会に還元することによって、本目標が掲げる持続可能な食料システムの構築の実現を目指します。
(5)農林水産分野の国際研究の推進
(農林水産技術の国際研究及び技術普及の推進)
我が国で得られた新技術等を活かし、二国間クレジット制度(JCM)の活用を含む農業分野での気候変動の緩和促進等の協力プロジェクトをASEAN各国との間で実施しています。また、アジア各国の脱炭素化を進めるための協力枠組みであるアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC(*1))においても、農林水産分野の取組を発信しており、これらの協力プロジェクトは「日ASEANみどり協力プラン」におけるプロジェクトとしても位置付けられています。
気候変動の緩和や持続的農業の実現に資する技術のアジアモンスーン地域での実装を促進するため、国立研究開発法人国際農林水産業研究(こくさいのうりんすいさんぎょうけんきゅう)センター(以下「国際農研」という。)において、みどりの食料システム国際情報(しょくりょうこくさいじょうほう)センターを設置し、技術情報の収集・分析・発信に加え、アジアモンスーン地域での生物的硝化(*2)抑制(BNI(*3))、間断かんがい(AWD(*4))、イネいもち病対策等の優れた農業技術の応用に向けた共同研究等を実施しています。また、アジアモンスーン地域における持続可能な食料システムの構築に貢献し得る技術を令和4(2022)年度から技術カタログ(*5)として取りまとめており、令和7(2025)年度においては、第14回G20首席農業研究者会議、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP(*6)30)等において、我が国の農業技術や共同研究の状況として情報発信しました。
このような取組や成果に対し、国連食料システム調整ハブ(*7)が、国際農研及び農研機構を我が国のイノベーションエンジンとして紹介しました。
また、国際農業研究協議グループ(CGIAR(*8))と連携し、我が国の拠出により、GHGゼロエミッションに向けた作物の栽培体系の検討・実証やBNI技術を活用した作物の開発・栽培体系の確立、気候変動への対応や栄養供給の向上に資する作物品種の開発等の研究を推進しています。
このような国際的な取組の積重ねは、アジア地域等における気候変動対応能力の強化に寄与するとともに、その過程で得られた知見や技術が国内の研究開発にも還元され、我が国の農林水産分野における技術力の向上にもつながっています。
*1 第1章第6節を参照
*2 微生物(硝化菌)がアンモニア態窒素(アンモニウム)を硝酸態窒素へと酸化する過程
*3 Biological Nitrification Inhibitionの略。植物自身が根から物質を分泌し、硝化を抑制する働きのこと
*4 Alternate Wetting and Dryingの略
*5 正式名称は「アジアモンスーン地域の生産力向上と持続性の両立に資する技術カタログ」
*6 Conference of the Partiesの略
*7 UN Food Systems Coordination Hubのこと
*8 Consultative Group on International Agricultural Researchに由来
(6)農林水産施策の展開におけるデジタル化の推進
(農林水産施策の展開におけるデジタル化の推進)
我が国の人口構造の変化に伴い、多くの業界・分野で業務従事者の減少・高齢化が進行しており、地方公共団体を含む行政においても職員数の減少が進行する中、デジタル技術を高度活用し、業務効率化といった生産性向上に取り組むことが重要です。農林水産省では、これまで「農林水産省共通申請サービス(eMAFF(イーマフ)申請)」、「農林水産省地理情報共通管理システム(eMAFF(イーマフ)地図)」といったシステムを構築し、行政手続のオンライン化や利便性の向上に取り組んできました。
eMAFF申請については、費用対効果や利用者視点での利便性向上や行政運営効率化の観点から見直しを行い、次期オンライン申請システムの令和8(2026)年10月の稼働開始を目指して、その整備に取り組んでいるところです。業務そのものの見直しや手続の簡素化、AI-OCR(*1)の活用、操作性向上等を通じ、システム利用を促進していくこととしています。
また、eMAFF地図についても、現地確認業務の効率化等に向けて、地図アプリや営農管理アプリ等の民間サービスとの連携も含め、利活用の向上に取り組んでいます。
さらに、農林水産業を取り巻く社会情勢の変化・多様化が加速する中、行政においてもデータを活用してその変化を的確に捉え、政策運営に活かすことの重要性が高まっています。農林水産省では、「データ活用基盤(*2)」を用いたデータの集約・蓄積やBIツール(*3)の研修等を通じたデータ活用人材の育成等を進めています。
*1 OCRは、Optical Character Recognitionの略で、AIを活用した光学式文字認識のこと
*2 省内外に散在するデータを利用に適した形式に整形・加工した上で1か所に集約し、ワンストップでのデータ提供を実現するプラットフォーム
*3 BIは、Business Intelligenceの略で、簡単な操作により、データの加工、グラフィカルな分析、表示等を実現するツール
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