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農林水産省

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特集1 とり(4)

国産鶏種の需要と供給に応える


ブロイラーに比べ、知名度も普及も遠くおよばない国産鶏種。しかし今、食の安全保障や食の多様性の面から、その重要性が再認識されています。国産鶏種「たつの」と「はりま」を取材しました。

独立行政法人家畜改良センター 兵庫牧場

輸入種鶏に依存し過ぎず国産鶏種で食の安全保障を
日本国内で育種改良された純国産の鶏を「国産鶏種」といいます。現在国内で生産される鶏肉のうち、国産鶏種は全体の2パーセントほど(特集1とり(1)参照)。外国の種鶏由来のブロイラーは、経済効率が優れているため需要が集中することは避けられませんが、鶏は世界的にも種の多様性が失われている家畜であり、また外国種鶏への過度な依存は、食料安全保障の視点からも問題があります。

そんな中、国産鶏種の開発を行っているのが、独立行政法人家畜改良センター兵庫牧場(以下、兵庫牧場)です。兵庫牧場の担当課長、朝倉康弘さんは、国産鶏種について「輸入が止まってもちゃんと鶏肉を食卓に届けることができる手段を持っておくことが大切。また、種鶏も国産という生産履歴が明らかな鶏肉は、消費者のためにも存在すべき選択肢です」と語ります。

意義のある国産鶏種ですが、生産された鶏肉が高額すぎては普及は困難です。手ごろな価格でおいしい国産鶏種をと、兵庫牧場の努力が結実した品種が、「たつの」と「はりま」です。


純国産鶏種「たつの」と「はりま」
兵庫牧場で育種改良した2つの国産鶏種。赤鶏の紅桜と白鶏の小雪を交配した「たつの」(左)と、雄雌とも白鶏を交配した「はりま」(右)。
たつの はりま

純国産鶏種「たつの」と「はりま」

※系統の交配組み合わせは、今後の需要者ニーズの変化、より優秀な系統の造成等があった時点で変更になることがある。


岩手県 株式会社ニチレイフレッシュファーム

関係者一体で取り組む「たつの」の生産と普及
「たつの」は、国産鶏種「紅桜」を父に、「小雪」を母に生まれた純国産鶏種。父母とも、世界的に見ても非常に希少で、味わいが評価されていた鶏でした。「たつの」も味が良く、飼育期間は約60日と地鶏に比べれば短期間。バランスの取れたこの国産鶏種は現在、食品大手の株式会社ニチレイのグループ会社、株式会社ニチレイフレッシュファームで生産が行われています。

平成12年以降、鳥インフルエンザへの対策が課題となる中、同グループが設立した「たつの」のための飼育農場です。種鶏を輸入に頼らず、ひなから飼育・処理・解体・加工・販売まで一貫して行うことで、高いレベルのトレーサビリティを実現しています。

また、同農場では、餌の国産化にも取り組んでいます。日本の餌の自給率はわずか28パーセント程度。種鶏も餌も輸入に頼っている状況を変えるため、地元で栽培された飼料用米を餌に配合し、自給率を高めています。さらに、鶏ふんから有機質肥料を生産し、それを農家が水田に使う仕組みも整備。地域で資源が循環する、持続可能な生産体制を確立しています。

「たつの」(ニチレイフレッシュファームのブランド名「純和鶏(じゅんわけい)」)の出荷数は、186万羽(平成27年度)。ブロイラーの圧倒的シェアには遠く及びませんが、品質は高く評価されて、年々出荷数は増えています。こうした事例により、国産鶏種への関心と知名度が高まることが期待されています。


ひよこから出荷まで飼育精肉として販売
岩手県洋野町にあるニチレイフレッシュファーム(写真左)では、「純和鶏(たつの)」をひよこ段階から飼育。系列会社の株式会社フレッシュチキン軽米にて処理・解体後、精肉として販売を行っている。写真右は飼育担当の社員のみなさん。 岩手県洋野町にあるニチレイフレッシュファーム(写真左)では、「純和鶏(たつの)」をひよこ段階から飼育。系列会社の株式会社フレッシュチキン軽米にて処理・解体後、精肉として販売を行っている。写真右は飼育担当の社員のみなさん。
岩手県洋野町にあるニチレイフレッシュファーム(写真左)では、「純和鶏(たつの)」をひよこ段階から飼育。系列会社の株式会社フレッシュチキン軽米にて処理・解体後、精肉として販売を行っている。写真右は飼育担当の社員のみなさん。


純和鶏の成長過程
ブロイラーは一般的に飼育50日程度で出荷されるが、純和鶏も60日程度で出荷される。 純和鶏の成長過程


地域の飼料用米を利用する循環型農畜産業
地域の飼料用米を利用する循環型農畜産業 地元である軽米町、洋野町の農家と契約し、数百ヘクタールの田んぼで飼料用米を栽培。鶏の餌に加えている。鶏ふんを堆肥化し田んぼに活用。地域内で資源が循環する仕組みが整っている。


国産鶏種の意義を伝える! 小学校で食育授業を実施
ニチレイフレッシュファームでは、地元の行政と連携し、小学校で出前授業を行っています。岩手県は養鶏が盛んな地域のため、家族が養鶏にかかわる子どもも多く、鶏は身近な存在。しかし、国産鶏種や地域循環の仕組みなどを説明すると、知らなかったという声がたくさん上がります。

最後は「純和鶏(たつの)」を使った給食で、味わいを確かめます。「地域で育った鶏はおいしい」と地元の味として愛着を持って食べる姿が見られるそうです。
国産鶏種の意義を伝える!小学校で食育授業を実施



取材・文/千葉貴子
イラスト/中山ゆかり


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