ブロイラー鶏群から製造された中抜きと体及び鶏肉の菌濃度調査
作成日:平成27年6月25日
2.1.1.2. 食鳥処理場
2.1.1.2.2. ブロイラー鶏群から製造生産された中抜きと体及び鶏肉の菌濃度調査(平成22年度)
ブロイラー鶏群から製造された中抜きと体や鶏肉のカンピロバクターの濃度を把握するために、食鳥処理場1か所において、10処理日にわたり、計20鶏群の盲腸内容物や中抜きと体、鶏肉を対象にカンピロバクターの調査を行いました。また、対象鶏群の中抜きと体を冷却するために使われる冷却水の衛生状態の変化を把握するために、冷却水を継続的に採取し、遊離残留塩素濃度の測定と、カンピロバクター及び一般生菌の調査を行いました。 その結果、カンピロバクター陽性の18鶏群から製造された全ての中抜きと体からカンピロバクターが分離され、その濃度の平均は6.3×103 cfu/と体でした。一方、カンピロバクター陰性の2鶏群から製造された全ての中抜きと体からもカンピロバクターが分離されましたが、その濃度は、陽性鶏群のものと比べて低い傾向がみられました。また、カンピロバクター陽性鶏群から製造された鶏肉の91%、陰性鶏群から製造された鶏肉の27%からカンピロバクターが分離されました。カンピロバクター陰性鶏群から製造された全ての汚染鶏肉は、陽性鶏群の直後に処理された陰性鶏群から製造されたものであり、かつ、その陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ性状6の菌が分離されました。冷却水の遊離残留塩素濃度は0.2~24.0 ppmの範囲内で、処理する鶏群が増えるほどカンピロバクターと一般生菌の陽性率が上がる傾向がみられました。 |
6菌種とフラジェリン遺伝子の型。
(1) 目的
ブロイラー鶏群から製造された中抜きと体や鶏肉のカンピロバクターの濃度や汚染率を把握する。さらに、中抜きと体の冷却のために使われる冷却水の衛生状態の変化を把握する。
(2) 試料採取
食鳥処理場1か所において、平成22年9月~平成23年2月の間の10処理日を選び、第1鶏群(1番目に処理される鶏群)及び第2鶏群(2番目に処理される鶏群)を調査対象(計20鶏群)としました。各鶏群から、中抜き工程において10羽分の盲腸内容物(1鶏群につき試料10点)、冷却後に5羽分の中抜きと体(1鶏群につき試料5点)、解体・包装後に鶏肉(ムネ肉、ササミ及び肝臓)を5袋ずつ(1鶏群につき試料15点)採取しました。
また、冷却水は、各鶏群の処理開始時、中間及び最後に(計3回)、冷却水槽から採取しました(1鶏群につき試料3点)。
(3) 微生物試験・その他の試験
盲腸内容物、冷却水、冷却後の中抜きと体及び鶏肉を試料としてカンピロバクターの定性試験(3.1.1.1(1) 、3.1.1.2(2) 、3.1.1.5、3.1.1.6)及び定量試験(3.1.2.1、3.1.2.2、3.1.2.3、3.1.2.4)を実施しました。盲腸内容物の試料10点のうち1点でもカンピロバクターが分離された鶏群は、カンピロバクター陽性と判定しました。分離されたカンピロバクターは、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli)を同定(3.1.3.1)しました。また、菌株の同一性を確認するため、フラジェリン遺伝子を利用した型別試験(3.1.3.2)を行いました。
また、冷却水については、遊離残留塩素濃度を測定(3.6.1)後、一般生菌の定量試験(3.5.1.1)を行いました。
(4) 結果
今回、調査対象となったブロイラー鶏群の90%(18/20)がカンピロバクター陽性でした。また、カンピロバクター陽性の各鶏群内の、鶏個体のカンピロバクター保有率は、17鶏群で100%(10月10日)、残りの1鶏群では60%(06月10日)でした。カンピロバクターを保有している鶏個体の96%(168/176)では、盲腸内容物中の菌濃度は1.0×104 cfu/g以上でした。
カンピロバクター陽性の18鶏群から製造された中抜きと体は、全ての試料(90/90)からカンピロバクターが分離され、その菌濃度の平均は6.3×103 cfu/と体でした。
一方、カンピロバクター陰性の2鶏群から製造された全ての中抜きと体(10月10日)からも、カンピロバクターが分離されました。これら2鶏群のうち、あるカンピロバクター陽性鶏群の直後に処理された陰性鶏群から製造された中抜きと体の菌濃度の平均は6.0×101 cfu/と体でした。別の1処理日に、カンピロバクター陽性鶏群より前に処理された陰性鶏群から製造された中抜きと体については、全てが定量限界値(5.0×101cfu/と体)未満でした(定性試験でのみ菌を分離)。
鶏肉については、カンピロバクター陽性の18鶏群から製造された鶏肉の91%(246/270)、陰性の2鶏群から製造された鶏肉の27%(08月30日)からカンピロバクターが分離されました(表10)。また、カンピロバクター陽性鶏群から製造された肝臓の菌濃度の平均は4.0×102 cfu/gであり、一方、陰性鶏群から製造された肝臓の菌濃度は定量限界値(1.0×102cfu/g)未満でした(定性試験でのみ菌を分離)。
表10:鶏肉のカンピロバクター汚染状況
鶏群 | 鶏肉 | 試料点数 | 陽性点数 | 陽性率(%) |
---|---|---|---|---|
カンピロバクター陽性鶏群 | 全体 | 270 | 246 | 91 |
ムネ肉 |
90 | 89 | 99 | |
ササミ |
90 | 67 | 74 | |
肝臓 |
90 | 90 | 100 | |
カンピロバクター陰性鶏群 | 全体 | 30 | 8 | 27 |
ムネ肉 |
10 | 1 | 10 | |
ササミ |
10 | 2 | 20 | |
肝臓 |
10 | 5 | 50 |
カンピロバクター陰性鶏群から製造された全ての汚染鶏肉(8点)が、ある陽性鶏群の直後に処理された陰性鶏群から製造された鶏肉であり、かつ、その陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ性状(菌種及びフラジェリン遺伝子の型)の菌が分離されました。これとは別の処理日に、ある陽性鶏群の前に処理された陰性鶏群から製造された鶏肉からは、菌は分離されませんでした。
冷却水については、遊離残留塩素濃度は0.2~24.0 ppmの範囲内でした。また、カンピロバクターと一般生菌の陽性率は、第1鶏群処理時より、第2鶏群処理時の方が上がっていました(表11)。なお、冷却水におけるカンピロバクターの最大濃度は、5.0×102 cfu/200 mLでした。
表11:冷却水のカンピロバクター及び一般生菌の分離状況
冷却水 | 試料点数 | カンピロバクター | 一般生菌 | ||
---|---|---|---|---|---|
陽性点数 | 陽性率(%) | 陽性点数 | 陽性率(%) | ||
第1鶏群処理時 | 30 | 8 | 27 | 8 | 27 |
第2鶏群処理時 | 30 | 17 | 57 | 23 | 77 |
計 | 60 | 25 | 42 | 31 | 52 |
また、ある2処理日に採取された冷却水試料(計12点)の遊離残留塩素濃度は全て10 ppm以上であり、カンピロバクターが分離されたのは17%(02月12日)、一般生菌が分離されたのは8%(01月12日)でした。
試料から分離されたカンピロバクターの性状を調べると、第2鶏群から製造された中抜きと体や鶏肉から分離された菌株の一部は、同一日の第1鶏群の盲腸内容物や冷却水、中抜きと体、鶏肉から分離された菌株と、性状(菌種及びフラジェリン遺伝子の型)が一致していました。
指導者・事業者の皆様へ 食鳥処理場1か所において、カンピロバクター陰性鶏群から製造された中抜きと体や鶏肉のカンピロバクター汚染濃度及び汚染率は、陽性鶏群のものと比べて低い傾向がみられました。また、カンピロバクター陰性鶏群から製造された全ての汚染鶏肉は、陽性鶏群の直後に処理された陰性鶏群から製造されたものであり、かつ、その陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ性状の菌が分離されました。したがって、農場で鶏群のカンピロバクターの保有率を下げることによって、食鳥処理場へのカンピロバクターの持ち込みを減らし、さらに中抜きと体や鶏肉におけるカンピロバクター汚染濃度や汚染率を減らせることが期待できます。 冷却水は、遊離残留塩素濃度の範囲は0.2~24.0 ppmであり、処理する鶏群が増えるほどカンピロバクターと一般生菌の陽性率が高くなる傾向がみられました。また、ブロイラー農場(鶏群)のカンピロバクター保有率は5割弱であった(2.1.1.1.1)ため、食鳥処理場は、受け入れる生鳥はカンピロバクターに感染しており、その結果、処理ラインが汚染される可能性があることを考慮して、衛生対策を実施する必要があります。厚生労働省は、食鳥処理場における衛生管理措置及び食鳥検査(外部リンク)や、食鳥処理場におけるHACCP(外部リンク)の導入を推進しています。関係法令や通知(検索画面へ)(外部リンク)を参照してください。 |
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