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農林水産省

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農林水産省の取り組み

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平成27年6月24日更新

トランス脂肪酸に関する調査研究

食品の安全を確保するためには、あらかじめ問題や事故が起きる可能性やその程度を知って、科学的な原則に基づいて対処することが重要です。
トランス脂肪酸については、農林水産省は「優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質のリスト」において、「リスク管理を継続する必要があるかどうか決定するため、危害要因の毒性や含有の可能性等の関連情報を収集する必要がある危害要因」と位置づけており、トランス脂肪酸に関する科学文献の調査や国内外の情報の収集・解析を継続しています。

食品からのトランス脂肪酸の摂取量調査について

農林水産省は、日本人のトランス脂肪酸の摂取量を推定するためマーケットバスケット方式によるトータルダイエットスタディを平成17~19年度に実施しました。この調査で得られた油脂を多く含む代表的な食品群の平均トランス脂肪酸含有量と、それぞれの食品群からのトランス脂肪酸の平均的な摂取量の推定値は、表1のような結果となりました。

表1.各食品群のトランス脂肪酸含有量と各食品群からの摂取量の推定(平均)

食品群
食品群の平均
摂取量(g/日)
食品群中の
平均トランス脂肪酸
含有量(g/100g)
食品群からの
トランス脂肪酸の
一日摂取量(g/日)
摂取
寄与率
穀類
449.5
0.0247~0.0253
0.111~0.114
12%
豆類
61.5
0.0196~0.0258
0.0121~0.0159
1%
種実類
2.1
0.0917~0.118
0.0019~0.0025
0%
魚介類
82.6
0.0644~0.0682
0.0532~0.0536
6%
肉類
77.9
0.136~0.145
0.106~0.113
12%
卵類
34.4
0.0276~0.0472
0.0095~0.0162
1%
乳類
135.4
0.0969~0.0991
0.131~0.134
14%
油脂類
10.5
1.77~1.86
0.185~0.195
20%
菓子類
25.6
0.654~0.670
0.167~0.171
18%
調味料・香辛料類
92.0
0.153~0.155
0.140~0.143
15%
合計
 
 
0.918~0.962
100%

 

各食品群別のトランス脂肪酸摂取量を見ると、日本人の場合では油脂類の寄与がもっとも大きく総摂取量の20%、次いで菓子類が18%であり、このほか穀類、肉類、乳類、調味料・香辛料類を合わせた6食品群が主要な摂取源となっていることがわかりました。各食品群からのトランス脂肪酸摂取量の合計は、1日1人当たり平均で0.92~0.96 gと推定されました。この推定値は、日本人のトランス脂肪酸摂取量についてこれまで報告された、食品安全委員会の調査(0.7~1.3 g/日)(2007)1)や渡邉らの調査(0.71 g/日)(2008)2)と大きな差はありません。

日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量(0.92~0.96 g/日)をエネルギー量に換算(脂肪酸1 gが9.21 kcalとして換算)すると、トランス脂肪酸によるエネルギー摂取量は日本人の平均総エネルギー摂取量 1900kcal/日の0.44~0.47%に相当し、国際機関の専門家会合が推奨しているトランス脂肪酸の摂取目標である「総エネルギー摂取量の1%未満」を達成しており、推奨される上限値の半分程度です。

諸外国のトランス脂肪酸の平均摂取量は、成人1人当たり米国では5.8 g/日3)、欧州では男性1人当たり1.2~6.7 g/日、女性1人当たり1.7~4.1 g/日4)と報告されており、これらと比べて日本人のトランス脂肪酸の摂取量はかなり少ない傾向にあります。

1) 食品安全委員会ファクトシートトランス脂肪酸http://www.fsc.go.jp/sonota/54kai-factsheets-trans.pdf

2) 渡邉敬浩、松田りえ子、米谷民雄(国立医薬品食品衛生研究所):トータルダイエットスタディ試料の分析によるトランス脂肪酸摂取量の推定、第95回日本食品衛生学会学術講演会(2008年5月)

4) Opinion of the Scientific Panel on Dietetic products, nutrition and allergies [NDA] related to the presence of trans fatty acids in foods and the effect on human health of the consumption of trans fatty acids.
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178620767491.htm

調理油の加熱によるトランス脂肪酸の生成

農林水産省は、食品を調理する際の油脂の加熱によって、食用油脂に含まれているトランス脂肪酸が生成するかどうか、生成するとしたらどの程度増加するのか調査しました。その結果、通常の調理条件によるトランス脂肪酸の増加はごくわずかであり、ほぼ無視できることがわかりました。この研究成果については次の雑誌に掲載されています。

Formation of trans fatty acids in edible oils during the frying and heating process

Wakako Tsuzuk et.al., Food Chemistry, Volume 123, Issue 4, 15 December 2010, Pages 976-982

トランス脂肪酸の分析法

食品中のトランス脂肪酸の分析法は、ガスクロマトグラフを用いた方法、簿層クロマトグラフを用いた方法、赤外分光を用いた方法など多数存在しています。

農林水産省は、国内外で公定法して採用されているガスクロマトグラフを用いる代表的なトランス脂肪酸分析法、4種類(AOAC 996.06, AOCS Ce 1f-96, AOCS Ce1h-05, 日本油化学会基準油脂分析法暫17-2007)について、食品中の分析可能なトランス脂肪酸の種類や範囲、その精度について確認し、基礎的なデータを得るための調査を平成23年度に行いました。

その結果、同一の試料(ショートニング、マーガリン、コンパウンドマーガリン、バター、チーズ、牛肉)を分析しても、使用する分析法が異なると、個別に定量可能なトランス脂肪酸の分子種が異なること、トランス脂肪酸の分析結果(測定できた個々のトランス脂肪酸の濃度の合計値)に2割程度影響する場合があることが分かりました。
また、同じ分析法、同じ分析試料を用い、同じ分析機関で測定しても、トランス脂肪酸の分子種によっては分析値が毎回大きくばらつき、定量が難しいことが分かりました。

トランス脂肪酸の分析結果のばらつきの程度については、2015年3月に開催された第36回コーデックス委員会分析・サンプリング法部会で、分析法規格を策定している国際組織からも情報提供されています。詳しくはこちらをご覧下さい。 

トランス脂肪酸による健康リスク

農林水産省、食品安全委員会、その他の日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量に関する最新の調査では、いずれも平均的な摂取量が国際機関が定めた摂取量の目標値(総エネルギー摂取量の1%未満)を満たしていることに基づけば、平均的にみれば日本人のトランス脂肪酸による健康リスクは低いと推定されます。

なお、食品安全委員会は最新のファクトシートにおいて、「偏った食事をしている場合では、平均値を大きく上回る摂取量となる可能性はありますが、現時点では、その程度について予断できない。」としています。偏った食生活は、脂肪の摂りすぎなど栄養バランスに偏りが生じやすくなり、生活習慣病による健康リスクが高くなる可能性があります。したがって、脂肪を多く含む食品の摂りすぎに気をつけ、バランスのよい食生活を送ることが重要と言えます。

これらを踏まえると、現時点では引き続き関係する情報の収集、解析を行うことが必要なものの、その他の有害化学物質や食品媒介微生物などによる健康リスクと比較すれば、直ちにリスク管理措置を検討する段階にはないと考えています。

また、食品安全委員会は、3月18日の第324回会合において、「食生活の変化により若年層の摂取が増えていると考えられる」ことを理由に、平成21年度の自ら食品健康影響評価を行う案件として、「トランス脂肪酸に関する食品健康影響評価」を行うことを決定し、平成24年3月8日の第422回会合で評価結果をとりまとめました。

この評価書においても、日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比の1%未満であり、通常の食生活では健康への影響は小さいと結論付けています。一方で、「リスク管理機関においては、今後とも日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視するとともに、引き続き疾患罹患リスク等に係る知見を収集し、適切な情報を提供することが必要である。」としています。農林水産省では、このリスク評価結果を考慮にいれつつ、今後ともリスク管理の標準手順書に基づいて適切に対応していきます。

参考リンク

飽和脂肪酸の摂取量とその健康リスク

脂質のうち、とりすぎが問題となるのはトランス脂肪酸だけではありません。厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準(2010年)」では、総脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸、コレステロールの各脂質の摂取目標量が定められています。「平成20年国民健康栄養調査の概要(厚生労働省)」によると、脂肪からのエネルギー摂取量の割合が、食事摂取基準に定められた目標量の範囲を上回っている者は、成人男性の約2割、成人女性の約3割と、脂肪の過剰摂取が問題となっています。

農林水産省は、トランス脂肪酸の摂取量調査に加えて、トランス脂肪酸と同様に過剰摂取によって生活習慣病のリスクを高めるとされる飽和脂肪酸についても、食品群の含有濃度を暫定的に測定注)し、摂取量の推定を試みました。
この結果、日本人(20歳以上)の平均的な飽和脂肪酸の摂取量は、1日1人当たり16.6gと推定されました(表2)。これは日本人(20歳以上)の平均総エネルギー摂取量1911 kcalの8.2%に相当し、「日本人の食事摂取基準(2010 年)」に定められた目標量の範囲の上限値(総エネルギー摂取量の7.0%)を超えています。

この試算結果から、日本人は平均的にみて飽和脂肪酸を過剰に摂取している可能性があり、このことにより生活習慣病等の健康リスクが高くなる可能性が示唆されました。したがって、現時点では現状のままトランス脂肪酸の摂取量を低く維持しつつも、飽和脂肪酸の摂取量を積極的に減らすことが重要と考えられます。

表2.各食品群の飽和脂肪酸含有量と各食品群からの摂取量の推定(20歳以上平均)

食品群
食品群の
平均摂取量(g/日)
(20歳以上)
食品群中の
平均飽和脂肪酸
含有量(g/100g)
食品群からの
飽和脂肪酸の
一日摂取量(g/日)
摂取
寄与率
穀類
459.5 
0.336
1.54
9%
豆類
65.3
0.837
0.547
3%
種実類
2.2
8.80
0.194
1%
魚介類
89.9 
1.63
1.46
9%
肉類
76.1
6.88
5.24
32%
卵類
34.1
2.79
0.950
6%
乳類
101.3
2.38
2.41
15%
油脂類
10.3
16.8
1.73
10%
菓子類
22.9
6.23
1.43
9%
調味料・香辛料類
100.0
1.08
1.08 
6%
合計
 
 
16.6
100%

 注)本調査の平均飽和脂肪酸含有量には、一般的に乳製品等に含まれている飽和脂肪酸の一種である酪酸(C4)、カプロン酸(C6)を含まないため、推定した飽和脂肪酸の摂取量は過小評価となっている可能性があります。

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