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農林水産省

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(1)農林水産物・食品の輸出促進


(農林水産物・食品の輸出額の推移)

農林水産物・食品の輸出は、農林水産物の新たな販路拡大や所得の向上等、多様な意義を有しています。平成27(2015)年6月に改訂された「日本再興戦略」においては、輸出促進について、今後の伸びしろが大きい国・品目に重点的に取り組み、平成32(2020)年の輸出額1兆円目標の前倒し達成を目指すこととされています。

我が国の平成27(2015)年の農林水産物・食品の輸出額は、7,451億円となり、3年連続で過去最高を更新し、平成28(2016)年に7,000億円という中間目標を1年前倒しで達成しました(図1-6)。

平成27(2015)年の農林水産物・食品の輸出額について、国・地域別の割合をみると、香港、台湾、中国、韓国といったアジア地域が全体の73.5%、米国等の北米が15.7%となっています(図1-7)。

次に、品目別の割合をみると、農産物が59.5%、水産物が37.0%、林産物が3.5%を占めています。農産物では米、りんご、牛肉等、水産物ではホタテ貝、さば等が金額、数量ともに前年と比較して大きく増加しています(表1-1)。平成27(2015)年における輸出額増加の要因は、円安方向への推移による割安感が出ているほか、日本食レストランの広がりやオールジャパンでのプロモーション等により日本の農林水産物・食品の海外での需要が高まったからと考えられます。


図1-6 農林水産物・食品の輸出額の推移
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図1-7 農林水産物・食品の輸出額の主な内訳(平成27(2015)年)
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表1-1 主な国・地域別及び主な品目別の農林水産物・食品の輸出額
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(輸出促進体制の整備)

農林水産省は、平成25(2013)年8月に、農林水産物・食品の輸出額を平成32(2020)年に1兆円規模に拡大するという目標に向けて、コメ・コメ加工品、青果物、花き、茶、牛肉、加工食品、林産物、水産物の重点品目ごとの目標額や、重点国・地域を定めた「農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略」を策定しました。

また、輸出戦略に基づく取組の検証や、オールジャパンでの実効性ある輸出拡大に向けた取組体制についての議論を行うため、平成26(2014)年6月には農林水産物等輸出促進全国協議会の下に、輸出戦略実行委員会を設置し、そこでの議論を踏まえ、重点品目ごとの「輸出拡大方針」を策定しました。また、オールジャパンで輸出に取り組む7つの品目別輸出団体も順次設立されました。


(輸出促進の取組)

平成27(2015)年度の輸出促進に向けた取組として、品目別輸出団体では輸出拡大方針に基づいて、海外マーケット調査、セミナーの開催や試食・試飲といったPR、産地間連携等の国内体制整備等が行われました。輸出戦略実行委員会では、品目別輸出団体等が実施する重点品目ごとの輸出促進の取組をPDCAサイクルにより検証するとともに、平成27(2015)年10月には新たに加工食品部会を設置し、輸出促進に向けた議論を開始しました。農林水産省では、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)への補助を通じ、各種情報の提供のほか、意欲ある農林漁業者等の輸出活動に対する支援や海外バイヤーとの商談機会の提供等を行っています。また、シンガポール等6か国の百貨店等にインストア・ショップを設置し、重点品目や6次産業化(*1)商品を中心とした試験販売を行っています。インストア・ショップへの出品企業は、現地の消費者の反応等をまとめたレポートのフィードバックを受け、今後の商品開発や輸出戦略策定に役立てることが期待されます。

また、平成26(2014)年10月に農林水産省に設置された「輸出相談窓口」では、農林水産物・食品の輸出に関する相談に対応しており、設置から平成28(2016)年3月末までの相談件数は5,242件となりました。相談内容は、放射性物質関係の制度・規制が65%と最も多く、放射性物質関係以外の制度・規制が12%、輸出に関わる手続きが10%となっています。

輸出促進等に向けた取組を更に促進することを目的として、外務省は、平成27(2015)年12月末に計58の在外公館等に日本企業支援担当官(食産業担当)を設置しました。

今後とも、取組状況や効果の検証を実施し、平成28(2016)年度の輸出拡大方針の策定、輸出環境課題等の議論を行い、アジア諸国や欧米への農林水産物・食品の輸出拡大につなげていくことが必要です。


(輸出環境の整備)

農林水産省では、平成27(2015)年4月に、輸出を拡大していく上で解決すべき輸出環境課題を整理した「農林水産物・食品輸出環境課題レポート2014/2015」を作成しました。このレポートでは、重要かつ複数品目に関係する課題として、放射性物質に係る輸入規制、動植物検疫協議、食品安全に関する規制、残留農薬基準、知的財産侵害、ハラール認証の取得、有機同等性の承認の取得への対応方向が示されています。また、重点品目について、輸出実績、輸出戦略上の位置付け、重点国・地域における主な輸出環境課題の概要が整理されています。

食品安全に関する規制として、主要国・地域では、食品事業者に対してHACCP(危害要因分析・重要管理点)(*1)に基づく衛生管理を義務化する流れにあります。米国では、平成23(2011)年に成立した食品安全強化法(FSMA(*2))の規則が平成28(2016)年9月から順次施行されていきます。FSMAは、米国に輸出する食品事業者にも大きく影響することから、農林水産省等でFSMAに関する情報提供を進めています。

また、民間取引においては、HACCPをベースとした食品安全管理規格や農業生産工程管理(GAP)(*3)に関する規格等を取引基準として求める動きがあり、様々な食品安全等に関する規格や認証の仕組みが作られています。国際的に多数の食品安全管理規格が存在する中、GFSI(*4)等において認証スキームの標準化が進んでいます。

このように、農林水産物・食品の輸出に際しては国際的な食品安全管理への対応が求められています。我が国においても、生食や発酵食品等の日本の食文化を踏まえた、国際的な取引にも通用する日本発の食品安全管理規格・認証スキームを構築することとしています。

農林水産物・食品の輸出に当たっては、相手国・地域の求める残留農薬基準を満たしていることが必要となります。一部の国・地域では、基準値が定められていない農薬については一切検出されてはならないという規則になっていることから、まずは、輸出先国・地域の残留農薬基準に沿った生産体系の構築等を行うことが重要ですが、使用せざるを得ない農薬がある場合には、登録がない農薬に対しても当該農薬に関する基準の設定を相手国・地域に求めていく必要があります。

ハラール認証とは、その食品が、イスラムの法に基づいて食べることを許された食品であることを確認、認証する仕組みです。イスラム圏へ輸出・販売するためには、食品により国・地域ごとに異なるハラール認証の取得が必要となる場合があるため、農林水産省では、ハラールについての調査・情報提供を行っています。

また、農林水産省では、国・地域の間で有機認証制度が同等である旨を認める「有機認証制度の同等性」に関する協議を進め、これまでにEU、米国、カナダ、スイスとの間で同等性を相互に認めています。今後も、有機農産物等の輸出促進に向け、同等性の承認の取得や既に同等性を取得した国・地域への輸出条件の改善を行っていくこととしています。

このほか、グローバル・フードバリューチェーン戦略(*5)に基づいた、開発途上国等におけるコールドチェーン(*6)や流通販売網等の整備に向けた取組が進められています。


1 [用語の解説]を参照
*2 Food Safety Modernization Actの略
*3 [用語の解説]を参照
*4 Global Food Safety Initiativeの略。平成12(2000)年に、グローバルに展開する小売業者・食品製造業者等が集まり、食品安全の向上と消費者の信頼強化に向け発足した団体。食品安全リスクの低減とコストの最適化を目指し、多数ある食品安全認証スキームの標準化や食品企業の能力向上等の取組を行っている。The Consumer Goods Forum(TCGF:世界70か国、約400社のメーカー、小売業者、サービス・プロバイダーによる国際的な組織)の下部組織
*6 [用語の解説]を参照

事例:輸出の取組

(1)共同で米輸出に取り組む若き生産者たち

長野県東御市
柳澤謙太郎さん(左)笹平達也さん(中)白倉卓馬さん(右)
柳澤謙太郎さん(左)
笹平達也さん(中)
白倉卓馬さん(右)

長野県東御市(とうみし)の笹平達也(ささだいら たつや)さん、柳澤謙太郎(やなぎさわ けんたろう)さん、白倉卓馬(しらくらたくま)さんは、それぞれ自社において米の生産・販売を行っていましたが、安定的な販売先を確保するため、地域の農業者を集め、米を集荷し、共同で輸出をする風土Link株式会社を平成25(2013)年6月に設立しました。

農業をビジネスとしてとらえた場合、地域で集まり大きな数量を取り扱うことによってブランド力と信頼性が高まると考えています。このため、今後も周囲の農業者を引き込んで輸出数量を増やしていく予定です。

海外に米を輸出する際には、「信州の米」として出荷しています。現地での販売は商社に任せていますが、年に数回は自分たちで現地に行き、店頭販売を行っています。そこで、直接海外の消費者と接しておいしい長野県産米の需要と、安定供給の必要性を実感しています。

今後も、地域の農業者とともに、こだわりの「うまい」長野県産米を世界に向けて輸出していきたいと考えています。


 

(2)包装米飯としての寿司飯の輸出

愛知県
海外用パッケージ
海外用パッケージ

愛知県のJAあいち経済連では、酢飯に適している愛知県産米「あいちのかおり」を使用した、握った形の寿司飯パックを開発し、平成24(2012)年より輸出しています。

JAあいち経済連の炊飯加工センターでは、ごはんやおにぎりを製造していますが、鮮度のよい商品を作るために夜間作業が中心となっています。このため、昼間の時間を利用して長期保存できる商品を作りたいと思い、寿司飯パックを開発しました。

平成24(2012)年に国内の展示会に出品した際に輸出会社と出会ったことがきっかけで、平成25(2013)年からオランダ向けに本格的に輸出を開始しました。平成26(2014)年には、前年比10%増の1.8tを輸出しました。

輸出に当たっては、製品包装を相手国の輸入規制に対応した材質に改良したほか、輸出業者と共同で、海外の消費者に商品内容が理解できるパッケージデザインの開発を行いました。寿司飯パックは常温で運べるため、輸送コストが抑えられるという特徴があります。海外輸送に日数がかかるため、製品が褐変しても品質的には問題がないことを確認し、「褐変の可能性あり」と注記した上で賞味期限を1か月から8か月へ延長しました。

これらの取組により、平成27(2015)年5月より、オランダでの販路が量販店から魚の卸売市場へと更に拡大し、現地でも、寿司のシャリとして利用されています。平成27(2015)年8月には米国への輸出も開始しました。今後は、EU諸国、アジア地域への販路拡大を目指すこととしています。


 

(3)沖縄国際物流ハブ機能を活用したアジアへの農林水産物・加工食品の輸出

沖縄県では、国際物流ハブ機能を活用して、日本全国の農林水産物を沖縄経由でアジアへと輸出する全国の農林水産物の流通拠点化を図る取組を推進しています。平成21(2009)年10月の沖縄国際物流ハブの開始以来、那覇空港における食料品の輸出額は毎年増加しています。

株式会社沖縄県物産公社(以下「公社」という。)は、沖縄県産品を国内卸販売しており、平成20(2008)年には青果卸が扱う沖縄県産農産物の香港、シンガポール等への輸出を開始しました。輸出に際し、県産品のみの取扱いでは安定的な物流を確保できないことから、平成27(2015)年4月には、定款を変更し「全国の産品」を扱えることとして、農林水産物・食品の輸出の取組を強化しました。公社は、国際物流ハブを基点として、アジアで宅配事業を展開するヤマト運輸株式会社や全国の地方公共団体とも連携し、国内産地において相談会や商談会も実施しています。

また、公社は、生産者や中小企業等からの小ロット・試験的な輸出への要望にも対応し、代金回収・決済等の輸出業務を代行するサービスを行っています。

これらの取組により、輸出ノウハウのない中小企業や生産者の参入障壁を低くすることに貢献するほか、全国各地の果物等の取扱いを拡大しています。今後は、マーケティング、プロモーション、販売、物流がセットになったプラットフォームの構築を検討しているほか、生産者との連携強化による全国特産品のコラボレーションや産地リレー等、海外バイヤーにとって魅力的な商品の開発に取り組むこととしています。

このような中、沖縄国際物流ハブを活用した新たな輸出の取組として、ヤマト運輸株式会社等の物流業者、小売業者等が連携し、日本の高品質な農林水産物・食品を出荷した翌日には新鮮な状態で直接海外の消費者へ届けることを可能とする、宅配・予約販売方式による国産農産物の輸出の取組が、香港(平成27(2015)年8月)、シンガポール(平成28(2016)年1月)に向けて開始されました。

今後、輸出拡大に向け、このような新しい輸出の取組が、香港、シンガポール以外の国々にも広がることが期待されます。


シンガポール「お取り寄せ」輸出モデル

(知的財産の戦略的な創造・活用・保護)

農林水産業の成長産業化を図るためには、6次産業化、輸出促進、インバウンド(*1)の推進に必要な各種施策の共通基盤となる知的財産を保護・活用することが必要です。

農林水産省では、平成27(2015)年5月に「農林水産省知的財産戦略2020」を策定し、地理的表示(GI(*2))の活用によるブランド化の推進、海外市場における模倣品対策、種苗産業の競争力強化等について具体的な対応方向を示しました。

地域には長年培われた特別の生産方法や、気候・風土・土壌等の生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品が多く存在しています。これらのうち、品質等の特性が産地と結び付いており、その結び付きを特定できるような名称が付されているものについて、その名称を「地理的表示」として登録・保護する制度が地理的表示保護制度です。平成26(2014)年6月、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」が公布され、平成27(2015)年6月に施行されました。同法に基づく登録に当たっては、産品の特性を有した状態で、一定期間生産が継続されていることが必要となります。登録産品は、登録標章(GIマーク)を付すことで、差別化を図ることができます(図1-8)。登録後は、生産・加工業者に品質管理が求められることから、品質を守るものだけが市場に流通することとなります。また、不正使用に対しては行政が取締りを行うことで、生産・加工業者の訴訟等の負担がなく、ブランドの保護が可能となります。

平成27(2015)年12月には、初めて7産品を登録し、平成28(2016)年3月までに12産品が登録されました。海外市場においては模倣品が巧妙化してきており、GIマークを含むジャパンブランドに対する知的財産対策を一層強化する必要があります。農林水産省では、今後、海外におけるGIマークの商標登録や、地理的表示保護制度を有する国との間での相互保護の枠組みづくりに取り組んでいくこととしています。


1 訪日外国人旅行
*2 Geographical Indicationの略

図1-8 地理的表示に登録された産品(平成28(2016)年3月末現在)

事例:地理的表示登録産品

(1)神戸ビーフ

兵庫県
神戸ビーフ
神戸ビーフ

兵庫県の神戸肉流通推進協議会によって地理的表示保護制度に登録申請された神戸ビーフは、平成27(2015)年12月に、地理的表示に登録されました。神戸ビーフの素牛(もとうし)は、兵庫県北部の但馬(たじま)地方の山間で長い間かけ改良が重ねられた但馬牛(たじまうし)です。同協議会に登録された生産者が兵庫県内で肥育を行い、同県内の特定の食肉センターに出荷した未経産牛・去勢牛のうち、公益社団法人日本食肉格付協会が実施する枝肉格付において、歩留・肉質等級が「A」、「B」4等級(*1)以上、B.M.S.(*2)がNo.6以上、枝肉重量が470kg以下の枝肉だけが「神戸ビーフ」を名乗ることができます。

食肉として但馬牛(たじまうし)が食べられるようになったのは明治19(1886)年の神戸港の開港がきっかけで、当時横浜に来た外国人も但馬牛(たじまうし)を食べたと言われています。神戸から横浜に輸送された牛の肉が特別においしかったことから、神戸ビーフと呼ばれるようになりました。明治時代以降、都会では「牛なべ屋」ができ、大正時代には「すき焼き」が家庭の食卓に出るようになり、神戸ビーフは御馳走の代名詞となりました。昭和58(1983)年には、神戸肉流通推進協議会が設立され、神戸ビーフを定義するとともに、神戸ビーフであることの証明、販売店・生産者の指定、指定店の表示について活動を開始しました。地理的表示の登録を受け、増産を目指すとともに更なる輸出促進に取り組みたいとしています。


1 歩留等級と肉質等級を連記表示した等級。歩留等級は、枝肉を部分肉にした場合の歩留りでAからCの等級に決定される。肉質等級は、脂肪交雑、肉の色沢、肉の締まり及びきめ、脂肪の色沢と質で1~5に判定される。
*2 B.M.S.(Beef Marbling Standard)とは、牛肉の脂肪交雑の程度を示すもの。12段階に分かれ、数字が大きいほど、サシが細かくて多いとされる。

(2)鳥取砂丘らっきょう・ふくべ砂丘らっきょう

鳥取県鳥取市
鳥取砂丘らっきょうの畑
鳥取砂丘らっきょうの畑 

鳥取県鳥取市(とっとりし)のJA鳥取いなばによって地理的表示保護制度に登録申請された鳥取砂丘らっきょう・ふくべ砂丘らっきょう(以下「鳥取砂丘らっきょう」という。)は、平成28(2016)年3月に、地理的表示に登録されました。

鳥取砂丘らっきょうは、大正3(1914)年に砂丘畑においてまとまった栽培に成功し、昭和27(1952)年に軍用地が民間に払い下げられ、砂丘畑が増加したことを契機に生産規模が拡大しました。

地理的表示の登録申請に当たっては、生産者に対し、国が表示違反を取り締まるなどのメリットを説明しました。申請時には、鳥取砂丘らっきょうの「外観が白い」、「シャキシャキとした食感」といった特性が産地の特徴とどう結び付いているかの説明に苦心したといいます。

地理的表示の登録を受け、これまで以上に品質の安定、栽培技術の平準化等に取り組んでブランド価値を守り、産地の義務を果たしていきたいと考えています。

 


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