3.知的財産の確保・活用などによる「付加価値の向上」
農業分野の生産技術やノウハウ等の知的財産としての価値や重要性を農業者や農業関係者に広く普及・啓発する。農業分野の技術・ノウハウ等について、不正競争防止法の営業秘密の枠組みを活用した保護に取り組む際の留意点などがまとめられた「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」(令和4年3月公表)の農業現場への周知を行う。また、令和3年度以降、農林水産省の補助事業等を活用する場合、農機メーカーやベンダのシステムサービス契約は、「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」に沿って結ばれることとなったが、同ガイドラインの民間企業、地方自治体、農業現場への周知を通じて、データの利活用を推進しつつデータ化したノウハウなどの保護を行う。さらに、「農業分野におけるオープンAPI整備に関するガイドライン ver1.0」を踏まえ、農業者が位置、作業記録等の農機データを様々なソフトで利用できる仕組み(オープンAPI)の整備等、データの利活用を推進する。
<関連情報>
農林水産省HP「農業分野における生産技術・ノウハウ等の知的財産としての管理に関するアンケート調査の結果及び普及啓発用パンフレットの作成等について」
農林水産省HP「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」
公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)HP「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」[外部リンク]
農林水産省HP「農業分野におけるオープンAPI整備に関するガイドライン ver1.0」(PDF:1,331KB)
農林水産省HP「オープンAPI整備に向けて」
農研機構HP「農機API共通化コンソーシアム」[外部リンク]
ア 地理的表示の登録等の推進
生産者団体から求めがある場合には、地方行政機関等は、申請を行おうとする産品に関する地域の史実、食文化、風習、産品の生産の方法など、産品の特性や生産地との結び付きのポイントとなる点について、技術的な観点から助言を行う等の支援を行う。
イ 知的財産制度の適切な活用によるブランド化
地域農産物のブランド化とその保護に当たっては、活用する知的財産制度の特性を踏まえて総合的に検討する必要があり、特許庁と連携し、INPITが各都道府県に設置している「知財総合支援窓口」において、引き続き農林水産物に関する知的財産についての相談に対応する。
<関連情報>
農林水産省HP「地理的表示保護制度(GI)」
農林水産省HP「知的財産総合相談窓口(地方農政局等)」
独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)「知財総合支援窓口」[外部リンク]
ア 種苗法に基づく育成者権の保護・活用
我が国において生産者や消費者のニーズに即した優良な品種の利用を続けていく上では、植物新品種を適切に保護していくことが必要であり、種苗法で登録された新品種は農業者を含め関係者皆で守っていく知的財産であることについて意識の醸成を図る。
育成者権者に無断で登録品種の種苗を増殖し、その種苗を譲渡することや、増殖した種苗を栽培し、収穫物を得ることは育成者権侵害であり、栽培の差し止めや刑事罰の対象となること、また海外持出が禁止されている登録品種であることを知りながら輸出を行った場合は、種苗法違反となり刑事罰の対象となり得ることなどについて、周知を徹底する。
更に、登録品種の種苗の取引の安全を確保し、流通の混乱を防止するため、登録品種である旨の表示や品種名称の使用義務などについても周知を引き続き徹底する。
また、育成者権者は、品種や栽培技術の流出を防ぐため、圃場への立ち入り制限や品種が特定されないよう、品種名称を掲示しないといった対応を図るとともに、特に、優良でブランド価値の高い品種にあっては、余剰苗木の発生を極力回避するとともに、余剰が生じた場合には廃棄を徹底するといった厳格な許諾管理を行う。
なお、公的機関では低廉な許諾料を定めることが多いが、種苗の価格や増殖の許諾料が低廉な場合、育成者権侵害があった際に、わずかな損害額しか認定されない可能性があることや利用者が知的財産の価値を十分に意識せず、品種保護の低さにも繋がっていることから、その品種が持つ経済的な価値を想定して、適切な価格設定を行うことが推奨される。
<関連情報>
農林水産省HP「種苗法の改正について」
農林水産省HP「品種登録制度と育成者権」(PDF : 2,245KB)
農林水産省HP「そのタネ、ほんとに大丈夫?~育成者権侵害について~」
イ 農業者の自家増殖に関する許諾契約の定着
令和2年の種苗法改正により、農業者が登録品種の自家増殖を行う場合には、育成権者の許諾が必要となった。育成者権者は許諾手続きなく自家増殖を許諾した場合、増殖実態の把握ができず、疑わしい増殖の差止め等が困難になり、海外流出につながる可能性があるなど、適正に利用する農業者への損害につながる恐れがあることを踏まえ、許諾の可否及び手続の方法を検討する必要がある。
一方、在来種(地域で代々受け継がれてきた品種)や品種登録されたことがない品種、登録期間が切れた品種の利用には、種苗法上の制限がないことを周知する。
<関連情報>
農林水産省HP「品種登録制度と育成者権」(PDF : 2,245KB)
「流通品種データベース」(植物品種等海外流通防止コンソーシアム運営)
ウ 適正な表示のある種苗の購入
農業者に対し、種苗の購入に当たっては、種苗業者の名称及び住所、種類、品種名、採種の年月(又は有効期限)及び発芽率、種苗の生産に使用した農薬の有効成分名等の適正な表示があることを確認した上で購入するよう周知徹底する。また、農業者が農薬使用基準の総使用回数を遵守できるよう、種苗の販売者に対して、種苗生産時に使用した農薬の有効成分及び使用回数を表示させる等、農薬に関する適切な情報提供が行われるよう周知徹底する。
<関連情報>
農林水産省HP「指定種苗制度」
エ 海外における育成者権の取得の促進
我が国農産物の輸出力強化につながる優良な植物品種について、海外の主要マーケットまたは模倣リスクの高い国における海外での無断増殖等を防ぐため、海外出願経費の支援等に係る事業の活用により海外での早期の育成者権の取得を促進する。
<関連情報>
農林水産省HP「植物新品種・育成者権関係、海外での育成者権取得に関する情報」
植物品種等海外流出防止対策コンソーシアムHP「植物保護植物品種保護に関する総合案内」[外部リンク]
- ア 海外の追随を許さない優れた和牛の生産のための改良・生産体制の強化
- イ 和牛の精液等の流通管理の徹底
- ウ 血統・品種等を証明する書類の適切な管理の徹底
- エ 和牛遺伝資源の知的財産としての価値の保護の推進
和牛の遺伝資源の管理・保護及びその活用を戦略的に進めることにより、付加価値の向上や輸入畜産物との差別化を通じて国際競争力の強化を推進する。
<関連情報>
農林水産省HP「家畜遺伝資源の管理・保護」
ア 海外の追随を許さない優れた和牛の生産のための改良・生産体制の強化
都道府県や関係団体は、肥育農家に対して、肉用牛枝肉情報全国データベースの家畜改良を行う上での意義、肥育農家へのメリット等を周知し、同データベースへの参加のための同意書の収集を促進するとともに、効率的な育種改良や遺伝的多様性の確保を行う観点から、SNP(一塩基多型)情報を活用した遺伝的能力評価等を推進する。
イ 和牛の精液等の流通管理の徹底
家畜改良増殖法に基づき、和牛の精液等の容器(ストロー)への種雄牛名等の表示や、譲受・譲渡の記録・保存等による流通管理を徹底する。また、精液等の不正流通を防止するため、その流通・使用の際に精液に正しい証明書が添付されていることや、契約等により示されている精液の使用者の制限に反していないこと等を確認するよう指導を徹底する。
<関連情報>
農林水産省HP「我が国の宝である和牛の遺伝資源を保護するために」(PDF:1,245KB)
農林水産省HP「家畜改良増殖法及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律の遵守の徹底について」(令和4年6月24日付け4畜産第720号農林水産省畜産局畜産振興課長通知)(PDF:531KB)
農林水産省HP「家畜人工授精用精液等の不正流通の防止について」(令和3年10月11日付け3畜産第838号農林水産省畜産局畜産振興課長通知)(PDF:136KB)
ウ 血統・品種等を証明する書類の適切な管理の徹底
家畜登録機関が発行する「子牛登記証明書」及び「登録証明書」並びに家畜改良増殖法に基づく「家畜人工授精用精液証明書」、「家畜体内・体外受精卵証明書」、「家畜人工授精簿」等の適切な管理を徹底する。
<関連情報>
農林水産省HP「家畜改良増殖法及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律の遵守の徹底について」(令和4年6月24日付け4畜産第720号農林水産省畜産局畜産振興課長通知)(PDF:531KB)
エ 和牛遺伝資源の知的財産としての価値の保護の推進
家畜遺伝資源に係る不正競争防止に関する法律による保護が受けられるよう、和牛の精液等を譲渡する際の契約締結及びその遵守を推進する。
<関連情報>
農林水産省HP「我が国の宝である和牛の遺伝資源を保護するために」(PDF:1,245KB)
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大臣官房政策課技術政策室
代表:03-3502-8111(内線3130)
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