14.畜産
牛、馬及び豚の死亡、廃用、ケガ、病気などのリスクに対しては、農業者自らが備えることが重要であるため、家畜共済に加入するよう勧める。また、家畜共済では対象とならない生乳や肉用鶏の販売収入の減少に備え、収入保険に加入するよう勧める。
ア 暑熱・寒冷・融雪対策
(ア) 暑熱対策
飼育密度の緩和や畜体等への散霧等により、家畜の体感温度を低下させるとともに、換気扇等による換気、寒冷紗やよしずによる日除け、屋根裏への断熱材の設置、屋根への散水や消石灰の塗布等により、畜舎環境を改善する。また、嗜好性や養分含量の高い飼料及び低温で清浄な水を給与する。
(イ) 寒冷対策 大雨・台風等災害対策
特に幼畜について、適切な防風・保温に努めるとともに、呼吸器病の予防のため、適切な換気にも配慮する。畜舎内やパドックが凍結した場合は、砂や融雪促進剤等の散布を行い、転倒等の予防に努める。
(ウ) 積雪及び融雪対策
積雪による畜舎の損壊や家畜の事故防止を図るため、安全には十分に配慮した上で、早めの雪下ろし及び畜舎周辺の除雪に努め、水道管等の凍結防止措置を講じる。融雪水による被害を防止するため、明暗渠の施工によりパドックの乾燥に努めるとともに、融雪水が畜舎や飼料庫に入らないよう、除雪に努める。
イ 大雨・台風等災害対策
(ア) 予防対策
冠水や浸水のおそれがある場合は、被害を最小限にできるよう、家畜及び飼料の早期移動等に努める。また、冠水等が生じたときに速やかに対応できるよう、地域において、行政機関や生産者団体等との連携によりあらかじめ停電や断水時の対応を確認する。また、停電時には、自家発電機を利用した搾乳、生乳冷却等に努める。不測の事態を考慮し、家畜を少なくとも1週間以上飼養するために必要な飼料の分量を最低在庫量として維持するよう、計画的に生産、購入する。また、飼料の保管場所については、河川の増水や土砂崩れのリスクも考慮し、分散して保管するなど工夫する。
(イ) 事後対策
冠水・浸水した畜舎については、速やかな排水に努めるとともに、水洗・消毒を実施し、疾病や病害虫の発生の防止に努める。水濡れ、土壌の付着により品質が低下した飼料の給与は、家畜の健康被害や畜産物を通じた人の健康への影響の懸念がある場合は中止すること。健康への被害や影響が明らかでない場合には、家畜保健衛生所などの指示を仰ぐ。
天候に応じて迅速に管理・収穫作業等が行えるよう、共同作業の体制・準備を十分整えておくとともに、調製法についても、例えば乾草からサイレージに切り替える等、臨機応変な対応が取れる体制とする。
<関連情報>
農研機構HP「気象リスクに対応した安定的な飼料作物生産技術の開発 技術紹介パンフレット」[外部リンク]
ア 高温・干ばつ対策
草地については、過放牧、過度の低刈り及び短い間隔での刈り取りを避け、貯蔵養分の消耗を軽減して草勢の維持に努める。また、夏枯れ等により草勢の低下が見られた場合には、必要に応じて追播や、播種直後の雑草防除等適確な維持管理作業を行う。
土壌条件等により高温の影響が大きく現れる地域では、有機質の投入などによる土壌保水力の改善を行うとともに、耐干性の優れた草種・品種の導入に努める。
また、北海道でのイネ科牧草の単播においては、春の気温が高く干ばつ傾向にあることから、発芽不良の回避や春雑草との競合の軽減が可能となるとともに、農閑期に余裕を持って播種作業ができる、初冬季播種技術の実践を検討する。
青刈りとうもろこし、ソルガム等については、収穫期が近い場合にはコストに配慮しつつかん水に努め、かん水が困難又は草勢の回復が困難と見込まれる場合は、早期に収穫を行い品質低下の防止に努める。
イ 冷害対策
冷害を受けやすい地域においては、草種・品種の組合せ等に留意し、被害を最小限に抑えるような栽培計画を立てる。特に、とうもろこしについては、冷害による被害が大きいため、早生系統の作付けを行い、適期播種に努める。
ウ 長雨対策
収穫時期が集中しないよう、地域の条件に応じて、可能な範囲で早晩性の異なる品種を組み合わせる等、作期の分散化によるリスク分散に努める。また、降雨が続く場合には、機械による収穫が難しくなったり、湿害等により生育不良等を招くおそれがあるため、小排水溝、落水口の設置等による排水の改善に努める。
適期に収穫できず刈り遅れた飼料作物については、サイレージ調製時に添加剤を使用するなど品質確保に努めるとともに、家畜への給与の際は品質低下に留意し、適切な飼料設計等を行う。
エ 台風対策
とうもろこし、ソルガム等の作付けに際しては、耐倒伏性に優れる品種を選定するとともに、施肥管理や栽培密度に留意し、倒伏の防止を図る。その際、春先にスラリー散布を行ったほ場では、早期刈り取りを行う場合に飼料中の硝酸態窒素濃度が高くなる傾向にあることから、必要に応じて分析を行い、粗飼料中の硝酸態窒素濃度を確認する。また、台風の常襲地帯では、収穫が台風シーズンに当たらないよう作期の設定を行う。台風等に当たると予想される場合、糊熟期以降であれば、収穫適期に達していなくても、被害軽減のために収穫作業を一部前倒して開始することも検討する。また、冠水や浸水等の被害を受けたほ場においては、速やかな排水に努める。倒伏した場合は速やかに収穫し、品質の低下を防ぐ。裏作が可能な地域において収量の低下が見込まれる場合は、イタリアンライグラス等の早生品種を作付けして早期収穫することにより、越冬用粗飼料を確保する。また、二毛作が困難な地域においては、可能であれば、永年性牧草の三番草を収穫する。
オ 積雪及び融雪対策
融雪が遅く、雪腐病の被害が懸念される場合又は播種作業を早期に開始する場合には、必要に応じて融雪促進剤を散布するとともに、融雪水が停滞しやすいほ場では、適切な排水対策に努める。また、収量確保のため、融雪・排水後に周辺環境への影響にも配慮しつつ、速やかに追肥や追播を行うなど、適切な肥培管理に努める。
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