ドールン氏(オランダ人長工師)復命書

資料の現代語訳
水を猪苗代湖から引き、これを福島県の稲田に注ぎ入れるための溝渠の計画
私は、かつて貴下の依頼により、仙台から東京へ帰る途上で、しばらく福島県に滞在し、同県にある荒野を変えて稲田とするのに、猪苗代湖からの水で灌漑をおこなう事の成否を点検した。
私は他の事務のために、その地に滞在した日時はほんの少しであっても、奈良原、南と他の諸氏の抜群な助けにより、その件につき好意見を集め賛同を得た。これを貴下に報告し、私の満足を表す。右の諸氏は、福島県ではすでに長く仕事に従事する者であり、詳細な調査と測量を多く実施している。また、重要な事についての解説を受けることが多かったので、私は、もう長く現地に留まらなくて良くなった。そして私は今、その調査及び測量に基づき、実際に考え終わった。信じて言うが、計画の挙行には、その手段がよろしく行われるべきのみならず、なお全く大難事が来ないようにと示された上で、溝渠の方向が山潟から熱海等の方に走るものは、ここに必要とされる暗溝で、長さ202間(約367m)に過ぎず、大費用が無くても溝渠を穿つのに叶う土地を占めるものであり、私が見たところ、とてもこの選択は良いと思う。また、話しに上った他の二箇所の方向を詳しく点検してはいないが、費用の観点からしても、こちらの場所の選択を良しと言って良いと信じる。これは他の地の方では各暗溝の長さが多く必要となり、特にこのような巧工を施こすには費用がとても多くなるだろうということによる。
私には、溝渠とその付属の工事に充てる完全な計画を建てる機会と時間が無い。そのため溝渠について最良にして費用のなるべく少ないものを選ぶことは、奈良原、南等の諸氏に委ねる。そして只一つ、二つの理論を述べるが、必要とされる水量を定めること、溝渠および堰の尺度を計算すること、また、その所に計画の溝渠は、全て猪苗代湖からの水で養われている日橋河畔の需要を損害しないことを表すことにとどめる。
(以下、省略)
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