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農林水産省

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特集1 食生活(4)

[食育の取り組み1]本物の技と味を知る―料理の達人が「給食」で全国に広げる和食体験



ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」。その保護と次世代への継承のため和食の料理人が学校を訪問し、調理、実食を行う活動が「和食給食応援団」です。

米や出汁の本当のおいしさを知ってもらいたい、と腕利きの料理人たちが協力を惜しまない。
米や出汁の本当のおいしさを知ってもらいたい、と腕利きの料理人たちが協力を惜しまない。



和食の旗手が大根のかつらむきやきゅうりの飾り切りを紹介。
和食の旗手が大根のかつらむきやきゅうりの飾り切りを紹介。
和食料理人が栄養士などと協議しながら考え出した和食献立を提供。
和食料理人が栄養士などと協議しながら考え出した和食献立を提供。


学校給食の献立を考案し目の前で調理を実演
若手の和食料理人が小中学校の給食関係者と協力して考案した和食の献立の給食を調理し、子どもたちと食べる。

この活動の立ち上げに関わった合同会社五穀豊穣の代表・西居豊さんは、農作物流通コンサルタントとして一次産業の雇用創出や販路拡大を手がけるうち、消費者である食べ手を育てることが必要、と考えるようになったのがきっかけといいます。

「取引先の米生産者や漁業者と一緒に学校を訪れ、ボランティアとして食育の授業を行ったのですが、その際、給食に出てきたのがパンであり、洋食でした」

米飯離れや和食文化の衰退の危機を肌で感じた西居さんは料理人の協力を得て、平成23年に学校で和食文化を伝える活動を始めました。

和食料理人の知恵と工夫でさまざまな課題をクリア
平成25年度には農林水産省が和食給食の推進を事業化し、農林水産大臣から認定を受けた活動体は「和食給食応援団」という名称になりました。

和食給食の試みを進めるにあたり、課題も少なくありませんでした。一般的な給食施設では本格的な和食の調理器具がほとんどなく、1食あたりの食材費の上限も定められていたのです。

「当然、学校給食は徹底した衛生管理が要求され、当日納入・当日調理が原則ですが、前日の仕込みを許可してもらうのではなく、ルールを守りながら、いかにおいしい給食を作るか工夫をこらしました」

全国70校・地域で約49万食を提供するに至った成果
和食給食に対する子どもたちの反応は上々です。

「肉のうま味は脂によって際立つので、学校給食では子どもの食べ残しが少なく、わかりやすい洋食を中心とした献立が選ばれやすい傾向があります。でも、きちんと引いた出汁(だし)であれば、子どもたちは、おいしい、と喜んでくれます。しかも体に良いうえ、和食は季節の伝統行事、先人の知恵、地域の伝統などとも関わりがあり、食育ではこれらも学んでもらえます」

初年度、都内を中心とした6校でスタートした事業ですが、昨年度までに全国70校・地域で約49万食を提供するに至りました。また訪問した学校では、週あたりの米飯の平均実施回数を0.4回、和食を0.8回増やしたいと回答しています。

現在では、この活動に賛同する食品企業が40社を超えています。和食を守り、普及させようとする人たちの輪が学校給食を介して全国に広がりつつあります。


料理人が大量調理用にアレンジした二番出汁の引き方を実践。 料理人が大量調理用にアレンジした二番出汁の引き方を実践。


写真左から、沖縄県那覇市立金城小学校、東京都足立区立鹿浜第一小学校、岩手県盛岡市立河北小学校、東京都中央区立泰明小学校の和食献立給食。
写真左から、沖縄県那覇市立金城小学校、東京都足立区立鹿浜第一小学校、岩手県盛岡市立河北小学校、東京都中央区立泰明小学校の和食献立給食。



取材・文/下境敏弘
写真提供/和食給食応援団


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