特集1 砂糖(3)
[さとうきび生産地を訪ねて] 鹿児島の伝統、沖縄の宝 さとうきびを育てる島の人々
鹿児島県 種子島
![]() 「TOPS3000」は1市2町それぞれで支部を作り、経営や耕作の技術向上のための情報共有などを進めている。 |
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![]() さとうきびの茎の高さは2~4メートルにもなる。 |
![]() 支援組織を利用して機械化を推進、機械刈りが85パーセントほどまで進んだ。 |
![]() 島にある製糖工場。 |
伝統を守るため集結した種子島の若手農業者たち
砂糖の原料となるさとうきびは暖かい気候を好むため、鹿児島県では南西諸島で生産されています。諸島の最北部にある種子島では「オーギ」と呼ばれ、江戸時代から栽培されていた伝統がありますが、現在、高齢化の進行とともに生産農家が減少傾向です。
「危機感を持った行政、JA、試験場など地域の関係機関が結束し、3年前に"Win-Winプロジェクト"を立ち上げました」と語るのはメンバーの一人で、島に工場を置く新光(しんこう)糖業株式会社の農務部長を務める長野研一さんです。
昨年6月には種子島糖業振興会の支援を受け、5ヘクタール以上の農地を持ち、経営・栽培技術の向上を志す島の若手農業者が「TOPS3000」という組織を結成。「T」は種子島、「O」はオーギ、「P」はプロフェッショナル、「S」はサクセサー(後継者)、3000には3000町歩(ちょうぶ)(※)の作付けを目指すという思いを込めた名称です。
「島では植え付けや管理作業の受託の件数が増えており、これに応えるため若手農家が熱心に取り組んでいます」と長野さん。
島の伝統作物を守ろうと立ち上がった45人の有志が熱心な活動を展開しています。
※1町歩=10反=約9,900平方メートル
砂糖の原料となるさとうきびは暖かい気候を好むため、鹿児島県では南西諸島で生産されています。諸島の最北部にある種子島では「オーギ」と呼ばれ、江戸時代から栽培されていた伝統がありますが、現在、高齢化の進行とともに生産農家が減少傾向です。
「危機感を持った行政、JA、試験場など地域の関係機関が結束し、3年前に"Win-Winプロジェクト"を立ち上げました」と語るのはメンバーの一人で、島に工場を置く新光(しんこう)糖業株式会社の農務部長を務める長野研一さんです。
昨年6月には種子島糖業振興会の支援を受け、5ヘクタール以上の農地を持ち、経営・栽培技術の向上を志す島の若手農業者が「TOPS3000」という組織を結成。「T」は種子島、「O」はオーギ、「P」はプロフェッショナル、「S」はサクセサー(後継者)、3000には3000町歩(ちょうぶ)(※)の作付けを目指すという思いを込めた名称です。
「島では植え付けや管理作業の受託の件数が増えており、これに応えるため若手農家が熱心に取り組んでいます」と長野さん。
島の伝統作物を守ろうと立ち上がった45人の有志が熱心な活動を展開しています。
※1町歩=10反=約9,900平方メートル
沖縄県 宮古島
![]() 川満長英さんがおのでキビを倒し、奥さんが押し切りで2節苗に調整するなど、息の合った作業を行うご夫婦。 |
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![]() 地下ダムの水を活用して適宜かん水し生育を促している。 |
![]() 植え付け前のさとうきびの苗は、袋に入れ、石灰水に一昼夜浸す。 |
![]() トラクターでつくった溝に苗を手植え。畑には風対策のための防風林を整備している。 |
土づくりにこだわる宮古島の名人の思い
台風や干ばつにたびたび襲われる沖縄県では、厳しい気象条件のもとでも比較的安定した生産が可能なさとうきびは重要な作物で、その栽培面積は県の耕地面積の約5割を占めるほどです。
県内有数の産地、宮古島の専業農家の川満長英(かわみつちょうえい)さんは、さとうきびを「島の宝」と呼び、「強風で倒れても再び起き上がり、水不足が続いても雨が降れば新たな葉を出してくれる。特に川も湖も無い離島では、かけがえのない存在」と語ります。
2009年度の沖縄県さとうきび優良事例調査で糖度、収量ともに県1位の成績を収めた川満さんが力を入れているのが土づくりです。「島尻マージ」と呼ばれる宮古島の土は地力が低いうえ、硬く締まりやすいことから、そのままではさとうきびは地下1メートルほどに達する根を十分に伸ばすことができません。
そこで川満さんは土づくりとしてマメ科の下大豆(げだいず)を休耕期に緑肥として育てて鋤(す)き込み、その後、透水性をよくするため深く耕すようにしています。こうすることにより、雨の後の土壌の流出も防げて海も守れるといいます。
上野地区さとうきび生産組合長として技術普及のための体験学習や新規就農者の受け入れにも取り組む川満さんは「何より大事なことは毎日、畑に出て、愛情を注いで育てること」と微笑みます。
台風や干ばつにたびたび襲われる沖縄県では、厳しい気象条件のもとでも比較的安定した生産が可能なさとうきびは重要な作物で、その栽培面積は県の耕地面積の約5割を占めるほどです。
県内有数の産地、宮古島の専業農家の川満長英(かわみつちょうえい)さんは、さとうきびを「島の宝」と呼び、「強風で倒れても再び起き上がり、水不足が続いても雨が降れば新たな葉を出してくれる。特に川も湖も無い離島では、かけがえのない存在」と語ります。
2009年度の沖縄県さとうきび優良事例調査で糖度、収量ともに県1位の成績を収めた川満さんが力を入れているのが土づくりです。「島尻マージ」と呼ばれる宮古島の土は地力が低いうえ、硬く締まりやすいことから、そのままではさとうきびは地下1メートルほどに達する根を十分に伸ばすことができません。
そこで川満さんは土づくりとしてマメ科の下大豆(げだいず)を休耕期に緑肥として育てて鋤(す)き込み、その後、透水性をよくするため深く耕すようにしています。こうすることにより、雨の後の土壌の流出も防げて海も守れるといいます。
上野地区さとうきび生産組合長として技術普及のための体験学習や新規就農者の受け入れにも取り組む川満さんは「何より大事なことは毎日、畑に出て、愛情を注いで育てること」と微笑みます。
取材・文/下境敏弘