清流の地で旬にこだわった野菜作りを(群馬)
櫻井細香(さやか)さん(47歳)・群馬県桐生市
自分で作った野菜を食べる感覚が新鮮だった
東京育ちの櫻井細香さんは、大学を出た後、長野県の福祉施設で働き、障害者とともに農作業に取り組むことになりました。そのとき、採れたての野菜の味に感動し、農業という仕事に新鮮さを感じたといいます。
「体を使って働き、自分で作ったものを自分で食べる。しかも作ったものを人の手に届ければ、おいしさという喜びが生まれる。たんに稼ぐだけの仕事ではない、と興味を持ったんです」
福祉施設の同僚だった大輔さんと結婚し、夫の実家のある群馬県桐生市に転居。そこで小さな家庭菜園を借りていましたが、より広い農地で旬にこだわった有機農業を行いたい、という夫婦の気持ちが一致し、桐生市役所に相談に行きます。「担当者が親切な方で、個人的な紹介のようなかたちで役場を退職された地主さんを紹介してくれました」
地主さんから2005年に桐生市と合併した黒保根村(当時)の農地を借りられることになり、自宅用の土地も見つかりました。清らかな渓流があり、緑に包まれた山あいに移り住んだのが2011年です。
畑から旬の野菜を直送
健康な土で元気な野菜を育てたい、と土作りにこだわる櫻井さん。落ち葉や米ぬかなどで堆肥を作り、露地ものの野菜を中心に年間50種類以上の作物を育てています。
収穫のない3月から4月は食品加工の作業にあてて、切り干しにんじんや切り干し大根、ジュース、ジャム、梅干し、味噌、たくあんなどを手作りしています。
野菜や加工食品の販売も自分たちで行うことにしました。月に2回、個人やお店など100人くらいの顧客に採れた野菜の情報をメールで送信し、注文があれば配達します。
「お届けしたとき、直接お話ができるので、家族構成や食の好みが分かるようになり、畑で働いているときも、お客さんの喜ぶ顔が思い浮かんで励みになります」
個別の注文に応じる他、旬の野菜を7種から10種、箱に詰めた「おませかセット」も用意しています。「子育て中のママさんにも気軽に利用していただけるよう、スーパーと同じような値段にしています」
自分たちに向いた小さな農業を
移住して3年後、野菜を育てることや食べることを楽しんでもらえる場、出会いや楽しさを共有できる場を作りたい、という思いから、「和(なごみ)や」を立ち上げました。人と自然が穏やかに調和することを表現したネーミングです。
櫻井さんは、野菜ソリムエの資格を取り、野菜のおいしい食べ方を知ってもらいたい、と公民館などで料理教室を開いている他、群馬県の「農村生活アドバイザー制度」や地元の女性農業者のグループの活動にも参加しています。「食への興味から人のつながりができ、自然といろいろな仕事をするようになりました」
プライベートも充実しているといいます。「私たちの住む地区はもとからの住民より移住者のほうが多くなっていて、燻製を作って販売したり、キャンプ場を経営したりされています。カヌーやクライミングを趣味にしている人から教えてもらうこともあります」
豊かな自然環境での農業の魅力を「経済的な尺度ではなく、豊かな生活をできる」と表現する櫻井さん。今後について「収穫量を増やすのでなく、野菜の質を上げ、生産を安定させて、自分たちに向いた小さな農業をきちんとしたかたちにしていきたいですね」と語ります。
私のピカイチ
黒保根町は赤城山の
表流水を水道としていて、
おいしい米や
野菜ができます。
どんな移住支援があるの?
新規就農者に補助金
桐生市では、条件をクリアした50歳未満の認定新規就農者に、経営が軌道に乗るまで最長5年間、毎年最大で150万円の補助金を交付する「農業次世代人材投資事業」の制度があります。
また、定住促進策として、「空き家・空き家バンク」や「お試し暮らし住宅」、空き家のリフォーム補助(最大100万円)、住宅の新築・購入補助(最大200万円)なども行っています。
さらに黒保根町の場合、一定の条件を満たし10年以上定住すると、定住奨励金として結婚祝金(5万円)、出産祝金(5万から15万円)、新築等祝金(増改築含む)(10万または15万円)が支給される制度や、移住者向けの「定住促進住宅」もあります。
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