都市部でも本格的な農業はできる!
宅地化が進んだ都市部でも産業としての農業が成立しています。地域に根を張り、代々の畑を守って、素晴らしい農産物を作り続けているプロの生産者もいます。
都市農業は野菜生産が主
都市農業は、農産物を供給する他、住民の農業体験の場になったり、貴重な緑地として良好な景観を形成したり、多様な機能を持っています。
2015年の都市農業振興基本法、2016年の都市農業振興基本計画で、都市に残る農地の位置付けが、「宅地化を進める」から「都市にあるべきもの」へと見直されました。
都市農家のメリットは一大消費地の消費者に近いので、新鮮なものを届けられることです。東京都特別区や大阪市などの主要都市では、主に野菜類が生産されています。全国の市街化区域内には約23万戸の農家があって、その農地面積を合計すると6.9万ヘクタール。都市農家の農地面積は全農地の2パーセントくらいに過ぎませんが、戸数と販売金額はいずれも全体の約1割を占めています。
東京でおいしい野菜を栽培
ほぼ通年で栽培するための工夫
小松菜は徳川幕府8代将軍の吉宗によって命名されたといわれています。発祥の地である東京都江戸川区は見渡す限りの住宅地ですが、今もこの地で小松菜を育て続ける農家もあります。
その1つ、門倉農園には4カ所、計35アールの畑があり、すべてハウスで、出荷量は月平均2トンです。農園主の門倉周史さんは「苦みが少なく、水分量が多いので、生のままサラダで食べるのがおすすめです」と品質に胸を張ります。
都内に畑があることのメリットとして、消費者に近いため新鮮な状態で届けられるということがあります。さらに、「東京湾からミネラル分を含んだ潮風が吹き込むなど発祥の地だけあって栽培に適した土地」でもあると言います。
みずみずしい小松菜を作るには土作りも大切です。門倉さんは雑草を1本ずつ手で抜き、8月は栽培を中止して土作りに力を注ぐようにしています。「老舗のうなぎ屋のタレのように長い間、手間をかけてきた土はやわらかくて、有益な微生物を多く含んでいます」
小松菜の旬は冬ですが、門倉農園では8月以外は1年を通して作っています。「暑い時期は、虫にやられたり、気温にやられたり、生産が難しくなります。ほぼ通年の栽培を実現するため、種の落とし方を季節で変えたり、水やりを工夫したり、試行錯誤してきました」
小松菜発祥の地のプライド
「父は神田の青果市場で最高値を最年少で取るほどの名人でした。祖父や父の仕事ぶりを間近で見ていたので、小学校に上がる前から、将来の夢を聞かれると『こまつなをつくるひと』と答えていました」
今や門倉さん自身、江戸川区の品評会で5年連続特選を受賞している若き名人です。「限られた農地でやっていくため、地方の大規模な農業に負けない、賞を取れる品質の小松菜を作り続け、ブランド力を上げられるように努力しています。ASIAGAP(注)の認証を受け、東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村に食材提供できる資格も得ました」
出荷するのはほとんどが契約先で、袋づめのものはデパートや高級スーパーに出します。「努力しただけ自分に返ってくるのが、農業のおもしろさです。また、単価を自分で決められれば、安定した収入につながります。魅力ある都市農業の経営の形を作り上げることで、後に続く人に道筋をつけたいですね」と門倉さんは微笑みます。
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