
2 熱い想いで挑戦 目指すはプロフェッショナル!
農業高校の生徒たちが、専門知識を学び成長する機会として、多種多様な大会やイベントへの参加があります。ここでは、そういった場で日頃培った高い技術力を活かして、優秀な研究成果を上げた農業高校を紹介します。

もっと知ってほしい農業高校生の底力
自由な観点や発想で研究成果を競う大会や、イベントに積極的に参加している農業高校の生徒たち。熱い気持ちでチャレンジする農業高校生たちの姿をお伝えします。
ウチの牛こそ日本一
高校牛児たちの熱い戦い!
「和牛甲子園」
「和牛甲子園」(主催:全国農業協同組合連合会)は、全国の農業高校などで和牛を飼育している高校牛児(高校生)と、彼らが育てた和牛を集めて、牛児たちの和牛肥育の取り組み内容の発表(取組評価部門)と、その成果である枝肉の品質(枝肉評価部門)の2部門で競い合う大会です。2018年1月に第1回大会が開催され、第1回・第2回大会は岐阜県立飛騨高山高等学校が、第3回大会と、今年行われた第4回大会は鹿児島県立市来農芸高等学校が、総合評価部門最優秀賞の栄誉に輝いています。各校から高い技術レベルの工夫あふれる取り組みが報告されています。


第4回「和牛甲子園」開催!
過去最多33校47頭が参加
第4回「和牛甲子園」は2021年1月15日に開催され、出場校は19県33校から、和牛47頭が参加して頂点を競い合いました。今回の大会は新型コロナウイルスの感染拡大防止のためオンライン配信となり、高校牛児たちは各学校の教室からリモートで参加しました。
取り組みの評価となる体験発表会は、各学校が事前に収録したプレゼンテーション用動画を流しながら、肥育体験、飼養、研究とその成果などに対しての発表が行われました。また、肉の品質評価は、東京都中央卸売市場食肉市場において、出品牛ごとに肉の重量や光沢、脂肪の質や付着状態、ロース芯の面積やバラの厚さ、おいしさの指標となるオレイン酸値など、細部にわたって肉質の審査、講評が行われました。
各校の参加牛の枝肉の競りの模様が配信された後、いよいよ結果の発表です。参加校の牛児たちが息を詰めて見守る中、鹿児島県立市来農芸高等学校が前回大会に続き総合評価部門最優秀賞の栄誉に輝きました。
なお、各賞の受賞校は以下の通りです。
総合評価部門 | 1校 | 鹿児島県立市来農芸高等学校 |
---|
最優秀賞 | 1校 | 鹿児島県立市来農芸高等学校 |
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優秀賞 | 2校 | 愛知県立渥美農業高等学校 |
山口県立大津緑洋高等学校 | ||
優良賞 | 3校 | 佐賀県立唐津南高等学校 |
山形県立村山産業高等学校 | ||
岩手県立水沢農業高等学校 | ||
審査委員特別賞 | 1校 | 鹿児島県立鹿屋農業高等学校 |
高校牛児特別賞 | 1校 | 鹿児島県立市来農芸高等学校 |
最優秀賞 | 1頭 | 鹿児島県立市来農芸高等学校 |
---|---|---|
優秀賞 | 2頭 | 栃木県立鹿沼南高等学校 |
岐阜県立飛騨高山高等学校 | ||
優良賞 | 3頭 | 岩手県立水沢農業高等学校 |
島根県立出雲農林高等学校 | ||
鹿児島県立鹿屋農業高等学校 | ||
審査委員特別賞 | 1頭 | 岩手県立水沢農業高等学校 |



第4回「和牛甲子園」最優秀校を訪問
鹿児島県立市来農芸高等学校
(鹿児島県いちき串木野市)
第4回大会では、鹿児島県立市来農芸高等学校が昨年に続く総合評価部門最優秀賞を受賞、さらに取組評価部門、枝肉評価部門でも最優秀賞に輝き、3部門の完全制覇を達成しました。
同校の畜産部は、県内の雄牛の精子を購入し種付けは校内で行っています。現在飼育している80頭ほどの牛はすべて校内で誕生。牛たちには各部員の名前を付けて育てることが同校の伝統です。毎日そうした牛たちの世話をするのは、現在畜産部に所属する13人の部員たち。今大会に出品した牛は、現在の3年生が1年生の時に生まれた「健六号」と「雅生号」の2頭で、それらも部員の名前からとっています。
昨年も総合評価部門の最優秀賞を獲得しましたが、枝肉評価部門では優良賞にとどまりました。最優秀賞を逃した悔しさが忘れられず、今年の大会では完全制覇を目指し、部員一丸となって挑んだといいます。大会に挑むにあたり、前回大会の課題を書きだした結果、「健康な牛の肉はおいしい」という結論に達し、今回は「健康な牛づくり」をテーマに設定しました。牛のストレスの軽減を目的に、牛たちがよく食べてよく眠れる快適な環境づくり。雄牛に多いといわれる尿石症も1週間に1回、尿のpHを測って数値が上昇したら利尿剤を投与する、といった健康管理を徹底。また、前回大会で、脂肪が厚く付いてしまったという点を踏まえ、肉の品質を左右する給餌量を調節することや、以前から取り組んできた肉のおいしさに関連するオレイン酸の数値の研究をさらに深め、数値を上げるために、エサにきな粉とトウモロコシの粉を混ぜることにしました。こうした努力が実を結び、肉質はA5ランク格付け、枝肉評価部門も最優秀賞を受賞しました。


「大会出場の目的のひとつは日々行っていることや努力してきたことが、全国ではどのレベルなのかを知りたかったからです。また、他の参加校の発表から気づきを得ることも有意義でした。高校3年間、大会に向けていろいろな研究をしてきました。すぐに成果が出ることはありませんが、毎日コツコツと積み上げていくことが大切だということも学びました」と部員の中養母(なかようぼ)さんは話してくれました。
また、同部の上田平(うえたびら)さんは「和牛甲子園では、2頭の出品牛の命を通して学ばせてもらい、良い結果を得ることもできました。牛たちには部員全員が感謝をしています。経済動物ではありますが、誕生から出荷までの2年半の期間を幸せにできるのは、飼育している自分たちだけです。出荷の時に悲しみを持って送り出すよりも、私たちが育てた肉と自信を持って送り出すほうが、この子たちにとっても幸せだと考えて毎日接してきました」と話してくれました。前回大会は東京の会場に行けたのは代表者のみでしたが、今回は部員全員がオンラインで立ち会えたので喜びを分かち合えたというメリットもあったそうです。





さまざまな大会・イベントで活躍する農業高校生たち
企業や団体、各分野の専門家の人たちと競う大会に参加し、活躍する生徒たちを紹介します。
「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」で
高校初のグランプリ
岐阜県立岐阜農林高等学校(岐阜県北方町)
岐阜県立岐阜農林高等学校は創立120年の伝統と歴史を誇る学校です。同校の流通科学科では、2018年から「課題研究」の一環としてGAP(農業生産工程管理)に取り組み、岐阜県内で初めて学校農場でのグローバルGAPを米で取得しました。また、2020年には農山漁村活性化の優良事例が選定される「第7回ディスカバー農山漁村(むら)の宝」(主催:農林水産省)で、企業や一般グループが参加する中、みごと高校生が初のグランプリに輝きました。GAP認証の柿によるパスタの開発、品質管理を徹底した新品種米の普及や、地域の農家の方々に生徒たちがアドバイザーとしてノウハウを伝えGAP認証取得の支援をするなど、地域農業に対して多大な貢献をしたこと、さらに東京オリンピック・パラリンピックの選手団のホストタウンとして、同校が生産するグローバルGAP認証の米「縁結び」と県産の食材を使った料理の提供や、同校生徒が実演する日本伝統の神前結婚式などを通したおもてなし企画など、幅広い取り組みが総合的に評価され受賞に至りました。


まだまだある!
農業高校生が活躍する
大会・イベント
農業高校生たちがチャレンジする大会は多数あります。たとえば高校生たちが育てた米のおいしさを競う「全国農業高校お米甲子園」や、造園家を目指す一つの目標ともなっている「全国造園デザインコンクール」、農や食に関するプロジェクトや課題研究に挑戦する「全国高校生農業アクション大賞」などです。また、毎年日本で開催される「世界らん展」の2020年大会では、高い技術を持った生産者などの作品が応募される中、ショーディスプレイクラス最優秀賞に岐阜県立恵那農業高等学校が、ハンギングバスケット部門最優秀賞には東京都立農産高等学校定時制園芸部&創作造形部の作品が選ばれています。


(PDF : 615KB)
編集後記
今週は、農業高校生が自分たちの目標に向かってチャレンジする姿をご覧いただきました。生徒の皆さん、素晴らしい笑顔をしていますよね。本当はもっと多くの姿をご紹介したかったのですが、紙面の関係でかなわず残念です。いま全国で約300校ある農業高校では、生徒の皆さんがそれぞれの夢や目標に向かってエネルギッシュに活動しています。別の機会をとらえて、そんな姿をさらにご紹介できたら良いなと思います。(広報室SD)
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