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農林水産省

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aff 2022 SEPTEMBER 9月号
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農林水産業者の朝

農林水産業者の朝

第4回 米農家の朝 第4回 米農家の朝

農事組合法人 カミハヤ 
[新潟県新潟市]

新潟駅から車で20分ほどの
亀田早通地区で稲作を手がける、農事組合法人「カミハヤ」。
その水田を訪ねたのは、夏真っ盛りの7月下旬。
コシヒカリの穂肥(ほごえ=追肥作業)初日です。
夏場は酷暑の時間帯を避け、涼しい午前中に集中して
仕事をするという4人の姿を追いました。

左から畦田悠規さん、坂上雅之さん、
代表理事の鷲尾徳昭さん、杉本良介さん

PROFILE

鷲尾徳昭さん、坂上雅之さん、杉本良介さんは、いずれもこの地区の米農家に生まれた幼なじみで現在40代前半。3人は持続可能な稲作を目指し、2016年に農事組合法人 カミハヤを設立。地域の人々から委託を受けた65ヘクタールの水田で、新潟次郎、ゆきん子舞、こしいぶき、コシヒカリ、にじのきらめき、新之助、キヌヒカリ、あきだわらの計8品種を栽培している。2022年春に畦田悠規さんが仲間に加わり、現在は4人体制で稲作を行う。また、米以外に大豆や小麦作りにも挑戦している。

豊かな秋の実りのために
栄養を与える夏の朝

AM4:00 事務所に集合、打ち合わせ AM04時00分 事務所に集合、打ち合わせ

夏場の始業時刻は、なんと夜明け前の午前4時。外はまだ真っ暗です。事務所に集合し、当日の作業について打ち合わせが始まります。この日は、3日かけて主要品種のコシヒカリに穂肥をするという初日。パソコンやスマートフォンの地図アプリで田んぼの位置を確認しながら、誰がどこを担当するかなどを決めていきます。

AM4:30 肥料や散布機の準備 AM04時30分 肥料や散布機の準備

空が明るくなってきました。穂肥用肥料や背負い式動力散布機、燃料を軽トラックに積み込み、コシヒカリの田んぼへ向かいます。この日は7ヘクタールの田んぼに穂肥を行う予定です。

MORNING TIPS

サマータイム導入で効率アップ

「去年までは夏場でも朝8時始まり、夕方終わりでした。でも日中が暑すぎて、長い昼休憩をとらないと体がもたないんですよね。そこで今年から朝4時スタート、昼12時終了というカミハヤ的サマータイムを導入しました。12時までに終わらせると決めて、早朝の涼しい時間帯に集中して仕事をすることで、効率が上がっています」(鷲尾さん)

AM5:00 稲の生育状況をチェック AM05時00分 稲の生育状況をチェック

夏の太陽を浴びて、稲がぐんぐん成長しています。田植え前の耕起のとき、田んぼの土全体にまいておいた基肥(もとごえ)は、茎や葉が成長するための栄養として使われます。この時期になると、基肥がだいぶ少なくなっているため、これから出てくる穂に栄養を補給し、もみを充実させるべく、穂肥をします。散布時期の目安は出穂(しゅっすい)の10日前です。

出穂前日数を把握するために必要なのが、幼穂(ようすい=茎の中にできる穂の赤ちゃん)の長さを測ることです。平均的な生育の茎をいくつか選び、カッターで縦に割って中身をむき出し、定規で長さを測ります。「コシヒカリは幼穂が1センチメートル以下のときに肥料をまくと、節間が急激に伸びて秋に倒伏(とうふく)してしまいます。それを防ぐために、1センチメートルを超えてから肥料をまきます。今日は2センチメートルですね」と坂上さん。倒伏とは稲が倒れてしまうこと。栄養の移行がうまくいかなくなり、収穫量や品質の低下につながります。特にコシヒカリは倒伏しやすいので注意が必要なのだそうです。

指標はほかにもあります。それは、草丈と葉色。地面の際から一番長い茎の葉の先端までの長さを定規で測るのに加えて、葉緑素計で葉をはさんで色の数値を測ります。この日は、測定結果から穂肥の適期と判断しました。計測データは肥料の量を調整するのにも役立ちます。穂肥は生育状況を見極めながら行うことが重要なのですね。

AM5:30 穂肥開始 AM05時30分 穂肥開始

鷲尾さんと坂上さん、杉本さんと畦田さんの2人1組に分かれて、それぞれの担当エリアへ。まず動力散布機に肥料と燃料を入れます。

動力散布機を背負ってエンジンをかけると、ブーンというエンジン音とともに、噴管から肥料が勢いよく飛び出してきます。噴管を左右に動かしながら、田んぼの周囲や中を歩いて散布していきます。動力散布機の重量は8キログラムほど、タンクに入る肥料の重量は最大20キログラム。これを背負って真夏の猛暑下に行う穂肥作業は、かなり重労働であることがうかがえます。

「田んぼごとに肥料をまんべんなく散布したいので、肥料のなくなり加減を気にしながら、歩く速度を調整しています」と坂上さん。肥料は少なすぎても多すぎても稲にとってよくありません。適量をいかに均一に散布できるかは、生産者の技量によるところが大きいのです。

AM7:00 朝食 AM07時00分 朝食

疲れてきた7時ごろに、朝食をとるため作業を中断します。家が近い鷲尾さん、坂上さん、杉本さんは自宅に戻ります。事務所で手作りのおにぎりをほおばるのは、家が遠い畦田さん。「米作りがしたい」と29歳で地元新潟の農業大学校に入り、2年間学んでこの春卒業したばかり。「カミハヤ」期待のニューフェイスです。

AM07:30 休憩、打ち合わせ AM07時30分 休憩、打ち合わせ

30分ほどで3人が戻ってきました。休憩がてら、作業の進捗状況を共有します。

MORNING TIPS

朝食はやっぱりごはん派

「僕の場合、パンだとお昼までもちません。負荷のかかる作業をしていると、途中でおなかが空いてしまうんですよね。だから朝は絶対ごはん。今日は納豆をかけて、なすの味噌汁、ソーセージ、サラダと一緒に食べました。朝早くから働くと、朝食がおいしいです」(鷲尾さん)

AM08:00 穂肥再開 AM08時00分 穂肥再開

また2チームに分かれ、軽トラで少しずつ移動しながら穂肥をします。肥料がなくなったら、軽トラに戻って動力散布機のタンクに入れ、田んぼの中に入っていくという繰り返しです。徐々に気温が上がってきました。空は曇りがちですが、それでもお昼に近づくにつれ、暑さが増して汗が止まらなくなります。12時まで散布し、この日の作業は終わりました。

豊かな秋の実りのために行う夏の穂肥。こうした米農家の努力があって、私たちは毎年、おいしいお米が食べられるのですね。新米の季節が待ち遠しい、ある夏の朝の様子をお届けしました。

COLUMN

地域の農業を守り、
多くの人に毎日食べてもらえる
米を作り続けたい

日本の農業の担い手は、高齢化が進んでいます。ここ新潟市の亀田早通地区も、そうした地域のひとつで、後継者不在で耕作できなくなる農地が増えています。そんな地域の農業を守りたいと立ち上がったのが、鷲尾さん、坂上さん、杉本さん。3人が力を合わせることで、地域の人々から多くの農地を受託できるようになり、栽培面積は年々拡大しているといいます。「カミハヤ」のメンバーは、畦田さんのようなやる気のある次世代を育成し、多くの人に毎日食べてもらえる米を作り続けたいと、日々奮闘しています。

(PDF:16,527KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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