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aff 2023 APRIL 4月号
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農林水産業者の朝

農林水産業者の朝

第11回 ギンザケ養殖業者の朝 第11回 ギンザケ養殖業者の朝

佐藤正浩さん
[宮城県本吉郡南三陸町]

宮城県南三陸町の志津川湾は、養殖ギンザケ発祥の地。
佐藤正浩さんは、この恵み豊かな海で
長年、ギンザケの養殖に情熱を注いでいる生産者です。
水揚げシーズンを前に、大きくておいしいサケに育つようにと
エサやりに精を出す佐藤さんの朝に密着しました。

PROFILE

1967年生まれ。ギンザケ養殖を行う漁師の父の背中を見て育ち、18歳から自身も養殖に携わる。地元の2代目仲間と結成した「戸倉銀鮭養殖部会」の部会長。

恵み豊かな南三陸の海で
エサを与え、魚を育む

AM5:30 出港準備 AM05時30分 出港準備

2月下旬、夜明け前の波伝谷(はでんや)漁港。佐藤さんは大量のエサやコンテナ、パレットを漁船に積み込んでいます。目の前に広がる志津川湾は、日本有数の養殖漁場。波が穏やかで水深が深いリアス式海岸であること、寒流の親潮が栄養塩をもたらす豊饒な海であることなどから、さまざまな海産物の養殖が盛んに行われています。佐藤さんの親世代が1970年代に国内で初めてギンザケ養殖に成功したのも、この湾でのことでした。

AM5:50 出港 AM05時50分 出港

漁船を走らせ、沖合の生簀(いけす)へ向かいます。冬の明け方の海上は肌を刺すような寒さです。「よほどの悪天候でない限り、雨や雪が降ろうが、毎朝必ずエサやりに行きます。魚という生き物を育てる仕事ですからね」と佐藤さん。

AM6:00 生簀到着、エサやり準備 AM06時00分 生簀到着、エサやり準備

空が白んできました。港から10分ほどの地点に、佐藤さんの生簀が4つ設けられています。1つの生簀にいるギンザケは約35,000尾。山間部の淡水養殖池で卵から育てられた稚魚を、11月にこの海上の生簀に移して成長させているのです。1つ目の生簀に船を着け、ロープでしっかりと留めておきます。

次に少し離れた生簀を船の反対側に手繰り寄せて係留します。これで2つの生簀に同時にエサやりができます。1つ1つに対して行うよりも、大幅な時間短縮になるそうです。船上の給餌機械から伸びたホースを、左右の生簀内のパイプにつなぎます。

AM6:10 エサやりスタート AM06時10分 エサやりスタート

大きなコンテナの中には500キログラムのエサが入っています。クレーンで吊り上げ、傾けながら徐々に給餌機械に移していきます。トレイから水とともにエサが流れ、ホース、パイプを伝って生簀の海面に落とされる仕組みです。「以前はスコップでエサをすくって投げ入れていました。手作業でやっていた頃に比べ、今はだいぶ楽になりましたね」

与えているのはEP(エクストルーデッドペレット)と呼ばれる固形飼料。宮城県産飼料米、魚粉、小麦粉などが配合されています。宮城県漁業協同組合が東北大学やJA全農みやぎ、飼料メーカーと共同開発したものです。「以前はイワシなどの生きエサを与えていましたが、この人工配合飼料に変えてから、ギンザケの生臭みがかなり減りました」。EPは水を含んでも崩れないので無駄がなく、環境にも優しい飼料だそう。

生簀の中央で5本に分かれたパイプの先から、水とエサが勢いよく飛び出しています。魚は動くものに反応するので、この勢いを保つのがポイントなのだそう。エサに食いつくギンザケたちが、身をピチピチッとくねらせるたび、生簀のあちこちにキラキラと輝く水しぶきが立ちます。

朝日が昇ってきました。空と海が朝焼けに染まります。「ここに着いて作業を始めるのは、いつもだいたい日の出前。これから夏に向けてどんどん出港時間が早くなっていきます」。4月から7月の水揚げシーズンは、朝3時スタートという日も少なくないそうです。

しばし朝日を見つめる佐藤さんに、東日本大震災のときのことを尋ねてみました。「津波で港も船も生簀も流され、海には膨大ながれきが流れ込みました。でも山で育てられていた稚魚は7割ほど無事だった。我々が養殖を再開しなければ、稚魚を廃棄せざるをえなくなります。そうはさせたくないと再開を決意。半年後の秋に稚魚を海水に放ったんです」。心配をよそにギンザケたちは大きく成長し、無事に翌春の水揚げを迎えたといいます。

機械でエサやりをしている間も、常にギンザケの様子に目配りしています。天候や水温などさまざまな理由で食いつき具合が変わるので、エサを流すスピードや量を微妙に調整する必要があるのです。ギンザケに何か異変がないか確認するのも大切な仕事です。

コンテナに新たなエサを入れ、給餌機械に移して、左右の生簀に流す作業を繰り返します。エサやりは一日1回。この時期は1つの生簀につき500キログラムを与えます。「エサの量は魚の成長につれて増やします。山から移したときは150グラムほどだった稚魚が、水揚げする頃には2キログラムほどにまで大きくなります。養殖ギンザケは本当に成長が早いんです」

AM8:30 次の生簀へ移動 AM08時30分 次の生簀へ移動

2つの生簀へのエサやりが終了。パイプからホースを外し、次の生簀へ移動します。反対側にもう1つの生簀を手繰り寄せ、再び同時エサやりを開始。11時頃に終了し、港へ戻って翌日の準備をしたら、ようやく休息をとります。

「こうして手塩にかけて育てたギンザケを、ぜひ多くの方に味わっていただきたいですね。程良く脂がのり、とろけるような食感と甘味が特徴の魚です。一番のおすすめは刺身ですが、焼いたりマリネにしたりして食べるのもおいしいですよ」

COLUMN

宮城県を代表するブランド食材
「みやぎサーモン」

宮城県産の養殖ギンザケを水揚げした際に、「活け締め」「神経締め」という鮮度保持処理を施したものを「みやぎサーモン」といいます。これらの処理を施すことで、ギンザケ本来のおいしさ、刺身で食べられる鮮度、身のツヤや張りが保たれます。「いつも魚にできるだけストレスをかけないよう、一気に締めるようにしています。ストレスは味に大きく影響しますから」と佐藤さん。養殖の先駆けである宮城県の生産者たちは、鮮度保持処理技術の向上にも長年取り組んできました。今では県を代表するブランド食材として知られるようになった「みやぎサーモン」。その品質と鮮度の高さが評価され、2017年には宮城県初のGI産品に登録されています。

*地理的表示法に基づき、伝統的な生産方法や生産地の気候風土が品質などの特性に結びついていると判断され、その名称が知的財産として登録・保護された産品のこと。GIマークが目印です。

(PDF:2,061KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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