このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー
aff 2023 JUNUARY 1月号
1月号トップへ戻る

農林水産業者の朝

農林水産業者の朝

第8回 みかん農家の朝 第8回 みかん農家の朝

清水雄矢さん
[清水果樹園/愛媛県松山市]

愛媛県松山市の港からフェリーで約1時間。
瀬戸内海に浮かぶ離島、中島は
住民の大多数が柑橘農家という
国内有数の柑橘生産地。
この島で、さまざまな柑橘作りを手がけている
清水雄矢さんの収穫風景をご紹介します。

PROFILE

1980年中島生まれ。東京農業大学卒業後、群馬県・埼玉県・神奈川県・愛媛県内の農業高校や特別支援学校で教員を務める。2016年、中島にUターンし、実家の清水果樹園3代目として農業を始める。約2ヘクタールの畑で21種類の作物を栽培。温州みかん、紅まどんな、いよかん、甘平、清見、はるか、せとかなど柑橘類がメイン。島の小学校の学習アシスタントやヨガインストラクター、マラソンランナーの顔も持つ。

収穫シーズンを迎えた
瀬戸内の“柑橘の島”で

AM8:00 紅まどんなの収穫 AM08時00分 紅まどんなの収穫

晩秋のこの日、朝一番に始めたのは、ビニールハウスで栽培している紅まどんなの収穫です。紅まどんなとは、愛媛県のみで生産されているオリジナル品種「愛媛果試第28号」の登録商標。糖度が高く、ぷるんとしたゼリーのような柔らかい果肉が特徴の柑橘です。採果バサミで木から果実を外し、肩にかけた「てぼ」と呼ぶかごに入れていきます。清水さんのスマートフォンからはクラシック音楽が流れています。いつもアプリでクラシックを聴きながら農作業をしているのだそう。優雅な弦楽器の調べとシャキシャキというハサミの音が、静かなビニールハウス内に響きます。

MORNING TIPS

一日の始まりは瞑想から

「毎朝起きたら、まず布団の上でするのが瞑想です。座禅を組み、目を閉じて、5分から10分ほど無の境地に。これをすることで頭がすっきりし、なぜか体もよく動くようになります。農作業前の欠かせない習慣です」

柑橘を収穫する際のポイントは「2度切り」。ハサミの刃先が果実に当たって傷つかないよう、茎の長さに余裕を持たせて切るのです。そして手のひらに載せた果実をよく見ながら、残った茎を丁寧に切り取ります。切り残しがあると、果実を積み重ねた際に、茎の先端がほかの果実に当たって、生傷(新しい傷)がついてしまいます。「生傷がつくと数日中にカビが生える可能性が高まります。これを防ぐために2度切りをするわけです」

てぼがいっぱいになったら、果実をコンテナに移します。移す際は手を添えてゆっくりと、果実に衝撃を与えないようにするのがポイント。コンテナは軽トラックに積み込み、自宅の倉庫に運びます。出荷日の前日か2日前に、傷ついた果実を取り除く選別作業をするそうです。

清水さんの背後では、お父さんの邦夫さんが収穫しています。邦夫さんは農林水産大臣賞を2度も受賞したみかん作りの名手。清水さんが2016年に教員を辞めて中島に戻ったきっかけは、お母さんが亡くなったことでした。「両親ふたりでやっていましたから、とても父ひとりでできる作業量ではありません。50代後半ぐらいになったら跡を継ぐつもりでいましたが、思わぬことに30代で戻ることになりました」

MORNING TIPS

朝食には必ずフルーツを

「朝食は自家製の豆乳ヨーグルトとその時期にとれるフルーツを食べています。今なら庭の木にたくさんなっている柿ですね。ヨーグルトはデーツとはちみつで甘味を加えます。これだけだと体が冷えそうなので、レモンやライムを搾った白湯も飲んでいます」

AM10:00 温州みかん(早生)の収穫 AM10時00分 温州みかん(早生)の収穫

清水果樹園の畑は島内10カ所に点在しています。清水さんが次に向かったのは、11月から12月前半に収穫する早生(わせ)の温州みかんの畑。燦燦と降り注ぐ太陽光を浴びてオレンジ色に完熟した果実が鈴なりです。こちらでも2度切り、てぼに入れる、コンテナに移すという収穫作業を行います。

みかんを1個割って、おすそ分けしてもらいました。ほおばった瞬間、ジューシーな甘味が口いっぱいに広がります。「みかんは外皮と中の房が薄いものの方がおいしいんですよ」

AM11:30 畑の見回り AM11時30分 畑の見回り

みかんの収穫が一段落したところで、ほかの畑を何カ所か見回ることに。まずはレモンやライムを栽培する畑をチェック。ひとつひとつの果実を確認する清水さんの慈愛に満ちたまなざしが印象的です。「香酸柑橘の成長や収穫の様子をインスタグラムで発信していたら、それを見たレストランのパティシエさんから、お菓子に使いたいと注文が入ったんです。今では愛媛県・京都府・東京都内のレストランや菓子店に直販しています。手塩にかけた”うちの子たち”がお菓子に活かされていると思うと、うれしいですね」

青パパイヤ、バナナ、アボカドなどを実験的に植えている畑。草がぼうぼうに生えています。「除草剤を使わないのが、僕の一番のこだわりです。草刈りが大変なので、最初の頃は父とよく衝突していました。でも土がふかふかになって、良い作物ができる様子などを見て、今では何も言わなくなりました」

急斜面の段々畑に向かいます。山腹や山頂には温州みかんの木がたくさん植えられています。12月に収穫する中生(なかて)です。「切り立った斜面はどんな作業も大変ですが、傾斜地だからこそ日当たり抜群。太陽の恵みをいっぱい受けて、みかんが甘くおいしくなるんです」

山頂のみかんは特に甘味が凝縮されています。中島がみかんの名産地とされるのは、このきらめくような陽光によるものなのだとわかります。人口減少と高齢化が進み、清水さんのこども時代と比べて、島のみかん農家はずいぶん減ったそうです。「でも最近、僕よりもっと若い孫世代が島に帰ってきて、おじいさんの畑を継ぐというのが、少しずつですが増えています。みかんの価格が以前より安定したこともあって、農業に面白味を感じる若者が増えているのかなと思います。農業って本当に面白いですよ。土作りから自分でいろいろ試行錯誤して、良い作物ができると、食べた人においしいと喜んでもらえる。大変だけど楽しいです。これをぜひ次世代にも伝えたいですね」

COLUMN

農業でもプライベートでも
チャレンジ精神を忘れない

「サハラマラソン」を下駄で完走

チャレンジ精神旺盛な清水さんは、農業でもプライベートでも常に面白いこと、新しいことに挑戦しています。農業では、珍しい柑橘品種や柑橘以外のさまざまなフルーツを栽培。プライベートでは、過酷な砂漠で行われる2018年の「サハラマラソン」と2019年の「ゴビマラソン」を下駄で完走。「ネット通販の顧客に柑橘を送る際に、こうした活動を書いたプロフィールを同封しています。ヘンな生産者が作っているんだなと面白がってもらえたらいいなと思って」。今後も清水さんのチャレンジングな活動から目が離せません。

(PDF:3,188KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader