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農林水産省

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aff 2022 DECEMBER 12月号
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農林水産業者の朝

農林水産業者の朝

第7回 外食産業の朝 第7回 外食産業の朝

ボンヴィヴァン
[三重県伊勢市]

2023年に開業40周年を迎えるフランス料理店「ボンヴィヴァン」。
地元・伊勢志摩をはじめとする三重県産食材を駆使した
滋味深い料理を味わうため全国から美食家が訪れます。
今回は、そんなレストランの昼営業を控えたスタッフの朝に密着しました。

右から河瀬毅さん、奥田佳那さん、宮崎智帆さん、河瀬恵子さん

PROFILE

オーナーシェフの河瀬毅さんは1954年、三重県伊勢市生まれ。都内のフランス料理店などで修業したのち、妻でマダム(女性支配人)の恵子さんと1983年、伊勢市常磐にフランス家庭料理の店「ボンヴィヴァン」をオープン。1989年、同店2階に本格フランス料理店を増設。1997年、現在の伊勢市本町に移転。地産地消の精神を大切にし、仲間のシェフたちと「うましくに伊勢シェフクラブ」を立ち上げ、伊勢の美食を広めるイベントを行うなど、地元の食文化振興に取り組む。スーシェフ(副料理長)の奥田佳那さん、ソムリエの宮崎智帆さんは共に8年前から勤務。店に欠かせない存在となっている。

シェフの作るまかないが
スタッフの舌を育む

AM8:00 食材の買い出し AM08時00分 食材の買い出し

「ここは伊勢志摩。地元で水揚げされる魚介類の魅力を多くの人に伝えたい」。そう話すオーナーシェフの河瀬毅さんが、朝一番に出かけたのは、二見町今一色の漁師さんのところです。この日は、底引き網漁で獲れた伊勢湾のヒラメやヨシエビを買い付けました。優れた食材を求めて生産者のもとに足繫く通うのは、河瀬さんのライフワークです。

次に向かったのは、度会郡玉城町の農畜産物を産直販売する「ふるさと味工房アグリ」。ここでは旬のマコモダケを仕入れました。たけのこよりやわらかい食感とほのかな甘味が特長の野菜です。「ほかには地元の朝獲り野菜コーナーがあるスーパーマーケットにもよく出かけます。これは!と思う生産者さんの名前は控えておいて、あとで連絡したり、店で少し待って、その方が野菜を置きにきたときに声をかけたり。仲良くなって畑を訪ねるのが楽しみなんです」

AM9:50 店に戻る AM09時50分 店に戻る

買い出しを終えて、伊勢神宮外宮のすぐ目の前にある店に戻ります。白いモルタル塗りのレンガ壁と赤い屋根瓦がひときわ目を引く瀟洒な洋館の一角です。1923年築の歴史ある建物は、かつて逓信省の旧山田郵便局電話分室として使われていました。

2019年に、2つあったダイニングスペースを1つに減らし、多いときは10人以上いたスタッフを河瀬さん、恵子さんを含めた4人体制に。「ランチ、ディナーとも完全予約制、シェフのおまかせコースのみにしました。店を縮小したことで、本当に良い食材を仕入れて、本当に提供したい料理が作れるようになりました。実は料理人としては今が一番充実しています」と河瀬さん。

厨房ではスーシェフの奥田佳那さんがデザートのプチシュークリームを作っています。奥田さんはドラマ「高校生レストラン」で知られる相可(おうか)高校の食物調理科出身。河瀬さん曰く「奥田は8年前に高校を卒業してすぐうちに来た頃から優秀でしたね。天性の勘があるうえに、僕のやることをよく見ています。こんな真ん丸なシュークリームを作れる人ってなかなかいないですよ」

ダンボール箱を開け、野菜を取り出す河瀬さん。津市のベビークレソン、伊賀市のバターナッツかぼちゃ、多気町のマイクロリーフなど、三重県産の野菜が次々に出てきます。これらの野菜は、買い出しの途中で「農業屋」に立ち寄り入手したものです。農業屋とは、種苗販売や農家向け各種サービスなどを行う専門店。三重県を中心に数県で多店舗展開しています。各地の生産者との繋がりを活かし、生産者とシェフをマッチングする農産物流通事業も行っています。

「いつも農業屋の担当者とLINEでやり取りしています。こんな野菜がほしいとお願いすると、各生産者から取り寄せて箱に詰め、最寄りの店舗に配送してくれるんです。このシステムのおかげで、個別に取り寄せる手間とコストがかからなくなりました。県内のいろいろな生産者さんを知るきっかけにもなっています。今では仲間のシェフたちも大勢利用しているんですよ」

この日のランチは愛知県からの団体客で満席。前々から予約が入っていたので、大きな仕込みは前日に済ませていました。左は伊勢志摩のブランド豚・パールポークの肩ロースを米こうじでマリネしているところ。右は松阪牛のバラ肉で作ったミートソースと、松阪牛のほほ肉をデミグラスソースで煮て真空パックしたもの。

AM10:00 朝のまかない作り AM10時00分 朝のまかない作り

河瀬さんがたまねぎを刻み、朝のまかないを作り始めます。店では朝のまかないをシェフが、夕方のまかないをスタッフが作ります。10人以上の大所帯だった頃から続いている習慣です。「僕がスタッフを指導するうえで一番大事だと思っているのは、舌を育てること。つまり味覚を磨くことです。切ったり煮たりといった手順は料理書にも書いてある。でもおいしい料理を食べないと舌は育ちません」

この日のまかないメニューは、ハッシュドビーフ、ベビークレソンとローストポークのサラダ、和栗のスープ。「お客さまに提供する食材と同じものを使います。まかないといえども手を抜きません」。まかないは日によってフレンチ、イタリアン、和食、中華とジャンルを変えるそうです。松阪牛とたまねぎのスライスをデミグラスソースで煮込んでいる鍋から、何ともいえず良い香りが漂ってきます。

河瀬さんの向かいでは、奥田さんがランチに提供する前菜の準備中。カリフラワーをゆでたり、鶏ささみを燻製にしたりしています。

別の産地直売所へ買い出しに行っていたマダムの恵子さんと、掃除を終えたソムリエの宮崎智帆さんが厨房の手伝いに来ました。「4人しかいないので総力戦です(笑)」と恵子さん。宮崎さんは奥田さんと同じ高校の同級生で、やはりボンヴィヴァンに勤めて8年目。「宮崎はソムリエですが、魚も下ろすし、お菓子も作れます。接客に優れているので、僕ら夫婦も安心してホールを任せています」と河瀬さん。誰一人抜けてもボンヴィヴァンにならないと、スタッフを惜しみなくほめるのが印象的です。

AM10:30 食事しながら打ち合わせ AM10時30分 食事しながら打ち合わせ

いつも客席にきちんとついて、お客さま用の皿とカトラリーでまかないを食べるそうです。「自分たちが提供している料理やサービスはこういうものだと、場の雰囲気も含めて体感してほしいから」と河瀬さんは言います。食事をしながら、恵子さんがその日の予約客のプロフィールやサービスの注意事項を、河瀬さんがコースメニューの内容を伝えます。打ち合わせが終わると、しばしなごやかに談笑。まかないのひとときは、チームワークに欠かせないものとなっています。

AM11:00 昼営業の準備 AM11時00分 昼営業の準備

食事を終えたら、各自の持ち場に戻ります。宮崎さんはワイン庫で、在庫チェックとグラスワイン用に栓の開いた赤ワインの品質チェック。続いてウェルカムドリンクのグラスを用意します。

恵子さんは各テーブルの花活け。洋館の中庭で摘んだ薄紫色の花の名は「伊勢花火」というそうです。

奥田さんはシーフードの前菜を盛り付けています。野菜のマリネの上にイカとエビ、さらにマイクロリーフをトッピングして彩りを添えます。

河瀬さんは別の前菜を仕上げ中。赤ワインで煮た松阪牛のほほ肉のスライスに松阪牛のミートソースを塗っています。間もなく慌ただしい昼営業がスタートします。ボンヴィヴァンの朝は、スタッフ一丸となって最高の料理とサービスを提供するための大切な準備時間です。

COLUMN

生産者と信頼関係を築き
食材をおいしい一皿に昇華させる

海も山もある南北に細長い地形と温暖な気候に恵まれ、古くから多彩な食材の産地として知られる三重県。この土地ならではの海の幸、山の幸をふんだんに使う河瀬さんは、常に生産者への敬意を忘れず、生産地に足を運び、信頼関係を築いてきたといいます。「手に入れた食材は、手間ひまを惜しまず料理し、さらにおいしい一皿に昇華させる。これが料理人の使命です。どうすれば人を幸せにする力を一皿に吹き込めるかを考えながら、いつも食材と向き合っています」

(PDF:2,460KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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