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農林水産省

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aff 2022 NOVEMBER 11月号
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農林水産業者の朝

農林水産業者の朝

第6回 森林業者の朝 第6回 森林業者の朝

ウッディライフサービス
[岩手県花巻市]

山々が連なる岩手県中央部の
早池峰(はやちね)地域で活動している
林業経営体「ウッディライフサービス」。
さまざまな高性能林業機械を駆使して、
森林の伐採や保全を行っています。
今回は、先人が植えた
樹齢60年のスギを収穫する朝に密着。
ダイナミックな作業風景をお届けします。

左から伊藤誠樹(せいじゅ)さん、伊藤誠さん、
簗場(やなば)隆児さん

PROFILE

林業・建築設計・農業を兼業する伊藤誠さんが、亡き父の後を継ぎ、1986年に「ウッディライフサービス」を設立。1996年に高性能林業機械を導入し、この頃から林業にウエイトを置く。林業一筋のベテラン・簗場隆児さんを2016年に、消防士から転身した次男の誠樹さんを2021年に従業員として迎え入れ、現在は3人体制で林業全般を行っている。誠さんは2022年、岩手県森林整備協同組合の代表理事に就任。

収穫期を迎えた木々を
有効活用するために

AM7:30 集合、朝礼 AM07時30分 集合、朝礼

毎朝、必ず行うのは朝礼です。「まず集まって、その日の作業内容や方法、配置、体調などを確認します。お互いに顔を見てから現場に移動する、というのを徹底しています」と伊藤誠さん。締めに「今日も安全作業で行くぞ!」「よし!」と指差確認をして、各自の現場に向かいます。

AM7:45 伐採 AM07時45分 伐採

誠さんが高性能林業機械を操作し、立木(りゅうぼく)を次々に伐倒していきます。「この機械は1台5役の優れもの。木を伐る・つかむ・寄せる以外に、林道をつくる・転圧する(地面に圧力をかけて地盤を固める)こともできます。導入したことで、作業効率が飛躍的に上がりました」と誠さん。肉体的な労働負担もかなり軽減されたと話します。

伐倒された立木は、バケット部分に格納された刃物が瞬時に切断。メリメリバキバキと大きな音を立てて、木が倒れます。1本の伐倒にかかる時間は、ほんの10秒ほど! 続いて強力なグリップ力のアタッチメントが、倒木をぐいとつかんで造材する場所まで寄せます。高性能林業機械の圧倒的なパワーには目を見張るばかりです。

一方、誠樹さんは別の場所でチェーンソーによる伐倒を行っています。チェーンソーの方が高性能林業機械よりも、根張り(木の根元付近の膨らんだ部分)が大きい木を低い位置で伐ることができます。まず伐倒方向を決め、そちらを確認しながら、倒す側に伐り込みを入れます。これを受け口といいます。樹心を伐らないよう、幹直径の4分の1程度の深さに留めるのがコツです。

続いて受け口の反対側に入れる伐り込み、追い口を設けます。「受け口と追い口の最深部の間に、伐り込みの入っていない『つる』と呼ぶ部分を残します。これがちょうつがいのような働きをして、伐倒方向を定め、伐倒速度を緩やかにしてくれるんです」と誠樹さん。木くずを舞い上がらせながら、追い口を伐り進めると、やがてつるの部分がギギギと引き裂かれ、木が倒れました。

誠さん曰く「今、伐採しているのは先人が60年前に植えてくれたスギです。60年かかって、ようやく建築用材などに利用できるまでに育ったので収穫できるのです。林業は農業と違って、収穫までに50年から60年ととても長い年月が必要です」

ウッディライフサービスでは、伐採したあとのスギ林を藪にしたくないと、次の世代のために、カラマツを植林しています。なぜカラマツかというと、成長が早く、今後の需要も期待できるからです。簗場さんは「自分が植えた木を収穫まで見届けることはできなくても、成長過程を見守ることはできます。これが林業の魅力です」と言いながら、昨年植林したカラマツを見せてくれました。

こどもの頃は消防士になりたかったという誠樹さん。「夢が叶って消防士になりましたが、やはり父のように技術を身につけて長く働きたいと思うようになり、改めて林業を志しました」。岩手県林業技術センターが林業就業希望者等を対象に研修を実施する「いわて林業アカデミー」で1年間林業の知識と技術を体系的に学んだのち、誠さんたちと森で働くように。「自然の中で仕事をするのは楽しいです。毎日充実しています」

AM9:30 造材 AM09時30分 造材

伐採した木を丸太に加工する作業を造材といいます。まず枝払いを行います。誠さんがプロセッサという重機を操作し、細目チェーンを樹幹にスライドさせると、あっという間に枝葉がきれいに取り除かれていきます。

次に寸法の自動計測と玉切りを連続して行います。玉切りとは必要とされる長さに丸太を切り分ける作業。つかんだ丸太を、内蔵されたチェーンソーでスパッと切断します。コンピューターで制御されているので、センチメートル単位の精度で長さを切り揃えられます。プロセッサの周囲には、みるみるうちに切断された丸太が積み上がっていきました。

AM10:00 運材 AM10時00分 運材

誠さんが造材を行っている横で、簗場さんが運材を開始。グラップルという重機を操作し、丸太をつかんでフォワーダという運搬用重機の荷台に積み込みます。

一定量積み込んだら、土場(どば=丸太の集積場)に運びます。丸太がどんどん出来上がるので、積み込みと土場への運搬は何度も繰り返されます。

AM10:30 仕分け、積み上げ AM10時30分 仕分け、積み上げ

丸太の直径を測り、チョークで寸法を記入します。「必ずしも直径が大きいほど、高く売れるわけではありません。そのサイズに需要があるかどうかによります」と簗場さん。害虫による変色や腐朽がないかなど、質ももちろん重要な判断材料です。また、誠さんによると「木はまず木口(こぐち=切断面)の美しさで判断されます。そのため、いかにスパッと美しく切断するかをいつも心がけています。重機の刃物もチェーンソーも、性能を保つための手入れが欠かせません」

一番いい通直材は主に製材、次の小曲がり材は合板用材、その下の曲がりが大きい枝材はバイオマス発電の燃料チップなどになるそうです。植林してくれた先人のためにも、収穫した木は余すところなく有効活用したいというのが誠さんの願いです。

簗場さんが運んでくる丸太を順次、直径と等級別に仕分けるのは誠樹さんの担当です。グラップルを操作し、丸太を次々つかんでは、仕分けた場所に積み上げていきます。仕事終わりには、所属の組合に“今日の土場情報”として、積み上げた丸太の径級・等級・数量を報告します。すると納入先の指示があり、運送会社が集荷に来て、各所に納入されます。

AM11:30 山弁 AM11時30分 山弁

午前中の作業が終わり、少し早めのお昼休憩。すがすがしい空気に包まれながら、お弁当を広げます。曲げわっぱの弁当箱には、ハート形の卵焼きが入っていました。“山弁”は午後の作業のための大切な活力源です。

高性能林業機械を活用することで、作業の効率化と生産性が大幅にアップしたというウッディライフサービス。林業の新しい風を感じる現場を見せていただきました。

COLUMN

林業とは森を守り活かすこと

森は木を育み、水を蓄え、CO2を吸収して、地球温暖化や山地災害の防止など、私たちの社会に多くの恵みをもたらします。林業とは、そんな森を守り活かすこと。ウッディライフサービスでも、森を手入れすることによる環境保全、林地残材の活用や再造林による景観保全を、仕事の一環ととらえているそうです。目指すのは、豊かな森を未来に残すこと。常に大きなスケールで森のことを考え、活動するのが林業なのです。

(PDF:3,427KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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