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aff 2022 OCTOBER 10月号
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農林水産業者の朝

農林水産業者の朝

第5回 酪農ヘルパーの朝 第5回 酪農ヘルパーの朝

日夏萌さん
[(有)ファム・エイ/北海道中標津町]

日本有数の酪農地帯、
北海道東部の中標津(なかしべつ)町で
酪農ヘルパーとして働く日夏(ひなつ)萌さん。
動物と触れ合いながら体を動かす仕事がしたいと、
2年前に東京から移住しました。
まったくの未経験で飛び込んだ酪農業界。
毎日が新鮮で楽しいという
日夏さんのある朝に密着しました。

PROFILE

大学4年生の時、公認会計士試験に合格。東京都心にあるコンサルタント会社に新卒入社。2年ほど企業の監査やM&Aのコンサルティングに携わる。2020年12月、北海道中標津町の酪農ヘルパー事業会社、(有)ファム・エイに転職。酪農ヘルパーとなって、さまざまな牧場で活躍中。27歳。

酪農家からの信頼が
やりがいにつながる

AM4:40 牧場到着 AM04時40分 牧場到着

酪農ヘルパーとは、休みを取りたい酪農家の業務を代行したり、人手が足りない酪農家をサポートしたりする仕事。毎日、違う現場に入ります。この日向かったのは大西牧場。到着すると、牛たちはすでにサイレージ(水分量の多い牧草や飼料作物を発酵させて保存性を高めた飼料)を食べていました。大西牧場では、乳牛へのエサやりがオートメーション化されています。「牧場ごとにさまざまなやり方があるので、酪農ヘルパーの仕事は日々変化に富んでいます」と日夏さん。

AM4:45 牛舎の除糞 AM04時45分 牛舎の除糞

夜の間に牛床や通路に溜まった糞尿を溝に落とす作業からスタート。スイッチを入れると、溝が動いて糞尿が外に運ばれていきます。牛舎をきれいにするのは、雑菌の繁殖を防ぎ、牛たちを快適に過ごさせるための大切な仕事です。

AM5:00 搾乳、牛出し AM05時00分 搾乳、牛出し

この日、牛舎にいたのは70頭。牧場スタッフと手分けして、1頭ずつ搾乳していきます。まずは手で前搾り。これには乳の異常を発見する、刺激を与えて乳を出やすくするといった効果があります。前搾りのあとは、乳頭を殺菌剤で消毒し、布で汚れを拭き取ります。

空気の力を利用する搾乳器「ミルカー」を牛の乳頭に取り付けます。1頭の牛から1日に出る生乳量は20キログラムから50キログラム。乳の出やすさには個体差があります。「ミルカーで搾乳している間も、乳の出が悪くなっていないかなど、1頭1頭の体調に気を配っています」。ミルカーで搾られた生乳は、送乳パイプで冷却装置へ送られます。

搾乳が終わったらミルカーを外し、乳頭を再び殺菌剤で消毒。細菌感染から起こる乳房炎を予防します。

搾乳が終わった牛から順番に牧草地へ誘導します。

大西牧場は、日夏さんの最初の研修先でした。研修初期の頃、牛出しをしている際、牛と首輪をつなぐパイプの間に挟まれてしまい、怪我をしたことがあるという日夏さん。その経験がきっかけとなり、ひとつひとつの作業を、細心の注意を払って丁寧に行うようになったそうです。「今となって振り返ると、これから酪農ヘルパーとして生きていく上での仕事への向き合い方を学んだ出来事ですね」と、笑顔で語ります。

MORNING TIPS

牛という動物を相手にする充実感

中標津町に来る前は、毎朝スカートにハイヒールで大手町の会社に通勤していました。今は作業着に長靴で、早朝から糞だらけの牛舎にいます(笑)。でも牛という動物を相手にする今の仕事の方が断然楽しい。朝日が差し込む牛舎で牛の世話をしていると、とても充実感がありますね。

仕事の合間に、酪農家の大西さんと談笑するひとときも。日夏さんの仕事ぶりについて大西さんに伺うと、「優秀です。一般企業に勤めた経験があるので、まず社会人としての基礎がある。酪農ヘルパーとしても吸収力がすごい。小柄な体ながら、400キログラムから500キログラムもある牛を実に上手に扱っています」と絶賛。こうした酪農家からの信頼が、酪農ヘルパーにとっては、大いにやりがいにつながります。

AM7:00 子牛に哺乳、エサやり AM07時00分 子牛に哺乳、エサやり

搾乳と牛出しが終わったら、子牛のいる哺育・育成牛舎へ。40度のお湯に粉ミルクを溶かし、2日前に生まれたばかりの赤ちゃん牛に与えます。「牛の成長は本当に早いです。生まれて数時間で立って歩きます。1年から1年半も経つと、もう種付けしますからね」

外のタンクからバケツにエサを入れ、柵の前に撒きます。すると生後6カ月の子牛たちが柵からひょっこり頭を出してモグモグ。このエサは「濃厚飼料」と呼ばれ、とうもろこしや大豆、麦などを粉末状にしたもの。配合は成牛用と子牛用で異なります。さらに牧場によって、さまざまな配合パターンがあるそうです。

次に牧草などの「粗飼料」をフォークですくって与えます。こちらは牛にとっての主食。「言うなれば、濃厚飼料がおかず、粗飼料はごはんでしょうか」

AM7:30 牛舎の清掃 AM07時30分 牛舎の清掃

元の牛舎に戻り、牛たちが放牧されている間に清掃作業。牛床をほうきで掃き、残飼や糞尿を溝に落とし、真ん中の通路もきれいにします。最後に吸水・脱臭・除菌効果のある環境衛生資材を撒きます。

AM8:00 午前の業務終了、宿舎に戻る AM08時00分 午前の業務終了、宿舎に戻る

朝の仕事が終わって、満面の笑顔。「実は今日、27歳の誕生日なんです」と言うと、牧場スタッフから口々に「おめでとう!」と声をかけられていました。終了の挨拶をし、車で宿舎に戻ります。

AM8:30 朝食 AM08時30分 朝食

シャワーを浴びて着替えたら、ゆっくり朝食タイム。宿舎を管理する女性が料理上手で、いつもおいしい食事を用意してくれています。「中標津町は食事がおいしいし、空気がきれいだし、暮らすのにもいいところです。会社のヘルパー仲間や、行く先々の酪農家の方々と知り合えて、毎日が楽しいです」。朝食後は部屋でのんびりしたり、2時間ほど昼寝をしたり。時間は日によって前後しますが、だいたい14時半ごろ宿舎を出て、15時から19時ごろまで、また牧場で搾乳や清掃をします。朝が早い分、日中にたっぷり自由時間があるのも、酪農ヘルパーの醍醐味なのだそうです。

COLUMN

日本の酪農を支える
酪農ヘルパーの役割

乳牛は1年365日、朝と夜に搾乳しなければ病気になってしまいます。このため、酪農家は農業従事者の中でも休みが取りにくい職業と言われています。そんな酪農家が、定期的に休みをとり、肉体的、精神的にゆとりをもてるようにするため、その業務を代行するのが酪農ヘルパーです。酪農家の大切な牛を預かる責任ある仕事であり、日本の酪農を支える、なくてはならない存在となっています。たくさんの牧場で仕事をするので、多様な酪農家のやり方を学ぶことができるのが魅力です。

日夏さんが所属する(有)ファム・エイは、1989年に創業した日本初の民間酪農ヘルパー会社。中標津町・別海町・標津町・羅臼町エリアの500戸を超える酪農家で、約50名のスタッフが酪農ヘルパーとして活躍しています。研修制度が充実しており、日夏さんのように未経験からでもしっかり成長していけます。

(有)ファム・エイ
公式サイトはこちら
外部リンク
(PDF:17,221KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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