はばたけ! 農業高校生
取得できる資格や受検できる検定
■日本農業技術検定 ■家畜人工授精師 ■毒物劇物取扱責任者 ■危険物取扱者 ■食品衛生責任者
■ボイラー取扱者 ■測量士・測量士補 ■土木施工管理技術検定 ■造園技能検定
■小型車両系建設機械 ■園芸装飾技能士 ■食生活アドバイザー など
出典:文部科学省「大地に学ぶ農業高校」
競走馬の種付けから販売まで
育てた馬が2500万円で落札も
北海道静内農業高等学校

馬の親子と一緒に。仔馬はせり市に出すまで大事に世話をします。
馬産地として知られる北海道の新ひだか町にある北海道静内農業高等学校は、全国の公立学校で唯一、サラブレッド(競走馬)の生産を学校内で行っています。
生産科学科では、1年生で、農業に関する基礎的なことを学びます。2年生以降はサラブレッドの生産などを学ぶ馬事コースと、野菜や花の生産などを学ぶ園芸コースのどちらかを選択して、より専門的な学習をしていくというカリキュラムになっています。

主に乗用馬がいる第2厩舎。手前は中央競馬で3勝し、競走馬を引退したユメロマン。
仔馬の誕生から巣立ちまで携われる
馬事コースではおもに、馬学と馬利用学を学べます。
サラブレッドをはじめとする、馬の生産について学習するのが馬学です。種付けから販売まで生徒自身で行い、販売はおもにサラブレッドのオークションである、せり市で行われます。せり市の会場で馬を引いて見せるのも生徒の役目です。同校の馬は、2020年に2,500万円(税別)で落札されたこともあるほど、近年高く評価されています。
馬利用学では、馬の基本的な性質や乗馬の基礎技術を身に付けることができます。
仔馬が生まれ、育ち、せり市で巣立っていくまでを在学中に体験するという、ほかにはなかなかない経験をできるのが、同校の馬事コースの大きな特徴です。
また、日本中央競馬会(JRA)、日本軽種馬協会(JBBA)、日高軽種馬農業協同組合などとも連携しており、充実したキャリア教育が受けられます。特に日本軽種馬協会とは敷地が隣接しているというメリットもあり、専門家からより実践的な技術や技能を学ぶことができます。
馬事コースで学ぶこと
- 馬学
- 馬の繁殖、出産、育成、販売など
- 馬利用学
- 馬の基本的な性質や取り扱い方、乗馬の基礎技術など

取材前日に生まれた仔馬(母の父は菊花賞馬のダンスインザダーク)と、獣医師の中西信吾先生。
馬のプロフェッショナルを目指して、さまざまな道へ
馬事コースには、子どものころから馬が好き、馬についてもっと知りたい、将来は馬に関わる仕事がしたい、という希望を持って日本全国から生徒が入学します。
卒業後の進路は、サラブレッドの牧場への就職や、日本中央競馬会(JRA)など競走馬関係の職員になるなど。また、馬の蹄を管理するプロフェッショナルである装蹄師になる生徒も。馬に関してさらに専門的なことを学ぶために、大学や専門学校へ進学する生徒や、スポーツ推薦で馬術部のある大学に進学する生徒もいます。

昨年生まれた馬は名馬・ディープインパクトの血を継いでいます。今年8月に行われるせり市に出される予定。
馬事コース2年生の皆さん

山田璃央さん
幼少時代、乗馬体験をしたことがきっかけで馬好きになりました。馬に乗るのも世話するのも大好きです。将来は厩務員を目指しています。大好きな馬のことを授業で学べるので、毎日がとても楽しいです。

木部千乃さん
馬専門の獣医になるのが夢で、馬について専門的に学べる高校を探して、沖縄県からここに入学しました。卒業後は獣医学科のある大学へ進学したいと思っています。

久保田四季さん
中学3年の夏までは、明確に進路を決めていませんでした。そのあと馬に興味を持って、ここに入学しました。実際に入ってみたらとてもおもしろく、将来につながるような経験ができていると感じています。将来は、競走馬や乗馬を引退した馬の余生を支える仕事がしたいという目標ができました。
園芸や食品化学も充実
生産科学科には馬事コースのほかに園芸コースがあります。野菜、花、作物に関して学ぶ授業や、土壌や栽培環境の改良といったテーマに農場や企業、大学などと連携して研究する、プロジェクト学習や実習も行われています。また、食品科学科では、アイスクリーム、チーズ、味噌といった農産物の加工や、食品の流通、商品開発など食に関して幅広く学習することができます。

ミニトマトやピーマン、デルフィニウム(切り花)を中心に栽培。

食品科学科には牛舎があり、生乳を使ったアイスクリームやミルクコーヒーなどもつくっています。

「地域産業に貢献するとともに、地域社会や文化の継承に寄与できる人材の育成が本校の使命です」
赤穂悦生校長
「そば」必修の国内唯一の高校
そば打ち全国大会では4連覇中
北海道幌加内高等学校

幌加内町内の
そば打ちエキスパートを
講師に招き、指導を受けます。

毎年改訂している
同校オリジナルの
「そば」のテキスト。
国内有数の「そば」の生産地である幌加内町。同町にある北海道幌加内高等学校では必修科目の「そば」を、1年生から3年生すべてが週2時間学びます。座学、農場や調理実習などのほか、とくに力を入れているのが、そば打ち技術の習得です。
「全校生徒が(一社)全麺協主催の“そば道段位認定制度”に挑戦し、より高い技術の習得を目標に励んでいます。生徒全員が初段以上を取得して卒業しています」(そば局顧問 大森拓先生)
※そば局は、授業だけでなく部活動としてそば打ちを行い、大会などに参加します。

そば畑での種まき実習。
秋には収穫感謝祭も行います。

てんぷらを揚げる調理実習。製粉やそば粉の加工などの実習もあります。
同校で学べる高い技術力は、競技大会の結果にも表れています。
そば局の部員が参加する「全国高校生そば打ち選手権大会」は、決められたそばの量を制限時間内にいかに仕上げるかがポイントで、そばを打つ姿勢や各工程も評価される競技。同校は、団体優勝6回。昨年、4連覇を達成し、今年は5連覇に挑みます。
「連覇に見合う実力をつけるように、練習を積み重ねます」(農業科3年 林楓太さん)
「うまくできなくてつらいこともあります。でも、克服によって達成感があり、よりうまくなろうと思えます」(農業科2年 渡邊奏さん)

2022年の「全国高校生そば打ち選手権大会」で優勝したそば局のメンバー。
最新のテクノロジーを学べる「植物工場」
鹿児島県立鹿屋農業高等学校

24時間温度管理が徹底された植物工場。
鹿児島県立鹿屋農業高校では校舎内の一部を植物工場に改修し、令和4年4月からLEDを使った水耕栽培でサンチュやベビーリーフなどの葉物野菜を栽培しています。
園芸科の施設野菜班が週に7時間の実習で、種まきから育苗、管理作業、収穫、販売までを行います。年間を通じて18度から20度に温度管理された50平方メートルほどの工場内では、種まきから収穫までおよそ1.5か月と速いスピードで成長、害虫の影響もないため農薬を使用しないことが特徴です。

収穫したサンチュは袋詰めし、販売会へ。

ラベルに印刷されたQRコードを読み込むと、植物工場内の動画を見ることができる。
収穫物は校内で週2回の販売会を行うほか、周辺の飲食店へ出荷しています。
園芸科3年生の東泊弘大(こちどまりこうだい)さんによると、「葉がやわらかい」、「苦味が少ない」といった感想が寄せられ、そうした声が励みになっているそう。また、同3年生の戸口田和輝さんは、「植物の成長段階に合わせた作業を考えられるようになりました」と言います。
最新の技術を使った栽培法の習得だけでなく、販売用のパッケージに貼るラベルのデザインや、植物工場の様子や葉物野菜の消費拡大に向けた料理動画の撮影などにも取り組んでいます。
「今後はより幅広い種類の野菜栽培を目指すほか、LEDライトの光の漏れを防ぐことで成長に違いがあるか等、さまざまな実験を行う方針です」(顧問・児玉謙治先生)
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449