はばたけ! 農業高校生
農業高校の食材を使った
居酒屋を全国に広げ、
農業高校生を応援したい

(株)ING FACTORY 代表取締役
北原拓将さん
(兵庫県立農業高等学校卒)
農業と地域の活性化を目的とした「居酒屋 農業高校レストラン」をはじめ、飲食店を経営する北原拓将さんの母校は、兵庫県加古川市にある兵庫県立農業高等学校(以下、県農)です。
「自宅から近いという理由で県農を選びましたが、生き物や食と関わった高校の3年間で、農業高校がすごく好きになりました」
卒業後は飲食業でさまざまな修業を積み、30歳となる2009年、神戸市に最初のお店を開きました。

居酒屋 農業高校レストラン第1号店の神戸店。
「神戸で働き始めて感じたのは、同じ兵庫県内にあるのに、県農の存在自体があまり知られていないということです。農業高校で学んだことに誇りを持っている僕としては、とても悔しかったですね」
そこで北原さんは、農業高校の認知度を上げるために、新たな店を立ち上げることを決意。
2013 年に居酒屋 農業高校レストランを開店し、その後、岡山県に第2号店もオープンしました。将来は全国に農業高校レストランを展開していくという目標を持っています。
「僕はいつも“農業高校で生きる術を学んだ”と考えています。生き物を扱うことに特化したさまざまな授業や体験は、普通校ではなかなか得られない特別なものだと思います。そうした経験が、飲食業界で働いている今も、十分に生かされていると思っています」

「ひとりでも多くの
子どもたちに農業高校を
選んでほしい」と言う
北原さん。
県農や卒業生から仕入れた食材を
神戸店では、県農の食材や同校卒業生の生産した食材を仕入れています。店長を任されている横山孔仁さんも県農の卒業生です。
「たまごも“県農たまご”や、卒業生のブランド“オクノの玉子”を使っています。野菜類もおおむね10パーセントから30パーセントは県農や卒業生からのものです」(横山さん)
生徒が作った加工品も販売しています。なかでも農業高校でつくられた乳酸菌飲料「カルピー」が大人気。数量限定販売のため、店頭に並ばないときもあります。

「日替わり小鉢の
県農御膳(10種)」には、
時期にもよりますが、
県農産の食材を取り入れた
小鉢がたくさんついています。

県農の食品科学科の
生徒が作った乳酸菌飲料。

店長の横山孔仁さん。
県農の動物学科を卒業しています。
農業高校の食材のよさをもっと発信していきたい
農業高校レストランでは、県農に限らず、各地の農業高校から生徒が実習で作った日本酒を仕入れて提供することも行っています。
「全国の農業高校では、いろいろな食材や加工品を作って販売もしています。でも残念ながら、農業高校の近所以外ではほとんど知られていません。各地の農業高校とつながりを作って、アンテナショップのような役割をこの店で実現できればいいなと思っています」(北原さん)

各席には県農のことが
わかるアルバム風の
バインダーが。

店内の壁には
県農生の写真がずらりと
並んでいます。
豚舎の掃除を
徹底的にやった
高校時代。
仕事に向き合う
姿勢を教わった

平松園芸 代表
平松 諭さん
(愛知県立半田農業高等学校卒)
愛知県知多市でユリ農園・平松園芸を営む平松 諭さん。ユリ農家だったお父さんの背中を見て「跡を継ぎたい」と愛知県立半田農業高等学校に進学。愛知県立農業大学校を卒業後、オランダの大手ユリ育種会社に留学研修し、今では第二の父と仰ぐ副社長のリアン・フレッタさんにユリ栽培の面白さと奥深さを学びました。
帰国後に就農し、ユリ栽培を始めた平松さん。お父さんは平松さんが小学生のころにユリ栽培を辞めていたため、休耕地を復活させるところからのスタートでした。現在は、農地面積1ヘクタール、ユリの栽培面積は60アールです。
「色がバラエティ豊かで新しい品種もどんどん出てくるのがユリ栽培の魅力です」

出荷作業に励む平松さんと 平松園芸の皆さん。

農業高校では1年生で施設園芸や果樹栽培、畜産などを学びました。
「2年生では養豚を専攻しました。ユリ栽培は家業の手伝いで携わっていたし、何より養豚担当の先生に惹かれたのが大きな理由です。厳しいけれどストイックな姿勢に憧れて、この先生に認められたいと思って頑張っていました」と言う平松さん。
「豚舎の掃除は、特に厳しかったです。農大時代の師匠にも『汚い畑でうまいものをつくっている人はいない』と言われていました」
恩師たちの言葉を胸に、平松園芸では毎朝その日の現場の掃除や整理整頓から始めます。作業環境をきれいにすることで、身が引き締まり、仕事の効率もあがりました。
「高校時代に学んだことが、今のユリづくりに対する向き合い方も教えてくれたように思います」

平松さんが育てた優美なユリたち。
農業高校で魅了された
牛のかわいさを
伝えたい

高田千鶴さん
(大阪府立農芸高等学校卒)
子どもの頃から動物が好きだった高田千鶴さんは、自宅の近所にあった大阪府立農芸高等学校に入学します。
高校の実習で牛のかわいさに魅了された高田さんは、大家畜部(通称、牛部)に所属。2年生のとき、校内で生まれた仔牛に毎日愛情を注いで世話をしていましたが、その仔牛が7週間ほどで牧場に出荷されてしまいます。
「畜産とはこういうことなんだ。ペットとは違うんだと実感しました」
それは衝撃的な出来事で、当時を思い出すと今でも涙がこみ上げてくるそうです。
卒業後も牛に携わる仕事がしたいと、酪農ヘルパーに従事。牛の写真は趣味で撮り続けていましたが、友人の「あなたの牛の写真集が見てみたい」という言葉に背中を押され、牛写真家を目指します。
友人との約束から10年後に初の写真集『うしのひとりごと』(河出書房新社)を出版。現在は酪農専門誌での連載や日本学校農業クラブ連盟の機関誌の撮影などで活躍しています。


愛らしい
牛の表情をとらえた
高田さんの作品。
高校時代は、朝はつなぎで登校して牛の世話をしてから授業を受けたり、担当の牛の出産が気になって放課後に学校に行ったことも。文化祭では、大家畜部として堆肥を販売しました。
「堆肥をひたすらつくって大変だったけど、全部売れたときはうれしかったです」と思い出を語ります。
「農業高校で牛の扱いを勉強してきたので、牧場の方に信頼していただき、近い距離で牛を撮影することを許してもらえます。大きくて怖いイメージもある牛のかわいさを知ってもらい、牧場に足を運びたくなるような写真を撮り続けたいです」
これから農業高校を目指す人へは、「命が生まれてから消えるまで心が揺れる経験、普通の高校では学べないことを動物たちから教えてもらいました。将来の選択肢の一つに農業高校を加えてみてください」とエールを送ります。
農業とアスリートを
両立させ
これからの新しい
農業システムを
つくりたい

「ゴールデンウルヴス福岡」所属
伊藤 極さん
(和歌山県立紀北農芸高等学校卒)
伊藤 極さんは福岡県を本拠地に活動するハンドボールチーム「ゴールデンウルヴス福岡」(以下、ウルヴス)に所属するハンドボール選手です。ウルヴスは2016年に「農業×アスリート」をスローガンに設立され、地域農業の活性化とハンドボールの普及を目的に活動するチーム。選手や監督たちが田畑を耕して農作物を作り、農作業後は勝利を目指してハンドボールの練習に汗を流す、アスリートと農業の両立を目指します。
中学生からハンドボールを始めた伊藤さんは、ハンドボールの強豪校である和歌山県立紀北農芸高等学校にスポーツ推薦で入学しました。
「入学当時は、農業に興味はそれほどありませんでした」
高校時代を振り返る伊藤さんは、「授業で露地野菜の栽培や収穫した農産物の販売などを経験することで農業が好きになり、文化祭ではつくった農作物を近所の人が大勢買いに来てくれたことが印象に残っています」と言います。

試合中の伊藤さん。

リーフレタスを収穫する伊藤さん。
ハンドボールでは和歌山県勢初の全国大会ベスト16進出を達成した伊藤さんは大学もハンドボール推薦で進学。卒業後はウルヴスに入団しました。入団の決め手になったのは、昔から好きだったハンドボールと農業高校に入って好きになった農業がいっしょにできること。農高時代にトラクターなどの農業機械の動かし方を学んでいたおかげで、入団後の農作業も苦ではありませんでした。また、柔らかい土を踏み歩いたり、重い物を持ち運んだりと、自然と足腰を鍛えることができます。
ゴールデンウルヴス福岡を、農業を支える新しいシステムにしたいと言う伊藤さん。
「農業を担う若手が少なくなっています。日本の第一次産業を支えるために一緒に頑張りましょう!」

チームは子ども食堂への支援も行っている。

にんにくを収穫中の
ゴールデンウルヴス福岡の
みなさん。
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
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