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農林水産省

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「有機農業」をもっと身近に

知って、選ぶ
有機農業の最新事情

環境意識の高まりで拡大する有機食品市場。生物多様性を守る有機農業の役割や、
有機に関する一定の基準に従って生産されたことを証する「有機JAS認証」の仕組みについて、
国内外の注目状況も含めわかりやすく解説します。

有機農業って何だろう?

スーパーなどで目にする「有機」「オーガニック」の表示。その言葉自体は広く知られているかもしれませんが、実際の生産方法や認証制度については意外と知られていないのではないでしょうか。有機農業の特徴や国内外の市場動向を通して、その現在地を見ていきましょう。

有機農業とは、化学的に合成された肥料や農薬を原則使用せず、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本に、農業生産による環境への負荷をできる限り減らす農法です。堆肥や植物由来の有機物を活用した土作りを行うことで、土壌生物が増え、土壌の機能が維持・発揮されます。さらに、堆肥などに含まれる植物由来の炭素が土壌に蓄積されることにより、間接的に大気中の二酸化炭素が削減され、地球温暖化の防止に寄与すると考えられています。また、昆虫やクモ、カエル、鳥類など、田畑に棲む多様な生き物の生息環境を守る上でも有効です。日本では古くから有機農業への取り組みが続けられており、1999年の「JAS法」の改正による有機農産物の認証制度の導入、2006年の「有機農業推進法」の制定を機に、表示のルールや国の推進方針が整備され、需要と生産の両面で広がりを見せるようになりました。現在では、自然環境と調和しながら、将来にわたって食料を生産していく方法としても注目されています。

自然の力で生産した作物を認証

有機JASマークは信頼の目印

店頭で見かける有機JASマークは、国の基準である有機JASに沿って生産された農産物などであることを示したもので、認証された事業者のみに使用が認められています。有機JASマークが付いているものでなければ、商品に「有機」「オーガニック」と表示して販売することはできません。認証を受けるには、登録認証機関の検査を受け、生産方法や記録の管理体制などの基準を満たす必要があります。有機農産物の場合、農薬や化学肥料の使用を避けることを基本として、種まきや植え付けの前から原則2年以上、禁止された農薬や化学肥料を使っていない田畑で栽培すること、使用禁止資材の飛来・流入を防ぐこと、遺伝子組換え技術や放射線照射を利用しないことなどが条件になります。認証後も記録を残して基準を守るなど、厳しい要件を満たし続けなければなりません。このように、有機JASマークは信頼の証しであり、消費者が商品を選ぶ際の目印となるのです。

有機JASマークは、太陽と雲と植物をイメージしたマークです。農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本に、自然界の力で生産された食品として認定し、農産物、加工食品、飼料、畜産物および藻類に付けられています。消費者にとっては、商品購入の際の選択肢のひとつとしても役立ちます。
世界の有機食品売上の推移を示す折れ線グラフ。2003年から2024年にかけて売上は右肩上がりに増加し、2024年には1,449億ユーロに達した。出典:農林水産省農産局「有機農業の取組拡大に向けて(2025)」資料より、編集部作成

拡大を続ける国内外の有機市場

有機食品の市場は、国内外で拡大を続けています。世界の有機食品売上高は、2003年の196億ユーロから2024年には1,449億ユーロとなり、約7.4倍に成長。日本の市場規模も、消費者アンケートなどを基にすると、2009年の1,300億円から2025年には3,595億円へ推移しています。背景には、有機食品専門のスーパーマーケットや大手量販店・飲食店の増加、ECサイトや生協の直販など販売経路の広がりがあると考えられます。有機食品は、自分や家族のためだけでなく、生物多様性の保全や持続可能な食料生産を支える選択肢のひとつでもあります。こうした価値への理解が深まることで、今後も市場の裾野が広がっていくことでしょう。

世界の有機食品売上の推移を示す折れ線グラフ。2003年から2024年にかけて売上は右肩上がりに増加し、2024年には1,449億ユーロに達した。出典:農林水産省農産局「有機農業の取組拡大に向けて(2025)」資料より、編集部作成
地域で取り組む「オーガニックビレッジ」

自治体が主体となり、地域ぐるみで有機農業に取り組む「オーガニックビレッジ」。この取り組みは、全国168市区町村(2026年8月)まで広がっています。

かつての有機農業は個々の農家による取り組みが中心で、地域に広がりにくいという課題がありました。そこで農林水産省は、「みどりの食料システム戦略」(2021年策定)のひとつとして、地域ぐるみで有機農業の生産から消費まで一貫して取り組むオーガニックビレッジを推進。自治体がオーガニックビレッジ宣言を行うためには、(1)地域における今後の有機農業取組方針等をまとめた「有機農業実施計画」を、みどり交付金※の採択を受けて策定すること、または、(2)認定制度により農林水産省からの計画認定を受けること、といった2つの方法のうち、どちらかを実行する必要があります。宣言を契機に、有機農業が行われていなかった地域で新たな産地づくりが進んでいる事例や、消費地の自治体と連携して有機農業を推進する事例も生まれて、取り組みの広がりを見せています。農林水産省では、さらなる有機農業の拡大に向けて、「2030年までにオーガニックビレッジ200市区町村の創出」を目標に取り組みを推進しています。

みどりの食料システム戦略推進交付金、及びみどりの食料システム戦略緊急対策交付金

持続可能な有機農業を

生産者の取り組みを町が全面サポート

認定制度を活用したオーガニックビレッジ第1号となったのが、 三重県の多気町です。きっかけは18年前、地元スーパーが「直売コーナー」をつくるにあたり、有志の農家およそ30人が地元産野菜の出荷を始めたことでした。しかし、10年ほどすると生産者の高齢化により出荷量が減少し始めます。当時の町長が有機農業の推進を掲げたこともあり、2017年に有志25人が有機栽培に着手。2019年には町の予算で「有機農業推進プロジェクト」が発足し、生産者団体「たき 土力(どりょく)の会」が誕生しました。さらなる転機となったのは2021年、きのこ生産・販売のホクト(株)(本社 長野県)の多気町への工場新設でした。きのこ栽培の菌床は1回ごとに廃棄されますが、それを格安で引き取り堆肥化。低コストで持続可能な有機農業のスキームを確立できました。

たき土力の会・北川さんによる有機野菜づくりの取り組み。廃菌床を活用した土づくりの作業風景と、廃菌床の写真。北川さんのコメント「廃菌床を格安で入手してつくる有機野菜は、価格的にも購入しやすいんです」
柔らかく甘い有機栽培のなす。たき土力の会・長谷川さんが栽培した、艶のある濃い紫色のなすと、生産者の長谷川さんの写真。
有機栽培に使用する土づくりの様子。発酵した菌床はふかふかして手で触ると熱いほど。3か月かけてかき混ぜて均一にしながらゆっくりとこの状態までに仕上げる。
有機栽培に使用する土づくりの様子。発酵した菌床はふかふかして手で触ると熱いほど。3か月かけてかき混ぜて均一にしながらゆっくりとこの状態までに仕上げる。
柔らかく甘い有機栽培のなす。たき土力の会・長谷川さんが栽培した、艶のある濃い紫色のなすと、生産者の長谷川さんの写真。
たき土力の会の取り組みを紹介する写真。上段は、スーパーの野菜売り場に並ぶ有機野菜と「たき土力の会」の販売コーナー。「栽培期間中農薬および化学肥料不使用!環境に配慮した野菜たちを育てています!」「うまいもんは土づくりからをモットーに、地元資源を活用し、堆肥を中心とした元気な土づくりに励んでいます!」と紹介されている。野菜の包装には「たき土力の会 うまいもんは土づくりから!」のロゴ。中段は、保育施設で子どもたちが食卓を囲み、食事を楽しんでいる様子。下段は、たき土力の会・小川さんの写真とコメント「子どもたちが『おいしい』と言ってくれるのが何よりうれしいですね」。

生産者・企業・自治体が協力し
消費者に届ける

多気町のオーガニックビレッジの取り組みでは、生産者団体の「たき 土力の会」、地元企業ホクト三重第一きのこセンターや地元スーパーなどの企業、そして町が協力し合うことで、学校給食や町内飲食店、そして各家庭に有機野菜を届けています。有機野菜はどうしても価格が高くなりがちですが、「格安で廃菌床を入手して堆肥をつくれるので、そのぶん生産コストが抑えられます。スーパーでも普通の野菜とそれほど変わらない値段で販売しているので、地元のみなさんにも食べてもらいやすい」と、「たき 土力の会」の北川清生(きよお)さんは語ります。月10回提供している学校給食では、「学校で子どもたちから直接"おいしかった"と言われるのが励みになっていますね」と同会の小川忠康さんは笑顔を見せます。多気町でも、さらなる有機野菜の普及を目指し、菌床堆肥づくりの研修会を実施。「有機栽培に取り組む農家戸数を2025年の33人から2030年には100人にするのが目標です」と多気町・髙瀬修平さんは展望を語ります。

「たき土力の会」の生産者のみなさんの写真。画像提供=たき土力の会
たき土力の会の取り組みを紹介する写真。上段は、スーパーの野菜売り場に並ぶ有機野菜と「たき土力の会」の販売コーナー。「栽培期間中農薬および化学肥料不使用!環境に配慮した野菜たちを育てています!」「うまいもんは土づくりからをモットーに、地元資源を活用し、堆肥を中心とした元気な土づくりに励んでいます!」と紹介されている。野菜の包装には「たき土力の会 うまいもんは土づくりから!」のロゴ。中段は、保育施設で子どもたちが食卓を囲み、食事を楽しんでいる様子。下段は、たき土力の会・小川さんの写真とコメント「子どもたちが『おいしい』と言ってくれるのが何よりうれしいですね」。
「たき土力の会」の生産者のみなさんの写真。画像提供=たき土力の会

撮影=小林禎弘

有機農産物の安定供給を技術で実現

有機栽培は手間やコストがかかり、安定した収量と利益の確保が難しいとされます。その課題に、設備や技術への投資と経営の視点で向き合う、茨城県つくば市の「ふしちゃんファーム」を訪ねました。

小松菜やほうれん草、ロメインレタス、いちごなどを有機栽培する「ふしちゃんファーム」。代表の伏田直弘さんは、大手外食チェーンで農場の立ち上げや野菜の仕入れを経験した後、金融機関で農業融資を担当し、2015年に就農しました。有機栽培は、農薬や化学肥料に頼らないぶん、病害虫への対策に手間がかかり、収穫量も安定しにくいといわれます。さらに、手間やコストをかけても、それに見合う価格で売り続けられるとは限りません。一方、仕入れの現場では、有機野菜を求める声があっても、必要な量を揃えにくいという課題がありました。そこで伏田さんは、「品質のよい野菜を必要な量だけ安定して届けられれば、有機農業は利益を生む仕事になる」と考えました。

有機農産物の安定供給を技術で実現
高品質・適正価格・安定供給を目指して

ビジネスとして安定した収益を

就農当初に借りたのは、水はけが悪く、長い間使われていなかった農地でした。栽培経験も十分ではなく、種をまいても思うように育たないなど、失敗の連続だったそうです。そこで伏田さんは、有機野菜を安定してつくれない原因をひとつずつ検証。「有機栽培は手間がかかるといわれますが、設備投資をし、防虫ネットや防草シートなどを整え、病害虫を防ぐ仕組みをつくれば、安定的に収益化できます」と言い切るまでに。さらに国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(通称:農研機構)の実証圃場として、有機栽培の技術開発に協力。害虫の侵入を防ぐ方法や天敵を活用する方法など、複数の対策を組み合わせた病害虫管理に取り組みました。販売面では、需要の高い小松菜の生産量を増やすとともに、夏場に小ぶりの白菜を供給するなど、消費者ニーズに応じた生産に取り組み、量販店や生協などに出荷。作業手順を統一し、ハウスごとの収穫量を記録することで、無駄を減らしながら生産性を高め、品質と供給量の安定を収益につなげています。

ビニールハウス内で青々と育った葉物野菜を3人の生産者が収穫している様子。手のひらサイズのミニ白菜「わわ菜」の栽培。暑さや病害虫にさらされる期間を減らし、通常より小さいサイズで早めに収穫し、通年出荷につなげている。ふしちゃんファーム代表・伏田直弘さんの写真とコメント「有機栽培だから虫食いがあって当たり前ではありません。消費者は、有機栽培にも慣行栽培の野菜と同じ品質を求めています」
ふしちゃんファームの農業への取り組みを紹介する写真。上段は、赤く熟した大粒のいちごが緩衝材と透明フィルムで丁寧に包装され、箱に並べられている様子。中段は、ふしちゃんファーム代表・伏田直弘さんの写真とコメント「農業は、利益を確保して続けることが大切」。下段は、青空と白い雲が広がる中、緑豊かな田園風景が一面に広がっている様子。未経験から有機米栽培に挑戦し、現在は有機転換期3作目。雑草対策に試行錯誤しながら、収穫米のすべてをつくば市の学校給食へ届けている。

みどり認定を活用し、有機いちごに挑戦

伏田さんが新たに挑んだのが、栽培が難しいとされる有機いちごです。生産量を増やすにはハウスの増設が必要なため、税制・融資特例の措置を受けることができる「みどり認定」を活用。無利子の農業改良資金を利用して、いちご用ハウスを整備しました。栽培では、葉物野菜で培った害虫をハウス内に入れない工夫を基本に、紫外線を照射する技術などを導入。「有機野菜づくりで培ってきた技術を組み合わせ、栽培の仕組みをつくりました」と伏田さん。現在は国内での販売に加え、米国を中心とした海外への輸出も見据えています。その課題となるのが、収穫時の鮮度を長く保つ技術です。鮮度を維持できれば、天候に左右されやすい農産物の安定供給に役立つだけでなく、船便の利用によって輸送コストも抑えられます。有機野菜を世界へ届けるため、伏田さんの挑戦は続きます。

ふしちゃんファーム代表・伏田直弘さんの写真とコメント「病害虫対策はIPM(総合的病害虫・雑草管理)が重要。僕らが失敗と成功を繰り返し得た知見を発信し、農業の発展につなげたいですね」
規格外野菜を活用して開発した商品「惣菜のもと」の例。京風のやさしい味付けを特徴とし、パッケージにも工夫を凝らしている。学生が商品づくりに携わった事例として、「きょうのなすび。」のパッケージが紹介されている。
ふしちゃんファーム代表・伏田直弘さんの写真とコメント「病害虫対策はIPM(総合的病害虫・雑草管理)が重要。僕らが失敗と成功を繰り返し得た知見を発信し、農業の発展につなげたいですね」

撮影=安田有里

Column:逸品発見!農水省みやげで人気「有機あられ」

東京・霞ヶ関にある、農林水産省(以下、農水省)の庁舎地下には、有機農産物にこだわった定食等を提供する「あふ食堂」や、書店やコンビニ、売店(農林生協)など、職員や関係者以外でも利用できる店舗が並んでいます。売店には全国各地のめずらしい特産品や、ここでしか買えない限定品もあります。中でもおみやげとしておすすめなのが、みどりの食料システム戦略と有機農業のPRにと、2023年より販売をスタートした「有機あられ」。有機米や有機醤油等の有機原材料を使用して製造された有機JAS品で、農水省限定販売の商品です。味は、あおさのりを練り込んだ「アオサあられ」、パリッとした海苔の「深川巻」、有機玄米を使用した「GENMAI」の3種類。農水省の若手職員が考案したパッケージデザインも「米」「庁舎」「人」の3種。農水省にお立ち寄りの際は、ぜひ地下売店でチェックしてみてはいかがでしょうか。

食堂や売店は一般に開放されていますが、
入館には、庁舎入口での入館手続きが必要です。

特に人気は「庁舎」デザイン。農林水産省限定のJONA有機認証付きお菓子3種類を紹介。左の商品には「有機農場100万haをめざすあられ」「農林水産省限定」、中央の商品には「農林水産省限定」、右の商品には「おカタいです」「農林水産省限定」と記載されている。3種類の個包装されたお菓子と、それぞれの中身を並べた写真。パッケージには庁舎のイラストや農林水産省の建物をモチーフにしたデザインが使用されている。

イラストレーション=せきぐちみほ

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