第3節 歯科口腔保健における食育推進
(1)国における取組
平成21(2009)年に、厚生労働省において開催された「歯科保健と食育の在り方に関する検討会」で、「歯科保健と食育の在り方に関する検討会報告書「歯・口の健康と食育~噛ミング30(カミングサンマル)を目指して~」」が取りまとめられました。この報告書において、全ての国民がより健康な生活を目指すという観点から、一口30回以上噛むことを目標として、「噛ミング30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズを作成するとともに、食育推進に向けた今後の取組として、各ライフステージにおける食育推進の在り方、関係機関や関係職種における歯科保健と食育の推進方策、新たな視点を踏まえた歯科保健対策の推進等について提言がなされました。
また、食を通して健康寿命を延伸するためには、乳幼児期から高齢期に至るまで、噛む・飲み込むなどの機能を担う歯や口の健康が重要です。このため、厚生労働省では、平成23(2011)年に公布・施行された「歯科口腔保健の推進に関する法律」(平成23年法律第95号)に基づき、平成24(2012)年に「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(平成24年厚生労働省告示第438号)を制定し、乳幼児期から高齢期までの各ライフステージの特性に応じた歯科口腔保健を推進しています。この「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」において、食育と関連の深い口腔機能の維持・向上についての目標を設定しています。
さらに、平成元(1989)年から推進している「8020(ハチマル・ニイマル)運動」は、全ての国民が健やかで豊かな生活を過ごすため、80歳になっても20歯以上保つことを目標としており、8020達成者の割合は、5年に一度実施している歯科疾患実態調査の結果によると、昭和62(1987)年の7.0%から平成28(2016)年には51.2%へと上昇しています。なお、健康日本21(第二次)では、歯・口腔の健康に関する目標として、80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加に加え、60歳において24歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加が設定されており、この割合は平成17年(2005)年の60.2%から平成28(2016)年には74.4%へと上昇しています。
また、平成29(2017)年3月18日には、厚生労働省が主催で、「子どもと大人の「食べる」と「歯と口の健康」」をテーマに、口腔保健シンポジウムを開催しました。
これらの運動や取組を通じて、歯科口腔保健における食育を推進しています。
平成29(2017)年11月11日には、厚生労働省、富山県、富山市、公益社団法人日本歯科医師会、一般社団法人富山県歯科医師会が協同して、富山県において第38回全国歯科保健大会を開催しました。この大会では、「よく噛み、よく食べ、よく生きる。~健康寿命延伸はお口から~」をテーマにシンポジウム等を行いました。
(2)都道府県における取組
各都道府県でも歯科口腔保健における食育の推進に関する取組が行われており、厚生労働省では、「8020運動・口腔保健推進事業」を通じて都道府県の取組への支援を行っています。この中で、噛み応えのある料理を用いた噛むことの大切さの教育や、食生活を支える歯・口腔の健康づくりについての歯科医師・栄養士等の多職種を対象とした講習会、バランスの良い食事をとるための歯、舌、口唇等の口腔機能に関する相談に対応できる歯科医師の養成など、食育に関わる事業も実施されています。
神奈川県では、食育への理解や意識の向上を図るため、平成29(2017)年7月27日に「かながわ食育フェスタ」を開催し、4,250名の方が参加しました。企業や団体、大学など多くのブースの出展があり、咀嚼力判定ガムの体験のブースでは、良く噛むことで色が変わるガムを用いて、体験者の方に咀嚼力の重要性について意識啓発が行われました。また、「若い世代向けの料理教室」を開催し、歯科衛生士による、食べることに必要な口腔機能や歯周病予防に関する講演を行いました。
(3)関係団体における取組
公益社団法人日本歯科医師会、日本歯科医学会、一般社団法人日本学校歯科医会、公益社団法人日本歯科衛生士会の4団体は、平成19(2007)年に、国民全てが豊かで健全な食生活を国民的運動として広く推進することを宣言した「食育推進宣言」を出しました。この宣言において、歯科に関連する職種は多くの領域と連携して食育を広く推進することとされています。
公益社団法人日本歯科医師会と公益社団法人日本栄養士会は、平成22(2010)年に、「健康づくりのための食育推進共同宣言」を出しています。歯科医師、管理栄養士・栄養士は、この宣言において、「食」の専門職として全ての人々が健康で心豊かな食生活を営むことができるようにその責務を果たすと同時に、互いに連携・協働して国民運動である食育を広く推進することとしています。また、共通認識を深めるため、両会はこれまでに3回の共同シンポジウムを開催しています。
公益社団法人日本歯科医師会、一般社団法人岡山県歯科医師会は、平成29(2017)年6月30日、7月1日に開催された「第12回食育推進全国大会inおかやま」において、共同で食育に関するブースを出店し、「健康食育噛ミング30(カミングサンマル)」と題し、「ガムでかむ力チェック」、「お口の中の細菌数チェック」、「パソコンによるお口の中の診断」を行いました。この大会の来場者は、2日間で約21,000人であり、同ブースには延べ約1,500人が来場しました。
日本歯科医学会は、食育に関する公開フォーラムや多職種によるワークショップ、研修会等の実施や、歯科医療者向けのFAQ(http://www.jads.jp/date/faq160821.pdf)(外部リンク)の作成を行っています。平成29(2017)年5月28日には、公開フォーラム「子どもの食を育む歯科からのアプローチ~4年間の重点研究から見えてきた課題と展望~」を開催し、これまで取り組んできた4年間の総括とともに、「こども食堂」や「地域歯科医院での気づき」等について、講演と討論を行いました。これらの取組は、歯科医療関係者が子供の食の問題を正しく理解し、真に求められる支援者になるための研修・研鑽を図り、歯科医療からの口腔機能発達を中心とした親子支援へつなげていくことを目的に行われています。
公益社団法人日本歯科衛生士会では「ライフステージごとの食育」の普及啓発を目的としたポスターを作成し、幅広い年齢層の国民に対して更なる周知を図っています。また、「歯科衛生士と多職種連携の食育推進活動事例集」をホームページで公表しています。
(http://www.jdha.or.jp/)(外部リンク)

「ライフステージごとの食育」ポスター
(小児期)

「ライフステージごとの食育」ポスター
(成人期)

「ライフステージごとの食育」ポスター
(高齢期)
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