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農林水産省

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4 高齢者に対する食育推進


高齢者については、健康寿命の延伸に向け、個々の高齢者の特性に応じて生活の質(QOL)の向上が図られるように食育を推進する必要があります。

厚生労働省では、平成28(2016)年度に「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」を開催しました。急速な高齢化の進展により、地域の在宅高齢者等が健康・栄養状態を適切に保つための食環境整備、とりわけ、良質な配食事業を求める声が、今後ますます高まるものと考えられます。同検討会では、配食には医療・介護関連施設と住まいをできる限り切れ目なくつなぐ役割や、低栄養予防・フレイル(*1)予防に資する役割が期待されることに鑑み、地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業において望まれる栄養管理の在り方について検討を行い、平成29(2017)年3月に検討会報告書及び配食事業者向けガイドラインを取りまとめました。平成29(2017)年度は、ガイドラインを踏まえた配食サービスの普及及び利活用の推進に向けて、配食事業者と配食利用者のそれぞれに向けた普及啓発用パンフレットを作成しました(コラム:高齢者の健康づくりを支えるための配食ガイドライン 参照)。

また、農林水産省では、栄養面や噛むこと、飲み込むことなどの食機能に配慮した新しい介護食品を「スマイルケア食」として整理し、消費者それぞれの状態に応じた商品選択に寄与する表示として、「青」マーク(健康維持上栄養補給が必要な方向けの食品)、「黄」マーク(噛むことに問題がある方向けの食品)、「赤」マーク(飲み込むことに問題がある方向けの食品)とする識別マークの運用を平成28(2016)年に開始したところです(図表2-3-1)。平成29(2017)年度には、指導的な立場からスマイルケア食の普及に関して特に影響を与える医師や栄養士などの関係者をターゲットとした研修会の実施や今後の普及に当たって活用可能な教育ツール作成への支援を行いました。

*1 加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態。

図表2-3-1 スマイルケア食識別マーク

コラム:高齢者の健康づくりを支えるための配食ガイドライン

高齢化が急速に進展する中、地域高齢者(*1)の食生活を支える手段の一つとして、配食の果たす役割は非常に大きいといえます。平成24(2012)年度の内閣府の調査結果によると、高齢者の配食利用率は4%程度と低いものの、今後自分で食事の用意ができなくなったり、用意してくれる人がいなくなったりした場合に食事サービスの利用を希望する者(65歳以上の約69%、75歳以上の約63%)については、民間配食サービス、公的配食サービスの順に利用意向が高くなっており、今後、配食サービスの利用が本格的に拡大していくことが見込まれます。

配食は特定かつ多数の高齢者が継続的に利用するものであり、適切な栄養管理が重要となりますが、平成24(2012)年度の厚生労働省老人保健健康増進等事業の調査結果では、配食事業者のうち、民間企業の約1割、NPO法人又はボランティア団体の約4割で管理栄養士・栄養士とも不在であることや、そのような事業者の約半数では献立の栄養計算が全く行われていないことなどが示されています。また、その調査結果では、配食事業者が利用者に見合った配食の種類の確認を行う上で重要となる項目(食事療養の有無、食事の好み、身体機能、咀嚼機能等)について、十分に把握しないまま、配食サービスを開始している例が多いことも示されています。

こうした中、厚生労働省は平成28(2016)年度に、「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」を開催し、平成29(2017)年3月に検討会報告書及び配食事業者向けガイドラインを公表しました。我が国として、配食事業の栄養管理の在り方について本格的な整理を行ったのは、今回が初めてです。

今回整理された主な事項

<1>配食事業における商品管理の在り方

  • 配食事業で最も基本となる献立作成に係るものとして、対応体制(*2)、基本手順、栄養価のばらつきの管理等について整理。
  • 配食に関して今後予想されるニーズの高まりを踏まえ、在宅療養者向けの食種として、エネルギー量、たんぱく質量、食塩相当量等を1つ以上調整した栄養素等調整食や、硬さ、付着性、凝集性等に配慮した物性等調整食への対応の在り方についても整理。

<2>配食利用者の身体状況等の把握に関する在り方

  • 配食利用者等の適切な食種の選択の支援を行う観点から、配食事業者は配食注文時のアセスメント、配食継続時のフォローアップを行うこととし(*3)、そのための対応体制、確認項目、留意事項等を整理。
  • 配食利用者側も自身の身体状況等をあらかじめ正しく把握しておき、その内容を配食事業者に適切に伝えることが重要となるため、基本となる確認項目等を整理。

地域包括ケアシステムの構築に向けては、公的医療・介護保険の活用のみならず、地域高齢者の「自助」の推進も重要となります。配食事業者は注文時のアセスメントや継続時のフォローアップ、良質な配食の提供を通じて、地域高齢者の自主的な健康管理を支援するという点において、地域包括ケアシステムの重要な担い手といえます。また、配食利用者においては、自身の身体状況等を正しく把握し、配食事業者に伝えるなど、自分に見合った配食の選択に努め、健康管理を主体的に図っていくことが重要となります。地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の本格的な普及はこれからですが、平成30(2018)年1月に、本ガイドラインを踏まえた配食サービスの普及と利活用の推進に向けて、配食事業者と配食利用者それぞれに向けた普及啓発用パンフレットを作成し、ホームページで公表しました(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158814.html)(外部リンク)。今後、適切な栄養管理に基づく配食サービスの普及が進み、地域高齢者等の食事の選択肢や利便性が拡大し、健康の保持増進が図られることが強く期待されます。

配食利用者向けパンフレット

配食事業者向けパンフレット

配食事業者向けパンフレット

配食利用者向けパンフレット

*1 自宅等の住まいに在住する65歳以上の高齢者(在宅療養者、通所介護等の在宅サービスを利用する要介護者等を含み、医療施設の入院患者、介護保険施設の入所者等であって医師、管理栄養士、栄養士等により栄養管理が行われている者を除く。)をいう。

*2 一定規模・内容の場合は管理栄養士又は栄養士が担当。

*3 管理栄養士又は栄養士が担当。低栄養が疑われる者や在宅療養者については、原則として管理栄養士が担当。



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