第5節 食品関連事業者等による食育推進
食育の推進に当たっては、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者等の関係者間の連携と、各分野における積極的な取組が不可欠です。食品関連事業者等は消費者と接する機会が多いことから、食育の推進に占める役割は大きく、様々な体験活動の機会の提供や健康に配慮した商品・メニューの提供、食に関する情報や知識の提供が求められています。
近年、食品製造業、小売業、外食産業をはじめとした食品関連事業者等による食育活動は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環としてなど、様々な位置付けで取り組まれています。
具体的な取組内容としては、工場・店舗の見学、製造・調理体験、農林漁業体験、料理教室の開催といったもののほか、店舗での食育体験教室の開催、出前授業、提供するメニューの栄養成分表示や食生活に関する情報提供など、幅広いものとなっています。例えば、公益社団法人日本給食サービス協会では、会員の事業者が給食を提供する社員食堂などで健康に配慮した食事を提供するとともに、「給食施設における栄養情報提供ガイド」(2017年)を日本給食経営管理学会と共同で作成し、エネルギー等の栄養成分表示の適正な運用を行うなど、健康に関する情報提供の取組も行っています。
厚生労働省では、平成25(2013)年度から開始した「健康日本21(第二次)」において、健康寿命の延伸に向け、企業・民間団体・地方公共団体と協力・連携した取組として「スマート・ライフ・プロジェクト」を推進しています。また、毎年9月に展開している食生活改善普及運動では、「食事をおいしく、バランスよく」を基本テーマに、野菜摂取量を350g以上にすることを目標とした「毎日プラス1皿の野菜」、「おいしく減塩1日マイナス2g」に加え、「毎日のくらしにwithミルク」にも焦点を当て、地方公共団体や企業とともに全国的な運動を実施しました。効果的な取組を展開するため、普及啓発ツールを作成し、「スマート・ライフ・プロジェクト」のホームページで提供するとともに、地方公共団体や「スマート・ライフ・プロジェクト」の登録企業の取組例を紹介するなどの情報発信を行いました(事例:企業と協働した食生活改善普及運動の取組 参照)。

食生活改善普及運動
「プラス1皿マーク」

食生活改善普及運動
「マイナス2gマーク」

食生活改善普及運動
「withミルクマーク」
また、農林水産省では、「果樹農業振興基本方針」(平成27年4月27日農林水産省決定)に基づき、果物は嗜好品ではなく、適量を毎日の食生活に取り入れるべき必需品であるということについて、科学的見地からの理解が広まるよう多角的な取組を行っています。具体的には、生産者団体と協力し「毎日くだもの200グラム運動」による家庭や学校給食等における果物の摂取を促進するほか、栄養面では各種ビタミン、ミネラル及び食物繊維の摂取源として重要な食品であり、健康の維持・増進に役立つ機能性関与成分も含まれているといった健康への有益性の周知、社会人(企業)を対象とした普及啓発(「デスクdeみかん」等)、小学生を対象とした出前授業に取り組んでおり、果物の摂取が生涯にわたる食習慣となるよう、その定着を推進しています。
さらに、農林水産省では、地域の食文化の継承に向けた調理体験や、食や農林水産業への理解を深めるための体験活動の提供など、地域における食育活動を実施する食品関連事業者等に対する支援を行いました。
平成28(2016)年国民健康・栄養調査では、1日当たりの野菜類摂取量の平均値は276.5g、果実類摂取量の平均値は102.2gであり、いずれも前年と比べて減少していました。
その理由としては、平成26(2014)年調査において、消費者が食品を選択する際に重視している点を把握したところ、最も多かったのが「おいしさ(72.8%)」、次いで「好み(65.1%)」、「鮮度(60.8%)」、「価格(60.5%)」と続いていたことから、複合的な影響が考えられます。実際に、平成28(2016)年の調査時期において、天候不順等の影響で野菜や果実の出回り量は前年と比べて減少し、価格は前年と比べて高値となっていました。
「健康日本21(第二次)」で目標としている野菜摂取量350gや、「毎日くだもの200グラム運動」で推奨している果物摂取量200gには、まだ到達しておらず、引き続き、摂取量増加のため、野菜や果物の安定供給とともに、消費者への普及・啓発の取組が重要です。
*1 国民健康・栄養調査は、10~11月中の日曜日及び祝祭日を除く任意の1日に栄養摂取状況調査を実施。野菜類とは、緑黄色野菜、その他の野菜、野菜ジュース、漬け物であり、果実類とは、生果、ジャム、果汁・果汁飲料である。
事例:企業と協働した食生活改善普及運動の取組
函館市保健福祉部健康増進課

野菜普及啓発のポップ
函館市では、平成29(2017)年度食生活改善普及運動の取組として、「毎日プラス1皿の野菜」キャンペーン(外食時における野菜摂取の促進事業)を実施いたしました。飲食店で提供している70g以上の野菜が使われているメニューを登録してもらい、市ホームページで、メニュー写真や店舗情報を紹介しました。
さらに、協働のまちづくりに関する協定を締結しているコンビニやスーパー、栄養成分表示の店において、市の食育推進キャラクターをデザインした野菜普及啓発のポップを貼付してもらい、「もっと野菜を食べよう」の食育を推進しました。ポップに「毎日プラス1皿の野菜」キャンペーン事業のホームページを案内するQRコードを掲載することで相乗効果を図りました。
また、平成29(2017)年9月30日(土)、10月1日(日)には、市民の健康意識の醸成を図ることを目的に、親子連れや働く世代の来客が見込める函館蔦屋書店において健康づくりイベントを開催しました。具体的には、楽しみながら健康について関心を持てるように、生活習慣病予防、がん検診、食育の推進、歯科保健などの健康に関するクイズラリーや各種測定等を体験してもらいました。加えて、食育ブースでは、函館市食育推進協議会の構成団体である北海道栄養士会函館支部や函館市食生活改善協議会が、美味しいだしをとることにより、薄味でも美味しい味付けになることを伝えるため、地場産の昆布を使っただしのとり方のデモンストレーションと試飲を行い、減塩についての普及啓発を図ったほか、1日の野菜摂取の目標量である350gの計量体験をすることで、参加者自身の野菜摂取の状況を振り返ってもらい、野菜摂取の促進を図りました。計量体験した方へは、1日に不足しているといわれている70g分の野菜と、リーフレットを配付しました。また、近くのフロアでは、「第2次はこだてげんきな子 食育プラン(函館市食育推進計画)」のパネルを展示しました。イベント参加者のアンケート結果からは、「たまたま来た」が60.9%であったことから、健康に関心の薄い市民にも効率的な周知啓発を図ることができました。今後も、食育推進協議会等関係団体と連携を図り食育推進していきたいと考えています。事業の詳細は函館市のホームページからご覧下さい。
(http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2017080800169/)(外部リンク)
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