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農林水産省

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1 食品ロス削減を目指した国民運動の展開


第3次基本計画では、重点課題の一つとして、「食の循環や環境を意識した食育の推進」を位置付けており、食に対する感謝の念を深めていくために、自然や社会環境との関わりの中で、食料の生産から消費に至る食の循環を意識することが大切です。

我が国の平成28(2016)年度の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで68%となっています。食料及び飼料等の生産資材の多くを海外からの輸入に頼っている一方で、我が国では、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品ロスが、平成26(2014)年度の推計で621万トン発生しています。その内訳は、事業系で339万トン、家庭系で282万トンとなっています。平成23(2011)年の国連食糧農業機関(FAO(*1))の算定によれば、世界の食料生産量の1/3にあたる13億トンの食料が毎年損失・廃棄されており、食料生産に費やす資源やその際に発生する温室効果ガスの無駄な排出に繋がっています。平成27(2015)年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下「2030アジェンダ」という。)において、持続可能な開発目標の一つに「持続可能な生産消費形態を確保する」ことが掲げられ、その中で「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」こととされました。この「2030アジェンダ」で掲げられた目標を世界全体で達成していくためには、事業者だけでなく、国民一人一人の意識と行動が求められています。

我が国では、環境負荷の少ない、循環を基調とした経済社会システムを構築するため、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(平成12年法律第116号。以下「食品リサイクル法」という。)に基づき、食品の売れ残りや食べ残し及び食品の製造過程において発生している食品廃棄物等について、食品の製造、流通、消費等の各段階において、発生の抑制に優先的に取り組んだ上で、食品循環資源について飼料化や肥料化等による再生利用を推進しています。

平成29(2017)年度においては、関係省庁が連携して、食品ロスの一つの要因となっている製・配・販(*2)にまたがる商慣習の見直しについて、納品期限を緩和する取扱品目や取組企業の拡大のための実証実験や、賞味期限の年月表示化等の取組を推進しました。併せて、農林水産省及び経済産業省は、平成29(2017)年5月に、卸売業者と小売業者の業界団体へ、「食品ロス削減に向けた加工食品の納品期限の見直しについて」を発出しました。また、食品ロス削減のための消費者理解を促進するため、全国の小売事業者等が利用可能な啓発資料を作成しました。

生産・流通・消費などの過程で発生する未利用食品を食品企業や生産現場などからの寄付を受けて、必要としている人や施設等に提供するフードバンク活動が全国各地で広がりつつあります。まだ十分に食べられる食品を有効に活用することにより、食品ロスの削減を図るとともに、食品の支援を必要としている人々へつなぐ架け橋として、今後、その活躍が期待されているところです。

一方、フードバンク活動に対する社会的な理解がまだ十分でないことに加え、食品の衛生的な取扱いやトレーサビリティの観点からフードバンク活動団体側の体制を懸念する声があることから、食品関連事業者等が安心して食品の提供を行える環境が十分整っていません。こうした中で、フードバンク衛生管理講習会及びフードバンク活用促進セミナーを、平成29(2017)年11月から平成30(2018)年1月にかけて、全国6都市(仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡)で計7回開催しました。

食品ロスの削減に関連する関係省庁等の連携を図り、消費者自らが食品ロスの削減を意識した消費行動等を実践する自覚を形成するための普及啓発方策について検討・協議する場である「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」(構成員:消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省)では、平成29(2017)年度の取組状況等について情報共有及び意見交換を行いました。

一部の地方自治体においては、飲食店等における食品ロス削減に向けて、食べきり運動や、自己責任を前提に食べ残し料理の持ち帰りの呼び掛けが広がっています。このため、消費者庁、農林水産省、環境省、厚生労働省では、消費者、飲食店それぞれの立場の方に対して、飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項を平成29(2017)年5月に公表しました。

*1 Food and Agriculture Organizationの略

*2 メーカー(製)、中間流通・卸(配)、小売(販)のこと

図表2-5-2 食品廃棄物等の利用状況等(平成26(2014)年度推計)
図表2-5-3 飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項の概要

また、関係者への情報発信の一環として、「30・10運動」(*3)を積極的に推進している長野県松本市において、平成29(2017)年10月30日、31日に、事業者や消費者を含めた食品ロス削減に関わる様々な関係者が一堂に会し、新たな連携を築き、フードチェーン全体で削減していくことの必要性を日本全国に発信することを目的に、「第1回食品ロス削減全国大会」(松本市・全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会(*4)主催、消費者庁・農林水産省・環境省共催)が開催されました(事例:食品ロス削減の必要性を全国に発信(第1回食品ロス削減全国大会) 参照)。

このほか、食育推進全国大会や3R推進全国大会、各種セミナー等において、食品リサイクルと食品ロスの削減について普及啓発活動を行いました。

*3 会話やお酒に集中してしまいがちな会食や宴会での食べ残しを減らすため、乾杯後の30分間とお開き前の10分間は席について料理を楽しもうという取組。

*4 「おいしい食べ物を適量で残さず食べきる運動」の趣旨に賛同する都道府県・市区町村により、広く全国で食べきり運動等を推進し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進すると共に、食品ロスを削減することを目的として設立された自治体間のネットワーク(参加自治体:47都道府県270市区町村、平成30(2018)年1月16日現在)

事例:食品ロス削減の必要性を全国に発信(第1回食品ロス削減全国大会)

松本市・全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会

平成29(2017)年10月30日、31日に、「第1回食品ロス削減全国大会」(松本市・全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会 主催、消費者庁・農林水産省・環境省共催)が開催されました。元大関の把瑠都さん、食育インストラクターの和田明日香さんをゲストに招いて行ったトークショーでは、ゲスト自身の体験を交えて、食品ロスに対する考えを話していただいたほか、会場が一体となり、全国に向けて「食品ロスを減らそう!」と力強く宣言しました。また、ミニ講演では、気象予報士の菊池真以さんが「気象からとらえる食品ロス削減の取組」と題し、天候の長期予報を踏まえて製造量を調節し、食品の廃棄量を減らす企業の取組など、気象と食品ロスの関連について講演しました。パネルディスカッションでは、消費者、関連事業者、自治体がそれぞれの立場における食品ロス削減の取組内容について話し合い、最後に、「10月30日を食品ロス削減の日にし、食品ロス削減活動を広めていく契機にする」ということを会場内で共有し、閉会しました。

次回の食品ロス削減全国大会は、平成30(2018)年10月30日に京都市で開催される予定です。

「第1回食品ロス削減全国大会」の開催概要

【参加者数】
  約800人
 【参加自治体数】
  約100自治体
 【プログラム】
  ・トークショー
   出演者:元大関 把瑠都さん、食育インストラクター 和田 明日香さん
  ・ミニ講演
   テーマ:「気象からとらえる食品ロス削減の取組」
   講演者:気象予報士 菊池 真以さん
  ・パネルディスカッション

第1回「食品ロス削減全国大会」の様子

第1回「食品ロス削減全国大会」の様子

学校教育においては、給食の時間や各教科等の中で、食事ができるまでの過程を知り、働く人々に感謝の気持ちを持つことや、残さず食べたり無駄なく調理したりすること等を指導しています。

文部科学省では、小学生用食育教材等において食品ロスの削減について取り上げるとともに、平成28(2016)年度から開始した「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」において、学校給食の提供過程で発生する食品ロスの削減を目指したモデル事業を実施しています。

環境省では、学校給食における再生利用等の取組を促進するとともに、食育・環境教育を推進するため、学校給食の実施に伴い発生する廃棄物の3R促進に関するモデル事業を平成27(2015)年度から実施しています。モデル事業参加学校では、給食の食べ残し量の減少や、児童を通じて保護者にも意識や行動の変化がみられます。平成29(2017)年度は実施地域として2市(京都府宇治市、山梨県甲府市)を採択しました(図表2-5-2)。

「持続可能な開発目標(SDGs(*5))」(*6)達成のための日本の取組事例の国際発信として、平成29(2017)年6月に台北で開催された「APEC食品ロス削減専門家会合」、平成29(2017)年6月にベルリンで開催された「2030アジェンダ達成に向けたG7(*7)協調行動ワークショップ」や平成29(2017)年7月にニューヨークで開催された「持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF(*8))」において、食品ロスの削減や食品リサイクルの推進に関する我が国の取組を紹介しました。

また、平成29(2017)年度から、FAOとの協働によるサプライチェーンにおける食品ロス削減事業を開始しました。

*5 Sustainable Development Goalsの略

*6 平成27(2015)年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された平成28(2016)年から平成42(2030)年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。

*7 Group of Seven の略。フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの先進国のこと。

*8 High-Level Political Forumの略

図表2-5-4 平成29(2017)年度 学校給食の実施に伴い発生する廃棄物の3R促進モデル事業の内容


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