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農林水産省

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第4節 地域の食文化の魅力を再発見する取組


四季折々の食材に恵まれた日本は、長い年月をかけて地域の伝統的な行事や作法と結びついた食文化を形成してきました。

一方で、食生活の多様化に伴い、地域の郷土料理や伝統料理等の食文化が次世代に十分に継承されない傾向も見られることから、地域の食文化を継承していくためには、伝統的な郷土料理や食文化を支えてきた地域の食材等の特徴を理解し、伝えていくことが大切です。

家族や地域での継承が難しくなっている近年の状況を踏まえ、地域において、市町村や民間団体、農協、生協等が、子供達や子育て世代を始めとする地域の消費者を対象に、郷土料理づくり教室の開催や大豆の種まきから行うみそづくり、食品工場見学などを実施し、地域の食文化や地場産物等への関心を高める取組を行っています。

その他、地域の伝統野菜や米等の植付けから収穫までの一連の農作業体験を通じて農作業の楽しさや苦労等を学ぶことにより、地域の食や食文化への理解が深まることから、このような農業体験機会の提供が全国で行われています。

農林水産省では、平成29(2017)年度、これら全国各地で行われている郷土料理や伝統野菜をはじめとする伝統的食材等の魅力の再発見につながる取組を、地方公共団体、農林漁業者、食品関連事業者等が連携し、継続して実施できるよう支援しました(事例:子育て世代や若い世代に向けた豆味噌料理の継承の取組 参照)。

事例:地域の食文化の継承(第32回国民文化祭・なら2017)

文化庁では、都道府県等と共催で国民の文化活動への参加意欲に応えるとともに、文化活動の水準を高めるため、国民一般が行っている各種の文化活動を全国的規模で発表、競演、交流する場として国民文化祭を昭和61(1986)年度から毎年開催しています。

平成29(2017)年9月1日から11月30日までの91日間にわたり開催された「第32回国民文化祭・なら2017」では、奈良県において「食文化シンポジウム~はじまりの奈良~」や地元で活用されてきた薬草をテーマに「宇陀市薬草文化祭」が開催されました。また、東京では「食文化シンポジウム~奈良の食文化にまつわるおはなし~」を、第32回国民文化祭・なら2017の一環として開催し、日本の食文化に深い影響を与えた奈良の食文化について、有識者による講演を行いました。

(奈良)

○食文化シンポジウム~はじまりの奈良~(9月17日 奈良市・奈良春日野国際フォーラム)

地域の特色ある食文化として、奈良にゆかりのある「柿」、「柿の葉ずし」、「大和茶」をテーマに講演を行い、食文化を受け継いでいくために必要なことについて学びました。

○宇陀市薬草文化祭(10月21日 宇陀市・宇陀市総合体育館)

宇陀市内には、現存する日本最古の薬園や薬問屋跡などがあり、薬文化を色濃く残しています。日本の薬文化にゆかりの深い宇陀市において、薬草を身近に感じる催しとして薬草についての講演会や料理教室、薬草を活用した料理コンテストなどが開催され、地域の食文化を再認識する機会となりました。

(東京)

○食文化シンポジウム~奈良の食文化にまつわるおはなし~(7月5日 中央区・浜離宮朝日ホール)

生活に深く根差し、育まれてきた「食文化」を、主として生活における文化の面から考察するシンポジウムを開催し、350名を超える方の参加がありました。奈良の食文化にまつわる「古代食」、「精進料理」、「発酵の食文化」について有識者3名による講演を行い、奈良を通して地域の「食文化」がどのように継承されてきたのか学ぶ場となりました。

宇陀市薬草文化祭

宇陀市薬草文化祭

食文化シンポジウム~奈良の食文化にまつわるおはなし~

食文化シンポジウム
~奈良の食文化にまつわるおはなし~

事例:子育て世代や若い世代に向けた豆味噌料理の継承の取組

愛知県岡崎市

食文化冊子

食文化冊子

食文化継承クッキング

食文化継承クッキング

愛知県岡崎市は、県の中央部に位置し、西三河の中心都市として発展し、江戸幕府を開いた徳川家康公の生誕地として、豊かな矢作川と山々に守られ、多くの史跡や史実、偉大な先人の跡を今に残し、地域の風土に根ざした食文化が発達してきました。

しかし、本市において祖父祖母の世代からかろうじて伝承している食文化・郷土料理については、調査されたものが存在しなかったため、平成28(2016)年7月に岡崎市が市制100周年を迎えることを機会に、郷土の食に注目し、そこに残された記憶をたどり、現在のありようを見聞きし、食の文化を保存するため、本市において伝統として受け継がれてきた料理の調理・加工方法もあわせ、「ふるさとの味を知る おかざきの『食』再・発・見」を発行しました。

平成28(2016)年度からは市民協働事業として岡崎市食生活改善協議会との協働による小中学生親子を対象とした「食文化継承クッキング」を開催しています。これは和食がユネスコの無形文化遺産に登録され注目が集まる中、岡崎市における郷土食や行事食をテーマとした調理実習を開催し、地域の食文化を理解し継承していく事業として、平成28(2016)年度は7回、平成29(2017)年度は5回開催しました。

食文化継承クッキングでは、はじめに岡崎の食文化について参加者に歴史や特徴などを伝え、理解してもらった上で郷土料理の調理を行っていただきました。岡崎の食文化を事前に調査しておいたことにより、参加者に裏付けのある歴史や特徴などを伝えることができ、「岡崎の食文化を知った上で調理することができたので良かった」、「食文化の歴史や特徴がよくわかった」、「親子で食文化を学ぶことができ、調理を楽しくできた」などの声をいただき、岡崎市の食文化について理解を深める機会の提供を行うことができました。

また、平成29(2017)年度は、農林水産省の「地域の魅力再発見食育推進事業」を活用し、食文化の保護・継承の取組として、「豆味噌作り・煮味噌調理」を開催しました。岡崎の郷土料理には豆味噌を使った料理が多く存在し、中でも家庭にある野菜を使い、味噌で煮た「煮味噌」は古くから家庭料理として継承されてきました。しかし、近年、豆味噌や煮味噌などの岡崎の食文化を知らない市民が増加傾向にあるため、豆味噌作りから煮味噌調理までの講習会を子育て世代や若い世代を対象として開催することにより、地元の郷土料理を知っている人の増加や、地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えていく人の増加を目的として開催しました。

豆味噌作り

豆味噌作り

20歳代から40歳代の子育て世代や若い世代からの参加者があり、「豆味噌はできたものしか見たことなかったので、実際に作る体験ができてよかった」、「普段家庭ではあまり作ることのない煮味噌の調理をすることができ、岡崎の食文化に触れることができてよかった」などの声をいただき、豆味噌や煮味噌について地域や家庭で受け継がれてきた岡崎の食文化を広く理解していただく機会の提供を行うことができました。

今後も豆味噌、煮味噌にとどまらず、岡崎の食文化である郷土料理や特産品などの調査を行い、情報提供や講習会において広く地域や家庭で継承できる取組を展開していきます。



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