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農林水産省

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作成日:平成27年12月7日

肉用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌保有状況調査

 2.3.1.1. 牛農場

 2.3.1.1.1. 肉用牛農場の菌保有状況調査(平成19年度)

国内の肉用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況や、衛生対策の実施状況を把握するために、406農場において、1農場につき6頭(計2,436頭)を対象にシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の調査と、衛生対策の実施状況等についてアンケートを行いました。

その結果、農場のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率は27%、肉用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率は9%でした。シガ毒素産生性大腸菌O157を保有する農場の53%で、2頭以上の牛からシガ毒素産生性大腸菌O157が分離されました。また、犬や猫が牛舎内や牛の行動範囲内にいる農場ではシガ毒素産生性大腸菌O157保有率が高いことがわかりました。

農場のシガ毒素産生性大腸菌O26保有率は2%、肉用牛のシガ毒素産生性大腸菌O26保有率は0.4%でした。

(1) 目的

国内の肉用牛農場と肉用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況と衛生対策の実施状況等を把握する。さらに、衛生対策の実施状況等と牛のシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有との関連性を把握する。

(2) 試料の採取・アンケート

平成19年11月~平成20年3月に、肉用牛50頭以上を飼養する406農場で、1農場につき最もと畜場への出荷時期が近い6頭(計2,436頭)の直腸便(1農場につき試料6点)を採取しました。調査対象の牛の平均月齢は26か月齢(5~224か月齢、調査対象の牛の95%は17~36か月齢の範囲内)でした。

また、各農場に、衛生対策の実施状況や飼養環境についてアンケートを行いました。

(3) 微生物試験

直腸便を試料として大腸菌O157及びO26の定性試験(3.4.1.1 (1) 、3.4.1.1 (3) )を行いました。分離された大腸菌O157又はO26がシガ毒素産生性大腸菌かどうかを判定するため、LAMP法(3.4.3.2)により、シガ毒素1型遺伝子(stx1)及び2型遺伝子(stx2)の有無を確認しました。これらの試料(6頭の直腸便)のうち1点でもシガ毒素産生性大腸菌O157又はO26が分離された農場は、陽性(シガ毒素産生性大腸菌O157又はO26保有)と判定しました。

分離されたシガ毒素産生性大腸菌O157又はO26については、PCR法(3.4.3.3 (1) )により、シガ毒素遺伝子の亜型を確認するとともに、病原性に関わる遺伝子であるインチミン3遺伝子(eae)やエンテロヘモリシン4遺伝子(hlyA)の有無を確認しました。また、シガ毒素蛋白の産生の有無を逆受身ラテックス反応法(3.4.3.4)により確認するとともに、H抗原を調べました(3.4.3.1)。

3 人の腸管粘膜への定着に関わる因子

4 溶血(赤血球の破壊)に関わる因子

(4) 結果

○ 肉用牛農場及び肉用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況

農場のシガ毒素産生性大腸菌O157の保有率は27%(110 / 406)、牛のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率は9%(218 / 2,436)でした(表2)。一方、農場のシガ毒素産生性大腸菌O26の保有率は2%(7 / 406)、牛のシガ毒素産生性大腸菌O26保有率は0.4%(10 / 2,436)でした。

 表2:肉用牛農場におけるシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況 

対象

調査数

シガ毒素産生性大腸菌O157

シガ毒素産生性大腸菌O26

陽性数

陽性率(%)

陽性数

陽性率(%)

肉用牛農場

   406農場

    110農場

27

       7農場

2

肉用牛

2,436農場

 218頭

  9

10頭

  0.4

 

シガ毒素産生性大腸菌O157陽性農場の53%(58 / 110)において、調査対象の6頭のうち2頭以上が陽性でした(表3)。このうち4農場では、6頭全てが陽性でした。一方、シガ毒素産生性大腸菌O26陽性の7農場のうち、4農場では1頭のみ陽性、3農場では2頭が陽性でした。

シガ毒素産生性大腸菌O157又はO26の陽性牛が2頭以上だった農場では、複数の牛から同じ性状(H抗原の型、シガ毒素遺伝子の亜型、病原性に関わる遺伝子の有無、シガ毒素蛋白の産生の有無が同じ)の菌株が分離されました。

表3:各肉用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O157・O26陽性牛の頭数

陽性牛の頭数

シガ毒素産生性大腸菌O157

シガ毒素産生性大腸菌O157

該当農場数

割合(%)

該当農場数

割合(%)

1頭

  52

47

4

57

2頭

  28

25

3

43

3頭

  18

16

0

0

4頭

    8

  7

0

0

5頭

    0

  0

0

0

6頭

    4

  4

0

0

合計

110

-

7

-

※小数第1位を四捨五入したため、足し合わせても100%にならない場合がある。

分離されたシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の9割以上がシガ毒素蛋白を産生し、また、インチミン遺伝子(eae)とエンテロヘモリシン遺伝子(hlyA)を保有していました。

シガ毒素の遺伝子亜型5については、分離されたシガ毒素産生性大腸菌O157の66%(160 / 243)がstx2cを、58%(142 / 243)がstx2aを、31%(75 / 243)がstx1aを保有していました(表4)。一方、分離されたシガ毒素産生性大腸菌O26の91%(10 / 11)がstx1aを保有していました。

5 腸管出血性大腸菌症患者から分離される菌株は、stx2a (stx2a , stx1a+stx2a , stx2a+stx2c , stx1a+stx2a+stx2c)を保有するものが多い。一方、無症状のヒトから分離される菌株は、stx2c (stx1a+stx2c , stx2c)を保有するものが多い。  

表4:肉用牛から分離されたシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26のシガ毒素の遺伝子亜型

シガ毒素の遺伝子亜型

シガ毒素産生性大腸菌O157

シガ毒素産生性大腸菌O26

菌株数

割合(%)

菌株数

割合(%)

stx1a

    6

  3

10

91

stx2a stx1a+stx2a

  53

22

  0

  0

stx2a

  20

  8

  0

  0

stx2c stx1a+stx2c

  13

  5

  0

  0

stx2c

  78

32

  0

  0

stx2a + stx2c stx1a+stx2a+stx2c

    3

  1

  0

  0

stx2astx2c

  66

27

  0

  0

stx2-NV206

    4

  2

  1

  9

合計

243

 -

11

 -

 

○ 農場のシガ毒素産生性大腸菌O157保有と衛生対策の実施状況等との関係

調査対象農場のアンケート結果(表5)をもとに、各農場における衛生対策や飼養環境と、シガ毒素産生性大腸菌O157の保有の有無との関連性を解析しました。牛舎内又は牛の行動範囲に犬や猫がいる農場のシガ毒素産生性大腸菌O157の保有率は34%(52 / 154)であり、犬や猫がいない農場のシガ毒素産生性大腸菌O157の保有率(23%、58 / 252)よりも高いことがわかりました(表6)。

表5:肉用牛農場の衛生対策の実施状況及び飼養環境(対象:406農場)

衛生対策

実施率(%)

農場出入口で車両を消毒している。

18

作業服を毎日交換している。

72

牛の導入前に牛体表を洗浄している。

  7

牛の導入前に牛舎を洗浄している。

43

牛舎ごとに踏込消毒槽を使っている。

33

犬や猫が牛舎内や牛の行動範囲にいる。

38

 

表6:犬や猫の存在とシガ毒素産生性大腸菌O157保有率

牛舎内や牛の行動範囲内

における犬や猫の存在

農場数

うちシガ毒素産生性大腸菌O157陽性農場

農場数

陽性率(%)

いる

154

52

34a

いない

252

58

23a

注釈 ap=0.02(98%の確率で、犬や猫が牛舎内や牛の行動範囲内にいる農場の方が、いない農場よりもシガ毒素産生大腸菌O157の保有率が高い。

指導者・事業者の皆様へ

肉用牛を飼養する406農場のうち27%がシガ毒素産生性大腸菌O157を保有し、そのうち半数の農場において2頭以上の牛から菌が分離されました。さらに、陽性牛が2頭以上だった農場では、複数の牛から同じ性状の菌株が分離されました。このことは、肉用牛農場では、シガ毒素産生性大腸菌O157が侵入すると、農場内の牛に感染が広がる可能性があることを示しています。農場に腸管出血性大腸菌O157を「持ち込まない」、もし菌が農場に侵入したら、菌を農場内の牛に「広げない」、そして自分の農場から外に「持ち出さない」ように、衛生対策に取り組む必要があります。

犬や猫が衛生管理区域内に行き交っている農場では、犬や猫がいない農場よりも、シガ毒素産生性大腸菌O157の保有率が高いことがわかりました。したがって、野生動物だけでなく、愛玩動物も衛生管理区域に入らないようにすることも重要と考えられます。

有害微生物に感染した牛のと殺・解体時に、剥いだ体表が触れたり、消化管から漏れたふん便が付いたりすることにより、有害微生物が食肉を汚染すること(緒言)を考慮すると、農場でシガ毒素産生性大腸菌の保有率を下げることは重要です。農場において有効と考えられる衛生対策を「牛肉の生産衛生管理ハンドブック」(生産者編、指導者編)で紹介しています。ご自身の農場における衛生対策の再確認や、食中毒を防ぐための追加の対策を検討したい方の参考になれば幸いです。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-0490
FAX:03-3597-0329