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農林水産省

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更新日:平成28年3月11日

作成日:平成27年12月7日

肉用牛農場及び乳用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌保有状況調査

2.3.1.1. 牛農場

 2.3.1.1.2. 肉用牛及び乳用牛農場の菌保有状況調査(平成22,23年度)

肉用牛農場や乳用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況の傾向を把握するために、平成22年度は25の乳用牛農場、平成23年度は25の肉用牛農場及び25の乳用牛農場において、各農場で10頭を対象に、シガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の調査を行いました。

平成22年度の調査では、シガ毒素産生性大腸菌O157保有率は、乳用牛農場で4%、乳用牛で1%でした。シガ毒素産生性大腸菌O26は分離されませんでした。

平成23年度の調査では、シガ毒素産生性大腸菌O157保有率は、肉用牛農場で28%、肉用牛で6%でした。乳用牛はすべて陰性でした。シガ毒素産生性大腸菌O26保有率は、肉用牛農場で4%、肉用牛で0.4%でした。乳用牛農場では4%、乳用牛で1%でした。

(1) 目的

肉用牛農場や乳用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況の傾向を把握する。

(2) 試料の採取

○ 第1回調査

平成22年12月~平成23年2月に、乳用牛を飼養する25農場で、1農場につき10頭(計250頭)の乳用牛の直腸便(1農場につき試料10点)を採取しました。調査対象の牛の平均月齢は47か月齢(25~156か月齢)でした。 

○ 第2回調査

平成23年7月~9月に、肉用牛を飼養する25農場で、1農場につき最も出荷時期が近い10頭(計250頭)の直腸便を採取しました(1農場につき試料10点)。調査対象の牛の平均月齢は26か月齢(20~32か月齢)でした。

また、乳用牛を飼養する25農場で、1農場につき10頭(計250頭)の直腸便(1農場につき試料10点)を採取しました。調査対象の牛の平均月齢は53か月齢(20~148か月齢)でした。

(3) 微生物試験

直腸便を試料として大腸菌O157及びO26の定性試験(3.4.1.1 (1)3.4.1.1 (3) )を行いました。分離された大腸菌O157又はO26については、シガ毒素産生性大腸菌かどうかを判定するため、PCR法(3.4.3.3 (2) )により、シガ毒素遺伝子(stx)の有無の確認及び亜型の分類を行うとともに、病原性に関わる遺伝子であるインチミン6遺伝子(eae)やエンテロヘモリシン7遺伝子(hlyA)の有無を確認しました。また、シガ毒素蛋白の産生の有無を逆受身ラテックス反応法(3.4.3.4)により確認しました。

これらの試料(10頭の直腸便)のうち1点でもシガ毒素産生性大腸菌O157又はO26が分離された農場は、陽性(シガ毒素産生性大腸菌O157又はO26保有)と判定しました。

6 人の腸管粘膜への定着に関わる因子

7 溶血(赤血球の破壊)に関わる因子

(4) 結果

○ 第1回調査

乳用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率は4%(1 / 25)であり、1農場の3頭からシガ毒素産生性大腸菌O157が分離されました。シガ毒素産生性大腸菌O26は分離されませんでした(表7)。

表7:乳用牛農場におけるシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況

対象

調査数

シガ毒素産生性大腸菌O157

シガ毒素産生性大腸菌O26

陽性数

陽性率(%)

陽性数

陽性率(%)

乳用牛農場

      25農場

     1農場

4

0

0

乳用牛

250頭

  3頭

1

0

0

 

分離されたシガ毒素産生性大腸菌O157はすべて、シガ毒素蛋白を産生し、シガ毒素の遺伝子亜型はstx1aであり、さらにインチミン遺伝子(eae)とエンテロヘモリシン遺伝子(hlyA)を保有していました。

○ 第2回調査

肉用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率は28%(7 / 25)であり、平成19年度に実施した調査(2.3.1.1.1 )での406農場のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率(27%)と同程度でした。7農場の16頭からシガ毒素産生性大腸菌O157が分離されました(表8)。また、肉用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O26保有率は4%(1 / 25)であり、平成19年度に実施した調査(2.3.1.1.1)での406農場のシガ毒素産生性大腸菌O26保有率(2%)と同程度でした。1農場の1頭からシガ毒素産生性大腸菌O26が分離されました。

一方、乳用牛農場では、シガ毒素産生性大腸菌O157は分離されませんでした。乳用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌O26保有率は4%(1 / 25)であり、1農場の1頭から分離されました。

肉用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率(6%、16 / 250)は、乳用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率(0%、0 / 250)より高いことがわかりました。シガ毒素産生性大腸菌O26については、肉用牛と乳用牛それぞれ1頭ずつから分離されました。

表8:肉用牛農場と乳用牛農場におけるシガ毒素産生性大腸菌O157及びO26の保有状況

対象

調査数

シガ毒素産生性大腸菌O157

シガ毒素産生性大腸菌O26

陽性数

陽性率(%)

陽性数

陽性率(%)

肉用牛農場

      25農場

      7農場

28

     1農場

4

肉用牛

250頭

16頭

      6a  

  1頭

   0.4

乳用牛農場

      25農場

     0農場

  0

     1農場

4

乳用牛

250頭

  0頭

   0a

  1頭

   0.4

注釈 ap=0.0001(99.99%の確率で、肉用牛の方が、乳用牛よりもシガ毒素産生性大腸菌O157の保有率が高い。)

肉用牛から分離されたシガ毒素産生性大腸菌O157(16株)のすべてがエンテロヘモリシン遺伝子(hlyA)を保有し、94%(15 / 16)がインチミン遺伝子(eae)を保有していました。また、88%(14 / 16)がシガ毒素蛋白を産生していました。シガ毒素の遺伝子亜型については、81%(13 / 16)がstx2cを、44%(7 / 16)がstx1aを、13%(2 / 16)がstx2aを保有していました。

肉用牛と乳用牛から分離されたシガ毒素産生性大腸菌O26(それぞれ1株ずつ)は、エンテロヘモリシン遺伝子(hlyA)とインチミン遺伝子(eae)を保有し、シガ毒素蛋白を産生し、シガ毒素の遺伝子型はstx1aでした。

まとめ

調査農場数は限られていますが、肉用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率は、乳用牛のシガ毒素産生性大腸菌O157保有率よりも高いことがわかりました。さらに、国内で生産される牛肉のうち、肉専用種や交雑種に由来する牛肉の割合(約7割)は、乳用種に由来する牛肉の割合(約3割)より高い8ことも考慮すると、肉用牛農場においてシガ毒素産生性大腸菌O157保有率を下げる対策が重要であると考えられました。

8 「食肉鶏卵をめぐる情勢」(PDF:665KB)(平成28年2月、農林水産省)、表「牛肉の生産量」を参照

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