作成日:平成27年11月26日
ブロイラー農場のサルモネラ汚染経路調査
2.1.2.1. 肉用鶏農場
2.1.2.1.4. ブロイラー農場の菌汚染経路調査(平成20年度)
サルモネラがブロイラー農場や鶏舎に侵入する経路を把握するために、8農場の新鮮盲腸便、飲用水、飼料、敷料及び塵あいを採取し、さらに34農場の飲用水を採取してサルモネラの調査を行いました。その結果、様々な試料を採取した8農場のうち5農場で、敷料や飼料(飼料タンク内から採取したもの)等からサルモネラが分離されました。飲用水のみを採取した34農場では、飲用水からサルモネラは分離されませんでした。 |
(1) 目的
サルモネラがブロイラー農場や鶏舎に侵入する経路を把握する8。
8 「ブロイラー農場のカンピロバクター汚染経路調査」(2.1.1.1.4)と併せて実施。
(2) 試料採取
○ 第1回調査
平成20年10月~平成21年1月に、ブロイラー生産者5社の8農場において、1農場につき1鶏舎(計8鶏舎)で、(1)ひな導入時、(2)導入2週間後及び(3)食鳥処理場への出荷直前の3時点に試料を採取しました(表17)。
表17:採取した試料の種類及び点数(第1回調査)
試料の種類 |
各時点で採取した試料点数(1農場あたり) |
||
(1) ひな導入時 |
(2) 導入2週間後 |
(3) 出荷直前 |
|
新鮮盲腸便 |
採取せず |
5 |
5 |
飲用水 |
1又は2 |
1又は2 |
1又は2 |
飼料タンク内飼料 |
3 |
3 |
3 |
敷料 |
2 |
採取せず |
採取せず |
塵あい |
採取せず |
2 |
2 |
※ 自家消毒(地下水を最終総塩素濃度2 ppmになるよう消毒)をしていない農場では、1点のみ採取。自家消毒をしている農場では、消毒の前後に1点ずつ、計2点採取。
○ 第2回調査
平成20年12月~平成21年2月に、ブロイラー生産者2社の34農場において、1農場につき1鶏舎(計34鶏舎)で、飲用水1点又は2点を採取しました(時点(1)(2)(3))。なお、水の自家消毒をしていない農場では1点のみ採取し、自家消毒をしている農場では、消毒の前後に1点ずつ、計2点採取しました。
(3) 微生物試験
新鮮盲腸便、飲用水、飼料、敷料及び塵あいを試料としてサルモネラの定性試験(3.2.1.1 (6) 、3.2.1.2 (2) 、3.2.1.3、3.2.1.4 (4))を行いました。分離されたサルモネラについては、O抗原及びH抗原を調べて血清型を特定(3.2.3.2)しました。また、血清型と併せて、菌株の同一性を確認するため、薬剤感受性試験(3.2.3.3)を行いました。
(4) 結果
第1回調査の結果、サルモネラは、8農場のうち5農場で新鮮盲腸便、飼料(飼料タンク内から採取したもの)、敷料、塵あいから分離され、飲用水からは分離されませんでした。農場Dでは、ひな導入2週間後(2)の塵あいや、出荷直前(3)に採取した飼料(飼料タンク内から採取したもの)から、同じ性状(血清型及び薬剤感受性)のサルモネラが分離されました。この出荷直前(3)に採取した飼料は、採取1日前に飼料タンク内に投入されたものでした(表18)。
また、第2回調査の結果、飲用水からサルモネラは分離されませんでした。
表18:サルモネラが分離された5農場における菌の分離状況(第1回調査)
農場 |
サルモネラが分離された試料(菌の血清型又はO・H抗原型) |
||
(1) ひな導入前 |
(2) 導入2週間後 |
(3) 出荷直前 |
|
農場A |
新鮮盲腸便(SI) |
||
農場B |
敷料(SA,O7:H-) |
新鮮盲腸便(O7:H-) 塵あい(O7:H-) |
- |
農場C |
敷料(SI) |
- |
塵あい(O4:HUT) |
農場D |
- |
新鮮盲腸便(SS) 塵あい(SS) |
新鮮盲腸便(SS) タンク内飼料 |
農場E |
- |
新鮮盲腸便(SS) 塵あい(SS) |
SA: Salmonella Agona, SI: S.Infantis, SS: S.Schwarzengrund,H-:H抗原なし,HUT:H抗原同定不能。
※採取1日前に飼料タンク内に投入されたもの
指導者・事業者の皆様へ 調査対象の8農場のうち5農場でサルモネラが分離されました。このうち2農場では、ひな導入前の敷料からサルモネラが分離されたことから、ひなを導入する前にサルモネラが何かを介して鶏舎内に侵入した、もしくは、鶏舎内に持続的に生存していたと考えられました。別の1農場では、ひな導入2週間後の塵あいと、その数週間後(出荷直前)に飼料タンク内から採取した飼料(採取1日前に飼料タンク内に投入されたもの)から、同じ性状のサルモネラが分離されました。したがって、先に飼料タンクが何らかの経路でサルモネラに汚染されており、飼料は飼料タンクに投入された後に汚染された可能性があると考えられました。 サルモネラ等の有害微生物が鶏舎に侵入する経路は複数あり、農場の立地条件や生産状況等によっても侵入経路は異なると考えられます。衛生対策を1つだけ又は一時的に実施しても効果が得られるとは限りません。 農場や鶏舎、器具・器材の清掃や洗浄・消毒、野生動物や昆虫等の侵入防止(鶏舎や飼料タンク等)など、農場において有効と考えられる衛生対策を「鶏肉の生産衛生管理ハンドブック」(生産者編・指導者編)で紹介していますので、参考にしてください。 |
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