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農林水産省

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ブロイラー農場の鶏群とハエのカンピロバクター保有の関連性調査

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作成日:平成29年3月31日

2.1.1.1. 肉用鶏農場

2.1.1.1.6. ブロイラー農場の鶏群とハエの菌保有の関連性調査(平成26年度)

ブロイラー農場の鶏群と、農場内で採取したハエ6のカンピロバクター保有状況を把握するために、39農場において、各農場で1~2鶏舎(計51鶏舎)を対象に、鶏群と鶏舎内外のハエのカンピロバクターの調査を行いました。その結果、51鶏舎のうち27鶏舎の鶏群がカンピロバクター陽性でした。採取されたハエのうち87匹を試料として調べた結果、鶏舎外で採取されたハエからカンピロバクターは分離されず、鶏舎内で採取されたハエは、3鶏舎(2鶏舎はカンピロバクター陽性鶏群、1鶏舎は陰性鶏群)の4匹がカンピロバクター陽性でした。カンピロバクター陽性鶏群の鶏舎内で採取されたハエから分離された菌株の一部は、鶏群から分離された菌株と性状7が一致していました。
 
6 重要な衛生害虫として知られるイエバエ科、ヒメイエバエ科、クロバエ科及びニクバエ科を対象。
7 菌種及び薬剤耐性パターン。

(1) 目的

ブロイラー農場の鶏群とハエ6のカンピロバクター保有の関連性を把握する。

 

(2) 試料採取

平成26年7~10月に、ブロイラーを生産する39農場において、1農場につき1~2鶏群(計51鶏群)のソックススワブ8(1鶏群につき試料1点)及び鶏舎内外のハエ(1匹で試料1点)を採取しました。対象鶏群が出荷される約1週間前に対象鶏群の鶏舎内外に円筒型の捕虫器を設置し、その1日後、捕虫器を回収してハエを採取し、同日にソックススワブを採取しました。

採取されたハエのうち、重要な衛生害虫として知られるイエバエ科、ヒメイエバエ科、クロバエ科及びニクバエ科と同定された166匹(1鶏舎あたり0~18匹)を調査の対象とし、うち87匹をカンピロバクターの微生物試験に供しました9。87匹の内訳は、イエバエ(46匹)、ヒメクロバエ(24匹)、オオイエバエ(5匹)、クロバエ、ニクバエ、ヒメイエバエ(各4匹)の6種でした。

8 長靴の上に長靴カバーを履き、その上に管状包帯をはめて鶏舎内を歩き、鶏舎の床にあるふん便・敷料を付着させたもの。
9 残りのハエ試料はサルモネラの微生物試験(2.1.2.1.6)に使用。


(3) 微生物試験

ソックススワブとハエを試料としてカンピロバクターの定性試験(3.1.1.4(2)3.1.1.4(5))を行いました。ソックススワブからカンピロバクターが分離された鶏群は、陽性(カンピロバクター保有)と判定しました。分離されたカンピロバクターについては、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli)を同定(3.1.3.1)しました。また、菌株の同一性を確認するため、薬剤感受性試験(3.1.3.3(2))を行いました。

 

(4) 結果

調査対象の51鶏舎のうち、27鶏舎の鶏群(53%)がカンピロバクター陽性でした。また、ハエ(166匹)は39鶏舎から採取され、そのうち12鶏舎では鶏舎内外の両方から、26鶏舎では鶏舎外のみから、1鶏舎では鶏舎内のみから採取されました。

このうち、カンピロバクターの微生物試験に供したハエ(87匹)は、6鶏舎の鶏舎内外から計18匹(鶏舎外から6匹、鶏舎内から12匹)、25鶏舎の鶏舎外のみから62匹、5鶏舎の鶏舎内のみから7匹採取されました。

 

鶏舎外で採取されたハエ(68匹)からカンピロバクターは分離されませんでした。鶏舎内で採取されたハエ(19匹)のうち、3鶏舎(2鶏舎はカンピロバクター陽性鶏群、1鶏舎は陰性鶏群)で採取された4匹はカンピロバクター陽性でした(表26)。鶏群のカンピロバクター保有の有無と、鶏舎内で採取されたハエのカンピロバクター分離状況との間に関連性はみられませんでした。

カンピロバクター陽性鶏群から分離された27株のうち、26株はC.jejuni、1株はC.coliでした。鶏舎内で採取されたハエから分離された4株はすべてC.jejuniでした。カンピロバクター陽性の2鶏群から分離された菌株と、それぞれの鶏舎内で採取されたハエ2匹から分離された菌株の性状(菌種及び薬剤感受性)は一致していました。

表26:カンピロバクターの試験に供したハエ(87匹)の採取状況

鶏群のカンピロバクター保有状況及び

該当する鶏舎数

うち、ハエが採取された場所別の鶏舎数

鶏舎内外

鶏舎外のみ

鶏舎内のみ

カンピロバクター陽性:27鶏舎

4ab

[2鶏舎内のハエ3匹が陽性]

16

1

カンピロバクター陰性:24鶏舎

2c
[1鶏舎内のハエ1匹が陽性]

9

4

合計

6

25

5

注釈 aうち1鶏舎で、鶏舎内で採取されたハエ2匹からカンピロバクターを分離。ハエ1匹から分離された菌株は、鶏舎から分離された菌株と性状(菌種及び薬剤感受性)が一致。 

bうち1鶏舎で、鶏舎内で採取されたハエ1匹からカンピロバクターを分離。ハエ1匹から分離された菌株は、鶏舎から分離された菌株と性状(菌種及び薬剤感受性)が一致。

cうち1鶏舎で、鶏舎内で採取されたハエ1匹からカンピロバクターを分離。

指導者・事業者の皆様へ

今回の調査では、鶏舎外で採取されたハエからカンピロバクターは分離されず、カンピロバクター陽性鶏群と判定された鶏群の2鶏舎と、陰性鶏群と判定された鶏群の1鶏舎の中で採取されたハエから分離されました。統計学的な解析の結果、鶏群のカンピロバクター保有の有無と、鶏舎内で採取されたハエのカンピロバクター分離状況との間に関連性はみられませんでした。一方、陽性鶏群の鶏舎内で採取されたハエから分離された菌株の一部は、鶏群から分離された菌株と性状が一致していたため、鶏舎内にいたハエが鶏の保有するカンピロバクターに汚染された可能性があると考えられました。あるいは、ハエが保有していたカンピロバクターが鶏群に感染していた可能性も否定できません。

また、今回の調査では、鶏舎外のハエからカンピロバクターは分離されなかったため確認できませんでしたが、ハエが鶏舎を出入りできるのであれば、鶏舎内のハエが、鶏の保有していたカンピロバクターを外に持ち出してしまうことも考えられます。

ハエなどの昆虫は、カンピロバクター等の有害微生物の汚染を広げるだけでなく、周辺の汚染地域から有害微生物を運んでくる可能性があります。鶏舎へのハエの侵入を防ぐことで鶏群のカンピロバクター保有率が下がったという海外報告もあります。ハエなどの昆虫を駆除するとともに、どの程度農場に生息しているかモニタリングすることが重要です。農場において有効と考えられる衛生対策を「鶏肉の生産衛生管理ハンドブック」(生産者編・指導者編)で紹介していますので、参考にしてください。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:危害要因情報班
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