このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(2)総合的な食料安全保障の確立に向けた取組 イ 食料安全保障の確立に向けた取組


(特定の国からの輸入が多い我が国の農産物貿易)

平成27(2015)年の我が国の農産物輸入額は6兆5,629億円となっています(図1-2-8)。主要農産物の国別輸入額をみると、とうもろこし、小麦、大豆については、上位3か国でそれぞれ98.4%、96.8%、97.8%を占めるなど、特定の国への依存度が高くなっています。


図1-2-8 我が国の主要農産物の国別輸入額割合(平成27(2015)年)
データ(エクセル1: 101KB2:40KB3:39KB04時00分KB) / CSV1:(0KB)2:1KB3:1KB4:(0KB)

また、飼料穀物(とうもろこし、こうりゃん等)についても多くを輸入に依存しており、その主な調達先は、米国、ブラジル、アルゼンチン等となっています(図1-2-9)。平成24(2012)年度、平成25(2013)年度は、米国における高温・乾燥の影響に伴うとうもろこしの生産量の減少により米国からの調達割合が低下していました。しかし、平成26(2014)年度は米国でとうもろこしが豊作だったことから米国の割合が戻り、平成27(2015)年度も米国が64.8%を占めています。


図1-2-9 飼料用とうもろこしの調達先割合の推移
データ(エクセル:38KB / CSV:1KB

輸入先を特定の国に頼ることは、自然災害等により生産量が大きく減少するなどのリスクが大きく、複数の調達先を確保しておく必要があることから、輸送ルートの確保や輸送インフラ整備等に対して海外と連携して取り組むことが重要となっており、平成27(2015)年6月の経協インフラ戦略会議(*1)で決定された「インフラシステム輸出戦略(平成27年度改訂版)」において、穀物等の調達に関する取組の強化や海外農業投資を促進することとされています。


1 我が国企業によるインフラ・システムの海外展開や、エネルギー・鉱物資源の海外権益確保を支援するとともに、我が国の海外経済協力(経協)に関する重要事項を議論し、戦略的かつ効率的な実施を図るための会議

(食料等の備蓄の取組)

我が国は、国内の生産量の減少や海外における不測の事態の発生による供給途絶等に備えるため、食料等の備蓄を行っています。

米については、国内の生産量の減少により供給が不足する事態に備え、毎年6月末時点での在庫量100万t程度を適正備蓄水準(*1)として、必要な数量の備蓄を行っています。

食糧用小麦については、海外からの輸入が途絶した場合に備え、実需者において外国産食糧用小麦の需要量の2.3か月分の備蓄を行っています(うち1.8か月分は国による助成)。

飼料穀物については、需給が逼迫(ひっぱく)し、畜産農家に対する配合飼料の安定的な供給が困難となった場合に備え、過去の放出実績等を踏まえて国で60万tの備蓄を行っているほか、民間においても65万tの備蓄を行っています。

また、各家庭においても、大規模な災害や新型インフルエンザ等の発生に備え、平素から普段使いの食料品を買い置きするなど、食料品の備蓄を行うことが重要です。


1 10年に1度の不作や通常程度の不作が2年連続した事態にも国産米をもって対処し得る水準

(食品のサプライチェーンの機能維持)

食品産業事業者等においては、東日本大震災等の発生により、緊急時における食品のサプライチェーン機能維持の重要性が再認識されました。また、依然として新型インフルエンザ等の発生による食品のサプライチェーンの寸断が懸念されるところです。このため、食品産業事業者等は、事業継続計画(BCP(*1))の策定や食品産業事業者間の連携等に係る取組を強化することが求められます。農林水産省では、緊急時に備えた食料の安定供給の確保に資する取組の定着・強化を図るため、食品産業事業者のための連携訓練マニュアルの作成、食品産業事業者等のBCP等の緊急時に備えた取組事例の取りまとめを行い周知・普及するとともに、食品産業事業者間の連携・協力体制を構築する取組を行っています。


1 BCP は、Business Continuity Planの略。企業が被災しても重要事業を中断させず、中断しても可能な限り短期間で再開させ、中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下等から企業を守るための経営戦略のこと

(開発途上地域の栄養不足人口は減少傾向)

図1-2-10 開発途上地域における栄養不足人口
データ(エクセル:38KB / CSV:1KB

国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)及び国連世界食糧計画(WFP)が共同で発表した「世界の食料不安の現状2015」によると、開発途上地域の全人口に占める栄養不足(*1)人口の割合(*2)は減少傾向ながら、2014/16年(*3)において、なお全体の約13%(7億8千万人)を占めています(図1-2-10)。

平成12(2000)年に国連で採択された「ミレニアム開発目標(MDGs(*4))」の目標(2015年までに1990年比で栄養不足人口割合を半減)は、開発途上地域全体においてほぼ達成されたものの、南アジアやサブサハラ・アフリカ(*5)では達成に至らず、今後の課題とされています。


1 十分な食料をとることができない状況が最低1年間続く状態で、食事エネルギー必要量を満たすには不十分な食料摂取の水準
*2 国連では、人口に対する飢えに苦しむ人々の割合を示す指標として用いられている。
*3 2つの年次を「/」で接続したものは、その期間を示す。2014年から2016年の数値は推定値
*4 Millennium Development Goalsの略
*5 サハラ砂漠より南に位置する国・地域

(国連の新たな開発目標)

平成27(2015)年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(*1)」(以下「2030アジェンダ」という。)には、平成42(2030)年までの飢餓撲滅や栄養不良の解消等、食料や農林水産業に関連する幅広い目標が含まれています。

2030アジェンダでは、広範な目標の達成には、各国の主体性が重要であることが認識されるとともに、民間企業の投資やイノベーションが、生産性向上や雇用の創出等を推進するものであると指摘されています。


1 SDGs(Sustainable Development Goalsの略)と通称されることもある。

(農林水産分野における国際協力)

開発途上国の支援ニーズは、単なる貧困撲滅から民間部門の資金や技術も活用した産業発展による経済成長に変化しており、農林水産分野においても、経済協力による生産基盤や体制の整備に加え、経済協力と民間投資の連携による生産から加工、流通、消費に至るフードバリューチェーンの構築支援等が求められています。

そのため、農林水産省では、「グローバル・フードバリューチェーン戦略」に基づき、官民連携による二国間政策対話等を実施しています。ベトナムとの対話においては、ODA等による日本政府の支援のほか、ベトナム政府や民間企業等の今後5年間の行動計画について定めた日越農業協力中長期ビジョン(*1)が策定されるなど、経済協力と民間投資の連携による取組が進んでいます。

また、平成28(2016)年8月にケニアで開催される第6回アフリカ開発会議(TICAD(*2))に向けて、アフリカにおけるかんがい整備等の生産基盤の強化に加え、フードバリューチェーン構築のための支援も実施しています。

我が国では、このほか、官民連携による取組も含めた栄養改善支援等の飢餓・貧困対策への貢献、気候変動や越境性感染症等の地球的規模の課題に対する適切な対応を重点分野として、開発途上国に対する技術協力や資金協力、国際機関への拠出等を通じた国際協力を進めています。具体的には、技術協力として、ほ場整備等に関する基準策定に係る技術指導、日本への研修員の受け入れや開発途上国への専門家派遣を通じた人材育成等を行っているほか、資金協力としてかんがい施設の整備や食料援助等を実施しています。


*2 Tokyo International Conference on African Developmentの略

コラム:第2回日中韓農業大臣会合の開催

日中韓3か国の農業担当大臣が一堂に会して、平成24(2012)年以来3年ぶり2回目となる日中韓農業大臣会合が平成27(2015)年9月12日から13日に東京で開催されました(日中韓農業大臣会合は、平成23(2011)年10月に、外相会合、経済貿易大臣会合等に続く日中韓の大臣級の会合として、農林水産分野の協力促進を目的として立ち上げられたものです。)。

今回の会合では、食料安全保障、動植物の疾病、自然災害と気候変動、国際的・地域的な多国間の枠組みでの農業協力、高級事務レベル会合のメカニズム等について意見が交わされ、その成果としての共同声明を採択しました。同時に、越境性動物疾病(*)への対応に関する協力覚書を交わしました。

* 口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ等、国境を越えてまん延し、発生国の経済、貿易及び食料の安全保障に関わる重要性を持ち、その防疫には多国間の協力が必要となる動物の疾病をいう。

第2回日中韓農業大臣会合
第 2 回日中韓農業大臣会合
共同声明の署名式
共同声明の署名式
 


ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526