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農林水産省

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(2)食育の推進、「和食」の保護・継承


(第3次食育推進基本計画の作成)

食育基本法では、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている」としています。

食育に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、内閣府に設置された食育推進会議(会長:内閣総理大臣)は、平成28(2016)年3月、平成28(2016)年度から平成32(2020)年度までの5年間を対象とする第3次食育推進基本計画を作成しました。

本計画では、5つの重点課題を掲げていますが、第2次食育推進基本計画でも盛り込まれていた重点課題を引き継いだ<1>「若い世代を中心とした食育の推進」及び<2>「健康寿命の延伸につながる食育の推進」に加え、<3>全ての国民が健全な食生活を実現できるよう豊かな食体験につながる共食の機会の提供等を目的とした「多様な暮らしに対応した食育の推進」、<4>食の生産から消費までの理解、食品ロスの削減等を目的とした「食の循環や環境を意識した食育の推進」、<5>「和食」(*1)、郷土料理等の伝統的な食文化への理解等を目的とした「食文化の継承に向けた食育の推進」の3つが新たに加わりました。これらの課題解決の視点として、子供から高齢者まで、生涯を通じた取組を、国、地方公共団体、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア等が主体的かつ多様に連携・協働しながら推進することとしています。

加えて、第2次食育推進基本計画の目標の達成状況等を踏まえ、国民運動として食育を推進するにふさわしい21の定量的な目標値を定めました。その中で、「中学校における学校給食実施率」、「食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民の割合」、「地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合」等が新たな目標値として加わるとともに、朝食欠食の割合が高い上、家族と共食する人や栄養バランスに配慮した食生活を送っている人が少ない等、他の世代に比べ食に関する課題が多い若い世代に対しては、新たに個別の目標値を定めました(表1-3-1)。また、食や農林水産業への理解を増進する観点から、農林漁業体験の機会の提供を拡大していくことが必要であるため、「農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合」の増加が引き続き目標として位置付けられ、その目標値は30%から40%に引き上げられました。


*1 [用語の解説]を参照

表1-3-1 第3次食育推進基本計画において新たに設定された目標値等
データ(エクセル:34KB / CSV:1KB

(食育の推進と国産農林水産物の消費拡大に向けた取組)

近年、高齢化が進行する中で、生活習慣病の予防による健康寿命の延伸や健康な次世代の育成の観点から、消費者の健全な食生活の実践が求められています。

このため、ごはん食を中心とする日本型食生活(*1)は、主食・主菜・副菜がそろえやすく、健康的で栄養バランスに優れている等のメリットを分かりやすく周知するとともに、外食、中食(*2)、冷凍食品、レトルト食品等の外部サービスも有効活用しつつ、食事の適切なメニューを自分で構成することや調理技術を身に付けるなどの「食事を準備する力」の向上の重要性等を伝えること等により、日本型食生活の実践を推進していくこととしています。

また、農林水産省が教育ファームを体験した者を対象に行った調査によると、7割の人が農林漁業の体験活動をきっかけに、「なるべく日本産のものを選んで食べる」、「食事はなるべく残さず食べる」、「野菜を多く食べるなど栄養バランスのとれた食事を心がける」等の意識や行動の変化があったと回答しており、農林漁業体験等の様々な体験活動は、消費者の食や農林水産業に対する理解増進に加え国産農林水産物の消費拡大にも有効です(図1-3-9)。

このような状況を踏まえ、農林水産省では、日本型食生活の認知度の向上や実践を促すための講習会等の開催、農林漁業体験や農林水産物の加工流通体験機会の提供、食文化の保護・継承活動等を行う地域の取組や、働く若い世代、子育て世代、高齢者等、訴求対象者の様々なライフスタイルの特性やニーズに対応した食育活動を行う事業者を支援しています。


*1、2 [用語の解説]を参照

図1-3-9 農林漁業の体験活動に参加したことをきっかけに、より強く意識するようになったこと等
データ(エクセル:35KB / CSV:1KB

今後も引き続き、食料の生産から消費にわたる各段階を通じて、日本型食生活の普及と食や農林水産業への理解増進に向けた取組を一体的に推進し、国産農林水産物の需要拡大にもつながる食育を国民運動として展開していきます。

また、学校給食は、栄養バランスのとれた豊かな食事の提供を通じ、児童生徒の健康の保持・増進や体位向上を図るとともに、食事に対する理解増進、望ましい食習慣を養う手段として重要です。このため、学校給食において、地域の農林水産物の使用を通じて地域の自然や文化、産業等に関する理解を深めることに留意しつつ、米飯給食の推進など関係省庁と連携した施策を推進していきます。

さらに、農林水産省は、国産農林水産物の消費拡大に向けた国民運動として、消費者、民間企業、学校、商工会、国等が一体となって取り組むフード・アクション・ニッポンを推進しています。

このフード・アクション・ニッポンでは、農業者、食品製造業者、飲食業者、学校等幅広い分野の関係者が推進パートナーとして参加しており、平成28(2016)年3月末現在の推進パートナーは9,434団体で、取組が始まった平成20(2008)年の1,050団体から9倍に増加しています(*3)。

今後も、国産農林水産物の消費拡大に向けた取組を推進していくこととしています。


*3 農林水産省調べ

事例:九条ねぎ栽培や米づくり体験による食育活動の取組

京都府京都市
村田治夫さん(右)(食育授業の様子)
村田治夫さん(右)
(食育授業の様子)
田植の様子
田植の様子

京都府京都市(きょうとし)の村田治夫(むらた はるお)さんは、京都の伝統野菜である九条ねぎや金時にんじん等を生産する傍ら、地元小学校において九条ねぎ栽培と米づくり体験を通じ、食に対する感謝の気持ちを育む食育活動に取り組んでいます。

平成14(2002)年、地元の上鳥羽(かみとば)小学校からの依頼で、児童にねぎ畑を見学させたことをきっかけに、翌年から、校庭の一角にブロックで囲んだ畑を作り、3年生の児童を対象にした九条ねぎ栽培の食育授業を開始しました。平成21(2009)年からは、5年生の児童による田植から稲刈りまでを行う米づくりも開始しました。

食育授業では、児童の理解を深めるため、九条ねぎや米の歴史や栽培方法等について説明した上で作業を行い、収穫後は、収穫物を試食するねぎパーティーや餅つき大会を開催しています。このような取組により、ねぎが苦手だった児童がねぎを食べられるようになるといった効果が出ています。

また、京都市(きょうとし)の食育指導員として講演を行った際に知り合った京都女子大学の学生や食育指導員の仲間が活動に加わるとともに、地元農家から稲の苗や餅つき大会で使用する餅米の提供を受けるなど、地域ぐるみの協力が行われています。

現在、上鳥羽小学校のほか、二条城北(にじょうじょうきた)小学校、御室(おむろ)小学校においても、九条ねぎ栽培の食育授業を実施しており、今後もこの取組を続けていく考えです。

 

(食品ロス削減に向けた国民運動の推進)

我が国で平成24(2012)年度に発生した食品廃棄物等の中には、まだ食べられるのに捨てられている食品ロスが642万t含まれると推計されています。このうち、食品ロスの約半分となる312万tは、一般家庭からのものであるため、食品ロス削減のためには、食品関連事業者の取組の推進とともに消費者の意識改革も併せて実施していく必要があります。

このため、関係府省庁の連携により、フードチェーンの各段階における食品ロス削減の取組を支援し、生活者一人一人の意識や行動の改革に向けて、官民を挙げた食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を展開しています。


(「和食」の保護・継承の取組)

「和食」については、平成25(2013)年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを契機として、国内外での関心が高まっています。

海外では、日本食レストランが平成25(2013)年から2年間で約1.6倍に相当する8万9千店に増加しました。また、「食」をテーマに平成27(2015)年5月から10月まで開催された2015年ミラノ国際博覧会では、日本の農林水産業や日本食・食文化を紹介した日本館の入場者数が228万人にのぼり、展示デザイン部門で金賞を受賞するなど高い評価を受けました(*1)。

一方、我が国では、食の多様化や家庭環境の変化等を背景に、「和食」の存在感が薄れつつあります。

農林水産省が、消費者を対象に行ったアンケート調査によると、和食文化の継承について、和食文化を教わったり、受け継いだことがある人は全体で29.8%、教えたり、伝えたりしたことがある人は16.8%しかいない状況となっており、いずれも、年代が下がるほど割合が低下しています(図1-3-10)。

このため、「和食」の保護・継承に向けた機運を醸成し、和食志向を維持・増大させることが重要です。



図1-3-10 和食文化の伝承について
データ(エクセル1:40KB2:40KB / CSV1:1KB2:1KB

このような中、ユネスコ無形文化遺産の登録に際し、「和食」の保護・継承に責任を持つ民間団体として位置付けられた一般社団法人和食文化国民会議(以下「和食会議」という。)は、講演会の開催、和食ブックレットの刊行、「和食」の日(11月24日)における啓発活動等に取り組むとともに、農林水産省が主催する「和食」の保護・継承に向けたイベントやシンポジウム等に参画しました。

また、和食の料理人による和食給食応援団が、栄養教諭・学校栄養職員等と連携した和食献立の開発、青少年等に対する情報発信等、学校給食における和食文化継承のための取組を全国の小中学校等で実施しました。このような和食文化の次世代への継承の取組が全国各地で進められています。

今後とも、和食会議を始め、産学官が一体となって「和食」の保護・継承の取組を推進するとともに、国産農林水産物等の需要拡大及び地域活性化にもつなげていくことが重要です。


事例:「和食」の日における和食給食の取組

平成25(2013)年、和食会議が和食文化を次世代に向けて保護・継承していくため、11月24日(いいにほんしょく)を「和食」の日として、一般社団法人日本記念日協会に申請し、認定されました。

平成27(2015)年の「和食」の日では、全国約2千校の小中学校において、だしを取ったすまし汁を献立とし、和食文化について考える和食給食を実施しました。

この日、東京都中央区の泰明(たいめい)小学校の児童たちは、来校した森山農林水産大臣、熊倉和食会議会長、和食給食応援団の和食の料理人とともに、豆腐と五色野菜のお吸い物、さわらのつけ焼き五目豆あんかけ、じゃこと野菜のごま酢和えを献立とする和食給食を食べました。

この中で、森山農林水産大臣からは和食文化を守り、後世に伝えていくことの重要性について、熊倉和食会議会長からは和食とだしについての話がありました。

また、給食の後には、「だしを味わい、和食のすばらしさを知ろう」をテーマに和食の料理人による食育授業が行われました。

児童たちは、和食給食を味わい、実際に自分で取っただしを試飲することにより、和食の基本であるだしについて理解を深めました。


「和食」の日のロゴマーク
「和食」の日のロゴマーク
「いただきます」と発声する森山農林水産大臣と児童
「いただきます」と発声する
森山農林水産大臣と児童
和食給食の様子
和食給食の様子
 


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