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農林水産省

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トピックス2 日米貿易協定の発効と対策等


令和元(2019)年9月の日米首脳会談において、日米貿易協定の最終合意が確認され、令和2(2020)年1月1日に発効しました。本協定においては、米について関税の削減の対象から完全に除外するとともに、牛肉輸出に係る低関税枠を大きく拡大するなどの成果が得られました。

平成30(2018)年度に発効したTPP11、日EU・EPA(*1)も合わせれば、世界経済の6割を占める自由で公正なルールに基づくマーケットが誕生したことになります。これは我が国の農業にとっても大きなチャンスです。この機を生かすため、我が国の農林水産業の生産基盤を強化するとともに、新市場開拓の推進等、万全の対策を講じていくこととしています。

*1 用語の解説3(2)を参照

(1)交渉の概要

日米貿易協定は、平成30(2018)年9月の日米首脳会談で発表された共同声明において、日米間での貿易協定の締結に向けた交渉開始について一致したことを受け、平成31(2019)年4月から交渉が始まりました。

約半年間にわたる交渉を行い、令和元(2019)年9月25日の日米首脳会談で最終合意を確認し、同年10月7日にワシントンにおいて日米間でこの協定の署名が行われました(図表トピ2-1)。

農林水産物の交渉に当たっては、我が国の農林水産業が今後とも国の基(もとい)として発展し、将来にわたって、その重要な役割を果たしていくことができるよう、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許(じょうきょ)内容が最大限との考え方の下、粘り強く交渉を行った結果、日本側の関税について、米について関税の削減の対象から完全に除外するなどTPP(*1)(環太平洋パートナーシップ)をはじめとする過去の経済連携協定の範囲内とすることができました。また、農産品の米国への輸出についても、牛肉輸出に係る低関税枠が拡大するなどの成果を獲得しました。

図表トピ2-1 日米貿易協定の構成

*1 Trans-Pacific Partnershipの略

(2)合意内容

ア 日本側関税に関する規定

米については、米粒(もみ・玄米・精米・砕米(さいまい))のほか、調製品を含め、関税削減・撤廃等からの除外を確保しました。

脱脂粉乳・バター等、TPPでTPPワイドの関税割当枠(*1)が設定された品目については、新たな米国枠を一切認めませんでした。

牛肉については、TPPと同内容の関税削減とし、令和2(2020)年度のセーフガードの発動基準数量を、平成30(2018)年度の米国からの輸入実績より低い水準としました。

これらのほか、TPPで関税削減・撤廃した木材・水産品全てを除外としました(図表トピ2-2)。

図表トピ2-2 主な品目の合意内容(米国からの輸入)

*1 現在、TPP11発効国全てが利用可能な関税割当枠

イ 米国側関税に関する規定

一方、米国側の関税については、牛肉については協定発効前の日本枠200tと64,805tの複数国枠を合わせた、1kg当たり4.4セント(日本円で5円程度)の低関税の複数国枠65,005tへのアクセスを確保し、我が国が利用できる低関税枠が拡大しました。また、我が国の輸出関心が高い42品目(醤油、ながいも、切り花、柿等)で関税削減・撤廃を獲得しました(図表トピ2-3)。

図表トピ2-3 主な品目の合意内容(米国への輸出)

(3)協定の発効

日米貿易協定が発効するためには国会の承認が必要です。このため政府は、令和元(2019)年10月15日に日米貿易協定の承認案を国会に提出しました。

承認案は11月19日に衆議院、12月4日に参議院で可決され、国会において承認されました。

日米貿易協定は、日米両国がそれぞれ国内法上の手続を完了した旨を相互に通告(*1)し、令和2(2020)年1月1日に発効しました。この結果、4億5千万人の人口と世界全体の3割に相当する25兆5千億ドルのGDPを有する貿易圏が誕生しました(図表トピ2-4)。内閣官房が令和元(2019)年10月に公表した経済効果分析では、本協定により我が国の実質GDPが約0.8%(約4兆円)押し上げられ、その際労働供給が約0.4%(約28万人)増加すると試算されています。

図表トピ2-4 世界の人口とGDPに占める我が国と米国の割合(平成30(2018)年)

データ(エクセル:39KB / CSV:2KB

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*1 日米貿易協定第9条において「この協定は、両締約国がそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により相互に通告した日の後三十日で、又は両締約国が決定する他の日に効力を生ずる。」と規定されている。

(4)総合的なTPP等関連政策大綱の改訂

(「総合的なTPP等関連政策大綱」の改訂と補正予算の確保)

TPP11、日EU・EPAに続く今回の日米貿易協定により、我が国は名実ともに新たな国際環境に入りました。これらの協定について、関税削減等に対する農業者の懸念と不安を払拭し、協定発効後の経営安定に万全を期すため、経営安定・安定供給へ備えた措置を、引き続き講じていく必要があります。

一方、これらの協定によって、相手国の関税がほぼ全ての品目で撤廃されることから、我が国の農林水産物の輸出を拡大する好機でもあります。高品質な我が国の農林水産物を求める海外の需要に対応していくことが求められます。

このため政府は、国民に対する丁寧な説明や情報発信を行うとともに、「総合的なTPP等関連政策大綱」を令和元(2019)年12月に改訂しました。改訂された大綱では、これまでの対策について、実績の検証を踏まえた所要の見直しを行いつつ、我が国の農林水産業の大半を中小・家族経営が占めることに留意し、規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者がその創意工夫を最大限発揮できるよう配慮することとしており、これに基づいて、国内生産の拡大に向けて、経営規模の大小や中山間地域といった条件にかかわらず我が国の農林水産業の生産基盤を強化するとともに、新市場開拓の推進等、万全の対策を講じることとしています。

具体的には、強い農林水産業・農山漁村を構築していくための体質強化対策として、肉用牛・酪農経営の増頭・増産、産地生産基盤パワーアップ事業や畜産クラスター事業における要件見直し、スマート農業技術の実証品目の拡大と中山間地・被災地での導入支援、幅広い世代からの多様な担い手が新規就業・定着しやすい環境の整備等の措置が新たに盛り込まれました(図表トピ2-5)。次に、肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)等の経営安定対策については、確実に再生産を可能とするため、引き続き着実に実施することとしています。また、交渉で獲得した成果を最大限活用できるよう、輸出のための司令塔組織の創設と併せて国内の輸出環境整備等を進めることとしています。さらに、知的財産の分野では、優良な植物新品種や和牛遺伝資源の保護を推進することで、農林水産物の輸出を促進することとしています。

農林水産分野の対策の財源については、TPP等が発効し関税削減プロセスが実施されていく中で将来的に麦のマークアップや牛肉の関税が減少することに鑑み、既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保することとしています。令和元(2019)年度補正予算においては、改訂された大綱に基づき、我が国の農林水産業の体質強化対策を実施するため、総額3,250億円を確保しました。なお、これまでに、平成27(2015)年度補正予算において3,122億円、平成28(2016)年度補正予算において3,453億円、平成29(2017)年度補正予算において3,170億円、平成30(2018)年度補正予算において3,188億円を計上しています。

(農林水産物の生産額への影響の試算結果の公表)

また、農林水産省では、令和元(2019)年12月に日米貿易協定による農林水産物の生産額への影響について試算結果を公表しました。試算においては、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策等の国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されると見込んでおり、農林水産物の生産減少額は約600億円から約1,100億円としています。また、日米貿易協定とTPP11を合わせた農林水産物の生産額への影響は約1,200億円から約2,000億円としています。

図表トピ2-5 総合的なTPP等関連政策大綱の概要


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