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農林水産省

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第3節 農業生産基盤の整備と保全管理


農業の生産性向上や多様化のための農業生産基盤整備とともに、老朽化が懸念される農業水利施設(*1)の保全管理、大規模災害時にも機能不全に陥らない強靱(きょうじん)性を確保するための農村の防災・減災対策を引き続き実施していきます。あわせて、ICT(*2)を活用した情報化施工による農業農村整備の生産性向上、地域住民も参加した効果的な土地改良施設の維持管理を進めます。

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 用語の解説3(2)を参照

(1)農地の大区画化、水田の汎用化・畑地化等を通じた農業の競争力強化

(区画整備済みの水田は66%、畑地かんがい施設が整備済みの畑は24%)

我が国の農業の競争力を強化するためには、農地の大区画化、水田の汎用化・畑地化、畑地かんがい施設の整備等の農業生産基盤整備を実施し、担い手への農地の集積・集約化(*1)や農業の高付加価値化等を図る必要があります。

平成30(2018)年における区画整備の状況を見ると、水田では、水田面積全体(241万ha)に対して、30a程度以上の区画に整備済みの面積が66%(159万ha)、そのうち50a以上の大区画に整備済みの面積が11%(25万ha)となっています。また、30a程度以上の区画に整備済みの水田のうち、7割は排水が良好であり、畑としても利用可能な汎用田となっています(図表2-3-1)。

一方、畑では、畑面積全体(201万ha)に対して、区画整備済みの面積が64%(128万ha)、末端農道が整備されている面積が77%(156万ha)、畑地かんがい施設が整備されている面積が24%(49万ha)となっています。また、区画整備済みの畑のうち、9割において末端農道の整備が、3割において畑地かんがい施設の整備がされています(*2)(図表2-3-2)。

図表2-3-1 区画整備済みの水田の汎用化の状況
図表2-3-2 区画整備済みの畑のかんがい施設等の整備状況

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 農業基盤情報基礎調査(数値は平成29(2017)年度末時点)

(農地の大区画化、水田の汎用化・畑地化によりスマート農業や高収益作物の導入を推進)

大区画化された水田において、地下水位制御システムやスマート農業の導入により、水管理や営農の省力化を推進しています。令和2(2020)年2月、農林水産省は「自動走行農機等に対応した農地整備の手引き」を策定しました。この手引きが活用されることにより、自動走行農機等がその性能を発揮しやすい農地の整備が進むことが期待されます。

また、暗渠(あんきょ)による水田の排水改良は、ほ場の水管理を容易にし、作物の生育環境を良好にします。暗渠の整備が進むことに伴い、米中心の営農体系から野菜等の高収益作物を取り入れた営農体系への転換が図られ、農業所得(*1)の向上に寄与しています。

*1 用語の解説2(3)を参照

事例:基盤整備により延べ17人が新規就農(北海道)

北海道鷹栖町
地下水位制御システムを活用したかんがいの様子

地下水位制御システムを活用した
かんがいの様子

資料:国土交通省

北海道鷹栖町(たかすちょう)では、小区画のほ場や排水不良が効率的な農作業の支障となっていましたが、昭和49(1974)年以降の国営かんがい排水事業や国営緊急農地再編整備事業を契機として、農地の大区画化と地下水位制御システムの導入が行われたことにより、営農や水管理の省力化が実現しました。さらに、自動操舵田植機の導入、ドローンによる生育管理の試験導入等、省力化に向けた取組を開始しました。

これを受けて、新規就農者は平成24(2012)年度から平成30(2018)年度までの間で17人となりました。また、町外からの新規就農やUターン者が増加しており、地元の小学校に通学する農業者の子供の数は同期間で10人から20人と2倍に増加しました。

新規就農者延べ人数(鷹栖町)

データ(エクセル:26KB / CSV:1KB

事例:農地中間管理機構と連携する農地整備事業(愛知県)

愛知県田原市
基盤整備実施地区の様子

基盤整備実施地区の様子

資料:愛知県

愛知県田原市(たはらし)の和地太田(わじおおた)地区は、昭和40(1965)年代に水田として整備されたものの、昭和63(1988)年頃から労働力不足により作付面積が減少し、豊川用水の全面通水に伴う地域の営農形態の畑地営農への移行により、平成6(1994)年頃から地区の大半の21.7haが荒廃農地となっていました。

これを解消するため、平成19(2007)年頃から農業者と市、土地改良区が土地改良事業による水田の畑地化に向けた調整を行い、9割の地権者の同意を得ましたが、農業者の費用負担が障壁となり実現しませんでした。

しかし、平成29(2017)年に全ての対象農地に農地中間管理権を設定すること等を条件に農業者の費用負担なしで基盤整備できる農地中間管理機構関連農地整備事業が創設されたことを受けて、同事業の活用に向けた調整を進め、平成30(2018)年度に事業着手が決定しました。

市、農地中間管理機構が中心となって、地権者82人と調整を進め、地区内外から借受けを希望する者を募集した結果、12人の担い手に農地を集積・集約化することとなり、担い手への集積面積は再生する荒廃農地を含めて22.7haとなりました。

現在は、令和5(2023)年の事業完了に向けて、荒廃農地の解消、水田の大区画化・畑地化を進め、キャベツ、水稲を作付けし、担い手による効率的な農地利用を目指しています。

(ICTを活用した情報化施工により農業農村整備の建設現場の生産性が向上)

農業農村整備事業では、農業の競争力強化等に資する基盤整備を着実に推進しつつ、事業実施を支える建設業界における労働力不足の急速な進行に対応するため、ICTを活用した情報化施工による建設現場の生産性向上に取り組んでいます。

情報化施工では、工事着手時や工事完成後の検査時にドローン等を用いて位置と高さを同時に把握する3次元の測量を行うとともに、GNSS(*1)(衛星測位システム)を用いて建設機械の操作を制御することにより、従来の施工技術と比べて工事現場の省力化が図られます。また、将来的には、情報化施工を通じて得られるほ場や周辺構造物の座標データを、営農段階において自動走行農機の走行経路設定等に活用することも期待されます。

農林水産省では、情報化施工技術の導入を推進するため、「情報化施工技術の活用ガイドライン」等の技術基準類の整備を進めており、平成29(2017)年度から令和元(2019)年度にかけて、直轄事業において60件の情報化施工技術活用工事が実施されました。

*1 用語の解説3(2)を参照

(2)農業水利施設の長寿命化

(農業水利施設の機能保全対策を推進)

農業水利施設の整備状況は、農林水産省の調査(*1)によると、基幹的水路が5万1,154km、ダムや取水堰(せき)等の基幹的施設が7,582か所となっています。

基幹的農業水利施設の相当数は、戦後から高度成長期に整備されてきたことから、老朽化が進行しています。平成30(2018)年度における経年劣化やその他の原因による農業水利施設の漏水等の突発事故は、前年度に比べ425件少ない1,109件となりましたが、ピーク時の平成28(2016)年度以前と比べると依然として高い水準となっています(図表2-3-3)。標準耐用年数を経過している基幹的農業水利施設は、再建設費ベース(*2)で5兆円であり、全体の26%を占めています。さらに、今後10年のうちに標準耐用年数を超過する施設を加えると7兆8千億円であり、全体の40%を占めています(*3)(図表2-3-4)。

図表2-3-3 突発事故発生状況

データ(エクセル:28KB / CSV:1KB

図表2-3-4 基幹的農業水利施設の老朽化状況(再建設費ベース)

データ(エクセル:29KB / CSV:1KB

このような現状を踏まえ、農林水産省では、施設全体の現状を把握・評価し、中長期的な施設の状態を予測しながら、施設の劣化とリスクに応じた対策の工法、時期を選定し、計画的に対策を進めるストックマネジメント(*4)を推進しています。新技術の開発と現場への円滑な導入を推進することにより、更新時期を延伸し、施設の長寿命化を図るとともに、維持管理費や将来の更新費用を考慮したライフサイクルコスト(*5)を低減します。

施設保全の対策の工法、時期は個々の施設により異なりますが、性能低下がかなり進んでから事後的な保全対策を行う方法と、性能低下の初期において予防的な保全対策を実施する方法があります(図表2-3-5)。

計画的かつ効率的な補修・更新等を実施することで、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を図ることが必要です。

図表2-3-5 施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減

*1 農業基盤情報基礎調査(数値は平成29(2017)年度末時点)

*2 同じ機能及び構造のものを、現在の一般的な施工水準及び現在価値をもって再建設する場合の費用により施設を評価したもの

*3 農業基盤情報基礎調査(数値は平成29(2017)年度末時点)

*4 施設の機能がどのように低下していくのか、どのタイミングで、どの対策を取れば効率的に長寿命化できるのかを検討し、施設の機能保全を効率的に実施することを通じて、施設の有効活用や長寿命化を図り、ライフサイクルコストを低減する取組

*5 施設の建設に要する経費から供用期間中の維持保全コスト、廃棄に係る経費に至るまでの全ての経費の総額

(農業水利施設の長寿命化計画の策定)

政府は、国や地方公共団体等が一丸となってインフラの戦略的な維持管理・更新等を進めるため、平成25(2013)年11月に「インフラ長寿命化基本計画」を策定しており、この中で各インフラの管理者は、令和2(2020)年度までのできるだけ早い時期に「個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)」を策定することとしています。「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議幹事会(第8回)」によれば、農業水利施設(受益面積100ha以上の基幹的農業水利施設)の個別施設計画策定率は、平成31(2019)年4月1日時点で75%となっています。

(土地改良区の体制を強化)

今後、組合員の減少により、土地改良施設の維持管理に支障が生じるおそれがあることから、平成31(2019)年4月に改正された土地改良法において、土地改良区は貸借地の所有者又は耕作者で事業参加資格がない者を准組合員に、地域住民を構成員とする団体を施設管理准組合員にすることができるようになりました。このような新たな仕組みの定着により、土地改良区の体制強化を図るとともに、土地改良施設の維持管理を効果的に行うことが重要です。

コラム:農業水利施設(水の恵み施設)の情報発信に向けた取組

「水の恵みカード」は、農産物の生産に不可欠な農業用水の大切さや、その農業用水を農地まで届ける農業水利施設(水の恵み施設)の役割を一般消費者に紹介するために作成しているものです。

このカードは、農林水産省や都道府県等が平成28(2016)年から作成し、各地の農産物直売所等で配布しています。令和元(2019)年度には、新たに7事例を追加し、令和2(2020)年2月時点で61事例となっています。

令和元(2019)年度に作成された水の恵みカード「大淀川右岸地区の日向夏」(宮崎県宮崎市)

令和元(2019)年度に作成された水の恵みカード
「大淀川右岸地区(おおよどがわうがんちく)の日向夏(ひゅうがなつ)」
(宮崎県宮崎市(みやざきし))



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