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農林水産省

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第8節 農業を支える農業関連団体


農業者の取組を支援している各種農業関連団体は、農業者の減少と高齢化、農業法人の増加、農地面積の減少等の農業構造の変化に伴い各種制度が改正される中で、その役割も少しずつ見直されています。農協では農業者の所得向上を目的とした自己改革の取組が、農業委員会では農地利用の最適化に向けた取組が進められています。また、農業共済団体と土地改良区では、業務の効率化のための組織や運営体制の見直しが進められています。

(1)農業協同組合

(農協改革集中推進期間において自己改革の取組は進展)

農協は協同組合の一つで、農業協同組合法に基づいて設立されています。農業者等の組合員により自主的に設立される相互扶助組織であり、農産物の販売や生産資材の供給、資金の貸付けや貯金の受入れ、共済、医療等の事業を行っています。

総合農協(*1)の組合員数の推移を見ると、平成30(2018)年度の組合数は平成29(2017)年度に比べ18組合減少し639組合となっている一方で、組合員数は2万人減少し1,049万人となっています(図表2-8-1)。組合員数の内訳を見ると、農業者である正組合員数は減少傾向で推移していますが、非農業者である准組合員数は増加傾向にあります。

図表2-8-1 農協(総合農協)の状況

データ(エクセル:31KB / CSV:1KB

平成28(2016)年4月に改正された農業協同組合法等に基づき、農協においては、農産物の有利販売や生産資材の有利調達等の農業者の所得向上を目的とした自己改革の取組が進められています。

農林水産省が実施した令和元(2019)年度のアンケート調査によると、地域の農協が農業者の所得向上に向けた農産物販売事業や生産資材購買事業の見直しについて、「具体的取組を開始した」と回答した総合農協、農業者双方の割合は、農協改革集中推進期間において増加した一方で、総合農協と農業者の評価には一定の差があります(図表2-8-2)。また、農林水産省では、このような各地の農協で行われている農業者の所得向上に向けた具体的な取組をWebサイトで公表しています。

農林水産省としては、農協改革集中推進期間において自己改革は進展したと評価しており、今後は信用事業等の農協を取り巻く環境が厳しさを増す中、農協経営の持続性をいかに確保するかが課題となっています。引き続き、JAグループの自己改革の取組を促進していきます。

図表2-8-2 農協改革に関するアンケート

データ(エクセル:33KB / CSV:2KB

*1 農業協同組合法に基づき設立された農協のうち、販売事業、購買事業、信用事業、共済事業等を総合的に行う農協

事例:小売店や食品事業者と連携したかんしょの有利販売(茨城県)

茨城県神栖市
店頭での焼きいも販売の様子

店頭での焼きいも販売の様子

資料:なめがたしおさい農業協同組合

茨城県神栖市(かみすし)にあるなめがたしおさい農業協同組合では、平成10(1998)年頃から家庭調理の減少等によるかんしょの消費が落ち込む中、青果用以外の売り方を考察し、平成15(2003)年から小売店と連携して、かんしょを高値で販売できる小売店舗内での焼きいも販売を開始しました。農協職員が小売店に出向いて店頭での焼きいも機設置を提案することから始め、おいしく焼くためのマニュアルの作成・配布、定温貯蔵庫の整備による食味の向上、通年での安定供給を実現しています。また、近年では、農業者が自ら店頭で直接消費者においしさの理由や品種の特徴等を説明し、販売促進を行っています。このような取組により、年々着実に販売金額を増加させています。

また、従来は青果用として需要が少なく、でん粉用として出荷していたサイズの大きいかんしょについて、低価格の輸入でん粉により価格安に拍車がかかる中、平成15(2003)年からかんしょを使用したお菓子等を製造する食品事業者に加工原料として販売することで、生産されたかんしょのロスを減らしています。

さらに、農協・食品事業者・市が連携して、かんしょの加工工場見学や体験活動ができるミュージアム、農業体験ができる農園や地元食材を使用したレストラン等が併設された体験型農業テーマパークを開園して、かんしょの販売促進や地域活性化に取り組んでいます。

このような取組により、同農協管内のかんしょの栽培面積当たりの収入が向上し、農業者の所得向上に貢献するとともに、農協の農業関連事業の収益を安定的に確保することで、持続可能な農協経営を実現しています。

(2)農業委員会

(新体制への移行を終え「人・農地プラン」の実質化が期待)

農業委員会は、農地法に基づく売買・賃借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地(*1)の調査・指導等を中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。平成28(2016)年4月に改正された農業委員会等に関する法律(以下「改正農業委員会法」という。)により、農業委員会の業務の重点は農地利用の最適化の推進であるとされるとともに、農業委員とは別に、各地域において農地利用の最適化を推進する農地利用最適化推進委員(以下「推進委員」という。)が新設され、平成30(2018)年までに新体制への移行が行われました(図表2-8-3)。

図表2-8-3 農業委員会の状況

データ(エクセル:33KB / CSV:2KB

令和元(2019)年5月に公布された「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律」では、農業委員と推進委員が「人・農地プラン」の実質化に向けた地域の話合いに出席し、情報提供等の必要な協力を行うことが明確化されるなど、農業委員会による各地域における農地利用の最適化の推進が求められています。これを受けて、各農業委員会においては「人・農地プラン」の実質化のための地域の話合いに必要な情報である農地の利用意向の調査を進めているところです。地域の話合いにおいて農業委員と推進委員が調査の結果を地図化して活用するなどの事例も出てきており、農地利用の最適化の取組の活発化が期待されます。

*1 用語の解説3(1)を参照

事例:モデル地区から波及する「人・農地プラン」の実質化の取組(長野県)

長野県松川町
座談会の様子

座談会の様子

資料:松川町農業委員会

長野県の松川町(まつかわまち)農業委員会では、平成30(2018)年6月に農業委員会内で検討を行い、モデル地区を選んで「人・農地プラン」の実質化を展開することを決めました。

モデル地区となった増野(ますの)地区では、まず平成30(2018)年8月に全戸アンケート調査を実施し、その結果を踏まえた座談会を同年9月から平成31(2019)年3月にかけて6回開催しました。

座談会の進行役は農業委員が務め、地区内の20から80代の男女が参加しました。初回と2回目はアンケート結果を踏まえて色分けした地図を作成して地区内の現況把握をし、3回目以降はグループに分かれて地域の強みや弱み、将来目指すべき姿等のアイデアを出し合いました。

これらの取組の結果として、平成31(2019)年3月に実質化された「人・農地プラン」が策定されました。同地区の取組は町内の他地区にも波及し、大沢(おおさわ)地区・部奈(ぶな)地区では同様の方法で座談会を開催するなど具体的な動きが出てきています。

(3)農業共済団体

(災害に備え農業保険への加入を促進)

農業保険法の下、農業共済組合及び農業共済事業を実施する市町村(以下「農業共済組合等」という。)は、農業共済制度の実施に関する業務を行っています。近年、業務の効率化のため、農業共済組合等と農業共済組合連合会との統合を推進しており、平成31(2019)年4月1日時点で36の都府県で1県1組合化が実現しています(図表2-8-4)。

また、平成30(2018)年4月に全国農業共済組合連合会が設立され、平成31(2019)年1月から始まった収入保険(*1)の業務を実施しています。その業務の一部は、農業共済組合等又は農業共済組合連合会に委託されています。

農業共済団体は、引き続き1県1組合化等による業務の効率化を進め、近年多発している災害への備えに万全を期すため、農業保険(収入保険・農業共済)への加入を促進していくこととしています。

図表2-8-4 農業共済団体の状況

データ(エクセル:31KB / CSV:2KB

*1 第2章第2節(6)を参照

(4)土地改良区

(耕作者の意見が適切に反映される事業運営体制に移行)

土地改良区は、ほ場整備等の土地改良事業を実施するとともに、農業水利施設(*1)等の土地改良施設の維持・管理等の業務を行っており、平成30(2018)年度末時点で4,455地区となっています(図表2-8-5)。

土地改良区の運営をめぐっては、組合員の高齢化による離農や農地集積の進展に伴い、組合員の中で土地持ち非農家(*2)が増加しているなどの課題があります。今後も、土地持ち非農家の増加が続けば、土地改良施設の管理や更新等に関する土地改良区の意思決定が適切に行えなくなるおそれがあり、耕作者の意見が適切に反映される事業運営体制に移行していく必要があります。

このため、平成31(2019)年4月に改正された土地改良法では、土地改良区の組合員資格の拡大、総代会の設置、土地改良区連合の設立に係る要件の緩和等の措置を講じたところであり、土地改良区の適正な事業運営を確保しつつ、更なる事務の効率化を図っていくこととしています。

図表2-8-5 土地改良区の状況

データ(エクセル:30KB / CSV:2KB

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 用語の解説2(2)を参照



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