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農林水産省

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第3節 東日本大震災からの復旧・復興


平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災では、岩手県、宮城県、福島県の3県を中心とした東日本の広い地域に東京電力 福島第一(とうきょうでんりょくふくしまだいいち)原子力発電所(以下「東電福島第一原発」という。)の事故の影響を含む甚大な被害が生じました。

政府は平成23(2011)年7月に策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」において、復興期間を令和2(2020)年度までの10年間と定め、被災地の復興に向けて取り組んできました。取組により、復興は大きく前進し、地震・津波被災地域では、農林水産関係インフラについて、復旧はおおむね完了し、復興の総仕上げの段階に入っています。他方で、原子力災害被災地域においても、復興・再生が本格的に始まっていますが、避難指示等の解除の状況等により、被災地域ごとの再建の状況は様々であり、復興の進展に伴い、引き続き対応が必要となる事業や新たな課題も明らかになっています。令和元(2019)年12月に閣議決定した「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」において、復興・創生期間後も被災地の復興に向けて取り組むこととしています。

(1)地震・津波による被害と復旧・復興
ア 農地の復旧・復興

(営農再開が可能な農地は93%に)

図表4-3-1 農林水産関係の被害の状況

東日本大震災による農業関係の被害額は9,049億円となっています(図表4-3-1)。津波により被災した農地2万1,480haから公共用地等への転用が見込まれるものを除いた復旧対象農地1万9,760haについては、除塩や畦畔(けいはん)の修復等の復旧が進められており、令和2(2020)年1月末時点では93%で営農再開が可能となりました(図表4-3-2)。

図表4-3-2 農地・農業用施設等の復旧状況

データ(エクセル:32KB / CSV:2KB

避難指示が解除された区域内の農地やまちづくり等の他の復旧・復興事業との工程調整が必要な残りの農地についても、早期復旧に向けた取組が進められています。

(農地の復旧に併せたほ場の大区画化が進展)

岩手県、宮城県、福島県の3県では、地域の意向を踏まえ、復旧に併せた農地の大区画化(整備計画面積8,230ha(*1))に取り組んでおり、令和元(2019)年度末時点で8,090haの大区画化が完了し、地域農業の復興基盤の整備が着実に進展しています。

農地整備事業の区域内に、防災集団移転促進事業により市町村が買い上げた住宅等の移転元地が点在する場合、土地改良法の換地(*2)制度を活用することで、移転元地と農地をそれぞれ集団化することが可能となります。これにより、事業期間の短縮と効率的な土地利用を実現できます。防災集団移転促進事業と連携した農地整備事業は令和元(2019)年度末時点で、宮城県と福島県の10市町15地区で進められています。

*1 整備計画面積は、大区画化に取り組む地区の計画面積の総計であり、大区画化の取組を行わない農地(端部の狭小農地等)も一部含まれている。

*2 用語の解説3(1)を参照

イ 農業の復興

(先端的農業技術の現地実証研究、情報発信等を実施)

被災地域を新たな食料生産基地として再生するため、岩手県、宮城県、福島県の3県において、平成23(2011)年度から平成29(2017)年度にかけて、産学官連携の下、34課題の農業・農村分野に関わる先端的で大規模な実証研究が行われました。

平成30(2018)年度からは、岩手県、福島県において新たな7課題の農業分野に関わる現地実証研究を行うとともに、岩手県、宮城県、福島県の3県に、これまでの実証研究で得られた成果を現場に定着させるための拠点を設置しました(図表4-3-3)。各拠点では、それぞれオープンラボや展示ほ場を設置し、情報発信、技術指導等を行っています。

図表4-3-3 現地実証研究の例

(「新しい東北」の創造に向けた取組を推進)

被災地域では、東日本大震災発生前から人口減少や高齢化、産業の空洞化等、全国の地域が抱える課題が顕著に現れていました。このため、復興庁では、復旧・復興に取り組むに当たり、単なる原状回復にとどめるのではなく、地方公共団体、企業、大学、NPO(*1)等がこれまでの手法や発想にとらわれない新しい挑戦に取り組み、地域の諸課題の解決を進める、「新しい東北」の創造に向けた取組を推進しています。

平成26(2014)年度から「新しい東北」復興ビジネスコンテストを開催し、被災地域における地域産業の復興や地域振興に資する事業の表彰を行っています。令和元(2019)年度においては、農業関係では、「地域を次の世代につなぐ」ことを理念として、地元小学生向けの米作り体験活動に関与し、そのお米でできた焼酎を小学生が20歳になった時に渡すなどの活動を実施している合同会社ねっか(福島県只見町(ただみまち))が大賞を受賞しました(図表4-3-4)。また、「もったいない」「残る果物」をきっかけとしてSDGsや持続性を目指したテーマを追求し、地域企業との連携等の6次産業化(*2)を実現している株式会社やまがたさくらんぼファーム(山形県天童市(てんどうし))が優秀賞を受賞しました。そのほか、農業関係では4つの取組が企業賞を受賞しました。

さらに、平成28(2016)年度から、被災地域で進む「新しい東北」の実現に大きな貢献をしている個人や団体を顕彰する、「新しい東北」復興・創生顕彰を実施しています。令和元(2019)年顕彰においては、農業関係では、「顔の見える関係に風評被害はなし」との考えの下、農業支援の仲立ちを行うとともに、相互の情報交換、助け合い、全国の消費者との交流の促進や、放射能対策を知る農業体験等の活動を行ってきた特定非営利活動法人がんばろう福島(ふくしま)、農業者等(のうぎょうしゃとう)の会(かい)が選定されました。

図表4-3-4 「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2019の受賞者(抜粋)

*1 用語の解説3(2)を参照

*2 用語の解説3(1)を参照

(2)東京電力福島第一原子力発電所事故の影響と復旧・復興
ア 原子力被災12市町村の復興

(原子力被災12市町村の営農再開等の状況)

農林水産省は、福島県の農業の再生に向けて、福島相双復興(ふくしまそうそうふっこう)官民合同チームの営農再開グループに参加し、地域農業の将来像の策定を支援しています。平成29(2017)年4月からは、農業者訪問による要望調査や支援策の説明を行っています。要望調査の結果、アンケートに回答した原子力被災12市町村(*1)の農業者のうち、認定農業者(*2)では62%が営農再開済となり、23%が営農再開を希望すると回答しており、営農再開への意欲が高い状況となっています。一方、主に認定農業者以外の農業者を対象とした個別訪問においては、57%が営農再開未定又は再開意向なしと回答しており、担い手の確保が重要な課題となっています(図表4-3-5)。

図表4-3-5 原子力被災12市町村の農業者の営農再開状況及び意向

また、原子力被災12市町村間でも避難指示解除の時期により営農再開率に差が生まれ、二極化が進んでいます。営農再開割合の高い市町村は、「人・農地プラン」の作成や農業委員会の活動が進んでいる一方、営農再開割合の低い市町村はそれらの活動が停滞しており、集中的に対策を講じる必要があります。

さらに、農地については、営農休止面積1万7,298haから、帰還困難区域(2,040ha)と農地転用等(1,440ha)を除いた1万4千haのうち、6,590haは農地復旧・整備が実施・検討されていますが、検討中の地域においては、帰還率が低く、農地復旧・整備の実施に向けた調整が課題となっています。

残りの7,230haについては、基盤整備が未実施の条件の悪い農地で不在地主化が進んでいること、整備済みの農地であっても将来の営農展開に合わせた再整備が必要となることといった新たな課題が見えてきました(図表4-3-6)。

図表4-3-6 原子力被災12市町村の農地の整備状況

*1 田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村

*2 用語の解説3(1)を参照

(大規模で労働生産性の著しく高い農業経営の展開へ)

このような課題の解決に向けて、これまで行ってきた被災農業者への支援を引き続き継続して営農再開を促進しつつ、大規模で労働生産性が著しく高い農業経営(土地利用型農業、管理型農業)の展開を図る必要があります(図表4-3-7)。このため、将来の担い⼿の確保、関係機関が連携した営農再開推進チームの編成、市町村を越えた広域的な高付加価値化が可能な産地の将来像の策定を進めています。また、このような農業経営の展開に向けては、一筆ごとの土地利用調整が必要であるため、令和2(2020)年度からは、農林水産省から常駐職員を原子力被災12市町村へ派遣した上で、農林水産省、福島県、市町村、福島相双復興推進機構、農協が連携し、市町村が行う営農ビジョンの策定から具体化までの支援を進めていくこととしています。さらに、営農再開の加速化に向け、農地の利用集積の促進、6次産業化施設の整備の促進、農業委員会の事務の特例等の措置を講じることとする福島復興再生特別措置法の改正を含む、復興庁設置法等の一部を改正する法律案が令和2(2020)年3月に国会に提出されました。

図表4-3-7 大規模で労働生産性の著しく高い農業経営の展開

(令和元年度は4つの研究開発を実施)

東日本大震災、東電福島第一原発の事故によって多大な影響を受けた福島県浜通り地域においてイノベーションによる産業基盤の再構築を目指す「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想研究会報告書」が平成26(2014)年6月に取りまとめられました。本報告書では、革新的な先端農林水産業を全国に先駆けて実施することを通じて、地域の農林水産業の復興・再生を実現することとされています。

これを受けて、農林水産省では福島イノベーション・コースト構想に基づく先端農林業ロボット研究開発事業を平成28(2016)年度から実施しており、これまでロボットトラクタ、アシストスーツ等の研究開発を行ってきました。令和元(2019)年度は、ブロッコリー自動選別収穫機、高品質米生産管理技術、農地地力の見える化技術、ICT活用による和牛肥育管理技術の研究開発が行われました(図表4-3-8)。

図表4-3-8 令和元(2019)年度「福島イノベーション・コースト構想に基づく先端農林業ロボット研究開発事業」の研究開発例

(「特定復興再生拠点区域」の状況)

東電福島第一原発の事故に伴い設定された避難指示区域は、除染やインフラ整備等が進んだ結果、令和2(2020)年3月までに、帰還困難区域を除いた全ての地域で避難指示が解除されました(図表4-3-9)。

また、平成29(2017)年5月に改正された福島復興再生特別措置法において、5年を目途に避難指示を解除し、住民の帰還を目指す「特定復興再生拠点区域」の復興・再生を推進するための計画制度が創設され、平成30(2018)年5月までに、帰還困難区域が存在する全6町村(*1)が認定されました。全ての復興再生計画で農業の再生を目指した区域が設定されており、今後、本計画に基づき、インフラの復旧、生活環境の整備、産業の復興・再生、除染・家屋解体等が進められていきます。

図表4-3-9 避難指示区域の解除の状況

*1 双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村

イ 風評の払拭に向けた取組等

(農畜産物の安全確保の取組)

市場で放射性物質の基準値を下回る農畜産物のみが流通するように、生産現場では放射性物質の吸収抑制対策、暫定許容値以下の飼料の使用等、それぞれの品目に合わせた取組が行われています。このような生産現場における努力の結果、基準値超過が検出された割合は、全ての品目で平成23(2011)年以降低下しており、令和元(2019)年度では、全ての農畜産物において基準値超過はありませんでした。

福島県では、作付制限、放射性物質の吸収抑制、抽出検査等の対策とともに、米については全域で全袋検査が実施されています(図表4-3-10)。

図表4-3-10 令和元(2019)年産米の作付制限等の対象地域

(「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」に基づく取組のフォローアップを実施)

福島県産の食品は放射性物質検査の徹底により安全が確保されています。また、風評の払拭と信頼される産地づくりに向け、第三者認証GAP(*1)の取得を進めています。福島県と福島県農業協同組合中央会は平成29(2017)年5月に、GAP認証の取得日本一を目指す「ふくしま。GAPチャレンジ宣言」を行っており、福島県の発表によれば、令和元(2019)年度末時点で、GLOBALG.A.P.(*2)27件、ASIAGAP(*3)7件、JGAP(*4)162件及びFGAP(*5)73件となっています。

他方、消費者庁が令和2(2020)年3月に公表した消費者の意識調査(*6)によると、放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合は10.7%となり、調査開始以来最低の水準となったものの、依然として一定数の方が購入をためらうと回答しています。

復興庁及び関係府省庁は、平成31(2019)年4月及び令和元(2019)年11月に「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」を開催し、平成29(2017)年12月に取りまとめた「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」に基づく取組状況のフォローアップを行い、今後の方向性について検討しました(図表4-3-11)。これを受け、「知ってもらう」、「食べてもらう」、「来てもらう」の3つを柱にそれぞれの観点から、関係省庁において工夫を凝らした情報発信を実施しています。

農林水産省では、福島復興再生特別措置法に基づき、関係省庁と協力し、平成29(2017)年度から福島県産農産物等の販売不振の要因と実態を明らかにするための流通実態調査と、当該調査に基づく指導・助言等を行っています。平成30(2018)年度調査の結果、福島県産農産物等の生産・販売は依然、震災前の水準まで回復していませんが、福島県産農産物等と他県産農産物等の流通段階ごとの価格形成に明確な違いはなく、買いたたきは確認されませんでした。一方、納入事業者(卸売業者、仲卸業者等)が納入先(小売業者、外食業者等)の福島県産品に対する取扱姿勢を実態よりも後ろ向きに評価していること等が明らかになりました。この結果を踏まえ、平成31(2019)年4月に、関係省庁と連名で、関係事業者に対し、福島県産農産物と他県産農産物とを対等に比較して取扱商品を選択するよう指導するとともに、生産者団体に対し、GAP等の実施により福島県産農産物等のイメージアップを図ることが重要と助言しました。

また、「食べて応援しよう!」のキャッチフレーズの下、農業者、消費者等の団体や食品事業者等、多様な関係者の協力を得て、被災地産食品の販売フェアや社内食堂等での積極的利用を進めています。

図表4-3-11 「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」に基づく取組の今後の方向性

*1~5 用語の解説3(2)を参照

*6 消費者庁「風評被害に関する消費者意識の実態調査(第13回)」(令和2(2020)年3月公表)

コラム:被災地産の花でビクトリーブーケ

大会組織委員会は、令和元(2019)年11月、東京2020大会のメダリストに副賞として授与するブーケのデザインを公表しました。ビクトリーブーケは、リオデジャネイロ大会以降、3大会ぶりの復活となります。

ビクトリーブーケのイメージPhoto by Tokyo 2020 / Shugo TAKEMI

ビクトリーブーケのイメージ
Photo by Tokyo 2020 / Shugo
TAKEMI

ブーケのデザインは、日本花き振興協議会(*)が提案。花材には、福島県産トルコギキョウ等、東日本大震災の被災地で生産されている花を活用し、制作・提供することとしており、震災に際して世界から寄せられた支援に対する感謝の気持ちを伝えるとともに、復興の進展を表すシンボルになるようにとの思いが込められています。

* 花きの生産、流通、販売、文化にかかわる業界9団体が大同団結し、平成29(2017)年5月に発足

(放射性物質による輸入規制措置の撤廃・緩和)

東電福島第一原発の事故に伴い、多くの国・地域において、日本産農林水産物・食品の輸入停止や放射性物質の検査証明書等の要求・検査の強化といった輸入規制措置が実施されています(図表4-3-12)。

図表4-3-12 東電福島第一原発事故による主な輸出先国・地域の輸入停止措置の例

これらの輸入規制を実施している国・地域に対し、我が国が実施している安全確保のための措置やモニタリング結果等の科学的データ等の情報提供を行ってきた結果、令和元(2019)年度において、コンゴ民主共和国、ブルネイ、フィリピン等で輸入規制措置の撤廃・緩和の動きが見られました(図表4-3-13)。

この結果、輸入規制措置を設けた54か国・地域のうち、34か国・地域で輸入規制措置が撤廃されました。

図表4-3-13 東電福島第一原発事故による主な輸出先国・地域の輸入規制措置の撤廃・緩和の動き(令和元(2019)年度)

(東京電力による農林水産業関係者への損害賠償支払)

原子力損害の賠償に関する法律の規定により、東電福島第一原発の事故の損害賠償責任は東京電力(とうきょうでんりょく)ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)が負っています。

東京電力によるこれまでの農林水産業関係者への損害賠償支払累計額は、令和元(2019)年度末時点で9,264億円(*1)となっています。

*1 農林漁業者等の請求・支払状況について、関係団体等からの聴取りから把握できたもの



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