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農林水産省

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(3)地方への関心や働き方、交流に関する新たな動き ウ 農業・農村への関心の高まりや半農半Xの動き


(都市住民の農業への関心が増加)

平成12(2000)年から農林水産省は、就農希望者と産地・農業法人等とのマッチングを促すため就農希望者向け就農相談会(「新・農業人フェア」)の開催を支援しています。令和2(2020)年度は、地方公共団体や農業大学校、農業法人等による総合的な相談会「農業EXPO」と農業法人等への就職に特化した「農業就職・転職LIVE」の2つのイベントが交互に開催されました。イベントへの来場者数は、9月から2月にかけては前年同時期比で増加しており、都市住民の農業への関心が高まっていることがうかがえます(図表 特-44)。

図表 特-44 新・農業人フェア来場者数

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農業研修を受ける就農希望者

農業研修を受ける就農希望者

資料:日本農業実践学園

茨城県水戸市(みとし)にある日本農業実践学園(にほんのうぎょうじっせんがくえん)(*1)は、就農希望者に対して必要な研修を行う専門学校です。社会人等の就農希望者を受け入れるコースの入学者は、前年は0人でしたが、令和2(2020)年には18人が入学しました。この中には、新型コロナウイルス感染症をきっかけに農業への転職を決意し、東京都や神奈川県から入学した社会人が多く含まれています。

*1 正式名称は、公益社団法人日本国民高等学校協会専修学校日本農業実践学園

(別の仕事をしながら農業をする「半農半X」の拡大に向けた取組を強化)

生産現場では、農業と宿泊業や、農業と酒造りなど、農業を営みながら他の仕事にも携わる働き方である「半農半X」の拡大に向けた取組が一部自治体で行われています。

島根県は、平成22(2010)年度から半農半Xに取り組む県外からの移住者を支援しています。県の「半農半X支援事業」では、農産物の年間販売金額50万円以上を目指すこと等の条件を満たす県外からのUターン・Iターン者を「半農半X実践者」として認定して、就農前の研修費用や営農に必要な経費等の支援を行っています。半農半Xの類型としては、「半農半農雇用(農業法人等での雇用)」、「半農半蔵人(酒造会社勤務)」、「半農半除雪(高速道路除雪等)」、「半農半サービス(道の駅勤務、新聞配達等)」、「半農半自営業(庭師、左官、写真家)」、「半農半漁(河川漁業)」といったパタ-ンがあり、令和2(2020)年度の認定人数は、前年度比で11人増加し、85人となりました。

また、長野県では、半農半X等の、暮らしに「農」を取り入れた「農ある暮らし」を推進しており、県内に相談センターを設けているほか、毎年、「農ある暮らし入門研修」として研修を開催しています。令和2(2020)年度も、緊急事態宣言の影響で規模を縮小したものの、これらの取組を続けており、実践者の活動を紹介したブログを開設したほか、研修の申込みもほぼ満席となりました。また、相談センターには半農半Xを行っている移住者が勤めているほか、過去の研修の参加者には、半農半Xとして農業と油絵作家の活動を両立している者もおり、長野県はこのような実践者の声を活かしながら、引き続き支援を続けていく予定です。

(事例)半農半Xの事例

(半農半蔵人 島根県邑南町)

島根県邑南町

島根県邑南町(おおなんちょう)の沼田高志(ぬまたたかし)さんは、出身地の兵庫県の民間企業に勤務していましたが、東日本大震災をきっかけに就農を決意し、平成24(2012)年に島根県の半農半X支援事業を活用する形で営農を開始しました。沼田さんは、夏期は45aの農地で酒米と野菜を栽培し、冬季は地域の酒蔵に勤務する「半農半蔵人」を行っています。

半農半Xの実践者(農業と酒蔵での勤務)

半農半Xの実践者(農業と酒蔵での勤務)

資料:島根県

酒蔵は雇用を人手が必要となる冬季のみとすることで人件費を抑えられているほか、酒蔵の勤務によって沼田さん自身も農閑期の収入を確保できています。沼田さんは「自分で育てた酒米で日本酒を造ることもでき、2つの仕事を両立するスタイルにやりがいを感じる」と話しています。

(半農半民宿 徳島県勝浦町)

徳島県勝浦町
半農半Xの実践者(半農半民宿)

半農半Xの実践者(半農半民宿)

資料:みかん農家の宿あおとくる(徳島県)

徳島県勝浦町(かつうらちょう)の石川翔(いしかわしょう)さんと美緒(みお)さんは、東京都の民間企業に勤務していましたが、移住相談会で後継ぎのいないみかん農家の事業継承の提案を受けたことから、平成28(2016)年に移住、40aの農地で営農を開始しました。就農直後から農業次世代人材投資資金の交付を受けていましたが、交付期間の終了後には、自宅を改修して民宿や古本屋の経営等を開始し、農業以外で約100万円の収入を確保しています。石川さんは「今後は、農業以外の収入を維持しつつ、経営を安定させるため農地を拡大していきたい」と話しています。

(市民農園や家庭菜園への関心が増加)

令和2(2020)年9~10月に東京都が行った調査によると、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、都市において公園や緑地の重要性を感じるようになったと回答した人が6割にのぼり、家庭菜園や市民農園で野菜を育てることに興味を持つようになったという人も2割を超えています(図表 特-45)。

図表 特-45 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う自然環境に関する意識の変化(複数回答)

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園芸店店頭の初心者向けコーナー

園芸店店頭の初心者向けコーナー

資料:株式会社サカタのタネ

実際に、市民農園の利用は増えており、首都圏と関西の都市部で貸し農園を展開している株式会社アグリメディアによると、運営する98の農園全体で、令和2(2020)年4月の来園者数は同年2月に比べて8割増加しました。

また、家庭菜園についても、株式会社サカタのタネによれば、家庭菜園用のキットや種子、苗等の売上げが令和2(2020)年6月以降、前年比で1割程度増加しているなど、これまで家庭菜園に取り組んでこなかった消費者の関心が高まっていることがうかがえます。



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