(3)地方への関心や働き方、交流に関する新たな動き イ 移住に関する動き
(東京都の転出超過傾向が継続)
令和2(2020)年度の東京都の転入・転出の状況を見ると、5月に転出者数が転入者数を1,069人上回り、外国人を含む移動者数の集計を開始した平成25(2013)年7月以降初めての転出超過となりました(図表 特-39)。その後、6月は一時的に転入超過となりましたが、7月以降は再び転出超過が続き、令和3(2021)年2月は1,838人の転出超過となりました。
また、東京都の転出者数は令和2(2020)年8月以降、前年を上回って推移し、令和3(2021)年2月は約3万人となっています(図表 特-40)。
このことは、東京都の転出超過が新型コロナウイルス感染症の拡大による一時的なものではなく、今後も継続する可能性を示していると考えられます。
(事例)コロナをきっかけとして地方に移住(京都府)
髙山和洋(たかやまかずひろ)さんと真純(ますみ)さんは、令和2(2020)年9月に子供2人とともに一家で埼玉県から京都府綾部市(あやべし)に移住しました。かねてより地方での生活に憧れを抱いていましたが、首都圏で新型コロナウイルス感染症が拡大したことで移住を決意しました。
移住する前は20aの農地でからし菜を生産し、それを加工した和からしを販売するほか、飲食店を経営していました。
移住に際し、住宅は市の空き家バンク制度等を活用して確保しました。農地は知人から借り、からし菜の生産を再開しています。
移住前から、オンラインを中心に販売していたため、移住後も販路を変更することなく販売を継続しています。また、同年11月には狩猟免許を取得し、地域の住民と協力しながらイノシシ等の狩猟にも携わっています。髙山さんは、「移住することで新しい人たちとの出逢いと今まで経験したことのない形での農業、子供たちに生きるための術を伝えられる環境に出会うことができた。将来的には多品目栽培や農家民宿等も行っていきたい。」と話しています。
(都市住民の地方への移住意向が増加)
令和2(2020)年5~6月に内閣府が行った調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響により、三大都市圏に住む人のうち、15.0%が地方への移住について「関心が高くなった」、「関心がやや高くなった」と回答しています。特に、20歳代では22.1%が地方移住への関心が高まったと回答しています(図表 特-41)。
このことから、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークの実施率が高まっていること等を背景に、特に若い世代で人口過密な地域を離れて仕事をしたいという意向が高まっていると考えられます。
特定非営利活動法人ふるさと回帰支援センター(以下「ふるさと回帰支援センター」という。)では、主に東京圏の居住者で、地方暮らしやUIJターンを希望する人のための移住相談を行っています。平成22(2010)年から令和元(2019)年までの10年間で、ふるさと回帰支援センターへの相談件数(来訪者数及び問い合わせ数)は約8倍に増加しましたが、令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でセミナーの開催数が36.0%減少したことから、相談件数は前年度に比べ22.4%減少しました(図表 特-42)。
そのような中で、令和2(2020)年6月以降は電話とメールによる問い合わせ数が1か月当たり平均で約1,800件となり、前年比で37.6%増加しています(図表 特-43)。
その内訳を見ると、静岡県や山梨県、長野県など東京に毎日通勤することは困難な県への移住相談が多いことから、テレワークの実施に伴い、都市住民における「郊外」の概念が拡張している可能性があると考えられます。
(事例)オンラインでの交流、移住相談会を実施(長野県、群馬県)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、Web会議システム等のオンラインを活用した地方と都市との交流や移住相談会が行われています。
長野県伊那市(いなし)では、令和2(2020)年8月に、保育園や小学校の見学等を予定していた移住希望者等に向けて、オンラインで伊那市内を巡るツアーを開催しました。第1回目のツアーでは、市役所の職員と小学生等が、総合学習に力を入れている小学校や、県外からの移住者を訪問し、その様子をWeb会議システムを通じてライブ中継しました。
この取組には300人以上の移住希望者が集まり、オンライン上でも活発な質疑応答が行われるなど好評だったことから、以降も定期開催し、令和2(2020)年度末時点で、計4回のオンライン体験ツアーを行い、これまでに6世帯が移住しました。
また、群馬県では以前から県庁の窓口や都内で開催する移住相談イベント等を通じて、県内への移住希望者の相談に対応してきました。令和2(2020)年度はオンラインを通じた移住相談会を19回開催しましたが、移住相談者が移住を検討する理由として、以前は田舎暮らしに憧れた事例が多かったものの、新型コロナウイルス感染症拡大後では、「安全・安心」を求めて、移住を検討する者が多くなっています。
県が把握している限りでは、令和2(2020)年度末時点で、44組85人が勤務先への通勤が可能な市部を中心に移住しています。
ご意見・ご感想について
農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。
白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
送信フォームはこちら。
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883