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農林水産省

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第7節 需要構造等の変化に対応した生産基盤の強化と流通・加工構造の合理化



我が国では、各地域の気候や土壌等の条件に応じて、様々な農畜産物が生産されています。消費者ニーズや海外市場、加工・業務用等の新たな需要に対応し、国内外の市場を獲得していくためには、各品目の生産基盤の強化が重要です。さらに、そのためには、労働安全性の向上や生産資材の低コスト化等も重要です。本節では、これらに係る取組等の動向について紹介します。

(1)畜産・酪農の生産基盤強化等の競争力強化

(飼養戸数が減少する中、大規模化が進展)

飼養戸数が全ての畜種で減少する中で、1戸当たりの飼養頭羽数は、いずれの畜種でも増加傾向となっています(図表2-7-1)。

図表2-7-1 畜種別に見る飼養戸数と1戸当たり飼養頭羽数の推移

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図表2-7-1 畜種別に見る飼養戸数と1戸当たり飼養頭羽数の推移(続き)

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(肉用牛の生産基盤の維持・強化を推進)

肉用牛の飼養頭数は、平成22(2010)年度以降、減少傾向にありましたが、繁殖雌牛は農家の規模拡大や、キャトルブリーディングステーション(CBS)(*1)、キャトルステーション(CS)(*2)の活用等により、平成27(2015)年度以降は増加に転じており、令和元(2019)年度には、62万2千頭となりました。

農林水産省は、肉用牛の生産基盤強化を図るための取組として、CBS、CSの活用や、ICT(*3)等の新技術を活用した発情発見装置や分べん監視装置等の機械装置の導入やコントラクター等の外部支援組織の機能強化等を支援することにより、生産性の向上と省力化を推進しています。

牛肉生産量は、従来からの事業に加え、平成27(2015)年度から畜産クラスター事業を推進し生産基盤の強化が図られたこと等により、平成29(2017)年度と平成30(2018)年度は増加しましたが、令和元(2019)年度は、乳用種去勢、交雑種が減少していることから、前年度に比べ1.1%減少の47万1千tとなりました(図表2-7-2)。

図表2-7-2 肉用牛の飼養頭数と牛肉生産量

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我が国の牛肉の消費量は近年増加しており、輸入量も増加傾向にありますが、アジア地域の経済成長に伴う需要拡大や、アフリカ豚熱(*4)の発生により中国の食肉輸入量が増加し続けていることにより、世界的な牛肉の需給バランスに変化が生じています。

一方で、和牛の海外での認知度向上等を背景に、我が国の牛肉輸出は年々増加しています。令和2(2020)年の輸出量は前年に比べ11.6%増加の4,845tとなり、輸出額は前年に比べ2.7%減少の289億円となりました(図表2-7-3)。令和2(2020)年4月に設置された農林水産大臣を本部長とする農林水産物・食品輸出本部の下、令和12(2030)年までに輸出額を3,600億円とすることを目標としています。

図表2-7-3 我が国の牛肉の輸出量と輸出額

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将来にわたり国民に安定的に牛肉を供給するとともに、新たな市場獲得を図るためには、国内の生産基盤を強化し、国産牛肉の生産量を増加させる必要があります。一方、流通面では、生産者の顔が見える商品を求める消費者ニーズが高まる中、生産者と消費者の結節点として、高品質な食肉を安定的に供給していくことが重要となっています。

このため、農林水産省では、平成27(2015)年度から、地域ぐるみで高収益型の畜産を実現するための畜産クラスター事業により経営の体質強化等を進めています。また、輸出の拡大に向けて和牛の増頭・増産を大幅に進めるため、繁殖雌牛の増頭奨励金の交付等による生産基盤の強化を推進しています。

さらに、増頭に伴う子牛の取引の円滑化に向けて、家畜市場の再編整備等の流通改革を推進しています。

*1 繁殖経営で多くの時間を費やす、繁殖雌牛の分べん・種付けや子牛の哺育を集約的に行う組織

*2 繁殖経営で生産された子牛の哺育・育成を集約的に行う組織であり、繁殖雌牛の預託を行う場合がある。

*3 用語の解説3(2)を参照

*4 用語の解説3(1)を参照

(酪農の生産基盤の維持・強化を推進)

図表2-7-4 乳用牛の飼養頭数

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図表2-7-5 生乳生産量

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乳用牛の飼養頭数は平成14(2002)年以降減少を続けていましたが、子牛の出生頭数が増加したことから、平成30(2018)年以降増加に転じ、令和2(2020)年は前年に比べ1万3千頭増加し135万頭となりました(図表2-7-4)。また、1戸当たりの飼養頭数は増加傾向で推移しており、大規模化が進展しています。

さらに、令和元(2019)年度の生乳生産量は、都府県では飼養戸数の減少に伴い飼養頭数が減少し、依然として減少傾向が続く一方、北海道では飼養頭数の増加に伴い、初めて400万tの大台を上回った結果、全国での生産量は736万2千tと4年ぶりに増加に転じました(図表2-7-5)。

このような規模拡大や生産量増加の背景には、乳用牛の生産基盤強化を図るための取組として、雌牛生産用の性判別精液の活用等による乳用後継牛の確保や預託等を通じた雌子牛の着実な育成等を推進していることが挙げられます。

このほか、生乳生産量が減少している都府県での増頭に向けた奨励金の交付や、中小・家族経営の環境整備等を推進し、搾乳ロボットの導入支援、酪農ヘルパーやTMRセンター等の外部支援組織の強化を促進しています。

一方、生乳の需要は、牛乳等については減少傾向で推移してきましたが、近年は、健康志向の高まりにより横ばいで推移しています。また、乳製品については、食生活の洋風化等に伴い、チーズ、生クリーム等の需要が拡大しており、特に、需要が伸びているチーズは国内生産が横ばいで推移していることから輸入量が増加傾向にあります。今後は、輸入で補っている乳製品の需要を国産に置き換えていくことが重要であり、国内需要に応じた生乳の生産を確保していくことが必要です。

(畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案を国会に提出)

畜舎等の建築基準については、これまでも国土交通省と連携して基準緩和に取り組んできましたが、近年の建築コストの高騰を背景に畜産農家等から基準緩和を求める声が高まりました。

このような情勢を踏まえ、令和元(2019)年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」を受けて、畜産農家、建築関係者等から成る「新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会」を設置し、畜舎等を建築基準法の適用から除外する特別法について検討を行い、令和2(2020)年5月に中間取りまとめが示されました。

その後、同年7月に閣議決定した「規制改革実施計画」を受け、令和3(2021)年3月に、畜舎等の建築等に関する計画の認定制度を創設し、その計画に基づき建築等が行われる畜舎等に関する建築基準法の特例を定めることを内容とする「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案」を国会に提出しました。

(豚肉、鶏肉、鶏卵の生産量は微増)

図表2-7-6 豚肉、鶏肉、鶏卵の生産量

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豚肉の生産量は、平成26(2014)年度には前年度の猛暑、豚流行性下痢(PED)発生の影響等により減少しましたが、平成27(2015)年度以降は、畜産クラスター事業の取組により、回復傾向で推移し、令和元(2019)年度は前年度に比べ0.6%増加の129万tとなりました(図表2-7-6)。

鶏肉は、消費者の健康志向等の高まりを受け、価格が堅調に推移していること等から生産量が増加傾向にあり、令和元(2019)年度は前年度に比べ2.1%増加の163万3千tとなりました。

鶏卵は、平成25(2013)年度以降の堅調な価格を背景に生産が拡大傾向で推移し、令和元(2019)年度の生産量は前年度に比べ0.4%増加の264万tとなりました。

(国産飼料作物、エコフィードの生産・利用の推進)

令和2(2020)年産の飼料作物の作付面積は、牧草等の減少により、前年に比べ5,900ha(0.6%)減少の95万6千haとなりました。また、令和元(2019)年産の飼料作物のTDN(*1)ベースの収穫量は、青刈りとうもろこしの収穫量の増加等により、前年に比べ1.0%増加の370万TDNtとなりました(図表2-7-7)。粗飼料については8割を自給していますが、これを全て国産にするため、農林水産省では、青刈りとうもろこしの生産や放牧等を推進しています。

図表2-7-7 飼料作物の作付面積と収穫量

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図表2-7-8 飼養頭数に占める放牧頭数の割合

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なお、放牧については、乳用牛、肉用牛の繁殖雌牛の飼養頭数に占める放牧頭数の割合は、乳用牛、肉用牛共にほぼ横ばい傾向にあり、令和元(2019)年の割合は乳用牛では20.4%、肉用牛では17.4%となりました(図表2-7-8)。

エコフィード(*2)(食品残さ等を利用した飼料)の製造数量は、近年ほぼ横ばいで推移しており、令和元(2019)年度は119万TDNtとなっています。これは濃厚飼料全体の約6%に当たります(図表2-7-9)。

畜産農家の経営費に占める飼料費の割合は、肥育牛で3割、養鶏で6割となる中で、濃厚飼料については主原料のとうもろこし等のほとんどを輸入に依存しており、国際相場や為替レート等の影響を受けるため、国産の飼料用米や子実用とうもろこし等の国内の飼料資源に置き換えるとともに、エコフィードの生産利用推進を図っていくことが、我が国の畜産業の生産基盤を強化する上で重要となっています。

このため、農林水産省では、飼料化事業者の持続的な原料確保の促進、地域の未利用資源を新たに飼料として活用するための取組等によりエコフィードの生産と利用を推進しています。

図表2-7-9 エコフィードの製造数量と濃厚飼料に占める割合

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*1 Total Digestible Nutrientsの略で、家畜が消化できる養分の総量

*2 用語の解説3(1)を参照

(2)新たな需要に応える園芸作物等の生産体制の強化
ア 野菜

(野菜の生産量は前年産より増加)

野菜の作付面積は、生産者の減少や高齢化の進行により近年緩やかに減少しており、令和元(2019)年産も前年産に比べ4,100 ha減少の38万4千haとなりました。生産量は、近年、天候の影響を受けて増減しているものの、おおむね横ばいで推移しています。令和元(2019)年産の生産量は、生育が平年並であったことから天候不順の影響で減少した前年産に比べ1.7%増加の1,166万tとなりました(図表2-7-10)。

図表2-7-10 野菜の作付面積と生産量

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(野菜需要の6割は加工・業務用向け)

近年、野菜需要の6割は加工・業務用向けが占めています。加工・業務用野菜は、かぼちゃ等実需者等から国産需要が高いものの、国産が出回らない時期がある品目や、たまねぎ等皮むき等の一次加工をしてから輸入される品目では、一定量の輸入が定着しています。

また、ほうれんそう、ブロッコリー等の冷凍野菜は、長期保存が可能で調理の利便性が高いこと等を背景に、国内消費量が増加傾向にあり、令和元(2019)年の国内流通量は116万1千tとなりました(図表2-7-11)。国内での生産は、平成26(2014)年の10万t以後緩やかに減少し、近年では7万t台で推移しています。一方、冷凍野菜の輸入量は、令和元(2019)年では108万9千tとなり、国内流通量の9割以上が輸入冷凍野菜となっています。

図表2-7-11 冷凍野菜の国内流通量

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(野菜の生産体制強化を推進)

令和元(2019)年12月に策定された農業生産基盤強化プログラムでは、加工・業務用野菜等の新たな需要に応える園芸作物の生産体制を一層強化することとされています。

このため、農林水産省では、複数産地と連携して実需者への安定供給を果たす農業法人、農協関連法人等の拠点事業者の育成、水田を活用した新たな野菜産地の形成、端境期における野菜の生産拡大や労働生産性の向上に必要となる機械化一貫体系の導入等の施策を推進しています。

イ 果実

(果樹の生産量は前年産より減少)

果樹の栽培面積は、生産者の減少や高齢化の進行により近年緩やかに減少しており、令和元(2019)年産も前年産に比べ3,500ha減少の20万9千haとなりました。また、令和元(2019)年産の生産量は、天候不順等の影響により前年産に比べ、4.9%減少の270万1千tとなりました(図表2-7-12)。特にりんごは、夏期の高温少雨等の影響により着色不良や成熟の遅延が生じた産地があったことに加え、台風による落果被害等を受けた産地もあったこと等から、前年産に比べ7.1%減少しました。その他の果樹では、うめは主産地である和歌山県等において、平成30(2018)年の台風第21号の影響により着果量が少なかったことに加え、少雨の影響により果実肥大が進まなかったこと等から、作柄が良好であった前年産に比べ21.6%減少しました。

図表2-7-12 主要果樹の栽培面積と生産量

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(生産抑制的な施策から生産基盤を強化する施策へ転換)

我が国の果実は、消費者の簡便化志向や健康志向等を踏まえた優良品目・品種への転換等により、種なしで皮ごと食べられるシャインマスカット等の高品質な果実の生産が行われていることで、国内外で高く評価されており、その国内産出額及び輸出額は増加傾向にあります。

その一方、生産者の減少や高齢化の進行等により栽培面積の減少が続くなど生産基盤が脆弱(ぜいじゃく)化する中、他の作物と比較して10a当たりの労働時間が長く、労働時間のピークが収穫時期等の短期間に集中する構造もあいまって、園地の集積・集約化、大規模化が進んでいない状況にあります。さらに、近年頻発している大規模自然災害や気候変動による栽培環境の変化、鳥獣・病害虫等の様々なリスクを抱えています。

こうした状況を踏まえ、農林水産省では、令和2(2020)年4月に新たな「果樹農業振興基本方針」を策定し、供給過剰基調に対応した生産抑制的な施策から、低下した供給力を回復し、生産基盤を強化するための施策に転換することとし、省力樹形の導入等による労働生産性の抜本的な向上、新技術・新品種の開発・普及、輸出拡大に対応できる生産量の増大や環境整備等に取り組んでいます。また、食の外部化(*1)・簡便化に伴う消費者ニーズの多様化・高度化に対応した、より付加価値の高い果実及び果実加工品の供給拡大や、流通段階での人手不足に対応した、出荷規格の見直し等の省力・効率的な果実流通への転換等を推進しています。

*1 用語の解説3(1)を参照

ウ 花き

(令和2(2020)年4月に新たな基本方針を策定)

平成30(2018)年産の花きは、生産者の減少等により前年に比べ作付面積が1.9%(521ha)減少の2万6,307haとなり、産出額は3.3%(120億円)減少の3,567億円となりました(図表2-7-13)。

我が国の花き産業は、花きの販売農家(*1)数が減少傾向にありますが、45歳未満の農業者の割合は15%と稲作等の他品目より高く、若い世代が活躍しています。また、産出額は農業産出額の4%を占め、農地や農業の担い手の確保を図る上で重要な地位を占めています。

国内の生産技術は高く、令和元(2019)年に開催された国際園芸博覧会(中国・北京市(ペキンし))において大賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ており、近年、アジアや欧州、米国向けを中心に輸出額が増加傾向にあります。令和元(2019)年の輸出額は104億円で、10年前と比べ2倍に増加しており、輸出の拡大に向けた取組が進展しています。一方、近年の国内市場における消費の伸び悩み、大量生産された安価な切り花の輸入の増加、燃油価格の高騰等の課題があります。

このような中、農林水産省では、令和2(2020)年4月に策定した新たな「花き産業及び花きの文化の振興に関する基本方針」において、令和12(2030)年までに産出額を4,500億円、輸出額を200億円にすることを目標とし、ロボット、AI(*2)、IoT(*3)を活用したスマート農業技術の導入、流通販路の合理化、国際園芸博覧会への政府出展等を活用した海外需要の創出等を推進していくこととしています。

図表2-7-13 花きの作付面積と産出額

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*1 用語の解説2(3)を参照

*2、3 用語の解説3(2)を参照

エ 茶、甘味資源作物等の地域特産物
(ア)茶

(荒茶の生産量は前年産より減少)

令和2(2020)年産の茶は、生産者の高齢化に伴う労働力不足による廃園等により、栽培面積は前年産に比べて1,500ha減少の3万9千haとなりました。また、生産量は新型コロナウイルス感染症の影響によるイベント等の中止による需要の減少等から、前年産に比べて14.6%減少し、7万tとなりました(図表2-7-14)。

図表2-7-14 茶の栽培面積と荒茶生産量

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(茶の輸出額は10年前に比べ4倍に増加)

茶の輸出は、海外の日本食ブームや健康志向の高まりにより近年増加傾向にあります。令和2(2020)年については、輸出量は前年に比べ3.2%増の5,274t、輸出額は同11.0%増の162億円となっており、10年前の平成22(2010)年と比べると輸出額は約4倍に増加しています(図表2-7-15)。

また、有機栽培による茶は海外でのニーズも高く、輸出先国の残留農薬基準に適合することも可能なことから、輸出に適していると評価され、EUや米国等との有機同等性(*1)の仕組みを利用した有機栽培茶の輸出も増加傾向にあります(図表2-7-16)。

今後、更に茶の輸出を拡大していくためには、輸出先国の残留農薬基準に適合する必要があります。このため、輸出先国において我が国で使用されている主要な農薬の残留農薬基準を設定するため、必要なデータの収集や相手国への申請を進めるとともに、国内においては、病害虫防除マニュアルの作成や各地での防除体系の確立を推進しています。

図表2-7-15 緑茶の輸出量と輸出額

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図表2-7-16 有機同等性の仕組みを利用した有機栽培茶の輸出量

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*1 他国・地域の有機認証を自国・地域の有機認証と同等のものとして取り扱うこと

(イ)葉たばこ

(収穫面積、収穫量共に減少)

図表2-7-17 葉たばこの収穫面積と収穫量

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葉たばこの収穫面積と収穫量は、生産者の高齢化の進行等から減少傾向にあり、令和元(2019)年も前年に比べ収穫面積は8.2%減少の6,500ha、収穫量は1.2%減少の1万7千tとなりました(図表2-7-17)。

葉たばこは、東北地方や九州地方で地域経済を支える重要な作物の一つですが、健康志向の高まりによる喫煙率の低下や加熱式たばこの需要の拡大等に伴い、紙巻きたばこの販売数量は減少傾向にあります。

農林水産省では、廃作に対する他品目への転換の支援等の措置を行ってきました。日本たばこ産業株式会社においても生産性向上に向けた支援を行っています。

(ウ)甘味資源作物

(てんさいの収穫量は微減、さとうきびの収穫量は増加)

てんさいの令和2(2020)年産の作付面積は、前年産並の5万7千haとなりました(図表2-7-18)。一方、収穫量は、特に作柄の良かった前年産に比べ1.9%減少の391万2千tになりました。糖度は前年産に比べ0.4ポイント低下し16.4度となりました。

さとうきびは、平成30(2018)年の台風の被害により株出し予定であった圃場(ほじょう)等を夏植えの新植に変更したこと等から、令和元(2019)年産の収穫面積は前年産に比べ2.2%減少し2万2千haとなりました(図表2-7-19)。おおむね順調に生育したものの、収穫面積が減少したことから、収穫量は前年産に比べ1.8%減少し117万4千tとなりました。糖度は前年産に比べ0.8ポイント上昇し14.4度となりました。

また、令和2(2020)年産は、春作業が順調に進み、春植え、株出面積が増加したことから収穫面積は前年産に比べ2.1%増加の2万3千haを見込んでいます(図表2-7-19)。一部の島で台風の被害があったものの、全体としては順調に生育していることから収穫量は前年産に比べ11.7%増加の131万1千tを見込んでいます。

図表2-7-18 てんさいの作付面積、収穫量、糖度

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図表2-7-19 さとうきびの収穫面積、収穫量、糖度

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(てんさいは風害軽減対策、さとうきびはスマート農業等を推進)

てんさいは、北海道の畑作地帯において輪作体系に組み込まれる重要な作物であり、さとうきびは、台風等の自然災害に強く、沖縄県や鹿児島県南西諸島(なんせいしょとう)における基幹作物です。

てんさいは、労働時間縮減に向け、直播(ちょくはん)栽培や作業の共同化の取組が進展していますが、直播栽培は春先の風害に弱い傾向があることから、農林水産省では、盛土による風害軽減対策の普及を進めています。

さとうきびは、高齢化の進行や人手不足から、機械化や省力的な株出(かぶだし)栽培(*1)の拡大等が進んでいます。農林水産省では、機械収穫や株出栽培に適した新品種の「はるのおうぎ」の栽培実証や更なる省力化に向けたスマート農業の導入を進めています。

*1 さとうきび収穫後に萌芽する茎を肥培管理し、1年後のさとうきび収穫時期に再度収穫する栽培方法

(砂糖の需要拡大に向け「ありが糖運動」を展開)

砂糖は脳とからだのエネルギー源となる重要な品目です。農林水産省では、砂糖の需要拡大を応援する取組として、平成30(2018)年から、砂糖に関する総合的な情報サイトを開設し、砂糖の正しい情報を提供し、砂糖関連業界による取組と連携しながら、砂糖の需要、消費の拡大を図る「ありが糖運動」を展開してきました。

令和2(2020)年4月に「ありが糖運動」のロゴマークを決定するとともに、「ありが糖運動」SNSを開設しました。これらの取組を通じ、今後も砂糖の需要、消費の拡大を図っていくこととしています。

(エ)いも類

(ばれいしょ・かんしょ共に収穫量は減少)

図表2-7-20 ばれいしょの作付面積と収穫量

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令和元(2019)年産のばれいしょの作付面積は、主に北海道において小麦や小豆に転換した面積が多かったことから前年産に比べ2.7%減少の7万4千haとなりました。収穫量は天候に恵まれ作柄が良かったことから、前年産に比べ6.2%増加し、239万9千tとなりました(図表2-7-20)。

令和2(2020)年産春植えばれいしょは、主に北海道において小豆やいんげんへの転換により、作付面積は7万haと前年に比べ3.3%減少したことや、6月後半の低温、日照不足等の影響により、着いも数が少なく単収が前年に比べ4.9%減少したことから、収穫量は前年産に比べ8.1%減少の216万5千tとなりました(*1)。国産ばれいしょの生産量が減少傾向で推移する中で、ポテトチップやサラダ用等の加工用ばれいしょについては、メーカーからの国産原料の供給要望が強く、増産が課題となっています。しかし、植付けや収穫に係る労働時間が長いこと等から労働力・人員の確保が難しくなってきており、より省力的・効率的な作業体系を導入することが重要となってきています。そのため、省力機械化体系導入の取組や収穫時の機上選別を倉庫前集中選別に移行する取組を推進しています。

かんしょは、南九州の基幹作物であり、かんしょでん粉工場と共に地域経済を支える重要な存在であるため、安定的に生産することが重要です。平成30(2018)年秋に宮崎県及び鹿児島県において、かんしょのつるが枯れ、いもが腐る「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」が確認され、令和元(2019)年産、令和2(2020)年産においても、これらの県を中心に被害が拡大しました。このため、苗の消毒、排水対策、土壌消毒等の病害対策の実施を促すとともに、単収の向上に向けて新たな多収性品種「こないしん」の導入や生分解性マルチの導入等を推進しています。

サツマイモ基腐病により収穫皆無の圃場

サツマイモ基腐病により
収穫皆無の圃場

資料:農研究機構

腐敗した塊根

腐敗した塊根

資料:農研機構

令和2(2020)年産のかんしょは、高齢化の進行による労働力不足に伴う作付中止や他作物への転換等があったことから、作付面積が前年に比べ3.5%減少したこと、サツマイモ基腐病の拡大等により単収が4.6%減少したことから、収穫量は前年産に比べ8.2%減少の68万8千tとなりました(図表2-7-21)。

かんしょの海外輸出については、甘みが強く粘質性がある特性や、焼き芋による食べ方が注目され、香港、シンガポール、タイ等のアジア諸国向けを中心に好調で、令和2(2020)年の輸出量と輸出額はそれぞれ5,268t(対前年21.2%増)、20.6億円(対前年21.7%増)となりました(図表2-7-22)。

図表2-7-21 かんしょの作付面積と収穫量

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図表2-7-22 かんしょの輸出量と輸出額

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*1 農林水産省「令和2年産春植えばれいしょの作付面積、収穫量及び出荷量」(令和3(2021)年2月公表(概数値))

(3)米政策改革の着実な推進

(需要に応じた生産・販売を推進)

図表2-7-23 主食用米の需要量

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米(*1)の1人当たりの年間消費量は、昭和37(1962)年度の118.3kgをピークとして、令和元(2019)年度は前年度に比べて0.5kg減少の53.0kg(*2)となるなど、減少傾向が続いています。

このような状況に対しては、経営感覚あふれる農業者により、消費者ニーズにきめ細かく対応した米生産が行われるとともに、食料自給率(*3)・食料自給力(*4)の向上等を図る観点から、水田をフル活用し、需要のある麦、大豆、米粉用米、飼料用米等の戦略作物や野菜、果樹等の高収益作物等への転換が進められることが重要です。このため、平成30(2018)年産から、行政による生産数量目標の配分を廃止し、産地・生産者が中心となって需要に応じた生産・販売を行う米政策へと見直しを行いました。

農林水産省では、この米政策改革の着実な推進に向け、産地・生産者と実需者が結び付いた事前契約や複数年契約による安定取引の推進、水田活用の直接支払交付金による支援や、米の都道府県別の販売進捗及び在庫・価格等の情報提供を実施しています。

今後も、人口減少等により、主食用米の需要は毎年10万t程度減少すると見込まれています(図表2-7-23)。しかしながら、令和2(2020)年産の主食用米の作付面積は、前年産に比べて、1万3千ha減少の136万6千haと需要減少に見合った作付面積の削減が十分に進んでおらず、主食用米の生産量については、全国で作況指数(*5)が99となったものの、前年産に比べて0.5%減少の723万tにとどまりました(図表2-7-24)。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響等により、中食(*6)・外食向けを中心とした需要減少も加わったことから、令和3(2021)年6月末の民間在庫は207~212万tと見込まれるなど、在庫水準が高い状況となっています。

図表2-7-24 主食用米の作付面積と生産量

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図表2-7-25 米の相対取引価格

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これに伴い、米の需給と価格の安定を図るためには、令和3(2021)年産の主食用米について、全国で過去最大規模の6.7万ha(平年作ベースの収穫量に換算すると36万t)の作付転換が必要となっています。

令和2(2020)年産の米の価格動向を見ると、令和3(2021)年2月までの相対取引価格は、年産平均で60kg当たり1万5千円前後と前年産と比べ5%程度の低下にとどまっていますが、令和3(2021)年産の過去最大規模の作付転換が実現できなければ、需給と価格の安定が崩れかねない、まさに正念場を迎えています(図表2-7-25)。

このため、農林水産省では、新型コロナウイルス感染症の影響等による需要減少に対する販売促進対策や産地における調整保管への支援の拡充等の措置を講じつつ、令和2(2020)年度第3次補正予算と令和3(2021)年度当初予算で3,400億円に及ぶ作付転換の関連予算を計上し、令和3(2021)年産の水田フル活用に必要な施策を盛り込みました。

令和3(2021)年産の過去最大規模の作付転換の実施に向けて、産地や農家・生産法人、都道府県・市町村、集出荷業者、流通・販売事業者等全ての関係者が一丸となった需要に応じた生産・販売を推進します。

*1 主食用米のほか、菓子用・米粉用の米

*2 農林水産省「食料需給表」(令和元(2019)年度は概算値)

*3~6 用語の解説3(1)を参照

(戦略作物や高収益作物への更なる転換が必要)

水田において、需要のある麦、大豆等の戦略作物や、野菜や果樹等の高収益作物等への転換を積極的に推進していくことが重要になります。野菜作や果樹作は、必要な労働時間は水田作よりも長くなるものの、面積当たりの農業所得(*1)は高くなっており、作付けにより高い収益が期待されます(図表2-7-26)。

特に、高収益作物については、排水対策等の基盤整備や機械化一貫体系等の新しい技術の導入と併せて取り組むことで、作業の効率化が図られるとともに、更なる農業所得の増加により、水田農業経営の安定化が期待できます。

高収益作物への転換については、令和元(2019)年に策定された農業生産基盤強化プログラムにおいても主要な施策の一つに位置付けられており、これに基づき、水田で高収益作物を導入する産地に対して、農業農村整備事業による水田の汎用化(*2)・畑地化のための基盤整備、栽培技術や機械・施設の導入、販路確保等の取組を計画的かつ一体的に支援しています。

図表2-7-26 単位面積当たり農業所得、自営農業労働時間(作物別の比較)

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*1 用語の解説2(4)を参照

*2 用語の解説3(1)を参照

(コメ・コメ加工品の輸出は近年大きく増加)

国内の主食用米の需要量が、毎年減少していく一方で、海外における食品市場は年々拡大しており、日本食レストラン数も増加傾向にあります。このような中で新たな市場の開拓を通じ、国内だけでなく海外に積極的に進出し、コメ・コメ加工品の輸出拡大を図っていくことが重要です。

このため、農林水産省では、目標を立てて戦略的に輸出に取り組む輸出事業者と輸出向けの米の安定的な生産に取り組む産地の結び付きを強化・拡大するとともに、両者が連携したプロモーションの実施等に対する支援を通じて海外市場の開拓を図ってきました。

その結果、コメ・コメ加工品の輸出額は平成27(2015)年の201億円から令和2(2020)年には338億円に増加しています。

図表2-7-27 商業用の米の輸出量と輸出額

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特に商業用の米の輸出量は平成27(2015)年の7,600tから、令和2(2020)年には19,700tに過去5年間で2.6倍に増加しました(図表2-7-27)。

令和2(2020)年12月に決定した「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」においては、コメ・パックご飯・米粉及び米粉製品を、今後輸出拡大の余地が大きい重点品目(全27品目)の一つに選定しており、令和7(2025)年の輸出額目標を125億円とし、輸出ターゲット国・地域を香港、アメリカ、中国、シンガポールと設定するとともに、各国・地域への輸出拡大を図るための取組方策や産地の育成方針について定めています。

今後、コメ・パックご飯・米粉及び米粉製品の輸出拡大を図っていくために、国際競争力の確保と農家手取収入の両立を図り、大ロットで輸出向けの米の生産・供給に取り組む産地の育成等に加えて、各国・地域によって異なるニーズを踏まえた海外市場開拓に取り組む必要があります。

このほか、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略においては、コメ・コメ加工品関連のうち日本酒も輸出拡大の余地が大きい重点品目に選定しており、令和7(2025)年の輸出額目標を600億円とし、輸出ターゲット国・地域をアメリカ、中国、香港等と設定しています。

(米の消費拡大に向けWebサイト「やっぱりごはんでしょ!」で情報発信)

農林水産省では、中食・外食業界による主体的な米の消費拡大の取組を応援すべく、平成30(2018)年10月に開設したWebサイト「やっぱりごはんでしょ!」において、消費拡大につながる企業等の各種企画・イベントの情報、米と健康に関する情報、地域ならではの「ごはん食」が食べられる店舗の情報、ごはん・米粉を使ったレシピ等、消費者にとって有益な情報を発信しています。また、平成31(2019)年2月からSNSを運用し、米に関する情報をタイムリーに発信しています。

(米粉の需要量は3年連続で増加)

図表2-7-28 米粉用米の生産量と需要量

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米粉用米の需要量は、平成24(2012)年度以降、2万t程度で推移していましたが、令和元(2019)年度は前年度に比べて16%増の3万6千tとなり、3年連続で増加しました(図表2-7-28)。

日本米粉協会(にほんこめこきょうかい)が平成30(2018)年から米粉の特徴を活かし、グルテンを含まない特性を発信する「ノングルテン米粉第三者認証制度」や「米粉の用途別基準」の運用を開始しました。また、令和元(2019)年9月からノングルテン米粉の加工品に「ノングルテン米粉使用マーク」を表示する仕組みを開始したことや、ピューレ等の新たな米粉製品の開発・普及が進んできたことが米粉用米の需要の増加につながっていると考えられます。さらに、令和2(2020)年10月に、更なる米粉の需要・輸出拡大に向けて、ノングルテン米粉の製造工程管理JASを制定し、認証を取得した事業者が会社のWebサイト等に特色JASマークを表示できる仕組みを構築しました。今後も、日本産米粉の更なる需要拡大が期待されます。

特色JASマーク

特色JASマーク

資料:農林水産省

ノングルテン米粉使用マーク

ノングルテン米粉使用マーク

資料:日本米粉協会

ノングルテン米粉認証第1号の製品

ノングルテン米粉認証第1号の製品

資料:日本米粉協会

(飼料用米の安定的な取引の拡大が重要)

図表2-7-29 飼料用米の作付面積と生産量

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令和元(2019)年産の飼料用米の作付面積は前年産に比べ7千ha減少の7.3万ha、生産量は前年産に比べ8.9%減少の39万tとなりました(図表2-7-29)。

国産飼料に立脚した畜産業の確立に向け、実需者からは飼料用米の安定的な供給が求められています。このため、農林水産省では、令和2(2020)年度の水田活用の直接支払交付金において、実需者との複数年契約に対する加算を措置し、安定的な取引の拡大を推進しています。また、飼料用米生産農家の生産技術の向上を目指し、多収を実現している先進的で他の模範となる経営体を表彰する「飼料用米多収日本一コンテスト」を実施し、令和2(2020)年度は12経営体を表彰しました。さらに、低コスト栽培技術の普及のため、「飼料用米生産コスト低減マニュアル」を令和3(2021)年1月に改訂し、飼料用米の安定的な供給に取り組んでいます。

(中食・外食需要への対応が重要)

図表2-7-30 主食用米の消費内訳

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主食用米は、中食・外食向けの業務用需要が全体の約3割を占めています(図表2-7-30)。しかし、産地においては高価格帯の一般家庭向けの米を中心に生産する意向が強い反面、中食・外食事業者からは値頃感のある米を求める声も多くあり、ミスマッチが生じています。

このような中、農林水産省は、中食・外食向けのニーズに対応した安定取引を推進するため、産地の生産者と中食・外食事業者等とのマッチングの取組を支援しています。平成29(2017)年から令和元(2019)年までに開催した「米マッチングフェア」では、実需者延べ875社の参加があり、産地と中食・外食事業者の実需者等が商談を行いました。なお、令和2(2020)年9月及び令和3(2021)年2月に開催した「米マッチングフェア2020」は、オンラインにより開催されました。

(担い手の生産コストの削減を推進)

稲作経営の農業所得を向上させるためには、生産コストの削減も重要です。このため、農林水産省は、担い手の米の生産コストについて、令和5(2023)年までに平成23(2011)年産の全国平均(16,001円/60kg)から4割削減する目標を掲げ(*1)、農地の集積・集約化(*2)による分散錯圃(さくほ)の解消や作付けの団地化、多収品種の導入やスマート農業技術等による省力栽培技術の普及、資材費の低減等を推進しています。このような中で、令和元(2019)年産については、認定農業者(*3)(15.0ha以上)では、平成23(2011)年産の全国平均と比べて32.2%減少の10,851円/60kg(*4)、稲作主体の組織法人経営では26.7%減少の11,721円/60kg(*5)となっています。

*1 「日本再興戦略」(平成25(2013)年6月閣議決定)

*2、3 用語の解説3(1)を参照

*4 農林水産省「令和元年農産物生産費(個別経営)」

*5 農林水産省「令和元年農産物生産費(組織法人経営)」

(事例)大規模水田作の大区画圃場での超省力作業体系の技術検証(富山県)

富山県射水市
自動運転トラクター

自動運転トラクター

資料:農事組合法人布目沢営農

収量コンバイン

収量コンバイン

資料:農事組合法人布目沢営農

富山県射水市(いみずし)の農事組合法人布目沢営農(ぬのめさわえいのう)では、令和元(2019)年度からスマート農業実証プロジェクトを開始し、大規模水田作の大区画圃場(ほじょう)での超省力作業体系の技術実証に取り組んでいます。

当該法人では、生産者の高齢化が進展する一方、世代交代が進まず、新たな労働力の確保と高齢化に対応した省力化、軽労化が課題となっていました。また、近年、請負農地が増える中、農地の地力差が大きく、地力に応じた管理が必要となり、生産者の負担が多くなっていました。

技術実証では、自動運転トラクターにより10a当たりの水稲耕うん・代掻きの作業時間を36%短縮させることができました。さらに、自動水管理システムにより乾田直播栽培の水管理作業時間を80%削減するとともに、収量コンバインと可変施肥田植機により圃場内の収量の差が改善され、収量は前年より約60kg/10a増加し、食味も向上しました。

今後は、スマート農業機械の活用により、米の品質向上や、省力化・生産コストの削減の取組を一層進め、収益の向上、人材育成につなげることを目標としています。

(4)麦・大豆の需要に応じた生産の更なる拡大

(小麦の収穫量は平均を上回る作柄)

令和2(2020)年産の小麦については、作付面積は前年産とほぼ同水準の21万2,600haとなりました。収穫量は、特に作柄の良かった前年産には及ばないものの、天候に恵まれ、生育が順調で登熟も良好であったことから、平均を上回る作柄の94万9,300tとなりました(図表2-7-31)。なお、大麦・はだか麦については、作付面積は6万3,630ha、収穫量は22万1,700tとなりました。

図表2-7-31 小麦の作付面積、収穫量、単収

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(加工適性に優れる新品種の導入により国産麦の普及が進展)

図表2-7-32 小麦作付面積に占めるパン・中華麺用新品種小麦の作付割合の推移

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国産小麦については、近年、耐病性や加工適性に優れた新品種の導入・普及が進み、地域によっては単収の向上も見られるようになってきました。

特に、平成10(1998)年以降、秋まきのパン・中華麺用多収新品種の開発・導入が進み、小麦作付面積に占めるパン・中華麺用新品種の作付割合は上昇しています(図表2-7-32)。消費者の国産志向の高まりを受け、国産小麦のみを使用した商品が増えてきており、今後も、こうした新品種を活用したパン・中華麺用途の需要拡大が期待されます。

一方で、二条大麦、はだか麦を中心とした一部の品種については、令和元(2019)年より2年連続で豊作となったため、現在、供給が需要を上回るミスマッチが生じています。外国産麦を使用している企業からは、国産麦については作柄の変動が大きく、安定供給の面で不安があるなどの指摘を受けており、今後の需要拡大に向けて、国産麦を安定供給できる体制を整備していくことが重要です。

(大豆の収穫量は前年産と比べ1%増加)

令和2(2020)年産の大豆の作付面積は、前年産に比べ1%減少し、14万1,700haとなりました。一方、収穫量は、主に北海道において、天候に恵まれ、順調な生育となったことから、前年産に比べ1%増加し、21万8,900tとなりました(図表2-7-33)。

図表2-7-33 大豆の作付面積、収穫量、単収

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(大豆の需要量は増加傾向)

近年、健康志向の高まり等により、納豆、豆乳の需要が増加傾向であること、大豆を原料とした代替肉を始め、新たな加工品が生産されていること等から、食用大豆の需要は堅調となっており、令和元(2019)年度の需要量は前年度と比べ3%増加の367万tとなりました(図表2-7-34)。また、国産大豆については、実需者から味の良さ等の品質面が評価され、ほぼ全量が豆腐、煮豆、納豆等の食用に向けられています。

図表2-7-34 大豆の需要動向

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(更なる需要の拡大に向けて安定供給の実現が重要)

麦・大豆については、短期的な変動はあるものの堅調な国産需要がある一方で、作柄変動が大きく、更なる需要拡大に向けては、量・品質・価格の安定が実需者から求められています。

しかしながら、麦・大豆産地は、湿害、連作障害、規模拡大による労働負担の増加、気象条件の変化等様々な課題を抱えています。

こうした課題の解決に向けて、農林水産省内に「麦・大豆増産プロジェクト」を設置して検討を行い、産地ぐるみで行う麦・大豆の需要に応じた生産拡大と安定供給の実現に取り組んでいます。具体的には、麦・大豆の作付の団地化、排水対策や土づくり等の営農技術導入による、産地の生産性の向上と安定生産の実現を推進するとともに、毎年の豊凶変動・需給変動に対応するための産地等の保管体制の強化・促進を支援しています。

(5)農業生産工程管理の推進と効果的な農作業安全対策の展開
ア 農業生産工程管理(GAP)の推進

(GAP認証を取得する経営体は増加)

GAP(*1)は、食品安全、環境保全、労働安全等の観点から、農業者が自らの生産工程をチェックし、改善する取組です。GAPを実践することで、持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化、消費者や実需者の信頼の確保等に役立つことが期待されています。

図表2-7-35 GAP認証取得経営体数(農産物)

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これらGAPの取組が正しく実施されていることを第三者機関が審査し、証明する仕組みをGAP認証といい、我が国では国際水準GAPとしてGLOBALG.A.P.(*2)、ASIAGAP(*3)、JGAP(*4)の3種類が普及しています。また、GAP認証が東京2020大会(*5)の食材調達基準とされたことを受けて、農林水産省では、指導者の育成等を通じ、GAP認証の取得拡大を進めてきました。

令和元(2019)年度末時点で、農産物についてこれらのGAP認証を取得している経営体数は、前年度に比べ1,830経営体増加の7,171経営体となっています(図表2-7-35)。また、畜産物については、平成29(2017)年8月にJGAP家畜・畜産物の認証が開始され、令和3(2021)年3月時点で、認証取得経営体数は217経営体となっています。

今後は、令和12(2030)年度までに、ほぼ全ての産地で国際水準のGAPが実施されることを目標に、取組を拡大していくこととしています。

*1~4 用語の解説3(2)を参照

*5 令和2(2020)年3月に、大会開催を令和3 (2021)年に延期することが決定

(GAP認証導入の効果は食品安全、労働安全に関して8割以上が実感)

農業者等を対象とした調査(*1)によると、GAP認証導入による分野別効果については、特に食品安全及び労働安全に関して多くの農業者(いずれも80%以上)が、実感していることが分かります。また、その他の分野においても、過半数がGAPに取り組むことで「効果があった」と回答しています(図表2-7-36)。なお、全体の満足度に関しては、53%の者が「満足」と回答する一方、不満を持っている者が19%となっています。

図表2-7-36 分野別のGAPの取組効果

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また、農産物の生産から消費に至るフードチェーン関係者を対象としたGAPに対する意識・意向に関する調査(*2)によると、GAPの認知度について、農業者の45.5%が「知っていた」又は「聞いたことがある」と回答しています(図表2-7-37)。また、消費者については、72.1%が「知らなかった」と回答する一方で、GAP認証取得農産物について、85.7%が「割高になっても購入したい」又は「同程度の価格であれば購入したい」と回答しています。このため、農林水産省では、消費者のGAP認知度の向上を図るため、消費者向けのGAP情報発信サイト「GAP-info」により、GAPを分かりやすく伝える動画の配信や各地のGAPに関する積極的な取組の紹介のほか、GAPの価値を共有し、GAP認証農産物を取り扱う意向を有している事業者である「GAPパートナー」の紹介を行っています。

図表2-7-37 農業者、消費者のGAP認知度の調査結果

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*1 株式会社政策基礎研究所「令和元年度GAP導入影響分析のための調査委託事業 報告書・概要」(令和2(2020)年3月公表)

*2 農林水産省「令和元年度 食料・農林水産業・農山漁村に関する意向調査 フードチェーン関係者のGAPに関する意識・意向調査」(令和2(2020)年3月公表)

(事例)GAPで農場経営の効率化を推進(新潟県)

新潟県上越市
穂海農耕の若手従業員

穂海農耕の若手従業員

資料:有限会社穂海農耕

整理整頓は基本中の基本

整理整頓は基本中の基本

資料:有限会社穂海農耕

新潟県上越市(じょうえつし)にある有限会社穂海農耕(ほうみのうこう)は、平成17(2005)年12月に設立された農業法人で、役員2人、従業員20人により、170haの水田で水稲を栽培しています。

社内ルールの一つとしてGAPを活用し、作業道具や作業記録の整理整頓等を実践し、作業の安全確保や農場経営の効率化に取り組んでいます。代表取締役の丸田洋(まるたひろし)さんは平成18(2006)年3月にGAPの指導員資格を取得し、同年11月には法人としてJGAPの認証を取得しました。さらに、平成19(2007)年9月に穀物では初となるJGAP団体認証を取得し、平成29(2017)年9月にはASIAGAP Ver.2の認証を取得しました。

同社では、GAPの取得を通じ、栽培計画の策定や、作業の記録、実績評価をICTツールの活用により効率的に行っています。具体的には、作期分散により、田植機等機械を効率的に利用できたほか、農薬費を大口取引や必要量の発注により削減するとともに、栽培計画に基づく効率的な田植え作業による予備苗の削減等により種苗費や人件費を削減することができました。

これらの経営改善の結果、GAP導入時に比べ米の生産コストを削減することができました。

イ 農作業安全対策の展開

(農作業死亡事故防止の新たな目標を設定)

農作業中の事故による死亡者数は、近年減少傾向にあるものの、令和元(2019)年は前年に比べ7人増えて281人となりました(図表2-7-38)。年齢別に見ると、65歳以上の割合は88.3%、80歳以上の割合は42.0%と、高齢農業者の割合が高い状況となっています。また、同年の農業就業人口10万人当たりの死亡者数は16.7人と上昇傾向となっており、全産業の1.3人、建設業の5.4人との差は拡大しています。

図表2-7-38 農作業中の年齢階層別死亡者数

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農作業死亡事故を要因別に見ると、農業機械作業に係る事故が全体の約7割を占めています(図表2-7-39)。農業機械作業に係る事故のうち、乗用型トラクターに係るものが最多となっており、機械の転落・転倒事故が57人となっています。

このような状況を踏まえ、農林水産省は、毎年春と秋の農繁期に全国で展開している農作業安全確認運動の新たな目標として、農業機械作業に係る死亡事故を令和4(2022)年までに平成29(2017)年の水準(211人)から半減することを掲げて取り組んでいます。

図表2-7-39 農作業の死亡事故発生状況

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(農林水産業・食品産業の分野を横断した作業安全対策の推進)

農林水産業・食品産業の現場では、依然として毎年多くの死傷事故が発生しており、若者が将来を託せる、より安全な職場を作っていくことが急務となっています。このため、農林水産省では、農林水産業・食品産業の分野を横断した作業安全対策を推進しています。

令和3(2021)年2月には、「農林水産業・食品産業の現場の新たな作業安全対策に関する有識者会議」での議論を踏まえ、「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範」を策定しました。今後は、この規範を広く周知し、現場の従事者の方々に作業安全のための取組をチェックしてもらい、安全意識の向上を図っていくこととしています。

(農作業事故の防止に向けた取組を強化)

農業分野においては、安全フレーム等が未装備のトラクターへの追加装備やシートベルト・ヘルメットの装着、作業機付きトラクターの公道走行に必要となる灯火器類の設置、農業機械の日常的・定期的な点検整備等の促進に、行政や団体等の関係機関、農業機械メーカー各社の協力も得て取り組んでいます。

また、農作業事故の未然防止にも寄与するGAPの普及の推進に取り組んでいるほか、令和2(2020)年からは、都道府県、農機メーカーからの農作業事故情報の報告を受け、毎月、MAFFアプリ等の媒体を通じ、農業者に直接、事故発生情報とともに注意喚起を発信するなど、情報の把握・発信の強化に取り組んでいます。

地域においては、地方公共団体、農業者団体等の関係者が、地域の実態に即して農作業安全対策を推進することが重要です。農林水産省では、都道府県段階や地域段階における「農作業安全推進協議会」等の設置を働きかけています。

農研機構は、令和2(2020)年5月に、農業者と対話しながら、より安全な農作業につなげる研修を実施するための「対話型農作業安全研修ツール」を開発しました。このようなツールも有効に活用して現場での安全指導を実施する体制を構築することが重要です。

こうした取組を通じて農業者・農業団体等の現場の取組を進めていく一方で、人為的なミスがあっても重大事故につながらないようにするための農業機械の安全対策の強化等、幅広い観点から対策を講じていくことが必要であることから、労働安全の専門家のほか、農業者や農業機械業界の関係者等で構成した「農作業安全検討会」を令和3(2021)年2月から新たに開催しました。今後、同検討会において、農作業安全対策として取組を強化すべき事項について検討を深めていくこととしています。

また、労災保険は、労働者の負傷、疾病、障害、死亡に対して療養・休業補償給付や遺族補償給付等の保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも、トラクター等の農業機械を使用するなど一定の要件を満たす農業者については、任意加入を認める特別加入制度が設けられています。

(6)良質かつ低廉な農業資材の供給

(肥料、飼料の価格指数は100以下で推移)

近年の農業生産資材価格指数は、全体的には上昇基調で推移していますが、そのうち肥料、飼料については、基準年である平成27(2015)年の価格を下回る水準で推移しており、令和元(2019)年は、肥料が98.0、飼料が97.3となっています(図表2-7-40)。また、基準年以降は、農機具(100.8)、農薬(100.5)もおおむね横ばいで推移しています。

なお、農業資材は、原材料やその原料を輸入に頼っていることから、鉱石や穀物の国際相場や為替相場の変動等の国際情勢の影響を受け、価格が変動するという特徴があります。

図表2-7-40 農業生産資材価格指数(平成27(2015)年を100とする指数)

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農業経営費に占める農業資材費の割合は、例えば水田作経営、畑作経営で6割、肥育牛経営で8割と一定の割合を占めていることから(図表2-7-41)、農業所得の向上に向けて、農業資材の価格の引下げを進めていく必要があります。

図表2-7-41 農業経営費に占める農業生産資材の割合

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(コラム)肥料原料は大半を輸入に依存

我が国で使用されている化学肥料の大半は、原料を輸入し国内で製造されたものです。主な原料であるりん鉱石と塩化加里は全量輸入に依存しており、また、りん鉱石を加工したりん酸アンモニウムの形態でも輸入しています。

令和2(2020)年の我が国の肥料原料の輸入量・輸入先国については、りん鉱石は約15万1千tで中国(25.5%)、南アフリカ共和国(20.8%)、モロッコ(17.3%)から輸入しており、この3か国で輸入量全体の約6割を占めています。また、塩化加里は約43万7千tで、カナダが全体の約6割を占めており、りん酸アンモニウムは約49万tで、中国が全体の約9割を占めています。

また、輸入原料への依存度を減らし、より持続性の高い農業を実現していくため、家畜排せつ物を始めとする様々な国内有機性資源を循環利用するとともに、データを活用して土壌や作物の生育状況に応じた施肥を行うことで肥料の効率利用を推進していくことも重要です。

図表 肥料原料の輸入量

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(農業生産資材価格の引下げに向けた取組を推進)

農林水産省は、平成28(2016)年11月に策定された農業競争力強化プログラムや、平成29(2017)年8月に施行された農業競争力強化支援法に基づき、良質で安価な資材の供給に向けた取組を推進しています。

特に、農業競争力強化支援法の施行以降においては、良質かつ低廉な農業資材の供給等に資する事業再編・事業参入計画の認定を通じて業界再編を促進してきました。令和元(2019)年度に事業再編計画を認定した飼料会社については、税制面・金融面での支援を活用し、会社の新設分割、新工場の建設等を進めました。また、令和2(2020)年度は、新たに農業用機械製造の事業参入計画を1件認定し、金融面での支援が活用されました。

令和2(2020)年4月からは、同法施行後2年目の見直しを受け、事業再編・事業参入計画の対象事業を追加しています(図表2-7-42)。

事業再編計画については、農業資材流通の合理化を進めるため、農業資材の卸売事業と小売事業を追加しました。また、事業参入計画については、営農管理システム等のソフトウェア開発の後押しや、スマート農業機械の共同利用等による安価で効率的な利用促進を図るため、これらを行う事業についても支援対象に追加しました。

特に、農業機械費を低減しつつ、農業現場の人手不足が進む中にあっても高い生産性を実現できるスマート農業機械の普及を進めるためには、これらの農業機械を活用した作業受託や農業機械のシェアリング等を行う農業支援サービス事業を育成することが重要です。このため、農林水産省では、令和3 (2021)年3月に農業支援サービスがユーザーに提供する情報を共通化するためのガイドラインを作成・公表するなど、農業支援サービス事業の育成・普及に向けた取組を推進しています。

このほか、平成28(2016)年度には農業資材価格の比較・検討が可能なWebサイトが構築され、平成29(2017)年度から稼働しています。また、平成29(2017)年度以降、毎年、農林水産省において国内外における農業資材の販売価格等に関する調査を実施・公表し、農業資材価格の見える化にも積極的に取り組んでいます。

図表2-7-42 農業競争力強化支援法の支援対象事業(農業資材)

(事例)全農が取り組む生産資材価格の引下げ

28~35馬力クラスの中型トラクター

28~35馬力クラスの中型トラクター

資料:全国農業協同組合連合会

全国農業協同組合連合会においては、農業競争力強化プログラムに基づく自己改革の取組の一環として、これまで550種類あった一般高度化成肥料の銘柄を平成30(2018)年秋肥から25種類まで集約するとともに、競争入札により肥料価格を1~3割程度引き下げました。また、農薬では大容量規格によるスケールメリット、完全受注生産、メーカー工場からの直接配送等により、当該農薬製品価格を通常規格より2~3割程度引き下げました。

農業機械については、担い手のニーズを聞き取り、必要な機能を絞り込んだ大型トラクター(60馬力クラス)の共同購入により、同クラスの標準型式に比べて2~3割程度販売価格が引き下げられました。さらに、令和2(2020)年12月からは、第2弾の取組として、標準モデルより2割程度低価格な中型トラクター(28~35馬力クラス)の販売を開始するなど、生産コスト低減に資する取組を進めています。

(7)農産物の生産・流通・加工の合理化

(農産物検査規格の見直し)

農林水産省では、農業競争力強化支援法に基づき、平成31(2019)年1月から、農産物流通や消費者ニーズの変化を踏まえ、農産物検査規格等の見直しを検討し、令和2(2020)年産米から、農産物検査の一部の項目について、目視に代えて穀粒判別器による鑑定を可能としたほか、同年6月に、玄米流通の合理化につながるようフレキシブルコンテナバッグに推奨規格を設定するなどの見直しを行いました (図表2-7-43)。

加えて、令和2(2020)年7月に閣議決定した規制改革実施計画を踏まえ、同年9月から農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会を開催し、更に検討を進めました。

この結果、現行の規格とは別に、「機械鑑定を前提とした規格」を新たに策定することとし、今後、計測・標準化や米穀の専門家等による機械鑑定に係る技術検討チームを令和3(2021)年内に開催し、技術的事項を中心に検討を進めた上で、機械鑑定用の検査規格を設定することとしました。

また、検査コストの低減に向け、サンプリング方法の簡素化を進めることとし、今後、標準抽出方法を見直すとともに、検査現場で適正なサンプリングが行われるようにするためのガイドラインを関係者の意見を聴いて作成することとしました。

このほか、米のスマートフードチェーンの構築と、それを活用したJAS規格を民間主導により制定することとし、今後、生産者・実需者・企業等が参加するコンソーシアムを開催し、海外調査や国際ワークショップの開催、JAS規格原案の策定等を経て、令和5(2023)年産米からの実現を目指すこととしました(図表2-7-44)。

さらに、農産物検査証明における「皆掛重量(*1)」を廃止することとし、今後、省令の改正の手続を進めること、穀粒判別器等科学的検査の更なる精度向上を図るため、AI画像解析等による次世代穀粒判別器の開発を進めることになりました。

これらを踏まえ、農林水産省では、今後、速やかに規格設定等の作業を進めていくほか、産地品種銘柄や包装規格等についても、引き続き検討会で検討していくこととしています。

図表2-7-43 穀粒判別器とフレキシブルコンテナバッグ
図表2-7-44 米のスマートフードチェーンとJAS活用のイメージ

*1 皆掛重量=正味重量+風袋重量+余マス。「余マス」とは、米を出荷する際に、正味重量を超えて多めに袋詰めされた米のこと



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