(6)品目構成
(農業総産出額は米の割合が減少、畜産や野菜の割合が増加)
農業総産出額(*1)は、ピークであった昭和59(1984)年から長期的に減少傾向が続いていましたが、需要に応じた生産の取組等により、平成27(2015)年以降は増加傾向で推移し、令和2(2020)年は8.9兆円となっています(図表 特-34)。
品目別の割合について見ると、米は長期的に減少傾向で推移し、昭和59(1984)年の33.5%から令和2(2020)年は18.4%となっている一方で、畜産や野菜は長期的に増加傾向で推移しており、昭和59(1984)年と令和2(2020)年の割合は、畜産で28.1%と36.2%、野菜で16.8%と25.2%となっています。
*1 用語の解説1を参照
(都道府県別農業産出額1位の品目が変化)
都道府県別に農業産出額1位の品目の移り変わりを見ると、60年前の昭和35(1960)年は43道府県で米が産出額1位となっていましたが、平成2(1990)年では、米は18府県に減少し、代わりに野菜が13都府県、畜産が13道県となりました(図表 特-35)。また、令和2(2020)年では、米が9県、野菜が15都府県、果実が5県、畜産が18道県となっています。

農業産出額は、その年の天候や作柄、価格等の変動に左右されますが、各都道府県がそれぞれの条件に合わせ、農業生産の選択的拡大を図ってきたことがうかがえます。
(作付面積では米は減少傾向、麦・大豆は微増傾向、野菜は微減傾向)
品目別の作付(栽培)面積については、米は平成17(2005)年の170万2千haから減少傾向で推移し、令和2(2020)年は146万2千ha、全体の37%となっています(図表 特-36)。一方で、麦・大豆は微増となっており、それぞれ平成17(2005)年の26.8万ha、13.4万haから、令和2(2020)年は27.6万ha、14.2万haとなっています。また、野菜は微減しており、令和2(2020)年は37.7万ha、全体の9%となりました。
(米以外の産出額が大きい県の方が1経営体当たりの生産農業所得も大きい)
都道府県別に、米以外の産出額と1経営体当たりの生産農業所得(*1)の相関を見ると、米以外の産出額が大きい都道府県の方が、概して1経営体当たりの生産農業所得も大きい状況となっています(図表 特-37)。その相関関係は、平成2(1990)年より令和2(2020)年の方がより強くなっています。また、都道府県別の動向を見ると、1経営体当たりの生産農業所得が大きい北海道や、宮崎県、群馬県、鹿児島県等では、平成2(1990)年から令和2(2020)年の間に米の産出額が減少する一方で、畜産物や野菜の産出額が増加しています。
このような中、我が国農業の持続的な発展のためには、需要の変化に応じた生産の取組が今後とも重要と考えられます。
*1 用語の解説1を参照
(コラム)消費者起点に立った売れるものづくりにより生産農業所得を増加(青森県)
各都道府県ではそれぞれの条件に合わせて農業生産の選択的拡大が進んでいますが、ここでは1農業経営体当たりの生産農業所得が増加した事例として青森県の取組を紹介します。
青森県における部門別農業産出額の構成を見ると、平成2(1990)年では、米が1,074億円と最も多く、次いで畜産が766億円、果樹が647億円、野菜が593億円の順となっていましたが、令和2(2020)年では、果樹が906億円と最も多く、次いで、畜産が883億円、野菜が821億円、米が548億円となりました。その結果、同年、青森県の1農業経営体当たりの生産農業所得は417万円となり、平成2(1990)年からの上昇率は全国平均(94%)を上回る119%となりました。
青森県では、平成16(2004)年度から消費者起点に立ち、消費者が求める安全・安心で良質な農林水産物等を生産し、強力に売り込んでいく「攻めの農林水産業」を進めているとのことです。具体的には、需要が堅調なりんごを始めとした果樹、にんにく、ごぼう、ながいも等の野菜、畜産については、大手量販店と連携し、品種や品質等で市場ニーズに対応しつつ、米からの転換などを進めることにより生産農業所得の拡大を図っており、米については、作付面積は減少していますが、その一方で、独自ブランドの育成を通じた付加価値の向上により、生産農業所得の維持を図っているとのことです。
(1農業経営体当たりの生産農業所得は近年増加傾向)
1農業経営体当たりの生産農業所得を算出してみると、近年、増加傾向となっており、令和2(2020)年では、平成2(1990)年の160万円から約2倍となる311万円となっています(図表 特-38)。
平成2(1990)年から平成22(2010)年までは、全国の生産農業所得と農業経営体数が共に減少傾向となっていたことから、1農業経営体当たりの生産農業所得は横ばいで推移していましたが、その後、農業経営体数は減少している一方で、畜産物等の産出額の増加等により生産農業所得が増加傾向にあることから、1農業経営体当たりの生産農業所得は増加傾向となっています。
(事例)米から麦への作付転換により収益が3倍(滋賀県)
滋賀県近江八幡市(おうみはちまんし)の株式会社イカリファームは、従業員9人で、水田230haに、米90ha、麦68ha、大豆71haを栽培しています。
同社は学校給食向けのパンを製造する製パン会社からの依頼を受け、平成24(2012)年から、中力粉と混ぜることでパン用に使用できる超強力系の小麦品種「ゆめちから」の試験的な栽培を始めました。ゆめちからは、耐倒伏性に強く、単収が多いことから、同社では小麦の主力品種として栽培を行っています。
また、小麦の裏作で大豆を栽培し、従来の米中心の経営と比べ3倍以上の収益を得るようになりました。
同社では、今後も国内産小麦の需要が増加すると見込んでおり、作付面積を拡大するとともに、単収の増加や作業効率化等により、高収益が得られる経営体制を確立したいと考えています。
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