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農林水産省

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第5節 農業経営の安定化に向けた取組の推進



我が国の生産農業所得は長期的に減少していましたが、近年、おおむね横ばい傾向で推移しています。

農業の現場では、原油価格・物価高騰等の影響や新型コロナウイルス感染症の影響の長期化も見られる中、自然災害等の様々なリスクに対応し、農業経営の安定化を図るためには、収入の減少を補償する収入保険や、金融面での支援等が重要となっています。

本節では、農業所得の動向や農業経営の安定化に向けた取組について紹介します。

(1)農業所得の動向

(生産農業所得は前年に比べ45億円増加し3.3兆円)

生産農業所得は、農業総産出額の減少や資材価格の上昇により、長期的に減少傾向が続いてきましたが、米、野菜、肉用牛等において需要に応じた生産の取組が進められてきたこと等から、平成27(2015)年以降は、農業総産出額の動向を受け、3兆円台で推移してきました(図表2-5-1)。

令和3(2021)年は、畜産や果実の産出額が増加したこと等により、前年に比べ45億円増加し3兆3,479億円となりました。

図表2-5-1 生産農業所得

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(コラム)1農業経営体当たりの生産農業所得が全国的に拡大

令和2(2020)年の1農業経営体当たりの生産農業所得は、平成2(1990)年の160万円から1.9倍となる311万円に拡大しています。

都道府県別に見ると、令和2(2020)年の1農業経営体当たりの生産農業所得は、北海道や宮崎県、群馬県、鹿児島県等で400万円を超えています。また、平成2(1990)年から令和2(2020)年における1農業経営体当たりの生産農業所得の増加額を見ると、北海道や群馬県、宮崎県、鹿児島県等の増加額が250万円を超え、全国平均(150万円)を大きく上回っています。

各都道府県における増加額にはばらつきが見られますが、それぞれの条件に合わせて農業生産の選択的拡大が進められてきたことがうかがわれます。

都道府県別の1農業経営体当たりの生産農業所得

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(主業経営体1経営体当たりの農業所得は434万円)

図表2-5-2 主業経営体1経営体当たりの農業経営収支

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令和3(2021)年における主業経営体1経営体当たりの農業粗収益は、果樹の作物収入が増加したこと等により前年から増加し2,072万3千円となっています(図表2-5-2)。

また、農業経営費は、飼料費、荷造運賃手数料、動力光熱費等が増加したことから、1,638万8千円に増加しました。この結果、農業粗収益から農業経営費を除いた農業所得は前年から17万9千円増加し433万5千円となっています。

なお、農業所得率(*1)は、前年並みの20.9%となっています。

*1 農業所得率=農業所得÷農業粗収益×100

(法人経営体1経営体当たりの農業所得は425万円)

図表2-5-3 法人経営体1経営体当たりの農業経営収支

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令和3(2021)年における法人経営体1経営体当たりの農業粗収益は、畜産収入の増加等により前年から増加し1億2,187万3千円となっています(図表2-5-3)。

また、農業経営費は、養豚や採卵鶏等で飼料費が増加したこと等により前年から増加し1億1,762万8千円となりました。この結果、農業所得は前年から101万1千円増加し424万5千円となっています。

なお、農業所得率は、前年から増加し3.5%となっています。

(個人経営体1経営体当たりの所得に占める農業所得の割合は約8割)

図表2-5-4 個人経営体1経営体当たりの農業所得等

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令和3(2021)年における個人経営体1経営体当たりの農業所得は115万2千円、農業生産関連事業所得、農外事業所得はそれぞれ1万2千円、27万8千円となりました(図表2-5-4)。

この結果、各所得の合計のうち、農業所得の占める割合(農業依存度)は前年に比べ0.9ポイント増加し79.9%となりました。

(2)収入保険の普及促進・利用拡大

(収入保険の加入者は着実に拡大)

図表2-5-5 収入保険の加入経営体数と加入割合

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収入保険は、農業者の自由な経営判断に基づき収益性の高い作物の導入や新たな販路の開拓にチャレンジする取組等に対する総合的なセーフティネットであり、品目の枠にとらわれず、自然災害だけでなく価格低下等の様々なリスクによる収入の減少を補償しています。

令和4(2022)年の加入経営体数は、農業者の関心が高まったこと等を背景に、前年に比べ約2万経営体増加し、7万8,868経営体となりました(図表2-5-5)。これは青色申告を行っている農業経営体(35万3千経営体)の22.3%に当たります。さらに、令和5(2023)年の加入実績は、同年2月末時点で8万7,417経営体となっています。

なお、自然災害による損害を補償する農業共済と合わせた農業保険全体で見た場合、令和3(2021)年産の水稲の作付面積の83%、麦の作付面積の96%、大豆の作付面積の82%が加入していることになります。

また、令和3(2021)年の収入保険の支払実績は、令和5(2023)年2月末時点で3万666経営体、742億円となりました。無利子のつなぎ融資(*1)については、同年2月末時点で、累計で9,084経営体、374億円の貸付けが行われています。

このほか、令和4(2022)年度に農業保険法の施行後4年を迎えたことから、収入保険制度の検証を行い、取組方向を決定しました。具体的には、(1)甚大な気象災害の被災による影響緩和の特例、(2)加入申請年1年分のみの青色申告実績での加入、(3)加入者の積立金の負担軽減を求めるニーズに応じた新たな取組について、令和6(2024)年に保険期間が始まる収入保険の加入者から実施できるよう、引き続き検討を進めることとしています。

*1 収入保険の保険期間中であっても補塡金の受取が見込まれる場合に受けることができる無利子の融資。全国農業共済組合連合会が実施

(3)経営所得安定対策の着実な実施

(需要に応じた米づくりを後押しするための見直しを実施)

経営所得安定対策は、農業経営の安定に資するよう、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正するための畑作物の直接支払交付金(以下「ゲタ対策」という。)や農業収入の減少が経営に及ぼす影響を緩和するための米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(以下「ナラシ対策」という。)を交付するものです。

令和4(2022)年度におけるゲタ対策については、加入申請件数は前年度に比べ440件減少し4万1,152件となった一方、作付計画面積は前年度に比べ1万5千ha増加し52万5千haとなりました。また、ナラシ対策については、収入保険への移行のほか、継続加入者についても作付転換や高齢化に伴う規模縮小等により、加入申請件数が前年度に比べ8,398件減少し5万9,815件となり、申請面積は前年度に比べ8万3千ha減少し63万5千haとなっています(図表2-5-6)。

図表2-5-6 経営所得安定対策の加入申請状況

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令和4(2022)年産からは、需要に応じた米生産を後押しするため、ナラシ対策の対象農産物である米について、具体的な出荷・販売予定に従って計画的に生産したものが補塡の対象となるよう運用の見直しを行っています。

(4)農業金融

(農業向けの新規貸付けは近年増加傾向)

農業向けの融資においては、農協系統金融機関(信用事業を行う農協及び信用農業協同組合連合会並びに農林中央金庫)、地方銀行等の一般金融機関が短期の運転資金や中期の設備資金を中心に、公庫がこれらを補完する形で長期・大型の設備資金を中心に、農業者への資金供給の役割を担っています。農業向けの新規貸付額については、平成28(2016)~令和3(2021)年度までの期間の伸びを見ると、農協系統金融機関は1.2倍、一般金融機関は1.1倍、公庫は1.2倍で、全体として増加傾向にあります(図表2-5-7)。

農林水産省では、原油価格・物価高騰等の影響を受けた農業者に対し資金が円滑に融通されるよう、金融支援対策を講じています。

図表2-5-7 農業向けの新規貸付額

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(ESGに配慮した農林水産業・食品産業向けの投融資を推進)

持続可能な経済社会づくりに向けた動きが急速に拡大する中、長期的な視点を持ちESG(*1)の非財務的要素にも配慮することで社会課題の解決と成長の同期を目指す金融の在り方が注目されています。また、地域金融の領域では、地域の基幹産業である農林水産業・食品産業を対象とした取組の更なる進展が期待されています。

農林水産省では、令和5(2023)年3月に、地域金融機関によるESGの要素を考慮した事業性評価に基づく投融資・本業支援を推進するため、「農林水産業・食品産業に関するESG地域金融実践ガイダンス(第2版)」を公表しました。

*1 用語の解説(2)を参照



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