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農林水産省

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第5節 国内外からの関心を惹きつける農泊の推進


「農泊」は、農山漁村に宿泊し、滞在中に地域資源を活用した食事や体験等を楽しむことにより、農山漁村の所得向上と関係人口の創出・拡大等を図る重要な取組です。また、訪日外国人旅行者(以下「インバウンド」という。)の増加に伴い、農泊地域へのインバウンド誘客体制を重点的に強化し、農山漁村への更なるインバウンド受入れを図る取組が重要となっています。

本節では、国内外からの関心を惹きつける農泊を目指した様々な取組について紹介します。

(農山漁村の所得向上と関係人口の創出を図る農泊を推進)

近年、農山漁村において農家民宿や古民家を活用した宿泊施設等に滞在し、我が国ならではの伝統的な生活体験や農村の人々との交流を通じて、その土地の魅力に触れる農山漁村滞在型旅行である「農泊」への関心が高まっています。

農林水産省では、農山漁村において「農泊」を持続的なビジネスとして推進し、農山漁村における所得の向上や雇用の増大を図るため、農泊に取り組もうとする地域に対し、体制整備、食事・体験に関する観光コンテンツの開発、古民家を活用した宿泊施設の整備等を支援しています。

農泊を推進する狙いは、古民家・ジビエ・棚田といった農山漁村ならではの地域資源を活用した様々な観光コンテンツを提供し、農山漁村への長時間の滞在と消費を促すことにより、農山漁村における「しごと」を作り出し、持続的な収益を確保して地域に雇用を生み出すとともに、農山漁村への移住・定住も見据えた関係人口の創出の入口とすることにあります。

観光庁等と連携しつつ、地域内の関係者を包含した実施体制を構築し、食、文化、歴史、景観等の農山漁村ならではの多様な地域資源を活用して、インバウンドを含む旅行者の農山漁村への誘客促進や、宿泊単価等の向上(高付加価値化)に資する取組を推進することとしています。

(事例)地域ならではの「特別な体験」を提供する農泊を推進(和歌山県)

(1)農林水産業振興と観光振興を目指す取組を実施

和歌山県那智勝浦町(なちかつうらちょう)の太田川流域農泊振興(おおたがわりゅういきのうはくしんこう)協議会は、宿泊、食事、体験・交流を担う多様な関係者が連携することで、地域農産物ブランド化と知名度向上につなげ、農林水産業と観光の振興を掛け合わせた地域づくりや、地方創生を目指す取組を実施しています。

(2)地域資源であるお寺を活用した農泊事業を展開

同協議会は、農家民宿や宿坊での「宿泊」、地元で採れた食材を活用したヴィーガンやハラールに対応した「食事」の提供、地域特産のいちごやお茶、米等に関わる農業体験、坐禅(ざぜん)体験等の「体験プログラム」を組み合わせた農泊事業を展開するとともに、関係者の多くが多言語対応可能であることから、国内外に向けて積極的な情報発信にも取り組んでいます。また、人口減少が大きな問題となっている当該地域においては、定期的な意見交換を実施することで関係者以外の方々とも連携体制を構築し、地域資源を活用した多様な取組による雇用創出や、地域での様々な体験を通じた「暮らし」をアピールすることで、地域外からの移住にもつなげたいとしています。

(3)地域住民に愛されながら持続的に収益を確保する取組を推進

同協議会の関係者である大泰寺(だいたいじ)では、本堂の一部と離れを宿泊施設として提供しており、坐禅、写経及び仏像鑑賞といった、「特別な体験」を行うことができます。その他、地域の間伐材を活用したテント式サウナやキャンプといった豊かな自然と非日常を感じられるプログラムも提供しています。また、同寺においてもスタッフの多くが英語対応可能であることも魅力の一つであり、宿泊者の約8割が外国人となっています。

同寺を始め、お寺を宿泊施設として整備することは、災害時における避難所としての活用にもつながること、また、地元に増えつつある廃寺を活用する場合は、防犯・防獣の効果もあることから、今後ともお寺を地域住民に愛される場所として存続させ、持続的に収益を確保できる取組を引き続き推進していくこととしています。

和歌山県那智勝浦町
大泰寺での写経体験

大泰寺での写経体験

資料:太田川流域農泊振興協議会

田植え体験

田植え体験

資料:太田川流域農泊振興協議会

(農泊地域の延べ宿泊者数の目標を達成)

図表6-5-1 農泊地域の延べ宿泊者数

データ(エクセル:26KB

令和5(2023)年3月に閣議決定した政府の「観光立国推進基本計画」において、令和7(2025)年までの目標として、日本人の地方部(*1)延べ宿泊者数を令和元(2019)年水準の3.0億人泊から3.2億人泊に約5%増加させ、インバウンド数の令和元(2019)年水準である3,188万人を超えることを目指しています。これを踏まえ、農泊地域においても、新規に農泊に取り組む地域やインバウンドの需要の増加を考慮して、令和7(2025)年度までに700万人泊とすることを目標としています。

令和5(2023)年度における農泊地域の延べ宿泊者数は、前年度に比べ183万人泊増加し794万人泊となり、目標を達成しました(図表6-5-1)。また、インバウンドの延べ宿泊者数は前年度に比べ23万人泊増加し39万人泊となりました。

*1 地方部とは、三大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)以外の地域

(「農泊インバウンド受入促進重点地域」の40地域を支援)

農泊推進実行計画で策定された、令和7(2025)年度までに農泊地域の年間延べ宿泊者数に占めるインバウンドの割合を10%とする目標の達成に向け、農泊地域へのインバウンドの受入れを促進し、地方誘客と地方消費をより一層促すことが重要となっています。そのため、農林水産省では、「農泊インバウンド受入促進重点地域」の40地域に対し、関係機関と連携した農泊の魅力を発信する海外向けのプロモーションと、ソフト・ハード両面での受入環境整備を支援することを通じて、農泊地域へのインバウンド誘客体制を重点的に強化し、更なるインバウンド受入れを図っていくこととしています。

(地域協議会を中心とした農泊推進に向けた取組を後押し)

農泊の取組の実践に当たっては、地方公共団体や観光協会を始め、地域の様々な組織や団体が参画する地域協議会において、地域の意思統一を図りながら進めていくことが重要となっています。地域協議会は、地域としての農泊のビジョンや地域一体となって行う事柄について合意し、組織をリードする「リーダー」と観光コンテンツ等を提供する関係者との間でその内容を共有する場となること等が期待されています。農林水産省では、農泊の運営主体となる地域協議会等に対して、地域資源を活用した体験プログラムや食事メニューの開発といったソフト対策と、空き家や古民家等の施設整備といったハード対策の両面から一体的に支援を行うこととしています。



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